展示即売会の風景

「どうですか、このいかにも小回りが利きそうな感じは？」
「う～ん……」
「じゃあ、これなんかはどうですか？　ガタイはでかいですけどね、なかなか繊細ですよ」
「そうですか……」
「お客さん、じゃあ、とっておきのをお見せしますんで、これで決めましょうよ」
「じゃあ、取りあえず見せてください」
「これを見たら、いやでも決めたくなりますよ……　どうです、この磨き上げられたボディ！　これは自慢できますよ」
「ほう、良いですねぇ……　スタイルが良い」
「ね？　良いでしょう？　これに決めませんか？」
「じゃあ、これにしましょうか」
「まいど、ありがとうございます！」

　買いに来た客の自動車は若い美人な女性を運転席に置いて、機嫌よく走って行った。

　自動車が自我を持ち、地球に君臨した未来、そこでは、自動車がアクセサリーとして人間のドライバーを乗せるのが流行っていた。
　
　これは、そんな需要を満たす「ドライバー展示即売会」で良く見かける光景の一つ。