サードウェイ(第三の道) ~白井信雄のサスティナブル・スタイル

地域の足もとから、持続可能な自立共生社会を目指して

エコチャレンジ・テスト

2008年08月18日 | 提言
写真:トレニア


■政策の概要

「エコチャンレジテスト」の標準モデルを開発し、これを活用したイベント(全国一斉テスト)の開催、一人ひとりの診断結果(タイプ)に応じて学習できるプログラムの製作・普及を図る。

さらに、「エコチャレンジテスト」をツールとした「オンライン環境学校」(E-ラーニングやオンライン大学を主な手段とする)を開設し、運営する。


■政策の目的

 環境配慮に係る意識・行動を測定するためツール(「正式名称:環境配慮診断テスト、呼称:エコチャレンジテスト、略称:ECテスト」)を開発・活用し、環境教育及び普及啓発に係る事業の新展開を図る。具体的には、次のような目的を掲げる。

A.人づくり事業をチェックし、PDCA (Plan-Do-Check-Action) を廻らす

 様々な主体が実施する環境教育事業、あるいはEMSの一環として実施される従業員教育、環境配慮生活の普及啓発事業等において、エコチャレンジテストを用いて各事業の効果を測定する。これにより、各事業の見直しを進め、効果的な事業手法等の主体間での共有を図る。

B.一人ひとりの特性を診断し、改善の自覚を促す、またきめ細かいプログラムを実施する

 エコチャレンジテストを用いて、個々人の環境配慮意識・行動のレベル・タイプを診断し、一人ひとりに自らの環境配慮意識・行動の特性を認識してもらい、改善の自覚を促す。また、個々人のレベル・タイプに応じて差異化された環境教育プログラムを提供することで、環境教育を効果的なものとする。

C.イベントとしてアレンジして、人づくりを全国に展開する

 エコチャレンジテストを各地域と連携全国一斉イベントとして実施したり、エコチャレンジテストを用いたE-ラーニングやオンライン大学等を、広く一般向けに展開することで、環境配慮に係る人づくりを国民運動的なものとして高めていく。


■政策の背景・必要性

 家庭からの二酸化炭素の排出削減が必要とされる中、住宅の断熱化や新エネルギー設備の導入、省エネ型の家電製品への代替を進められている。

 こうしたハード的対策や無意識な対策(生活者が二酸化炭素の排出削減を意識しない)に留まらず、生活者が地球温暖化問題と対策の必要性を認識し、自らの判断によって、環境配慮行動を選択・実行するという、自律的な環境配慮行動の普及・定着を図ることが必要となっている。

 また、廃棄物の3R対策の推進、環境配慮商品の市場形成、化学物質のリスク管理、水質汚濁の防止等においても、一人ひとりの取組みを自覚的なものとするための環境学習や普及啓発事業の必要が高まってきている。

このため、環境教育及び普及啓発に係る事業が活発に推進されているところであるが、次のような問題点が生じている。

 ●事業の効果測定(と結果の共有)が十分に行われていなく、PDCAがまわっていない。

 ●効果測定が実施されている場合においても、測定項目等が統一されていなく、事業評価の結果を主体間で共有するために、測定項目等の標準化が必要となっている。

 ●事業所におけるEMS(環境管理システム)においては、従業員における理解・実行度を測るツールが整備されていなく、従業員教育の進行管理が困難となっている。

 ●環境教育及び普及啓発に係る事業においては、学習主体の特性に応じた学習内容や伝達手法等の差別化が十分に成されていない(画一的なものになっている)。

 ●環境配慮行動の選択は、各主体の十分な理解に基づく、自律的な判断によって成されることが望ましいが、規制や規範への対応等といった受身的、感覚的な場合が多い(受身的・感覚的な選択を入り口として、自律的な選択にステップアップする手立てが必要である)。


■政策の実施方法

A.エコチャレンジテストの開発(理論的な開発)

 生活者(従業員)等に求められる環境配慮意識・行動(スキルスタンダード)について、評価項目と目標像を検討・整理する。この検討のために、関連調査の結果を参照するとともに、環境教育関係者等へのヒアリング調査等を実施し、標準的なテストの骨格を定める。

 このフレームを元に、具体的な試験尺度を作成する。次に、性別・年齢別、地域別等に、サンプルを抽出し、プレテストを実施する。この結果から、設問項目について、統計的有為性を検定し、設問項目の絞込み・改良を行う。

 なお、環境配慮意識・行動の評価項目は、生活者と従業員の場合等で同じではない。地域の生活条件にとっても取るべき行動は異なる。多様なケースに対して標準的な部分を定めるととともに、柔軟に適用可能な設計とする。

B.エコチャレンジテストの活用(イベント展開による普及)

 開発したテストを用いて、全国での一斉テスト等をイベント的に実施する。このため、最終的なテストは、回答するプロセスの楽しさにも配慮して設計する。また、テスト受験をイベント化し、同時性の楽しさ等も演出する。

 このイベント展開は、既に環境省が実施しているエコファミリー事業、地球温暖化防止に係る普及啓発事業(チーム・マイナス6%)等と連携して、それらに組み込んで実施することが考えられる。

C.エコチャレンジテストを活用した学習プログラムの開発と普及

 開発したテストを用いた学習プログラムを整備する。この学習プログラムは、一人ひとりの環境配慮意識・行動特性によって差異化されたもの、あるいは学習の進行によって段階的にステージアップができるものとする。WBT(Web Based Training)のほか、体験型、OJT型等の多様な手法を用意して、各種状況に応じて選択できるものとする。
 さらに、開発したテストを用いた学習プログラムの試行結果を踏まえて、学習事業のPDCAを実施できるように、ガイドラインを作成する。ガイドラインでは、テストによる効果測定→プログラムの計画→プログラムの実施→テスト→プログラムの見直しというPDCAサイクルを示す。
 この学習プログラムは、エコアクション等のEMS(環境管理システム)における従業員教育に活用してもらうことが考えられる。

D.エコチャレンジテストを活用した教育事業等の展開

 Cで開発した学習プログラムをさらに多様化・充実させることで、E-ラーニング講座、あるいは、それらをさらに総合化したオンライン環境大学の開設を図る。

 インターネットが急速な勢いで普及する中、時間や場所の制約がなく実施できるE-ラーニングやオンライン大学は、より多くの主体の参加を図るものとして効果的である。ただし、インターネットの利用困難な層もおり、講師派遣あるいは紙媒体の通信等による講座や大学もあわせて整備する。講師派遣型の講座においても、講師の教材として、E-ラーニングのプログラムを活用してもらえばよい。

E.その他様々な主体による事業との連携等

 各主体(国、地方自治体、NPO、民間団体等)が実施する環境教育及び普及啓発に係る事業との連携を進める。例えば、各主体が実施する学習プログラムでは、「このプログラムはエコチャレンジテストで●タイプの人が対象にして設計」、「このプログラムはエコチャレンジテストで○×○のように効果を実証済み」等というように、この制度を活用してもらうことが考えられる。


■政策の実施による期待効果

A.自律的な環境配慮行動の定着

  a.生活者における環境問題の認知度向上・意識の底上げ
    (問題の深刻さ、責任の帰属、対処の有効性等についての認知度向上)
  b.主体特性に応じた環境配慮に係る評価能力の向上
    (行動の実現可能性、便益費用、社会的規範等についての評価能力の向上)
  c.上記の結果としての環境配慮に係る行動の実施率向上、習慣化・規範形成等

B.環境教育プログラムあるいは普及啓発に係る効果測定結果の主体間の共有

  a.環境配慮に係る意識・行動を規定する要因構造の検証
    (意識・行動モデルにおける阻害要因、促進要因の明確化等)
  b.主体特性に応じて効果的な環境教育・普及啓発の手法等の知見共有
    (主体特性に応じた媒体、手法、メッセージ等)
  c.上記の結果としての環境教育・普及啓発に係る事業の効率的な実施

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