住んでいる街の回覧で、計画停電のため、ごみが燃やせなくなっているため、減量化に努めてくださいというメールがあった。
はたと気づくのは、ごみの焼却にも電気が必要ということ。でも、1日中、停電というわけでもなく、夜間操業や焼却効率の向上等により、対応ができないのだろうか。
ごみの専門家である友人にメールを送ると、次のような説明があった。
「ごみ焼却の制御がすべて電気だからだろう。給気も排気も、排煙処理も、コンベアも ごみ発電しているところでも、結局じぶんのところの電気を賄うのにほとんど使っている。 」
「立ち上げや火を消す時も電気がいるために、計画停電があると、24時間運転している炉が、たぶん15時間くらいしか運転できない。立ち上げ時間、次の停電前に消す時間、点検整備時間が必要となる。」
確かにそうだろう。もちろん私は何もわかっていなくて質問したわけでない。でも、その説明で現状は理解できても、その現状をよしとはできない。
24時間運転をしなければいけないの大規模な炉だからだろうか。「小規模な炉を分散配置しておけばよいということになるか?」という質問を重ねたみた。
「大規模でも小規模でも、火をつける時と消すときに200~300度くらいのダイオキシンが生成しやすい温度帯を抜けなければならないので、つけたり消したりすると燃料(助燃材)もかかるし、ダイオキシンも発生する。同じ量を燃やすのであれば、大規模炉のほうが優秀である。」
確かに、ダイオキシン対策として、(よかったのか悪かったのか別にして)焼却施設が大規模化されてきた経緯がある。
しかし、「今回のことで、停電対応が可能な柔軟な焼却炉の開発が課題になると思う。抽象的にいえば、停電になって、支障が出るようなインフラは脆弱性が高いといえる。今は市民に負担を求めることも悪いことだとは思わないが、脆弱性という観点からいろいろと総点検が必要だと思う」。そんな意見を専門家に示した。
「ごみの焼却工場に電気がいるって、当たり前じゃないと思ってしまったことに反省する。脆弱性とその裏返しの冗長性redundancy 等が必要だね。」
という返事である。そして、友人は次のように付け加えた。
「ただ、気をつけなければいけない。津波対策で防波堤をどんどん高くしても、いつかはそれよりも大きな津波がくることもあるだろう。そうすると高い防波堤に依存した土地利用ではより大きな被害を被ることがある。それと同じで、焼却場というハードウエアに全てを押し付け、停電対策等として設備投資ばかりを過剰にさせてはいけない。」
私も同感である。脆弱性の観点からの点検や対策は必要だが、それに対する対策はハードウエア対策一辺倒の「堅牢」なものでなく、ソフトウエアも含めて、また市民の意識や行動も含めて、もっと「柔軟」な方法を考える必要があるだろう。
もちろん、ごみ焼却場だけの問題ではない。想定外のことが起こることを前提に、当たり前と思っていることを根本から見直してみることが必要である。
なお、今回の記述はごみ焼却場の脆弱性を性急に告発する意図ではない。じっくりと考え直すことから始めてみたい。