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エスせんブログ

ラノベ好きなB級小学校教師のエスせんが、教育中心に色々語るブログです。少しでも面白ければ「いいね」御願いします。

今、ラノベ界隈で話題の作品とコミックを考える。後編

2024-10-17 04:30:00 | ライトノベル
 木曜はラノベ愛語り。今回は前回(R6.10.10)の続きで、最近(令和6年9月頃)、ラノベ界隈で話題となっている『ツンリゼ』の原作とコミカライズの比較を行います。
 ただ、この先は少しネタバレがあります。ネタバレは一切読みたくない…と言う方は、この先を絶対に読まないでください。

 さて、両者を比較した私の印象は、「物語の展開に極端な乖離はないが、気になる部分が何点かあった」です。
 コミカライズの展開は、概ね原作の展開をなぞっていました。順番が入れ替わっている部分は幾つかありましたが、「乖離」とまでは言えないと思います。正直、私の戦友とも言うべき作品『くまクマ熊ベアー』のコミカライズの方が、物語の展開が大きく乖離していると言えます。
 ただ、先程も述べた通り、気になる部分はあります。それについて語ると、少々ネタバレになるので、それが嫌な方は以下の部分を読まない様にしてください。

※念のための空白

 両者を比較した私の印象は、「物語の展開に極端な乖離はないが、気になる部分が何点かあった」です。そして、その私が気になった部分は、原作とコミカライズで、キャラクターの設定に微妙な違いが発生していた事です。
 最も気になったのが、悪役令嬢リーゼロッテから熱烈に愛されている、婚約者のジーク王子です。作中、リーゼロッテの家に遊びに行く場面があるのですが、原作のジークは「何が何でもリーゼロッテに会いたい!」と言う強い意志で、日程を調整して訪問します。それがコミカライズでは、「リーゼロッテの家に行きたいなぁ」とは思っていますが、全く行動に移そうとしません。親友が説得して、やっと動き出します。
 これ、私的には相当な違和感がありました。この後、リーゼロッテが危機に陥った時、彼女を救うのはジークの強い愛です。原作だと、それがスムーズに伝わってくるのですが、コミカライズの展開だと「…あれっ?」って感じになってしまいます。
 それ程ではありませんが、ヒロインであるフィーネの母親の設定にも、気になる部分がありました。ジークがリーゼロッテの家を訪問している時、勘違いしたフィーネの母親がフィーネを助けるために家へ乱入してくる…と言う基本線は同じですが、細部が違っているのです。
 原作ではリーゼロッテの妹たちが止めようとして、乱闘(?)しながらやってくるのですが、コミカライズでは遙かに凄いレベルで大暴れします。家の周りの城壁を破壊し、リーゼロッテの家臣を魔法で眠らせながらの突撃です。しかも、その魔法は禁呪である闇魔法なのです。しかも、しかも、その闇魔法は使用者を蝕む…な~んて設定までされています。う~ん、そこまで設定する必要があるのでしょうか。何だか、母一人で子育てしてきた苦労を強調するためだけの設定の様な…。
 『ツンリゼ』は1巻分の原作が4巻分になっているので、相当に内容を膨らませる必要があるのだと思います。おそらく、私が気になるキャラクターの設定の違いも、その辺りが大きな理由ではないかと考えられます。
 コミカライズで内容を膨らませている点では、名作『悪役令嬢の中の人』も同じです。こちらも1冊分の原作で、既に4冊発行されており、おそらく今後も2~3冊は発行されそうな勢いです。当然、非常に大きく膨らませなくてはなりません。
 しかし、こちらのコミカライズでは、気になる部分はほとんどありません。これは、元々キャラクターの設定などが少ないか、全くないので、コミカライズで膨らまされていても気にならないからだと思います。
 そう考えると、ある程度キャラクターの設定を行っていた『ツンリゼ』は、コミカライズで話を膨らませるには不利…と言っても良いかもしれません。
 以上、『ツンリゼ』の前作とコミカライズの乖離について比較検討してきました…が、私的には両方とも面白く読んでいます。コミカライズで気になる点はありますが、読み進められない程ではありません。
 それだけに、コミカライズの打ち切り&原作の休載は残念でなりません。
 …と言う事で、この最終段落まで読んでくださった皆様、本当にありがとうございます。今日または明日、皆様が良い一日を過ごせるよう願ってます。
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今、ラノベ界隈で話題の作品とコミックを考える。前編

2024-10-10 04:30:00 | ライトノベル
 木曜はラノベ愛語り。今回は、最近(令和6年9月頃)、ラノベ界隈で話題となっている作品と、そのコミカライズについて語ります。
 今回取り上げる作品は、『ツンデレ悪役令嬢リーゼロッテと実況の遠藤くんと解説の小林さん』です。いや~、ラノベらしい長い題名ですねぇ。長すぎるのでラノベ界隈では、「ツンリゼ」と省略されている様です。この記事でも、『ツンリゼ』と表記させていただきます。
 さて、この『ツンリゼ』、何でラノベ界隈で話題かと言うと、原作者とマンガ編集部とのトラブルが原因で、コミカライズが連載終了(つまり打ち切り)になってしまったからです。詳細については、以下のURLで見られる…と思います。

https://mainichi.jp/articles/20240911/spp/sp0/006/278000c

 この記事では事件そのものを論じるつもりはありませんが、編集部の謝罪文の中で「コミカライズと原作との乖離に対して監修時にたびたび長期にわたる交渉が必要となったこと」ありました。そこで、原作とコミカライズを比較し、読者の立場で気になる乖離があったかどうかを語りたいと思います。
 念のために書きますが、これは原作者や漫画家を責める記事ではありません。あくまでも読者の目線で考えて、読者として気になる乖離があったのか…を語る記事です。また、仮に読者として気になる乖離があったとしても、その事で原作者や漫画家を責める意図はありません。一読者の受けた印象を紹介したいだけです。
 なお、私はコミカライズから入り、最近になって原作を読み始めました。そのため、原作の1巻目と、そのコミカライズ1~4巻のみ取り上げさせていただきます。
 さて、両者を比較した私の印象は、「物語の展開に極端な乖離はないが、気になる部分が何点かあった」です。
 コミカライズの展開は、概ね原作の展開をなぞっていました。順番が入れ替わっている部分は幾つかありましたが、「乖離」とまでは言えないと思います。正直、私の戦友とも言うべき作品『くまクマ熊ベアー』のコミカライズの方が、物語の展開が大きく乖離していると言えます。
 ただ、先程も述べた通り、気になる部分はあります。それについて語ると、少々ネタバレになるので、ここで記事を一度終わります。続きは次回としますが、ネタバレが嫌な方は読まない様にしてください。
 …と言う事で、この最終段落まで読んでくださった皆様、本当にありがとうございます。今日または明日、皆様が良い一日を過ごせるよう願ってます。
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実に潔い『悪役令嬢の中の人2』

2024-10-03 04:30:00 | ライトノベル
 木曜はラノベ愛語り。今回は、以前紹介した作品の続編を紹介します。
 今回紹介するのは、まきぶろ先生の『悪役令嬢の中の人2』です。もちろん、以前紹介した『悪役令嬢の中の人』の2巻目です。
 それで、この2巻目なのですが…はっきり言って1巻目、いえ、1巻目の中心になっている物語を読んでいる事が前提となっている短編集です。
 1巻目では、中心となっている物語「悪役令嬢の中の人」と言う題名の中編(以下、「本編」と呼びます)が全体の半分位を占めていました。そして残りの頁は、本編のスピンオフ作品とでも言うべき短編が幾つも載っていました。
 この2巻目は、それら本編のスピンオフ作品で、まるっとまるまる本全体が占められています。本編では詳述されなかった冒険を描く短編あり、特定の登場人物による本編では省略されていた活躍の短編あり、特定の登場人物に焦点を当てた本編の後日談ありで、実に様々な種類のスピンオフ作品を楽しむ事が出来ます。
 「2(ツー)物に名作なし」…と言う言葉があるかどうかは知りませんが、一般的に2(ツー)物は1作目と比較され、評価が下がる傾向が強いです。それは、1作目の物語を活かしつつ2作目を展開しなくてはならないと言う、大きな制約があるからです。
 しかし、この『悪役令嬢の中の人2』では、本の中の全てをスピンオフ作品だけで構成した事で、2(ツー)物の抱える大きな制約を捨て去る事が出来ました。これは、本だから簡単に出来たわけで、映画だったらほぼ不可能だったでしょう。
 もちろん、スピンオフ作品だけで構成されているって事は、1巻目…いえ、少なくとも本編を読み終えている事が前提となります。だから、本編を読んでない人にとって『悪役令嬢の中の人2』は、ほとんど読む価値の無い本と言えるでしょう。こちらから読み始めたら、何が何だか分からないでしょうから。
 私個人としては、ここまで思い切った構成をしている事は、いっそ潔くて清々しい気持ちになります。こう言うマニアックな傾向の本も、あって良い…私は、そう思います。
 …と言う事で、この最終段落まで読んでくださった皆様、本当にありがとうございます。今日または明日、皆様が良い一日を過ごせるよう願ってます。

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現実感のある戦闘にハマる『ゴブリンスレイヤー2』後編

2024-09-26 04:30:00 | ライトノベル
 木曜はラノベ愛語り。今回は前回(R6.9.19)の続きで、『ゴブリンスレイヤー2』について語ります。
 この作品の大きな魅力が、現実感の強い戦闘の描写にある…と前回の記事で書きました。知恵を使い、工夫して勝利を引き寄せる辺りが、戦闘描写として現実感を感じさせます。そして、それは作者の蝸牛くも先生が、元々テーブル・ロール・プレイング・ゲーム(以下、「TRPG」と略します)をなさっていた方だから…と書きました。
 TRPGとは、参加者が自分の好きな役(「剣士」とか「泥棒」とか「魔法使い」とか…)になり、司会役が語る物語に対応して冒険するゲームです。役をイメージさせるカードや簡単な地図などは使われる事がありますが、基本は司会役と参加者とが会話しながら進めていく、かなり想像力を必要とするゲームです。
 TRPGを行った経験…残念ながら、ほとんど私はありません。
 ただ、TRPGをモデルに作られたボードゲームは、「死の迷宮」や「剣と魔法の国」(どちらもホビージャパン社さんから発売されていた時の邦題)など何種類か経験しています。特に「死の迷宮」は大好きで、高校時代には友達と頻繁に行っていました。
 それで、この手のゲームは何度も遊んでもらうため、ゲームのバランスが絶妙な感じで調整されています。バランスを崩すようなチートな能力や魔法は、ほぼゲームには登場しません。ですから、魔物と戦闘するのは大変です。作戦を立て、知恵と工夫を尽くして戦わなくては、魔物を1匹倒す間に仲間が2人くらい死んでしまいます。ゲームをしていると、冒険と死は隣り合わせと感じます。
 これらのゲームのモデルがTRPGです。当然、ゲームにおけるバランスは同じ様なものでしょう。そして、そう言うゲームをモデルにして戦闘場面を描いているのが、ここで紹介している「ゴブリンスレイヤー2」な訳です。現実感を感じさせるのは、ある意味、当然と言っても良いかもしれません。
 ライトノベル的な気軽さは「やや低め」ですが、手に汗握る展開を楽しみたい方にはオススメの作品です。 
 …と言う事で、この最終段落まで読んでくださった皆様、本当にありがとうございます。今日または明日、皆様が良い一日を過ごせるよう願ってます。
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現実感のある戦闘にハマる『ゴブリンスレイヤー2』前編

2024-09-19 04:30:00 | ライトノベル
 木曜はラノベ愛語り。今回は、かなり前(R5.12.21)記事にした『ゴブリンスレイヤー』の2作目について語ります。
 魔法が存在し、魔物が跋扈する世界。最も弱い魔物であるゴブリンを専門に倒し続け、上位の冒険者となった男…通称「ゴブリンスレイヤー」。彼と、彼を放ってはおけない仲間たちは、とある街に出没するゴブリン退治の依頼を受けるが…から展開する物語。
 1作目は、幾つかの物語が組み合わさって、「ゴブリンスレイヤー」と呼ばれる男が何者なのかを明らかにしていく物語でした。それに対し2作目の本作は、大きな1つの物語を通して、ブレない男「ゴブリンスレイヤー」の活躍を描きます。
 この作品の大きな魅力が、現実感の強い戦闘の描写です。
 前回の記事でも書きましたが、本作には、ライトノベルには珍しくチートが存在しません。魔法の障壁や治癒魔法は強力ですが、それでも他のライトノベルに比べれば、効果としては僅かとしか言えないでしょう。
 だから、ゴブリンとの戦闘で危機に陥ったとしても、チートな魔法などで切り抜ける事は出来ません。知恵を使い、工夫して勝利を引き寄せるしかないのです。この辺りが、戦闘描写として現実感を感じさせる訳です。
 これは何故だろうと思っていたら、「あとがき」を読んで分かりました。作者の蝸牛くも先生は、元々テーブル・ロール・プレイング・ゲーム(以下、「TRPG」と略します)をなさっていた方なのです。
 う~ん、ここからTRPGについて語ると長くなりそうです。大変もうしわけありませんが、続きは次回と言う事で。

 ところで、令和6年9月16日と17日の記事に、「いいね」などを沢山いただきました。いつも、本当にありがとうございます。さあ、これを励みにまた頑張るぞ~。
 …と言う事で、この最終段落まで読んでくださった皆様、本当にありがとうございます。今日または明日、皆様が良い一日を過ごせるよう願ってます。
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気軽に読め、多方向から物事を見る感覚を養える(かも)『実はすごかった!? 嫌われ偉人伝』

2024-09-12 04:30:00 | ライトノベル
 木曜はラノベ愛語り…何ですが、最近、ラノベじゃない本なども紹介しています。今回もラノベではなく、私の推し作家の一人である真山知幸先生の『実はすごかった!? 嫌われ偉人伝』を紹介します。
 この本では、世間的には人気が無い…と言うか、どちらかと言えば嫌われている歴史上の人物を、蘇我入鹿から松永安左エ門までの25人紹介しています。コラム欄もあり、そちらで取り上げられている人が7人なので、全て合計すると32人となります。
 真山先生の本は、どれも読みやすく書かれています。この本も同様で、さくさく読めるので、速読系の方なら1時間くらいで読み終えてしまうでしょう。
 また、自分の興味のある人物だけパッと読んで終わる…と言う読み方も出来ます。これなら5分間もあれば、まず間違いなく読み終わります。隙間時間の活用にもピッタリではないかと思います。
 ところで、この本の最大の「良さ」は、「多方向から物事を見る感覚を養う」事に役立ちそうだ…と言う点です。
 例えば、平清盛と言えば、『平家物語』の影響が大きいため、「我が儘な独裁者」と思われがちです。NHK大河ドラマ「平清盛」は、もう少し多面的に描いていましたが、それ以外の大河ドラマでは概ねロクな描かれ方をしていません。
 それが、この本によると、平清盛はアイディアマンだし、自分から積極的に戦をしてはいないし、部下に対しても優しく接していた…と言うのです。例えば部下との関わりであれば、「空気の読めない発言があっても《冗談で言ったのだろう》としかることはなかった」…と書いてあります。これが本当なら、マジで優しい上司じゃないですか。「ドブ泥な下衆校長」から痛い目に遭わされた私としては、この点だけで、平清盛の評価が爆上がりです。
 他の人物についても、この様な感じで「意外な一面」が紹介されていきます。その「意外な一面」は、これまでの資料に不備があると分かったり、最新の研究で判明したりして、明らかになってきた様です。読んでいると、かなり「目から鱗」なのではないでしょうか。
 そうやって様々な人物について読み進めていくと、その人物についての一般的な評価は、あくまでも「ある面からの見方」に過ぎなかったと分かってきます。別な面から見れば、その人物の別な姿が見えてくる訳です。
 これが、「多方向から物事を見る感覚を養う」事に役立つんじゃないかな…そう、私は思っています。
 令和6年8月に発売されたばかりなので、もしかすると近所の本屋にもあるかもしれません。本屋へ行ったら、ちらっと見てみては如何ですか。
 …と言う事で、この最終段落まで読んでくださった皆様、本当にありがとうございます。今日または明日、皆様が良い一日を過ごせるよう願ってます。
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王道時代劇+αの面白さ『幕府密命弁財船・疾渡丸』

2024-09-05 04:30:34 | ライトノベル
 木曜はラノベ愛語り…なのですが、今回は(今回も)ラノベではありません。時代小説を紹介します。
 今回紹介する作品は、早川隆先生の『幕府密命弁財船・疾渡丸(一)』です。中公文庫から令和6年8月20日に発売となりました。

子供と大人を主役に据えた漫遊物
 物語は、物品・金銭・人物・情報が集まる各地の湊(ミナト)へ向かい、天下太平を乱す動きを封じる密命を受けた疾渡丸(ハヤトマル)の乗組員達が活躍する…と言う内容です。各地を旅して悪を討つと言えば、「水戸黄門」などと同じ展開な訳で、時代劇の王道パターン「漫遊物」の仲間と言って良いと思います。まぁ、気ままに旅している訳ではなさそうなので、純然たる「漫遊」とは言えないかもしれませんが…。
 この手の作品らしく、本作の登場人物は個性的で魅力的です。それぞれが各地の湊で活躍するのでしょうが、1巻目に掲載されている2つの物語、「那珂湊・船出の刻(トキ)」と「銚子湊・巾着切(キンチャクギリ)」を読む限り、主人公は2名のようです。
 1人目は船頭(船長)の虎之介。経験豊富で船を操る腕が良く、なかなか情に厚い感じの人です。船に乗っている幕府の隠密・仁平とも親しく、互いに信頼し合っている様に感じられます。
 もう1人は、ひょんな事から疾渡丸の炊(カシキ)として雇われた鉄兵。父親を海で亡くし、母が寺に預けた結果、那珂湊(ナカミナト)で暮らす孤児となった少年です。観察眼が鋭く、頭が良く回り、度胸もあります。
 この2名を主人公と考えたのは、物語の中で両名それぞれに、心を動かす出会いがあったからです。この2名以外の登場人物も、色々と出会いがありますが、2つの物語の両方で出会いがあったと言う点で、本作(第1巻)では、この2名が主人公と私は考えます。
 因みに、主人公の定義は色々とあるのですが、今回採用した定義は、昔々に受けた研修会で教わった「作品の中で心情に変化が発生した登場人物」を基にして考えています。この考え方ですと、『ごんぎつね』の主人公は「ごん」ですし、『大造じいさんとがん』の主人公は「大造じいさん」となる訳です。
 片方の主人公に少年である鉄兵を配置した事により、この物語は単なる「漫遊物」ではなく、少年の成長物語の要素も含んできます。「江戸時代が舞台で湊から湊への旅」と「未来が舞台で駅から駅への旅」と言う違いはありますが、大枠で考えると『銀河鉄道999(スリーナイン)(以下、999と略記)』に似ているかもしれません。

子供時代と決別し少年は旅立つ「那珂湊・船出の刻(トキ)」
 第1巻の第1話と言う事で、この物語は疾渡丸が完成し、船出するまでの物語です。
 ここでは、鉄兵と疾渡丸の乗組員たちが出会う話と、虎之介と父親が再会する話が、縦糸と横糸の様に物語を紡いでいきます。この2つの話、何の関連もなく進んで行くのですが、最後のクライマックスである船出の場面で重なり合ってきます。
 ネタバレになるので、これ以上は書けません。気になる方は、是非とも本作を読んでみてください。
 鉄兵だけに絞って書くと、疾渡丸で船出すると言う事は、これまで一緒に生活していた孤児仲間との別れを意味しています。それは同時に、他者の力に頼って生きてきた子供時代と決別し、自分の力で生きていく事を選択した事も意味しています。
 本作では、その選択と決断に相応しい、門出を祝う…いや、門出を応援する様な場面が展開されます。その場面で重要な要素に「波」と「しぶき」があるのですが、それを読んでいて私は、「銀河漂流バイファム(以下、バイファムと略記)」の最終回を思い出してしまいました。
 バイファムでは、地球に戻る子供たちと、異星人の星に行って両親の探す子供たちが、それぞれの宇宙船に乗って別れます。その際、地球に戻る子供たちの宇宙船から、大量の紙ヒコーキが発射されます。賛否両論でしたが、異星に向けて旅立つ仲間に向けた応援のメッセージとして、無数の紙ヒコーキが宇宙空間を飛んでいく場面…最高に感動的だったと思います。
 話を「那珂湊・船出の刻」に戻します。疾渡丸が船出する際の波、その後のしぶき…それらが、私の中でバイファムの紙ヒコーキと重なってしまいました。
 どちらも子供時代と決別して旅立つ場面であり、その門出を応援するかの様に船の周りに広がっています。紙ヒコーキも、しぶきも。何と美しく、何と優しい場面なのか…いい歳をした「おじさん」ですが、ぐっと来て目頭が熱くなってしまいました(でもって、読んでいる頭の中には、バイファムの紙ヒコーキ場面で流れていた「君はス・テ・キ」が流れている…笑)。
 もう、この第1話だけでハート鷲摑みです。

子供の出会い・大人の再会「銚子湊・巾着切(キンチャクギリ)」
 続く第2話は、急いで船出したため準備不足だった疾渡丸が、銚子湊に寄港した事で事件に巻き込まれる…と言う話です。
 この第2話では主人公の2名に、それぞれ出会いがあります。鉄兵は巾着切、つまりスリの少年と出会い、虎之介は旧友と再会します。
 この2つの出会いは、最初は別々の話として進みますが、後半になると少しずつ絡み合ってきます。ネタバレになるので、これ以上の詳述は避け、また鉄兵に絞って書きます。
 巾着切と鉄兵の出会いの場面、ここは追跡アクション場面となっています。そこを読んでいくと、鉄兵の観察眼の鋭さや頭の回転の良さが、読者にも伝わってきます。また、巾着切を捕まえた後の鉄兵の態度は、彼が他者への敬意を持ち合わせている、なかなか立派な性格の少年だと感じさせます。
 そんな鉄兵と巾着切の間に、ある種の友情が生まれてくるのは自然な感じで、無理のない展開だと私は思いました。だから事件が片付いた後、銚子湊から出て行く疾渡丸の鉄兵に向け、巾着切が飛び跳ねて何かを伝えようとしている場面、これも自然で微笑ましいと感じました。
 そして、ここで私の頭に思い浮かんだのが999です。
 訪れた星々で様々な出会いがあり、事件があり、それらを通して成長する主人公の星野鉄郎…ん? 鉄郎? 疾渡丸に乗ってるのは鉄兵。似ている…もしかして、作者の早川先生も意識して命名したのでは?
 単なる「おじさん」の思い込みかもしれませんが、「江戸時代が舞台で湊から湊への旅」と「未来が舞台で駅から駅への旅」は、かなり意識されているのかもしれません。そんな事を考えると、第2巻以降の展開が非常に気になる作品です。
 …と言う事で、この最終段落まで読んでくださった皆様、本当にありがとうございます。今日または明日、皆様が良い一日を過ごせるよう願ってます。
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本ではないけど感想を

2024-08-29 04:30:00 | ライトノベル
 木曜はラノベ愛語り。今回は、私の推し作家さんの作品…ですが、まだ出版されていません。ネット上で公開されている作品の感想です。しかもラノベじゃないのですが…。
 紹介するのは、笹目いく子先生の『雷風~独り剣客 山辺久弥 おやこ見習い帳番外編』です。本編については、以前(R6.6.6)紹介済みです。その番外編が、アルファポリスさんで公開されていて、読むだけならアカウント無しでも大丈夫なので拝読してきた…と言う訳です。
 主人公・久弥の兄として本編に登場した宗靖(ファンの間では「宗靖兄さん」と、愛情込めて呼ばれています)を主人公にしたスピンオフ作品。本編の前日譚で、宗靖兄さんが本国に戻っていた理由などが分かる話となっています。
 この作品、現代らしい経緯で生まれた作品…ではないかと私は思っています。
 私が若い頃、作家さんに自分の気持ちを伝えたいと思ったら、ファンレターを書くしか方法はありませんでした。もちろん、そのファンレターに返事が来るなんて、余程の幸運でなければ有り得ない出来事です。
 それが今、SNSを使えば、簡単に自分の気持ちを作家さんに伝える事が出来ます。しかも、割と気軽に作家さんからの返事がいただけます。実際、笹目いく子先生に対し、私はnoteと言うSNSで感想を伝え、笹目先生から御返事をいただいています。昔では全く考えられない事です。
 そして、『独り剣客 山辺久弥 おやこ見習い帳』本編では、noteでファンの皆さん(もちろん私も)が次々と感想を伝え、笹目先生から御返事をいただき、それを読んだ他のファンが更に盛り上がる…と言う素敵な流れが生まれました。その流れの中で発生したのが、「宗靖兄さんのスピンオフ作品が読みたい」と言うファンからの希望です。
 そして、それが現実となった訳です。
 もちろん、笹目先生の心の中に「スピンオフ作品を書きたい」と言う気持ちがあったから、この作品が生まれたのでしょう。
 ただ、その気持ちを強く後押しし、実現に繋げたのは笹目先生とファンとの交流だったと思うのです。そう言う意味で、この作品は現代らしい経緯で生まれた…と、私は思う訳です。
 実に幸せな時代に生きている…そうは思いませんか。

 ところで、令和6年8月28日の記事に、「いいね」などをいただきました。どうも、ありがとうございます。今週後半も頑張ります!
 …と言う事で、この最終段落まで読んでくださった皆様、本当にありがとうございます。今日または明日、皆様が良い一日を過ごせるよう願ってます。
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工夫が色々『引きこもり箱入令嬢の結婚』

2024-08-22 04:30:00 | ライトノベル
 木曜はラノベ愛。今回は、前回(R6.8.15)に続いて箱入令嬢シリーズを紹介します。
 今回紹介するのは、北乃ゆうひ先生の『引きこもり箱入令嬢の結婚』です。前回紹介した『引きこもり箱入令嬢の婚約』に続いて、箱入令嬢シリーズ第2弾となります…が、これで最終巻となりますので、前後編の後編と考えた方が良いかもしれません。
 前作でサイフォン王子の婚約者となった箱入令嬢モカ。「箱入り娘が、物理的な意味で本当に箱入りだったら…」と言う発想から生まれた作品なので、本作でも相変わらず箱から出る事は出来ません。そこへ次から次へと厄介事が発生し…果たして、箱入令嬢モカは無事に王子と結婚する事が出来るのでしょうか…ってのが内容です。
 前作は、「箱入り娘が、本当に箱の中で生活している~www」と言う面白さがあったので、その勢いだけでも読み進める事が出来ました。
 続編となる本作では、その勢いだけでは読み進めるには弱いです…が御安心。本作では、「主人公は箱の中から出られないから、外の世界に働きかけるには大きな制約がある」を覆し、箱入令嬢モカが大活躍する姿を楽しむ事が出来ます。つまり、箱入令嬢の活躍を「深掘り」した作品になっている訳です。
 実際、物語の展開される場所は、王宮と自宅と箱でほとんど終わらせていた前作。それが本作になると、街の中や貴族の館、森などでも物語が展開します。箱から出られない箱入令嬢モカが、どうやって活躍するのか…それが、前作から読んでいると分かる、実にスムーズな流れで展開していくのです。
 それと関連するのですが、本作では、一人称で語られている作品で感じる不満…と言うか、ストレス…と言うか、ちょっとした問題点を解消する事に成功しています。
 例えば、名作『本好きの下克上』も一人称です。そのため、主人公ローゼマインが見聞きできる範囲の事しか分かりません。様々な場所で展開している話(例えば、あちこちで行われている戦闘場面)を描くためには、様々な語り手に語らせるしかないため、短編を幾つも用意する必要があります。
 それが本作では、箱入令嬢モカの魔法の力により、語り手であるモカが不在の場所であっても、どんな出来事が展開しているかを読者は知る事が出来ます。もちろん、それは語り手であるモカが見たり聞いたりしているからなのですが、これにより読者は、あちこちの短編を読んで自分の頭で合成しなくても、物語の全体構造を理解しながら読み進める事が出来る訳です。
 内容自体は甘~い恋愛物語ですが、アクション場面も少しあり、楽しめる娯楽作となっています。コミカライズはシリーズ2冊分をまとめて展開しているので、そちらを読むのもオススメです。
 …と言う事で、この最終段落まで読んでくださった皆様、本当にありがとうございます。今日または明日、皆様が良い一日を過ごせるよう願ってます。

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発想の広げ方が秀逸な『ひきこもり【箱入令嬢】の婚約』

2024-08-15 04:30:00 | ライトノベル
 木曜はラノベ愛語り。今回は正に、「愛」の物語を紹介します。
 今回紹介するのは、北乃ゆうひ先生の『ひきこもり【箱入令嬢】の婚約』と言う作品です。
 この作品、ひきこもりの御令嬢が王子様の愛を勝ち取って、婚約者になるまでの物語…って、「そんなの普通の恋愛物語じゃん! どこがラノベなの?」って思いますよね。普通。
 ところがギッチョン、この御令嬢は只の「箱入令嬢」じゃない。
 本当に、物理的な意味で「箱入り」の御令嬢なのです。
 物語のオープニング、王子様のパーティ会場に木製と思われる木箱が置いてある場面から始まります。「何で、こんな場所に木箱が…」と皆が思い、やってきた王子様も思うのですが、その木箱が喋ったから、さあ大変! 箱魔法と言う、かなりヘンテコな魔法の力で、箱中ひきこもり生活をしている主人公モカと、王子様の恋愛物語が始まります。
 このラノベ、かなり真面目な恋愛物語なのです…が、主人公のモカが箱中ひきこもり生活をしていると言う設定のため、色々とシュールな情景が展開されます。
 例えば、王子とモカがバルコニーに出てくる場面。ひきこもり令嬢のモカは当然、箱の中から顔を出しません。その代わり、空中に浮かんだ箱の横から女性の腕が出てきて、その腕を引いて王子はバルコニーに出てくるのです。女性の腕の生えた、空中に浮かぶ木箱をエスコートする王子…大笑いとまではいきませんが、結構くすくす笑っちゃうと思いませんか。
 こんなシュールな情景が度々出てくるので、くすくす笑いながら読んでしまう作品でした。
 作者の北乃ゆうひ先生は、「箱入り娘が本当に箱に入っていたら…面白いんじゃね」と考えて作品にした様ですが、見事、大成功だと思います。その、ちょっとした思い付きから発想を広げ、これだけ面白いラノベにしてしまったのですから。
 この作品、コミカライズもされていて、コミックもラノベも同じくらい面白いです。

 ところで、令和6年8月9日のブログに「いいね」などをいただきました。気付くのが遅くなり申し訳ありません。そして、とても嬉しいです。どうも、ありがとうございました。
 …と言う事で、この最終段落まで読んでくださった皆様、本当にありがとうございます。今日または明日、皆様が良い一日を過ごせるよう願ってます。
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