korou's Column

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チャック・ベリー

2017-03-23 | その他

まだ生きていたのか、と思わずつぶやいてしまったチャック・ベリーの訃報(2017.3.18)。

91才まで生きたロックンローラーなんで未だかつて居なかったし

今後も現れる可能性は極めて低いだろう。

そもそも、そんな長寿は、本来、チャック・ベリーには不似合いなのだが。

 

まずは歴史の再確認から。

チャック・ベリーはロック黎明期の巨人である。

それ以上でもそれ以下でもない。

ところが、最近になって

チャック・ベリーを「ロックの創始者」と呼ぶ人が増えている。

今回の訃報でもそんな見出しが出回った。

 

いや、違うだろう。

ロックンロールはエルヴィスが創始した音楽に決まっている。

そのことを書いていない本、サイトが

近年物凄く多くなってきたので

あえて声を大にしてここに書いておこう。

いくらジョン・レノンがそう叫んだって

「ローリング・ストーン」誌がそう断定したって

音楽史の真実はそれとは違う。

(それにしても

 半世紀前には皆

 エルヴィスがロックンロールの元祖と言っていたのに

 何で皆心変わりしたのだろう。

 集団健忘症か、と毒づきたくなる)

 

ただし、エルヴィスは白人の立場で黒人のソウルを歌った。

その意味で、約30年後に

マイケル・ジャクソンが

改めてエルヴィスの音楽の総復習をする必要があったことは確かだが

1950年代という時代を考えるなら

やはり”「白人がイメージする」黒人のソウル”でなければならなかった。

そうでないと、米国文化を牛耳っていた当時の白人たちには

その真価が伝わらないからだ。

マディ・ウォーターズとレイ・チャールズがいくら頑張っても

白人の大多数の賛辞は得られない。

あれほど優れた音楽でも人種差別の前では無力だった。

エルヴィスがその境目で強烈に立ち上がり

黒人のソウルをカントリーの唱法で歌い上げ

この世にロックンロールというものを誕生させ

その音楽に市民権を与えた。

彼こそ、ロックンロール、ひいてはロック音楽の創始者だ。

つまり現在に続くポップス音楽の創始者だ。

 

だから、チャック・ベリーはある意味幸運な人だった。

エルヴィスとほぼ同時期にデビューして

いきなり全米5位のヒット曲(Maybellene)を出したのは

彼自身の魅力も大きいのだが(エルヴィスのデビューより前なのでその恩恵はない)

その後、ロックの神様のような扱いを受けることになったのは

エルヴィスがその音楽をメジャーなものにしたことが大きく作用している。

 

誰もが、この新しい音楽に注目し

黒人たちは熱狂し、白人の若者たちもそれに続いた。

ただし、白人の大人たちは困惑し、嫌悪し

エルヴィスに対抗するための

もっとソフトな音楽を編み出していく。

その代表が、パット・ブーン、ポール・アンカなどで

同じロック風のリズムでも、随分と大人しく模範生の音楽だった。

エルヴィスが兵役で不在の間は

チャック・ベリー、リトル・リチャードなどのロックンロールと

白人の大人層が好むソフト・ロック(ポップ・ロック)が

拮抗してヒットチャートを賑わすことになる。

その後ポップ・ロックが主流となったのだが

それも束の間、1960年代になって

ビートルズとローリング・ストーンズが華々しく登場する。

そして、どちらのグループのメンバーも

チャック・ベリー信者であることが判明したのだ。

その時点で、すでにロックを止めていたプレスリーは無視された。

その一方で、チャック・ベリーの存在は神格化されていったのである。

 

youtubeで聴くことのできるチャック・ベリーの動画のなかでは

これが秀逸だ。

彼の魅力がストレートに伝わってくる。

ギターでロックを弾くことと、体でロックを感じることが渾然一体となって

もはやチャック・ベリー以外の何者でもない。

チャック・ベリー以外の誰にも真似ができない。
 

Chuck Berry - Johnny B. Goode (Live 1958)  

 

チャック・ベリーは幸運な人だ、と書いたが

もちろん、100%ラッキーだったわけではない。

少なくとも、1960年代前半までの黒人は

生きているというそれだけで不幸だったことも確かだ。

黒人にとって苦難の時代にトップミュージシャンとして音楽シーンに登場し

いわれなき中傷と冤罪に悩まされながら

とにかく91才まで彼は生きたのだ。

多くのロック・ミュージシャンに

その存在だけで希望を与え続けた人生だった。

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