お話

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変わった人

2022年05月19日 | Weblog
 知り合いに一人や二人、「変わった人」がいるだろう。「変人」と言うのではなく、ちょっとした事が「変わっっている人」の事なのだが。
 わたしの知り合いの後田と言う男は、わたしからすれば「変わった人」なのだ。
 後田の名誉のために言っておくが、彼は、名の知られた会社に勤め、そこそこの役職に付き、良き夫で三人の子供の父親だ。誰もが彼を「立派な人」と言うだろう。わたしもそう言う。
 しかし、ある事だけが「変わっている人」なのだ。それ以外は文句のつけようがない。
 それとは、食事の仕方だ。
 後田は、汁物を一番最初に平らげる。それは和洋中、どれであっても同じだった。
「他の食べ物と共になんて無理だ。汁とそれらが口の中で混ざるんだぞ? 想像してみろよ。ぐちゃぐちゃのべちゃべちゃになった得体のしれないものが口の中で作られるんだぞ? それを飲み込むなんて、どう考えたって狂気の沙汰だろうが」
 と、これが後田の言い分だ。そのくせ、汁に入っている具に関しては意識をしていない。それがたとえぐちゃぐちゃのべちゃべちゃに見えたとしても、だ。
「汁の具は汁の具だろう? 他の食べ物とは違う」
 後田の理屈は、わたしには分からない。
 そもそも、汁を最初に平らげると言うのがおかしい。
 汁は食後に、平らげるべきだと、わたしは思う。いや、確信している。
 胃袋の中で細々となった食べ物に汁を注ぎ込み、ぐちゃぐちゃのべちゃべちゃにしてこそ、美味いのだから……

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