山村地域の調査をするなかで、「アニメーター」という言葉をふと思い出した。アニメータとは、アニメーションをつくる人のこと。地域づくりの現場では地域の人を元気づけて、動かす人という意味で、コーディネイターも大事だが、それとは異なる役割のアニメータも大事であると言われた方のことを思い出したのある。その方は若くして亡くなられたが、多くのメッセージを発し、残し、それを受け継ぐ多くの方がいると思う。
私がその言葉を思い出したのは、多動的で、あちこちの相談を受けては、よりそい、元気づける活動をしている人と一緒にいたからである。その人がやっていることは、実にたくさんのことで、何かに絞らない限り、その人が一つひとつの実現に深く関わりきることはできないだろう。だけど、そうした”ちょっかい”や”よりそい”、”はげまし”、”つなぎ”は大事だ。動きまわる人がいることで、動き出す人がいるのである。そう思ったとき、思い出したのが「アニメータ」という言葉である。
また、「アニメータ」とともに、地域にしっかりと根付いて、地域内で調整をする人も大事である。そうした調整役は、やはり「コーディネイタ」と呼ぶべきであろう。浜松市の山間地域では合併して、政令指定都市に参加することになったが、地元にあった役場はなくなり、地域にはりついて、地域住民を調整する役割の人がほとんどいなくなっているのである。行財政効率の追求はよいが、そのことで失われたことになんら反省もなく、十分な手当もないように感じる。
浜松市は山村地域のNPOを支援する事業に予算をつける動きもある。しかしながら、予算があるから何か考えてといって、地域のNPOにコンタクトしてくる行政職員は、「コーディネイタ」の役割を果たしていない。地域に住み込み、地域住民が主導する地域づくりを丁寧にサポートする役割の人材の不足は、山村地域にとって致命的である。特に、地域住民がばらばらと動きだすのでは、交流人口の拡大もままならない。めざすべき方向の共有を図り、効果的な地域づくりを進めるためには、「コーディネイタ」は不可欠である。
アニメータとコーディネイタという人材をきちんと山村地域に張り付ける仕組みをつくりこと、そうした人材に専門的な役割をもたせること、そうした人材を育てること。持続可能な未来に向けて、もっとも大切なことだと感じている。