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新月のサソリ

空想・幻想・詩・たまにリアル。
孤独に沈みたい。光に癒やされたい。
ふと浮かぶ思い。そんな色々。
(主・ひつじ)

今夜

2025-04-14 21:50:00 | ベリーショート

雨露に濡れる椿の葉元に蝶が羽を閉じて眠る夜、ぼくは帳を抜けて君と行く。


あの 後祭りの宵山で、君を見つけた。
提灯の灯りが白く浮かんで、靄みたいな緑の光が薄ぼんやりとその白を包み、かかる光が君の瞳を淡くグリーンに変えていた。


月は陰った。
星が走った。

雨露に濡れる椿の葉元に蝶が羽を閉じて眠る夜、ぼくは帳を抜けて君と行く。

椿の雫を 踏んで行く。





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夜に咲く

2025-04-10 17:50:00 | weblog



夜も花を閉じない桜


ライトアップされる姿はとてもきれいだけれど


咲いていたとて、桜の方は


静かな暗夜に休みたいんじゃないかしら




人の世に咲く桜の夜






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一緒に咲く

2025-04-08 22:05:25 | weblog








夕暮れ時の桜がきれいでした。







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零れ桜

2025-04-06 02:30:00 | 

私がそこにいなくても、きっと風は吹いたのだろう。

はらはらと降る薄紅色の花びらを風がザッとあおった。
舞い乱れた花片は風の形を不規則になぞってから、脹らむカーテンみたいに平らに並び、光が射すその先へちらちらと降りてゆく。

そこに私が居なくても、風は吹き花も降ったのだ。
きっと私が居なくても、世界はそこにあるのだろう。

けれどまぎれもなく私はその世界で同じ風の中に居た。
そこに私が居なくとも世界がちゃんと在るように、
きっと私も、どこにいても、一人きりでも、
ちゃんとそこに在るのだと、そう、聞こえた。

そのときの私は、ただただ心の内から溢れてくるものを、ああ、綺麗だな、ああ、綺麗だな、と、
世界が美しく呼吸をするその在りように委ねることしか、やりようを知らなかった。

どうしようもない喪失感。

どうしようもない、美しさ。




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花篭に舞う

2025-04-03 00:00:00 | Short Short

その瞳が一瞬陰った。
そのとき揺らいだ本心は瞳の奥へと隠された。
本当は時を待っていたけれど、花は開くことなく森の奥深くへ紛れてしまった。

___もう探さないで。

ぼくはまた花開くことを、知らず夢見てしまった。
だから肌にさわる風に託したんだ。
遠くまで、ずっと遠く、ここではない場所へ。

森は鬱蒼とぼくを隠し、だけど時々こぼれた彩光がまっすぐにぼくを照らすとき、あの花まつりの夜の賑かな灯りと、君の横顔を思い出すんだ。

花篭を頭に載せ、君はぼくに手を差し出す。
君はやさしくぼくを掬い取ろうとしたけれど、みんなが笑ったその顔は君のそれとは違っていて、ぼくはその手を退けたんだ。
みんなが君のようだったらよかったのに。
ぼんぼりに揺れるいくつもの影が、その罪も知らず踊っていた。


森の胞子がぼくを深く包みこむ。樹海の夢が降り積もる。
月が細く照らす夜、君の花篭に舞う夢を見る。




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