
2024/07/26 fry
2025/08/16 sta
前回の章
浅草ビューホテル時代が終わり、俺は新潟のグリーンプラザ上越ホテル前に少しだけ行った川越の氷川会館で短い間だが働く。
知り合いの松縄が店長を勤める店クラブ五次元でカクテルフェアをやりたいから来て欲しいと声を掛けられ、数日限定で働いたりして生活をするようになった。
この時面白い偶然が成田山川越別院の住職である平井さんが客として来店した事。
高校時代にアルバイトした山口油材で当時共に働いたお坊さんの有原照龍。
彼が成田山でお坊さんをやりながら合間で山口油材でアルバイトという変わった事をしていた頃に接触しているので、当時の俺もよく懐き川越別院には遊びに行ったのだ。
まさかここに俺が働いているなんて露ほども知らない平井さん。
クラブの女が「今日カクテルフェアだから飲みたいなあ」と甘え、カクテルの注文が入る。
「お待たせ致しました。ニコラシカとスカイダイビングになります」
テーブルへ運ぶと陽気に乾杯をして、こちらには気付かないようだ。
耳元で「お久しぶりです、平井さん」と呟く。
ギョッとして俺を見て「うわっ! 何でここにいるんだ?」と焦り出した。
浅草ビューホテルを辞め、数日限定で手伝っている事を説明。
「寺で余計な事言うなよな」と釘を刺され、奥の厨房へ戻る。
平井さんについていた女が怒った顔でニコラシカを持ってきた。
「もっとレモンもらえます?」
苛立ったトーンの女。
自分でニコラシカを注文しといてさらにレモン?
意味がまるで分からない。
ニコラシカとはカクテルの中でも特殊で、ショットグラスにブランデーを注ぎ、レモンの輪切りを乗せその上にメジャーカップで砂糖を盛るもの。
飲み方が特殊であり、まずレモンと砂糖を口に放り込み一気にブランデーも入れる。
口の中でグチャグチャと混ぜながら飲む、別名口の中で作るサイドカーなのだ。
サイドカーでなくあえてニコラシカを注文したという事は、当然飲み方も知っての事だと思う。
不思議に思ったので「レモンが何故必要なんですか?」と質問した。
「こんなんじゃ飲めないよ! 早くレモン頂戴!」
このクラブの女は飲み方も知らずに頼んでいたのだ。
数年は酒というものに趣を置き、懸命に勉強してきた。
バーテンダーとしての職業にも誇りを持ちながら。
「飲み方も知らずにニコラシカを頼んだのですか?」
「どうせ、奢りだしどういうのか頼んだだけじゃん。早くレモン頂戴って」
スナックの女ならまだ分かる。
より高い給料をもらいながら自身の勉強不足を顧みず、客の金だから実験で注文。
酒に対する冒とくと客に対しての侮辱。
「おまえ、ふざけんなよ?」
俺と女の口論に発展してしまう。
店のママがすっ飛んできて間に入る。
状況を説明すると「ここは女の子主体の店なんだ。あんたはクビ! 帰っていいよ」と怒られる。
頼まれてカクテルを作りに来ただけで、ここの従業員でも何でもない。
見切りをつけて帰った。
性格的に一つの決まった場所で働いている方が性に合うのだろうか。
今日はどこどこ、明日はこっちへと毎回違う環境で働くのは大変である。
浅草ビューホテルでのラウンジからのセクション移動を断り辞めたのを後悔したが、もう遅い。
無職になって食べ物も困るような生活がはごめんである。
現状に対し不満を抱きつつも何かしら働かなくてはならない。
ホテルを辞めてから半年が過ぎた。
あれだけ保障が出ると言っていた日本生命からは何の音沙汰も無い。
毎月保険料だけが引かれている状態だったので、さすがに連絡を入れてみる。
数日して日本生命の何とか長というおばさんを連れてやって来たが、審査の結果出ませんと言われた。
最初に保障は狙ったみたいだからいらないと伝えたのを保障は出ますからと無理矢理休みを二日間取らせておいて、それはないんじゃないかと訴える。
しかし謝罪とバームクーヘンのみで誤魔化された。
「岩上さん、これに懲りずに今後も日本生命を……」
さすがにふざけるなと怒り、信用できないから辞めさせてもらうとハッキリ伝えた。
その数ヶ月後…、俺はIDOとDOCOMOの二つの携帯電話を所有していたが、引き落とし先が混乱するのを避ける為、DOCOMOと日本生命の引き落とし分はこの銀行、IDOと別の支払いはこっちの銀行と分けていた。
ちゃんと口座に引き落とし分を入れていたはずなのに、DOCOMOの携帯電話が止まる。
連絡しても引き落とし額が足りなかったのでと説明された。
金を入れているのに足りない?
そうこうしている内にDOCOMOから強制解約を言い渡された。
調べてみると、辞めたはずの日本生命がちゃっかり毎月保険料を引き落とししていたようだ。
文句を言うと、日本生命とまだお付き合い下さいとふざけた事を言うので、さすがに訴えると伝えた。
日本生命のおばさんは辞めると言ってから勝手に引いていた金額を振り込んできたが、DOCOMOの携帯電話を失った事実は消えない。
こうやって保険会社はCMをテレビで打てるくらい人を騙して金儲けしているのかと思う。
中々自分の居場所が見つからない。
本当なら全日本プロレスのリングの上で戦っていたかった。
忌々しい左肘横の突き出た骨。
あの時のスパーリングで何故余裕など見せて油断してしまったのだろうか。
打突さえ使っていれば……。
いや、使ってどうする?
鶴田師匠に顔向けできるのか?
俺ももう二十四歳。
あれから二年は経つ。
未だ未練がましく全日本プロレス時代の思い出にしがみつくしか、自身を慰めるしか術が分からない。
ビューホテルにいた頃は、こんな事を考えた事もなかった。
人間、働ける場所があり、適度に忙しい生活を送っている方が幸せなのかもしれないな。
そんな最中、先輩の坊之園智こと坊主さんが数年付き合っていた彼女の裕子さんと同棲するという報告があった。
裕子さんは俺の一つ年上でとても優しい女性。
数回会ったが、いつも俺の事を気に掛けてくれ坊主さんもいい人を見つけたなあと思っていたので心から祝福できた。
馴れ初めは働いていたパソコン会社で一緒に働いている内に気付いたらくっついていたそうな。
初めての同棲場所は新丸子。
遊びに来るよう言われ、何度かお邪魔させてもらう。
坊主さんはこの頃スーパーファミコンの『かまいたちの夜』というゲームにハマっていて、壁に何枚も紙を使ったフローチャートを貼っていた。
泊めてもらったお礼に得意料理のパスタを作ると、裕子さんはとても喜んでくれた。
二十五歳になり、相変わらず中途半端な状態が続く。
どこでボタンを掛け違えたのだろう。
そんな中、坊主さんと裕子さんの結婚が決まる。
披露宴での友人代表のスピーチもお願いされた。
祝儀をたくさん包みたいが、今の俺は金もそんな余裕がない。
どうすればいいのか途方に暮れた。
現実逃避で川越の街をブラブラ歩き、腹が減ったので川越駅西口にある洋食屋のグリンキッチンTOGOへ行く。
気さくなマスターの作る味噌焼きチキンは大好物で、定期的に足を運んでいる。
料理を待つ間、東スポを眺めていると、とあるスペースに目が止まった。
『喫茶求人 十二 新宿』
十二って一万二千円の事だよな?
喫茶店の仕事でこんなにもらえるのか?
浅草ビューホテルで接客術を身に付け、酒についてあれだけ勉強したのに今の俺はそれが全然活かせていない。
新宿は行った事がない街であるが、深夜喫茶などで人もたくさん賑わっているのだろう。
もし働いたとして俺のカクテルの腕も活かせるようできたら……。
ちょっとした閃きがあった。
俺は求人先の電話番号を控えると、早速連絡してみる。
25歳という年齢ではと数軒断られたが、ベガという店はすぐ面接の日にちまで決まった。
西武新宿線本川越駅から西武新宿駅まで一本。
一時間もあれば着く場所だ。
ベガなんて小六の時、角川アニメ第一弾と謳った映画の幻魔大戦に出てくるキャラクターと同じ名前だ。
あの映画の挿入歌であるキースエマーソンの地球を護る者のテーマで、入場したかったよな……。
未だプロレスに未練があった。
中途半端なまま終わってしまったあの世界。
ジャンボ鶴田師匠はあのあと内臓疾患で入院し、第一線から退いてしまった。
右拳を握り、親指を横に突き出す。
結局ここまで鍛えた打突を使う機会もないまま、宙ぶらりんになっている。
俺の人生って何でいつもこうなんだろうな。
そんな事を考えている内に電車は西武新宿へ到着した。
待ち合わせの場所はコマ劇場前。
初めての新宿なので、どこにコマ劇場があるのかすら分からない。
それにしてもたくさんの人で歌舞伎町はごった返している。
人に聞くのも恥ずかしいので、一時間ほど彷徨う。
面接の時間が近付く。
仕方なく通行人に尋ねると目の前にあった建物がコマ劇場だった。
しばらくボーっと立っていると、不意に後ろから肩を掴まれる。
瞬間的にその手首を掴み、関節を捻っていた。
モジャモジャパーマの男は悲鳴を上げて痛がりだす。
咄嗟の行動だったので非礼を詫びると、その男が面接をする予定の人だった。
初っ端からやらかしてしまったと思ったが、すでに過ぎた事である。
クドクド文句を言われたあと、肩身を狭くしながらあとをついていった。
コマ劇場から二本横の道に店はあったが、どう見てもマンションだろと思う。
第四NKビルとだけ外の壁に貼られていた。
こんなところで喫茶店?
疑問に思いつつも階段を上がる。
二階へ着くと、昔喫茶店で流行ったインベーダーゲームのテーブルが店内に十台二列で設置されていた。
何だ、ここは……?
中へ入るとオールバックの男が笑顔で立ち上がり、鳴戸ですと名乗る。
先程迎えに来たモジャモジャパーマが海野。
どうやらこの二人の共同経営の店らしい。
腕を捻られた海野は「こんな奴使うのやめましょう」とまだ怒っていた。
黙ったまま俺の履歴書を眺める鳴戸。
「岩上君、あなた、全日本にいたんですか?」
興奮気味に質問してきた。
中途半端なこれまでの経歴を説明すると、鳴戸は「プロレスからホテルマン。あなたはとても面白い」と妙に褒めてくる。
海野の反対を押し切って明日から仕事に入るよう言われた。
帰る際、交通費ですと一万円札を渡される。
どう見ても喫茶店ではない。
怪しい店であるが、坊主さんの結婚式も近付いている。
金を稼ぐ為、俺は明日から新宿歌舞伎町での生活を決めた。
共同経営とは言っていたが、力関係では胡散臭い海野よりも、鳴戸のほうが上なのが分かった。
一日働けば一万二千円の金を得られる。
しかも日払いなのだ。
背に腹は変えられぬこの現状を飲み、働いていくしかない。
少なくとも坊主さんと裕子さんの祝い金を渡せるくらいは。
それにしてもあのテーブル筐体は何だったのだろうか?
インベーダーではなく画面にはトランプのポーカーのようなものが映っていた。
壁にはコーヒーやコーラといったメニューも貼ってはある。
一抹の不安を抱えながらも明日になれば俺は新宿へまた向かう。
帰りに渡された一万円札を眺めていると電車は川越へ到着した。
翌日の初出勤。
格好はワイシャツにネクタイ、そしてスーツのズボン。
元々私服はトレーニングウェア以外スーツしか持っていなかったので余計な出費が無い分助かる。
時間帯は夜十時から朝十時までの十二時間。
俺の他に世永という責任者しかいなかった。
たった二人しか従業員がいないのか……。
この店は喫茶店というよりも、ゲーム喫茶またはゲーム屋と呼ばれる業界で、目の前にあるポーカーゲームの機械を使い、実際に金をクレジットに換えてプレイする賭博場のようだ。
客が誰もいないので、世永は丁寧に色々教えてくれる。
俺は深夜喫茶かと思い、慣れたらカクテルを作って店を盛り上げたいと思ったと伝えると「そんな奴、歌舞伎町に一人もいやしないよ。岩上君は本当に面白いなあ」と大笑いしていた。
この日結局客は誰一人も来なく、世永との雑談だけで一日が終わる。
こんなんで一万二千円ももらっていいのだろうか?
罪悪感を覚えたが、金にそこまで余裕のない俺は素直に日払いを受け取った。
浅草ビューホテル時代でも思っていたが、俺は元々夜型タイプの人間なのだろう。
夜から朝に掛けての仕事時間もまったく苦にならない。
ホテルの時の給料とそう変わらないのに、こんなに適当な仕事内容で本当にいいのか少し不安だった。
喫茶ベガは十円レートのゲーム屋らしく、一クレジットが十円計算になるのでそう呼ぶらしい。
五千円分を入れるとクレジットは五百。
一万円で千といった具合だ。
置いてあるゲームの機種はフィーバーパックとラッキーフルが五台ずつ。
まったくチンプンカンプンだが、世永は「未経験だから分からないのは仕方ない、おいおい嫌でも分かってくるよ」とだけ言って笑っていた。
基本客が来ないので、オーナーのご機嫌取りで電バリというものを行う。
A4の紙に店名のベガと十円玉のマークが描かれ、あとは店までの簡単な地図しか載っていない。
その紙の裏に強力な両面テープを上下に貼り、あとはそれを電信柱に貼っていくのだ。
これは海野や鳴戸が店にいる時だけしかできない。
何故ならスタッフが早番遅番で二名ずつしかいないからである。
警察に見つかると逮捕される可能性もあるので、電バリは必ず二人で行う。
一人が電信柱にチラシを貼り、もう一人が警官が近くにいないか見張るのだ。
金の為とはいえ、どんどん自分が薄汚れていく気がした。
いつも笑顔の世永とは相性良く仕事がやれていると思う。
二つ年上なのに妙に偉そうにしたりしないのが良かった。
あと何も分からない俺に、色々教えてくれる。
たまに来る客を接客し、帰ればテーブルの上を簡単に片付けるだけの仕事。
ゲーム屋は毎日新規初回サービスというものがある。
来店して一万円を入れれば、サービスで一万分のサービスがついてクレジットは二千からスタート。
その代わりOUTできるのは倍の四千からのようだ。
お金をクレジットに入れるからIN。
クレジットをお金に換えるからOUT。
基本的な仕組みを徐々に覚えていく。
他に仕事といえば、二つ先の東通りにある二十四時間営業のスーパーエニーで不足した飲み物を買いに行く程度だった。
一週間も過ぎた頃、坊主さんの結婚式があった。
この日だけは仕事を休み、ゲーム屋の仕事のおかげで祝儀もちゃんと包めた。
披露宴の席では地元の先輩たちと同じテーブルに着く。
この頃毎週のように遊んでいた竹田、秋山さん、神田さんと同じ席。
対面には坊主さんの同級生でもある二つ上の従妹の和ちゃんやその仲間たちが座る。
竹田だけ婚約しているというフィアンセを無理やり同席させ、今日の主役は坊主さんたちなのになと内心思いつつも、披露宴は進行していく。
自ら立候補して友人代表のスピーチでしゃしゃり出る竹田。
「坊主! 今日は本当おめでとうな。おい、おまえもこっち来いよ」
竹田は婚約者をスピーチの場へ呼ぶ。
「俺たちもあとに続くからよー!」
遠くからその光景を眺めながら、会場が白けているのが分かる。
今日は坊主さんたちの結婚式なんだぞ?
ちょっとした不満を覚えた。
俺の友人代表のスピーチの順番が来る。
緊張しながらも大勢の前で坊主さんと裕子さんの夫婦を心から祝福した。
「この度坊之園智さんと最上裕子さんがこの場で結婚します。私にとって兄のような存在であり、また裕子さんも俺にとって姉のような存在になります。ん? 兄と姉…、これじゃ近親相姦になってしまいますね……」
会場がドッと沸く。
「ちょっと矛盾した言い方になるけど、言わせて下さい。坊主さん、裕子さん! いや…、兄さん、姉さん! 本日はご結婚本当におめでとうございます!」
深々と頭を下げる中、割れんばかりの拍手に包まれた。
ジャイアント馬場社長と会った時の緊張感。
あれに比べれば、ある程度の事は落ち着いて構える事ができるようになっていたのだ。
場所はディズニーランドの見えるホテルで行われ、無事披露宴は終わる。
俺以外のみんなは着実に前へ向かって進んでいた。
竹田が彼女と、坊主さんたちと同じホテルに泊まると急に言い出す。
明日は新婚の坊主さんたちは、裕子さんの希望によりディズニーランドで一日遊ぶ予定。
そこへ武田たちも加わると言い出したのだ。
「智、神田も秋山の俺たちの部屋、ちょっと覗いていけよ」
あくまでも傍若無人な竹田。
帰りの電車の時間帯もあるので、お暇する際竹田の彼女に「あとは二人きりでごゆっくり」と声を掛けて帰った。
「せっかくだから俺の部屋でサターンのファイプロやっていきませんか?」
当時家庭用ゲーム機のセガサターンを愛用していた俺は、定番シリーズになっていた『ファイヤープロレスリング』、略してファイプロにハマっていた時期だった。
神田さんと秋山さんはコンビを組んでいるのかと思うほど仲がいい。
武田を介して知り合ったとはいえ、二人共優しい先輩なのでよく個人的に食事へ行った。
翌日竹田から電話があり、ひたすら怒って俺を責めてくる。
何故そこまで怒るのか理由を聞くと、俺が昨日の帰り際「あとは二人きりでごゆっくり」と声を掛けたせいで彼女と気まずくなり、翌日のディズニーランドでもずっとご機嫌斜めだったと言う。
あとから聞いた話になるが、裕子さんたちはご機嫌斜めの武田の彼女の気分を損ねないよう気を使って過ごしたらしいので、とことん坊主さんたちの結婚式に竹田は水を差してくれた訳だ。
この辺りから普段つるんでいた竹田とは価値観の相違から距離を置くようになった。
歌舞伎町に来て十日が過ぎる。
仕事中海野が店に来て、世永を外へ呼ぶ。
三十分もしない内に不機嫌そうな表情で世永は戻り「岩上君、俺は上がる事になったから。また何か縁があったらね」とだけ言って店から出ていく。
何が起きたのかまるで理解できない。
戻った海野に事情を尋ねると、世永は客を呼べないからクビにしたらしい。
それなら自分のほうがまったく店の役に立っていないはずだと言うと「岩上君みたいなタイプは珍しい。真面目だしね。鳴戸君も非常に君を買っているんだよ」と言われた。
俺はまだゲーム屋のイロハすら分かっていない。
もちろん客だって呼べるような人などいない。
ただ真面目というだけで、何をそう買うのか理解できないでいた。
もう世永と一緒に仕事する事がなくなったのは、歌舞伎町に来て初めて一緒に働き面倒見てもらった人間なので何ともやるせない気持ちになる。
翌日から新しい人間が入るのと、半日置いて,俺は早番に代わるよう言われた。
時間帯は真逆の朝十時から夜十時になる。
夜型人間の俺にとって複雑な心境ではあるが、金も無い雇われ側なので店の決定に文句一つ言えた義理も無い。
明日の朝十時から店長である高橋ひろしと組んで早番。
これは店の決定事項なのだから。