岩上智一郎の作品部屋(小説・絵・漫画・料理等)

著書:新宿クレッシェンド

小説、各記事にしても、生涯懸けても読み切れないくらいの量があるように作っていきます

04 鬼畜道(始めの一歩編)

2023年03月01日 13時24分18秒 | 鬼畜道 各章&進化するストーカー女

 未だ入ってこない『新宿クレッシェンド』の印税。初版で一万部刷ったという出版社の担当編集者は、一年前すでに退職をしていた。この事には別段驚きもしなかった。何故なら彼女の言葉一つ一つに魂を感じた事がまるでなかったからである。

 出版社は俺の口座番号すら聞いてこない。

 まあ、これ以上こだわっても仕方ないか。何も生まれない。

 どんなに傷ついても書く事を辞められない俺。

 家の中でも酷い出来事の連続だった。何度も死にたいなあと思うぐらいだった。

 何もなくなった俺に、親父と三村は家を継げと言うようになる。当然迷い、相談し、色々考えた。それでもまだ結論は出ない。

 ならば、これまでの呪われた人生を振り返り、それを作品にしてみようじゃないか。どうせ死ぬぐらいなら……。

『鬼畜道~天使の羽を持つ子~』というタイトルで、書きたかった事を自由に表現するようになった俺。

 気づけば約一週間後の一月十八日、原稿用紙八百八十四枚。

 翌日で千四十枚。すごいペースで執筆をしている。

 もう、どこかの賞へ応募なんて絶対にできないな……。

 それでも執筆意欲はまるでとまらず、ガンガン作品を書き続けた。

 寝る時間すら惜しみ、一週間風呂へ入らない事など当たり前のようにして、その作品をずっと書き進める。気づけば三十時間ぐらい食事を取らない事なんて、ザラにあったぐらいだ。限界まで書き、そのまま後ろへバタンと倒れる生活。目を覚ますと、また目の前のパソコンへしがみつき、続きを書いていくような日々が続く。

 俺は会員制のSNS(ソーシャルネットワークサービス)のミクシィに執筆記録を残すようにした。自分の整理の為に。

 一時期ストーカー女に悩まされていた俺は、ミクシィを退会したが、この頃息抜きとして、またミクシィを復活して始めていた。

 過去、選考委員をしていたという一人の人妻が、ミクシィを通じ、『かれーらいす』という留置所時代の実話を元に書いた作品を読み、俺に興味を持ってくれる。

 彼女曰く図書館の端から端まで本を読み、家には本が一万冊あると豪語するぐらい文学が好きだと言う。

 名は詩織と言い、以前百合子という彼女の連れ子で可愛がった事のある娘と同じ名前だった。

 この人なら、俺の作家としてのスキルを伸ばしてくれるかもしれない。

「あなたの作品に興味があるので、別の作品も読ませていただけませんか?」

 俺は自信のあったホラー小説『忌み嫌われし子』を薦めた。そして彼女がこれを読み、ゴーサインを出してくれるなら、大手出版社の一次選考を通過できるレベルになっているとも思えた。

 早速彼女は読み終え、感想のメールをくれた。

『読後感は救いがねえというという感じですが、長男が頑張って生き抜こうとするところに希望があるんでしょうか……。

 どっちかっていうと、罪のない奥さんと娘さんのその後のほうが思いっきり気になって立ち直れそうなんですけど。一番可哀相なのは、この二人では?

 全体的にとっても面白くて、最後までハラハラドキドキ読めました。そう来たか~って感じです。全然終わりまで、ネタバレしませんでした。

 でもまあ、女の人が読んで、ウゲッって思うのは分かるような気がします。

 奥さんを犯す前に旦那が刺して、息子が死にながら自分の身の上を話し、旦那が後悔して息子を想う…。殺人犯になっちゃうけど頑張って生きていくぐらいのほうが嫌悪感少ないですね。

 女性は女の人が酷い目に遭うものは、生理的に受け付けません。救いがないと。でも、面白かったです。 詩織』

 うん、こういうハッキリ自分の意見を言ってくれる人がほしかった自分に気づく。俺はこの作品を『第五十六回江戸川乱歩賞』へ出してみようと思うけど、どうか正直に答えてほしいと尋ねる。

 また一通のメールが届いた。

『う~ん、趣味で書いている分にはよくできているし、いいと思うんですけど…。もし、本気でどこかの章に応募するんであれば、これだと出しても受からないと思うんですよね。生意気言ってごめんなさい。

 ジャンルとしてはいいと思うんですけど、もうちょっと推敲したほうがいいかも。

 ご迷惑でなければちょっと気になった点、指摘させてもらってもいいでしょうか?

 不愉快に思われたら本当にごめんなさい。

・はず始めに、ところどころケアレスミスがありますよ。

・最初パパさんの役職、部長ってなっているのに途中で課長になっています。

・吸収率が早いは…、吸収が早い、もしくは吸収率が高い。

・あとところどころ漢字の変換ミスがあるので探してみてね。

・大企業や、ちゃんとした企業には採用の際、住民票も戸籍謄本も提出するので、名前を偽って入社するのは無理。

・本当の名前、聞く必要ないかも。

・十八歳までお母さんに育てられながら、お母さんの実家のじいちゃん、ばあちゃんと一切交流がないのは不自然。

・もし、妊娠してお母さんが実家に帰ったなら、連絡つくはず。

・おじいちゃん、おばあちゃんに育てられたっていう河合の生い立ちには無理があるのでは?

・その辺の設定が甘い。

・キャラクター全員に感情移入できない。

・パパさんの思い込みと、河合君の思い込みだけで話が展開しているので、まったく共感できないし、身勝手な感じがして好意も持てない。

・奥さんと娘さんのキャラクターが薄い。

・最後は酷い目に遭って、そのまんまっていうのが不完全燃焼。

・最後勝手に悟ったようになって天国へ行くのも余計かな。

・単純に読んでいると、同情の余地がなくて河合君が助かっても、読後感が悪い。

・最後まで河合君が、悪に徹したほうがいいんじゃあ?

・『忌み嫌われし子』ってタイトルになぞらえて時々入るこの台詞も、ちょっととってつけた感じですよね。全体的な文体が軽いので。

・もっとおどろおどろしい世界観があるならいいんですけど……。

 まあ、などと突っ込みどころ満載な感じなんですけど、全体的にまとまっているし文章は読みやすいので、もうちょっと練り直してから作り直してみてはどうでしょうか?

 ブログにハマっていく様子とか、他の人とのやり取りとかは共感できるし、面白い感じがしました。もっともっと色々なパターンで、どんどん話ができそうな内容です。色々なパターンを作ってみて、一番評判いいのを応募してみては?

 ところで出版社に直接持ち込みとかした事ありますか? 一度、編集さんに見てもらってはどうでしょうか? 専門家にアドバイスもらうと、より完成度が高くなると思いますよ。

 あまり人に読ませないって伺いましたが、周り中の人に見てもらってアドバイス聞いて仕上げたほうが、きっと面白くなるはず。

 同じく小説家志望の方や、実際の小説家の方とか、特に勉強になります。

 何様かって思われたら、本当にごめんなさい。実際小説を一本仕上げるのって本当に大変な作業だし、まとまった作品を作るのって難しいですよね。よーく分かります。小説書いた事のない人には分かんないですよねえ。

 でも、龍一さんには才能あると思うから、ぜひぜひ売れ筋の作家さんになって、どんどん色々な本を出してほしいです。 詩織』

「……」

 久しぶりにここまでケチョンケチョンに言われたもんだ。読んでいて実際イラッとする部分もある。この人の常識外で行動する人間なんて、俺はいくらでも現実に見て接した自負があるからだ。

 でも、こうまで指摘してくれる人は、そうはいないだろう。彼女なら、俺の作品をさらに開眼させてくれる。そんな気がした。

 こんな俺に才能……?

 確かに処女作で賞は獲れた。でも、実際に売れているのかどうかすら分からない。未だ印税すら入っていない状況で、出版社からは毎月どのぐらい売れているかメールでいいから教えてほしいと伝えたが、もう数ヶ月何も連絡がないのだ。

 自分の書いた作品の発表できる場と言えば、『野いちご』というケータイ小説サイトを使うぐらいしか方法がない俺。一円にもならなかったが、それにすがるしか方法はなかったのだ。精神が崩壊しないようにするには……。

 世間の評価は十人十色だった。俺を作家だと認める人もいれば、まるで認めたくない人間もいる。

 地元川越の市役所では、「神威さん、あなたは川越の作家として初めて賞を受賞した小説家なんですね。ただ本を出すので、営利目的となりますの。だから市で出す広報に、神威さんを載せる事はできません」と言われた。

 その後NHKの連続テレビドラマのロケ地が川越になると、市全体で盛り上がり、どこもかしくも『つばさ』のポスターが貼られる。実際に放送が始まると、「あれは川越を馬鹿にしている」と怒り出す市民が続出した。ついこの間政権交代した民主党に票を入れておきながら、あとになって「何も変わらないじゃねえか」と文句を言う人間と変わらないなあと思う。結局のところ、ほとんどの人間はミーハーなのだろう。自分たちで犯した過ちさえ気づかず毒づいているのだから……。

 同級生で教科書を学校に卸す、大きな本屋を継いだ奴がいた。俺は道端で彼に会った時、「おまえのところの本にはサインを全部してやるよ」と伝える。すると彼は「サインされると返品利かないんだよ」と不機嫌そうに返してきた。地元というせいもあり、当時俺の『新宿クレッシェンド』をその同級生の本屋で注文したと、直に連絡してきた人は多い。五十人以上の人間に言われた。中には一人で二十冊や五冊とまとめて買ってくれた人もいる。しかしその同級生の本屋では一切、俺の本が置かれる事はなかったのだ。それを近所の人たちに言われ、偶然その同級生に会った際「何で俺の本を置かねえんだよ?」と苛立って怒鳴りつけた。そいつは「一ヶ月でどれだけの新刊が発売されると思ってんだよ? そんな一冊の本なんかに構っていられねえんだ」と生意気な事を抜かす始末だった。

 なるほど、こいつは意識してワザと置いていないのだなと分かった俺は、胸倉をつかみ、「生意気な口を利くと、オメー、毎日苛めの対象にすんぞ?」と脅してやった。

 近所の人には「一回賞を獲ったぐらいじゃ駄目だよ。二回も三回も獲らないと」と簡単に言われた。なら、あんたがそれを実践してみてくれ。口先だけで言う事と、実際にやる事はまるで違うのを分かるから。

 家で一緒に住むおばさんのユーちゃんには、「おまえの小説は読んでいて嫌な気持ちになるから、読む価値もない。東野圭吾を読んでみな。あの人は本当に引き出しが多い」と逆に文句を言われた。「あのさ…、一応俺、賞をこれで獲っているんだけど?」と返すと、「すぐそれで有頂天になるからおまえは駄目なんだ、あの程度の賞で」と小馬鹿にされた。

 弟の龍也には「もう、賞を獲った事は忘れたほうがいい」なんて言われた事だってある。

 人の痛みを分からない人間だからこそ、平気で人を傷つける事ができるのだろう。いや、自分の言葉でどれだけ相手が傷ついたかすら、気づかないのかもしれないな。

 小説の件でどんなにムカついても、手を上げた事はない。ただ、言葉でこうして傷つけるのと、実際に殴って傷つけるのと、何が違うのだろうと考えるようにはなった。

 歌舞伎町時代、何も恐れずイケイケだったあの頃が懐かしく思えた。いつから俺は、こんなに牙を剥かなくなったのだろうか? おそらく自分が感情のまま本気で人間を殴ったら、壊してしまう事を自覚していたからだ。殺すほどの事でもない。そう考えられるから、人を殴ったり蹴飛ばしたりできないのだ。

 でも、世の中嫌な事ばかりじゃない。中には「友達にも本をプレゼントするから、神ヤンサインしてくれる」と笑顔で来てくれる友人もいる。

「龍一、おまえの本、三軒の本屋で探したけど、置いてなかったぞ?」

 そう言ってくれた先輩もいた。この先輩の最上さんは俺にとって、一番信頼の置ける人であり、パソコンのスキルを授けてくれ、人生の要所要所で救ってくれた恩のある頭の上がらない人だった。

「本屋さんで注文すれば取り寄せできますよ?」

「そんなの分かってんだよ。そうじゃなく、実際に本屋にあるのを俺は買いたいんじゃねえかよ!」

 涙が出るほど嬉しい言葉だった……。

 こういった気持ちになれるからこそ、俺はまだ生にしがみつき、そして懲りずに作品を書き続けているのだろう。

 

 本を発売して約二年の月日が流れた。そのタイミングで知り合った詩織さんには、作家として運命的なものを感じている。これはただ単に俺が乙女座だから、ロマンチストっぽく物事を捉える一面があったからかもしれない。でも、それでも幸せを感じていたから、それでいい。

 俺は彼女へホラーの『ブランコで首を吊った男』を薦めてみる。初めて挑戦してみたホラー作品だが、最初に完成してから数回推敲をし、結局曰く憑きだったという現実に気づき、大幅に加筆したものだ。

 詩織さんはすごいスピードで読み終わり、またメールをくれた。

『ブランコで首を吊った男を読みました!

 二千十年一月二十一日。

 これ、すっごく怖かった~。

 何が怖いって? 亀田が超気持ち悪くて怖かったです。ストーカー…、こわっ……。

 こういう日常に潜む恐怖って怖いですね~。こういうの上手ですね。普通に書店で売れると思うんですけど、これは書籍化していないんですか? 詩織』

 このメールを見た時、俺はパソコンの前でガッツポーズをした。きっと満足させる自信があったからだ。ケータイ小説サイト『野いちご』でも、この『ブランコで首を吊った男』は一番の人気を誇り、ホラーランキングでも常時一位に居続けた作品である。目的はある程度達したので数ヶ月間しかアップせず、あとはパスワード制にして自由に閲覧をできるのを防ぐ。

 詩織さんへメールを打ってみた。

『以前角川のホラーに出したんですけど、一次選考も通らなかったんですよね。あと幽怪談文学賞にも出したんですけど、駄目だったんです。

 怖いって定義を出してみたつもりなんですけど、選考基準いまいち分からない状態なので、現在放置しています。 神威龍一』

 そりゃあ、俺だってこの作品が書籍化になるなら、すぐにだってしたいさ。でも、出版社が作品の良さを理解してくれないから、こうしていつも足掻いているのだ。

 それでも書籍化しないんですかと素直に言ってくれた詩織さんの言葉は、とても嬉しく思える。

『賞狙いだと難しいから直接持ち込みのほうが、いいかもしれないですね。

 後半省いて、ストーカー男中心の話にしてみても面白いかも。心霊っていうよりも、日常の怖さで。

 以前ある賞の一般審査員になった事あるんですけど、これ、本当に素人の人が書いたの?ってぐらい作品も本当に完成されてましたもんねえ……。 詩織』

 ちょっとこの辺の感じ方が、俺とは違うのかな。ブランコは間違いなく最後のエピローグが怖いという人のほうが多いはずである。この話を書いている俺自身が鳥肌を立てながら書いたほどだ。オカルトや霊的要素を嫌う人なのかもしれない。亀田の話だけなら、ただの気持ち悪い男の話なだけだ。でも、詩織さんが言うように、もう一度推敲してこの作品を見直すのも悪くないだろう。

『ありがとうございます。こういう意見言ってくれる人、待っていたんですよ。

 自分の場合、一気に書くので粗も多いし、設定ミスとかもあると思うんですよね。細かい指摘等、参考にさせていただきます。色々考えて、もうちょい推敲してみようと思います。 神威龍一』

 以前『忌み嫌われし子』の指摘メールをもらったあと、彼女へ送った俺のメールを読み直してみた。まあどっちにせよ、今は書き出してしまった『鬼畜道~天使の羽を持つ子~』が終わってからの話になる。どのぐらい長くなるかなんて、自分でも想像はつかないけど。

 後日、詩織さんからこの件でメールが届く。

『龍一さんが心の広い方で本当に良かったです。もの凄く迷ったんですけど、ちょっと指摘しただけで気分を害される方、かなり多いので、普段ならどんな作品読んでもいいところしか言わないんですよね。

 特に素人の人が趣味で書いている分には、まったく自己満足でいい訳だから別に嫌な事、言う必要ないし……。

 本当生意気言ってごめんなさい。次の作品も楽しみにしています。

 ケータイ小説出身の人がよく書籍化しているけど、ぺらぺら~っと前半読んだだけで、うんざりなんですよね。文章構成力もゼロで、内容もまったくない感じ。普通に本を読んできた人間には読む価値を感じません。何であんあのが売れるんだろう?

 最近の人は本を読まないから、軽いお手軽な話で幼稚な文章が読み易のかな。龍一さんにはぜひ、本格的なミステリー小説を書いてほしいです。 詩織』

 ありゃ? 彼女は何だか勘違いしているな。ホラー作品が好きなのかと思って、二つ見せただけで、本来は『新宿クレッシェンド』のようなシリアスものが俺にとって王道的な作品なのに……。

 出版社との出版契約書を交わしているので、『新宿クレッシェンド』だけは勝手に使えないが、彼女になら読ませてもいいか。どうせ、データはこっちにあるんだしな。

 万が一それに対して文句を言われたところで、宣伝もやる気も何もなく、未だ印税を払うつもりのない会社なんだから、逆に怒鳴り返してやればいいか。

 こうして俺は、詩織さんへ『新宿クレッシェンド』のデータを送る事に決めた。書評を聞いてみたかったのである。同時に出版社と険悪な状況を伝える事にした。

『なるほど! そうなんですね!

 二千十年一月二十一日。

 今まで拝見したのがミステリー系だったので、てっきりミステリー系が得意なのかと思ってました。でも、龍一さんの書き方だとミステリーよりも、自伝とか、コメディタッチのもののほうが、似合う気がしますね。ブログもとっても面白いし。言葉の使い方にセンスを感じます。

 しっかし出版社、酷いですね……。

 どこの出版社ですか? 印税払わないのって詐欺に当たるんじゃあ? ちゃんと弁護士立てて請求したほうがいいんじゃないですか?

 賞の賞金とかは、ちゃんと入ったんですか?

 まあ、印税って実際売れた数によるので、出版社と断絶状態じゃ把握できないのかもしれないけど…。絶版にされちゃったりするんでしょうか。悔しいですね。

 本当だったら賞を獲った出版社と専属契約結んで、ちゃんとした編集さんと組んで、二人三脚で次回作をどんどん作っていく環境にいられたはずなのに……。

 受賞作の著作権はその出版社になっちゃっているんでしょうか……。

 まあ、私はただの読書好きのおばちゃんで、言いたい事も好き勝手に言っている感じなんですが、きっと読者もみんな、こんな感じだと思うので、一読者のファンレター程度に思って多目に見て下さいね。

 物書きを仕事にするのは、すごいストレスで大変だと思うんだけど、一生の仕事にできて、みんなが自分の作品に感動したり、共感したりしたら最高ですよね~。その人の人生観まで変えちゃうような作品を作っちゃったり。

 褒めちぎってくれる女の子たちや、擦り寄ってくる女の子たちをよーく観察して、次は恋愛ものにチャレンジしてみては? 女の子の感情の豊かさ、激しさは、男の人にない最高の材料ですよ。経験は正に宝です。 詩織』

 やはり、彼女の価値観では今の俺など理解できないだろう。まともな家庭に生まれ、まともな両親に育てられ、まともに勉強をしていい大学へ行き、まともな人と結婚してこを生み家庭を作る人生。

 まずクレッシェンドを読ませたら、次は間違いなく現在執筆中の『鬼畜道~天使の羽を持つ子~』しかないな。俺が書きたいもの…。それは間違いなくこれまでの半生を描いた自分自身の自伝なのだ。まだ物語りは途中だが、すでに原稿用紙千枚三百枚近くになっている。これを読んだら、彼女の人生観は果たして変わるのか? そこに興味があった。

 

 一日に何度も彼女からメールが届く。

『書いている内に人物がどんどん動いていって、自分でも結末が分からないタイプ?

 最初に頭の中で話を決めてから一気に書いちゃうといいと思うんですけど、脱線しちゃうなら、やっぱり大まかなプロットは立てといたほうがいいんじゃないでしょうか、そしたら伏線張る事もできますしね。

 文章構成力は、自分で書く事以上にいい文章をたくさん読む事で身につくと思うんですよね。文学部の人とかは一週間で夏目漱石の作品を全部呼んで、二十枚のレポートにまとめてくるとか、そんな作業ばかりしています。ピッタリ二十枚で。どの作品のどの部分を取り上げて、自分なりの解釈を展開していくかとか。そういった作業の繰り返しで、自然と文章構成力が身についてく訳ですよね。

 面倒かもしれないけど、やっぱり色々な人の作品を読んで、それに対する自分の解釈をまとめてみるっていうのも、勉強になると思います。

 人の批評を見るっていうのも、すごくいい勉強になります。時間ある時は、純文学を読んでみるのもいいかもしれませんよ。 詩織』

 うーん、本来俺の持ち味が出ている作品をまだ彼女へ読ませていないからなあ。好き勝手に言われちゃうのはしょうがないか……。

 二千四年から小説を書き始めて丸六年目。プロットなんて立てた事もないし、これからもするつもりなどない。俺の最大の武器は記憶力と書くスピードである。

 始めにあらすじを考え、途中でポイントとなる話を三つほど想定し、ラストまで一気に書くのが俺のやり方。だからこそ処女作でさえ原稿用紙四百二十八枚分の量を指先一つで、十八日間という短さで書き上げる事ができたのだ。

 周りからは文章がうまくなっていると最近言われている。これはこの六年間でひたすら作品を書き続け、未完成のものを入れると四十作品以上書いた賜物だ。

 他の本を読もうとした時期もあった。でも、読んでいると、無性に自分の作品を書きたくなるのである。元々『新宿クレッシェンド』自体、書きたい事の百分の一も書いていない。だからネタというか、書きたい事なら時間が足りないほどあるのだ。これまで乗り越えてきた経験によって……。

 それに他の作品を読む事で、得られる知識というものに対し、どうも嫌悪感がある自分がいる。他作品をパクるぐらいなら、書かないほうがマシ。それが俺の信条でもある。

 こういったこだわりをまず彼女へ分かってもらう為、メールに気持ちを書いて送った。

『そうそう、何かで書いてあったの拝見しました。例えば他の人の本を読んじゃうと、影響されるのが怖いっていうのもありませんか? 執筆の時間がもったいないというのも分かりますけど……。

 似たようなエピソードを見て、誰かの真似をしたと思われても嫌だとか。でも、人の作品からインスピレーションもらうのも、全然悪くない事だと思うんですよね。いい作品を読んだあとは、自分だったらこうしたい、ああしたいって、百人が百通りの感想がある訳だし。

 正直これだけ本が溢れているので、どんなにオリジナルのつもりでも、大抵のストーリーって出揃っている感があります。探せば自分が考えていた筋にそっくりなのなんていっぱい。でも、それもまた鉄板ネタなんですよね。ネタをいかに自分らしく仕上げるかっていう。

 一番かぶらないのは、正に自伝風小説になる訳ですけど。そういう意味でも龍一さんび経験を活かせる自伝小説っていいと思いますね。私が自伝小説書いたとしても、絶対面白くないもん。波乱万丈あってこそですよね。

 文豪って呼ばれる作家さんってすっごい波乱万丈なんですよね。だからこそ小説書けるんだろうなって、つくづく思います。 詩織』

 彼女のメールを読んでいて、自然と笑みが広がる。うん、これまでの自分の生き方は、間違っていない。時代が、そしてタイミングが悪いだけなのだ。

 波乱万丈な人生……。

 有名な文豪などに、俺のこの三十八年間は負けていない。むしろ小説を書いた事によって、バラバラだった点が一つの線になったぐらいだ。

 鬼畜道を書いていて思ったのが、俺の人生、これを書く為に生まれてきたんじゃないかという点である。これは声を大にして言っても、どうでもいい暇人共が嘲笑するだけだからいちいち言わないが、自分で今、世紀の傑作を書いているという自負だけはあった。

 一日数回の詩織さんとの文学のやり取りをしながら、円滑に執筆を進める日々。とても充実して楽しく感じる自分がいる。こういうやり取りできるような相手をこの六年間ずっと待ち望んでいたのだ、俺は……。

 片や文学というものを真面目に捉え、必死に勉強してきた人間。それに対し、俺の存在そのものは真逆である。このやり取りが、どのような化学反応を起こすのか? 少し実験してみよう。彼女へ今書いている鬼畜道の一部分を抜粋し、メールとして送ってみるのだ。

『ほんの一部なんですが……。

二千十年一月二十二日。

 大会前日……。

 明日は久しぶりの現役復帰だ。今日ぐらいは早めに寝よう……。

 夜の十二時前に、珍しく布団へ横になる。

 その時だった。

 突然部屋のドアが開き、人影が見えた。起き上がり目を凝らすと、その人物は何と親父が昔から付き合っていた三村だった。

「何なんですか、あんたは?」

 他人の家に、しかもこんな深夜入り込み、ノックもせずに人の部屋のドアを開ける傍若無人ぶりに強い嫌悪感を示す。眉間に皺を寄せ、迷惑そうに言った。

「う…。龍ちゃんのお父さんがね…。りゅ、龍ちゃんのお父さんが……」

 いきなり泣き出す三村。本当に勘弁してくれ。心から思った。明日は俺、試合なんだぞ?この馬鹿が……。

 ここ最近三村についてあまりいい噂を聞かない。まあこの人の件でいい噂なんて一度も聞いた事がないが……。

 どうも親父が他の女に夢中になっているようで、三村から逃げているようだ。休みの日、家に夜戻ると、目の前の道路で親父を張っている三村を見掛けた。俺の顔を見ると、「お父さんは?」といつもしつこく聞いてきた。

 俺は、この人間をどうも好きになれないでいる。

 思い出すのが、高校三年生の時の人妻三人襲撃事件だ。

 当時、三村とうちのパートの佐々木茜、そして馬面をした宮橋というおばさんが、親父を巡って醜く言い争うバトルをした。親父は危機感を察知したのか家から逃げ出していた。代わりに高校生の俺が捕まり、人妻たちの醜さを嫌というほど見てきたのだ。

 三村弥生。弥生は三月。三月はマッチ。自分でも「マッチと呼んで」と言っている真性の馬鹿である。その女が夜中、俺の部屋を勝手に開け入ってきた。

「一体、こんな夜中に何なんですか? いい加減にして下さいよ!」

「あ、あのね…。りゅ、龍ちゃんのお父さんがね…。龍ちゃんと同じ年の看護婦と一緒になるんだって…。それでこれからその子を家に連れてくるって…。私…、どうしたらいいの?」

 いい年こいてこのババアは何なのだろう?

「あのさ、三村さん……」

「う、うん…。な、何?」

「俺、明日、総合の試合に出るんすよ? 分かってます? 状況? あんた、こんな時間に勝手に家まで入ってきて一体、何を考えてんですか! ふざけんじゃねえよ! 俺と親父は関係ねえんだよ! 出てけっ!」

 怒りが一気に爆発した。この礼儀知らずに対し、激しい怒りを覚える。

「で、でもね…。お、お父さんが……」

「出てけっ!」

 ウザい三村を追い出すと、苛立つを何とか抑えながら寝転がった。静かに目を閉じていたが、イライラのせいか、なかなか眠れないでいる。

 突然、廊下から、三村の怒鳴り声が聞こえた。

「ちょっと、広龍さん! 何なのよ、その子は!」

 物凄いキンキン声。うるさくて眠るどころではない。

「……。違います」

「まったくあなたは泥棒猫よ!」

「それは……」

「ふざけないでよ!」

 壁一枚を挟み、三村の声だけがハッキリと聞こえる。俺と同じ年の女を親父は、本当に家まで連れてきたのだろうか?

 親とはいえ信じられなかった。その女も女である。廊下は今、物凄い修羅場と化していた。

 五分も経たない内に、弱々しい声が聞こえてくる。

「わ、私…、私、帰ります……」

「そう、さっさと帰りなさい! 一人で帰れるでしょ!」

 三村の冷たい怒鳴り声。親父を巡る女同士の醜い争いは、三村が圧勝したのだ。

 俺と同じ年らしい女も、親父と一緒にこの家まで来たのだ。相当の覚悟があっただろう。しかし三村はその覚悟をものの数分で簡単に打ち砕いたのだ。恐るべし女の執念を垣間見た瞬間だった。

 過去の人妻三人襲撃事件の時も、三村は異様な執念を纏っていた。他の二人に言った台詞を俺は今でも覚えている。

「あなたたちは中途半端なのよ。旦那も子供もいるじゃない」

「私はね、娘二人いるけど、ちゃんとお嫁にも出して、旦那とも別れたのよ。あなたたちは一体何? 中途半端に広さんが好きって、そうやってただ喚いているだけじゃない」

 自分と親父の事だけしか頭にない女。親父を想う執念にかけてだけは、世界で一番なんじゃないだろうか。

 とにかく俺は明日、総合の試合なのだ。師匠が亡くなり辛い思いをしてきたが、それでも挫けずここまで辿り着けたのだ。その前日なのに親父はよくもまあこんな真似をしてくれたものである。苛立ちがどんどん大きくなり、眠気など吹っ飛んでいた。

 とりあえず自分の事だけ考えて寝よう……。

 目を閉じた時だった。

「親父! ほんといい加減にしてくれよ!」

「何を考えてんだよ!」

 弟の龍也と龍彦の怒鳴り声が聞こえてきた。三階にいる二人は、下の騒ぎを聞きつけ降りてきたのだ。

「あなたたちは、もう遅いんだから寝なさい」

 三村のキンキン声が響く。

「るせー! おまえは関係ないんだから、すっこんでろよ!」

 これでしばらく眠れない……。

 目を閉じジッとしているとドアが勢いよく開く。

「兄貴! 兄貴からも親父に何か言ってやれよ!」

 龍也が俺を戦場へ駆り出そうとしていた。明日、試合なのに……。

 もう、我慢していたものが抑えきれない。俺は立ち上がり廊下に出た。

「あ、龍ちゃん。あのね……」

「うっせーんだよっ! どけ、オラッ!」

 話し掛けてくる三村に怒鳴りつけ、部屋の隣にある親父の部屋に向かう。

 ベッドに腰掛ける親父。この騒ぎを巻き起こした元凶なのに、涼しい顔をしていた。入り口にいる龍彦をどかし、親父を睨みつけながら静かに言った。

「おい…。俺が明日、総合の試合だって分かってて、こんな無様な真似を晒してくれたんだよな? もうじき祭りか…。町内のヒーロー気取ってるみたいだからよ…。祭り終わるまで生かしといてやるよ。終わったらおまえ、ぶち殺すからな……」

「……」

 親父は俺の顔を見ているだけで何も言わなかった。その顔から何を考えているのかも分からない。

「そんな殺すとか…。龍ちゃん、あなたね……」

 三村が横から口を挟む。

「うっせーよ、おまえも! 家に勝手に上がり込んでんじゃねえよ!」

 廊下の壁に向かって渾身のパンチをした。派手な音と共に壁に穴が開く。俺の右拳には、木の破片が突き刺さり血が出ていた。

 これ以上、この家にいるとおかしくなる……。

 俺は隣にある『よしむ』に飲みに行った。

※実話ベースだと、こんな風になっちゃうんですよ。『鬼畜道~天使の羽を持つ子~』の一部抜粋なんですが……。 神威龍一』

 詩織さんへこんな文章のメールしておきながら、俺は読み返し笑った。二十九歳の頃の出来事だから、もう十年ぐらい前の話なのだ。あまりにも強烈な件だったので、今でも克明に覚えていた。さて、彼女はどう返してくるだろうか?

 現在三十八歳の俺が唯一この頃を羨ましく思う部分があるとすれば、当時の若さと肉低的な強さを一番誇れたところだろう。時間というものが平等でしかない。そして自分の体は一つしかないというのを痛感させられる。

 何故ならこの頃の俺は、パソコンのパの字も、ピアノのピの字も、小説のしょの字も何もなく、ただ歌舞伎町で金を稼ぎ、何も考えず女を抱き、トレーニングに没頭できたからである。肉体的な強さに一番自信があった頃なのだ。

 ピアノを始め、パソコンを覚え、小説を書き始める事により、その分俺の肉体はどんどん反比例するように衰えていった。二年前に復帰した総合格闘技の試合なんて、この七年半まるで鍛えてこなかったのだから、過去の貯金を使って出たようなものである。

 言い換えれば、筋肉を削りながら、ピアノ、パソコン、そして小説を書くといったスキルを得たようなものだ。

 俺は非常に単純な人間である。一つの事しか集中してできない。だからピアノを弾き始めた頃はそれしかしないし、パソコンもそうだ。小説はパソコンを覚えなかったら絶対に書かなかったから、兄弟みたいなものか。もう執筆する上でもパソコンは生涯手放せないのだろうな……。

 何故ピアノを急に弾いたのか? 思い返せば一人の女の為。発表会までやっても彼女はなびいてくれず、悲しみのあまり小説を書き始めた。俺の進化のプロセスには、必ず異性という存在があるのだ。

 その根底には幼い頃から虐待に遭い、暴力というものに対し、ずっと怯えながら過ごした家庭環境にある。

 小学二年生の冬、何も言わず家から出て行ったお袋。

 家庭というものを省みず、ひたすら欲望のまま遊び、子供たちの教育に何の関心もなかった親父。

 俺ら三兄弟を育てながらも、大きくなった俺をどう考えても憎んでいるんじゃないかと思うぐらい酷い言葉を浴びせるおばさん。

 そして戸籍上だけとはいえ親父の嫁となり、家の中をグチャグチャに引っ掻き回したあの女。

 この四人には相当な憎悪があった。この中で唯一違う点があるとすれば、俺を育ててくれたおばさんだけには、同時に感謝という感情もあるという事だろう。

 憎悪と感謝、この二つの相容れない感情が様々にもつれ合い、時にその比率は大きく変化していく。

 何でこんな人生になったのか? 常にそれを考え、自分の運命を呪う俺がいる。それを振り返る為に『鬼畜道~天使の羽を持つ子~』を今、こうして書いているのだ。物心ついた頃から現在までの記憶をひたすら書き綴る。今日で千五百七十二枚まで執筆。ここ最近一日百枚以上書くようになっていた。歴代最高の執筆速度である。でも、まだ答えは全然出ない。

 そんな時詩織さんからメールが届く。

 さて、何を書いているか? 非常に楽しみだ……。

『これ、実話ですか?

二千十年一月二十三日。

 すっごいお父さんですね…、というかすっごい家庭ですね……。

 三人兄弟なんですか? 父子家庭の?

 何だか……。

 こんな環境で育ったら、結婚に対して夢も希望もないですね、きっと…。そして恩あの人に対しても夢も希望もないんでしょうね。

 世の中すごい人もいるもんですね…。怖いわ。

 さっき、ちょうど『新宿クレッシェンド』読ませていただきました。やっぱりこういった話のほうが合っているんですね。構成も抜群だし、無駄のない感じ。

 一気に読めました。これが処女作なんて信じられません。

 本当、才能が溢れてますね。

 歌舞伎町の一端を見た気がします…。ゲーム喫茶なんて存在も知りませんでしたし。

 一点疑問に思ったのが、泉ちゃんは何で主人公が好きなの?ってところかな。好き好きって出てくる割りに、どんなところが好きで、そんなに一生懸命になっているのかが、全然分からないから頭が悪い女なのかなって思いました。

 普通、職場の上司と一緒に食事しただけで、いきなり上司を殴ったりしたら、警察に電話しますね。そんな人、好きになりません。男らしいとかの問題じゃないよねえ。

 暴力的だけど、こんなにいいところがあるのよってエピソードあったら、もっと良かったかも! …って単純に感想なんですけど。

 男の人が描く女の人って、すごい頭の悪い女が多いですよね。みんなそうなんですけど。女の人はそんな単純な存在じゃないよねって思うんだけど。

 女流作家の書いた恋愛ものと、男性作家の書いた恋愛ものを見ると、男女は永遠に分かり合えないのねって思ってしまいます。 詩織』

 やはり思った通りビックリしているな。俺はメールを読みながらニヤリと口元を釣り上げた。確かに結婚に対して夢も希望もない時期なんて、腐るほどあった。三年前に分かれた百合子との当時を思い出すと、未だ彼女すらいらないぐらいである。

 世の中すごい人もいるか…。ふふ、この三村が実は親父と、将来結婚したなんて事実を知ったら、どう思うんだろうな、彼女は。

 これはまだ、ほんの触りにしか過ぎない事をメールで伝えた。

 クレッシェンドについては絶賛しているのか、けなしているのか訳の分からん内容だな。まあ彼女らしい。高校時代に惚れ、初めてデートをした永田瑞穂。ポニーテールの似合う彼女が泉のモデルだし、現実には高校時代俺がフラれているのだから、どうしてもおかしな女性像になるのはしょうがない事だ。

 でも、詩織さんの文章を見ると、書き方がどうしても上から目線だなというのは否めない。頭が悪い女というが、別にそうは思っていないんだけどな。逆に理屈ばかりで口が達者な女のほうが、俺は頭が悪いなあと思う。素直に男へ甘えられる女のほうが可愛らしいし、こっちも何とかしてやりたいなあと感じるものだ。

 おそらく詩織さんって、あまり恋愛経験なく、ある程度の人数からアプローチはされ、多少はモテてきたのだろう。

 そして順風満帆で、乱れず穏やかで平和な暮らしをずっと今日までしてきたんだな。

 言い方を代えれば、何の刺激もない生活を送っていたという事だ。つまり勉強をして知識はあるけど、現実の人間の痛みをあまり知らない。いや、分からないほうが正しいか。

 確かに男女って、人生における一つの永遠のテーマだ。似た者同士でくっつくケースもあれば、真逆だからこそ惹かれ合う関係もある。

 波乱万丈な俺。そして順風満帆な彼女。まるで表裏逆だ。だからこそ、こう互いのメールのやり取りが面白く感じるのだろう。

 選考委員をしていた経験のある詩織さんには、次に読む候補として、現在執筆中の『鬼畜道~天使の羽を持つ子~』を薦めておいた。

 

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