集中治療専門医への道

集中治療専門医になるべく日々修行の身である若手の医師のつぶやきや情報

脳梗塞治療薬 ~エダラボン編~

2013年09月17日 | 日記

ようやく帰って来ました!

東京を15時に出て、23時過ぎに到着。今回は都内である会合で講義をする機会があり、その内容を一部皆さんに開示します。

 

テーマ「脳梗塞治療薬 ~エダラボン編~」

 先日JSEPTICのアンケートでneuro ICUについて集計したところ、脳梗塞治療薬としてエダラボンは実に80%の人が使用しているという結果でした。(詳細結果はアンケートを参照ください)

 私自身、研修医との時に何度か使用していたものの、そのエビデンスは?と問われると日本のガイドラインで「グレードB」として記載されているとしか知らなかったので、その販売の経緯についてまとめてみました。

エダラボン:1978年に脳の虚血によって生じる脳への障害の中でフリーラジカルが関与する障害が提唱され、それによるとフリーラジカルによって神経細胞や血管を障害し、脳浮腫や神経細胞死を引き起こすとされています。その後エダラボンは1980年代後半に脳梗塞のマウスモデルでフリーラジカルの産生を抑えることで抗脳浮腫作用や神経細胞死を抑制することが示された薬剤で、2001年に販売に至った薬剤です。

効果を示す論文は2つあります。

1つ目:2003年に発表された第Ⅲ相臨床試験

患者: 発症後72時間以内でJCS30以下の脳梗塞(脳塞栓症及び脳血栓症)の患者

介入/比較:エダラボン vs プラセボ

結果:最終観察時のmodified rankin scale

→mRSを用いた機能評価を両群間の差を用いて検定するウィルコクソン検定の結果で解析をするとエダラボンを使用する方がプラセボ群より機能評価の改善度は有意差を持って高いという結果でした。24時間以内に絞ったサブグループ解析ではその傾向がより顕著だという事でした。

2つ目:2009年に発表されたEDO試験(Edaravone vs Ozagrelの頭文字をとった試験で非劣性試験)

患者: 発症24時間以内のJCS3以下であった脳梗塞患者

介入/比較:エダラボン vs オザグレル

結果: 最終観察時におけるmRSおよびNIHSSの改善度

→予め先の試験で設定される効果を範囲を示す非劣性の基準値(f値と呼ばれるもの)を上回る結果が得られ、エダラボンはオザグレルに劣らないとの結果でした。

上記2つともの試験でアスピリンの使用が無い点、評価対象が主観的評価であるという点、など問題もありますが、ある程度効果があるという報告でした。

一方アメリカでは、SAINT ⅠとSAINT Ⅱ試験というエダラボンと同効薬でRCTが組まれたのですが(サンプルサイズも3200例と圧倒的に日本よりでかい!)、結果、予後や神経学的評価についてプラセボと有意差なしという結果でした。AHAやACCP、更にはESO(European Stroke Organization)、といった欧米のガイドラインには現在のところ一切触れられていないというのが現状です。

ただ、t-PAとの併用で出血性梗塞が減ると言った報告もあるので、使用頻度の高い本邦で質の高いRCTを立ち上げる事が出来れば!とも思います。

みなさんの施設でも使用している方が多い薬剤だとは思うので、各施設でどういう感じで使用しているのかまた教えてください。