岩上智一郎の作品部屋(小説・絵・漫画・料理等)

著書:新宿クレッシェンド

小説、各記事にしても、生涯懸けても読み切れないくらいの量があるように作っていきます

闇 07(新宿歌舞伎町編)

2024年07月26日 08時59分16秒 | 闇シリーズ

2024/07/26 fry

 

闇 06(浅草ビューホテル) - 岩上智一郎の作品部屋(小説・絵・漫画・料理等)

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6 新宿プレリュード - 岩上智一郎の作品部屋(小説・絵・漫画・料理等)

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浅草ビューホテル時代が終わり、俺は新潟のグリーンプラザ上越ホテル前に少しだけ行った川越の氷川会館で働いたり、知り合いのクラブで店長を勤める店でカクテルフェアをやりたいからと声を掛けられ数日限定で働いたりして生活をするようになった

性格的に一つの決まった場所で働いている方が性に合うのだろうか

今日はどこどこ、明日はこっちへと毎回違う環境で働くのは大変である

浅草ビューホテルでのラウンジからのセクション移動を断り辞めたのを後悔したが、もう遅い

無職になって食べ物も困るような生活がごめんである

現状に対し不満を抱きつつも何かしら働かなくてはならない

 

ホテルを辞めてから半年が過ぎた

あれだけ保障が出ると言っていた日本生命からは何の音沙汰も無い

毎月保険料だけが引かれている状態だったので、さすがに連絡を入れてみる

数日して日本生命の何とか長というおばさんを連れてやって来たが、審査の結果出ませんと言われた

最初に保障は狙ったみたいだからいらないと伝えたのを出るからと無理矢理休みを二日間取らせておいて、それはないんじゃないかと訴えるも、謝罪とバームクーヘンのみでやり過ごせれる

「岩上さん、これに懲りずに今後も日本生命を……」

さすがにふざけるなと怒り、信用できないから辞めさせてもらうとハッキリ伝えた

その数ヶ月後

俺はidoとDocomoの2つの携帯電話を所有していたが、引き落とし先が混乱するのを避ける為、Docomoと日本生命の引き落とし分はこの銀行、idoと別の支払いはこっちの銀行と分けていた

ちゃんと口座に引き落とし分を入れていたはずなのに、Docomoの携帯電話が止まる

連絡しても引き落とし額が足りなかったのでと説明された

金を入れているのに足りない?

そうこうしている内にDocomoから強制解約を言い渡された

調べてみると、辞めたはずの日本生命がちゃっかり毎月保険料を引き落とししていたようだ

文句を言うと、日本生命とまだお付き合い下さいとふざけた事を言うので、さすがに訴えると伝えた

日本生命のおばさんは辞めると言ってから勝手に引いていた金額を振り込んできたが、Docomoの携帯電話を失った事実は消えない

こうやって保険会社はCMをテレビで打てるくらい人を騙して金儲けしているのかと思う

 

中々自分の居場所が見つからない

本当なら全日本プロレスのリングの上で戦っていたかった

忌々しい左肘横の突き出た骨

あの時のスパーリングで何故余裕など見せて油断してしまったのだろうか

打突さえ使っていれば……

いや、使ってどうする?

鶴田師匠に顔向けできるのか?

俺ももう24歳

あれから2年は経つ

未だ未練がましく全日本プロレス時代の思い出にしがみつくしか、自身を慰めるしか術が分からない

ビューホテルにいた頃は、こんな事を考えた事もなかった

人間、働ける場所があり、適度に忙しい生活を送っている方が幸せなのかもしれないな

 

そんな最中、先輩の坊之園智こと坊主さんが数年付き合っていた彼女の裕子さんと同棲するという報告があった

裕子さんは俺の一つ年上でとても優しい女性

数回会ったが、いつも俺の事を気に掛けてくれ坊主さんもいい人を見つけたなあと思っていたので心から祝福できた

馴れ初めは働いていたパソコン会社で一緒に働いている内に気付いたらくっついていたそうな

初めての同棲場所は新丸子

遊びに来るよう言われ、何度かお邪魔させてもらった

 

25歳になり、相変わらず中途半端な状態が続く

どこでボタンを掛け違えたのだろう

そんな中、坊主さんと裕子さんの結婚が決まる

祝儀をたくさん包みたいが、今の俺は金もそんな余裕がない

どうすればいいのか途方に暮れた

 

川越駅西口にあった洋食屋グリルTOGO - 岩上智一郎の作品部屋(小説・絵・漫画・料理等)

2024/05/05sun2017年7月末で閉店した洋食屋のグリルTOGO俺はここの味噌焼きチキンが本当に大好きでね18歳の頃から通っていたから、30年くらい行っていたんだなあTOGO風ハン...

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現実逃避で川越の街をブラブラ歩き、腹が減ったので川越駅西口にある洋食屋のグリンキッチンTOGOへ行く

気さくなマスターの作る味噌焼きチキンは大好物で、定期的に足を運んでいる

料理を待つ間、東スポを眺めていると、とあるスペースに目が止まった

『喫茶求人 12000 新宿』

喫茶店の仕事でこんなにもらえるのか

浅草ビューホテルで接客術を身に付け、酒についてあれだけ勉強したのに今の俺はそれが全然活かせていない

新宿は行った事がない街であるが、深夜喫茶などで人もたくさん賑わっているのだろう

もし働いたとして俺のカクテルの腕も活かせるようできたら……

ちょっとした閃きがあった

俺は求人先の電話番号を控えると、早速連絡してみる

25歳という年齢ではと数軒断られたが、ベガという店はすぐ面接の日にちまで決まった

 

西武新宿線本川越駅から西武新宿駅まで一本

一時間もあれば着く場所だ

ベガなんて小6の時、角川アニメ第一弾と謳った映画の幻魔大戦に出てくるキャラクターと同じ名前だ

あの映画の挿入歌であるキースエマーソンの地球を護る者のテーマで、入場したかったよな……

未だプロレスに未練があった

中途半端なまま終わってしまったあの世界

ジャンボ鶴田師匠はあのあと内臓疾患で入院し、第一線から退いてしまった

右拳を握り、親指を横に突き出す

結局ここまで鍛えた打突を使う機会もないまま、宙ぶらりんになっている

俺の人生って何でいつもこうなんだろうな

そんな事を考えている内に電車は西武新宿へ到着した

 

待ち合わせの場所はコマ劇場前

初めての新宿なので、どこにコマ劇場があるのかすら分からない

それにしてもたくさんの人で歌舞伎町はごった返している

人に聞くのも恥ずかしいので、一時間ほど彷徨う

面接の時間が近付く

仕方なく通行人に尋ねると目の前にあった建物がコマ劇場だった

しばらくボーっと立っていると、不意に後ろから肩を掴まれる

瞬間的にその手首を掴み、関節を捻っていた

モジャモジャパーマの男は悲鳴を上げて痛がりだす

咄嗟の行動だったので非礼を詫びると、その男が面接をする予定の人だった

初っ端からやらかしてしまったと思ったが、すでに過ぎた事である

クドクド文句を言われたあと、肩身を狭くしながらあとをついていった

 

コマ劇場から二本横の道に店はあったが、どう見てもマンションだろと思う

第4NKビルとだけ外の壁に貼られていた

こんなところで喫茶店?

疑問に思いつつも階段を上がる

二階へ着くと、昔喫茶店で流行ったインベーダーゲームのテーブルが店内に10台二列で設置されていた

何だ、ここは……

中へ入るとオールバックの男が笑顔で立ち上がり、鳴戸ですと名乗る

先程迎えに来たモジャモジャパーマが海野

どうやらこの二人の共同経営の店らしい

腕を捻られた海野は「こんな奴使うのやめましょう」とまだ怒っていた

黙ったまま俺の履歴書を眺める鳴戸

「岩上君、あなた、全日本にいたんですか?」

興奮気味に質問してきた

中途半端なこれまでの経歴を説明すると、鳴戸は「プロレスからホテルマン。あなたはとても面白い」と妙に褒めてくる

海野の反対を押し切って明日から仕事に入るよう言われた

帰る際、交通費ですと一万円札を渡される

どう見ても喫茶店ではない

怪しい店であるが、坊主さんの結婚式も近付いている

金を稼ぐ為、俺は明日から新宿歌舞伎町での生活を決めた

 

共同経営とは言っていたが、力関係では胡散臭い海野よりも、鳴戸のほうが上なのが分かった

一日働けば12000円の金を得られる

しかも日払いなのだ

背に腹は変えられぬ状況を飲むしかない

それにしてもあのテーブル筐体は何だったのだろうか

インベーダーではなく画面にはトランプのポーカーのようなものが映っていた

壁にはコーヒーやコーラといったメニューも貼ってはある

一抹の不安を抱えながらも明日になれば俺は新宿へまた向かう

帰りに渡された一万円札を眺めていると電車は川越へ到着した

 

翌日の初出勤

格好はワイシャツにネクタイ、そしてスーツのズボン

元々私服はトレーニングウェア以外スーツしか持っていなかったので余計な出費が無い分助かる

時間帯は夜10時から朝10時までの12時間

俺のほかに世永という店長しかいなかった

たった二人しか従業員がいないのか……

この店は喫茶店というよりも、ゲーム喫茶またはゲーム屋と呼ばれる業界で、目の前にあるポーカーゲームの機械を使い、実際に金をクレジットに換えてプレイする賭博場のようだ

客が誰もいないので、世永は丁寧に色々教えてくれる

俺は深夜喫茶かと思い、慣れたらカクテルを作って店を盛り上げたいと思ったと伝えると、「そんな奴、歌舞伎町に一人もいやしないよ。岩上君は本当に面白いなあ」と大笑いしていた

この日結局客は誰一人も来なく、世永との雑談だけで一日が終わる

こんなんで12000円ももらっていいのだろうか

罪悪感を覚えたが、金にそこまで余裕のない俺は素直に日払いを受け取った

 

浅草ビューホテル時代でも思っていたが、俺は元々夜型タイプの人間なのだろう

夜から朝に掛けての仕事時間もまったく苦にならない

ホテルの時の給料とそう変わらないのに、こんなに適当な仕事内容で本当にいいのか少し不安だった

喫茶ベガは10円レートのゲーム屋らしく、1クレジットが10円計算になるのでそう呼ぶらしい

五千円分を入れるとクレジットは500

一万円で1000といった具合だ

置いてあるゲームの機種はフィーバーパックとラッキーフルが5台ずつ

まったくチンプンカンプンだが、世永は未経験だから分からないのは仕方ない、おいおい嫌でも分かってくるよとだけ言って笑っていた

基本客が来ないので、オーナーのご機嫌取りで電バリというものを行う

A4の紙に店名のベガと10円玉のマークが描かれ、あとは店までの簡単な地図しか載っていない

その紙の裏に強力な両面テープを上下に貼り、あとはそれを電信柱に貼っていくのだ

これは海野や鳴戸が店にいる時だけしかできない

何故ならスタッフが早番遅番で二名ずつしかいないからである

警察に見つかると逮捕される可能性もあるので、電バリは必ず二人で行う

一人が電信柱にチラシを貼り、もう一人が警官が近くにいないか見張るのだ

金の為とはいえ、どんどん自分が薄汚れていく気がした

 

いつも笑顔の世永とは相性良く仕事がやれていると思う

二つ年上なのに妙に偉そうにしたりしないのが良かった

あと何も分からない俺に、色々教えてくれる

たまに来る客を接客し、帰ればテーブルの上を簡単に片付けるだけの仕事

ゲーム屋は毎日新規初回サービスというものがある

来店して10000円を入れれば、サービスで10000分のサービスがついてクレジットは2000からスタート

その代わりOUTできるのは倍の4000からのようだ

お金をクレジットに入れるからIN

クレジットをお金に換えるからOUT

基本的な仕組みを徐々に覚えていく

他に仕事といえば、二つ先の東通りにある24時間営業のスーパーエニーで不足した飲み物を買いに行く程度だった

 

一週間も過ぎた頃、坊主さんの結婚式があった

この日だけは仕事を休み、ゲーム屋の仕事のおかげで祝儀もちゃんと包めた

場所はディズニーランドの見えるホテルで行われ、無事披露宴は終わる

俺は友人代表のスピーチを頼まれ、緊張しながらも大勢の前で坊主さんと裕子さんの夫婦を心から祝福した

ジャイアント馬場社長と会った時の緊張感

あれに比べれば、ある程度の事は落ち着いて構える事ができるようになっていたのだ

 

歌舞伎町に来て十日が過ぎる

仕事中海野が店に来て、世永を外へ呼ぶ

30分もしない内に不機嫌そうな表情で世永は戻り、「岩上君、俺は上がる事になったから。また何か縁があったらね」とだけ言って店から出ていく

戻った海野に事情を尋ねると、世永は客を呼べないからクビにしたらしい

それなら自分のほうがまったく店の役に立っていないはずだと言うと、「岩上君みたいなタイプは珍しい。真面目だしね。鳴戸君も非常に君を買っているんだよ」と言われた

俺はまだゲーム屋のイロハすら分かっていない

もちろん客だって呼べるような人などいない

ただ真面目というだけで、何をそう買うのか理解できないでいた

もう世永と一緒に仕事する事がなくなったのは、歌舞伎町に来て初めて一緒に働き面倒見てもらった人間なので何ともやるせない気持ちになる

翌日から新しい人間が入るのと、半日置いて俺は早番(朝10時から夜10時)に代わるよう言われた

 

続き ↓

闇 08(やらされた死闘編) - 岩上智一郎の作品部屋(小説・絵・漫画・料理等)

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闇(1〜11まで)総集編その1 - 岩上智一郎の作品部屋(小説・絵・漫画・料理等)

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