横浜駅の中央通路は、帰宅を急ぐ人々の波でいつものようにいっぱいだった。
京急の改札口に向かって突進していく。前方、通路中央の柱の前に、白いYシャツ、黒いスーツ姿の外国人の男性が、両方の手を後ろにまわし、仁王立ちのように立っている。20代後半くらいだろうか。短い髪、黒ぶちの細いメガネをかけ、じっと前方(つまり私の方)を見ている。
「なっ、なんなの…?」こういうご時勢なので、想像力のベクトルが、ついつい恐ろしい方向へ向かってしまう。通り過ぎるとき、チラッと彼のほうへ目をやる。
「あらっ!」
後ろに回したその両手に、小さな黄色い花の花束が握られていたのだ。デートの待ち合わせだろうか。緊張して彼女を待っているのだろうか。思わず「フフッ」と笑みが浮かんでしまった。
そのきりりと引き締まった顔の表情からは想像がつかない小さな花束。
人波の中で、そこだけ切り取っておきたいようなシーンだった。
京急の改札口に向かって突進していく。前方、通路中央の柱の前に、白いYシャツ、黒いスーツ姿の外国人の男性が、両方の手を後ろにまわし、仁王立ちのように立っている。20代後半くらいだろうか。短い髪、黒ぶちの細いメガネをかけ、じっと前方(つまり私の方)を見ている。
「なっ、なんなの…?」こういうご時勢なので、想像力のベクトルが、ついつい恐ろしい方向へ向かってしまう。通り過ぎるとき、チラッと彼のほうへ目をやる。
「あらっ!」
後ろに回したその両手に、小さな黄色い花の花束が握られていたのだ。デートの待ち合わせだろうか。緊張して彼女を待っているのだろうか。思わず「フフッ」と笑みが浮かんでしまった。
そのきりりと引き締まった顔の表情からは想像がつかない小さな花束。
人波の中で、そこだけ切り取っておきたいようなシーンだった。