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えありすの絵本・Another

ここはmyギャラリー…
わたし視点のDQ・FF…絵物語も……そして時々、イロイロ

4.ターザン~孤独な戦士~

2009年06月02日 | *クロニクル(ターザンの絵物語)
自分と同じ姿をしたものはみたことがなかった。

群れの一員とみなされてはいるが異色の存在。
古株の雄にとっては疎ましい。
カラの愛情と彼の機敏さ強さがなかったら彼は群れからすでに追放されていただろう。
とくに彼を敵視しているチュブラットは隙さえあらば命を狙っていた。

だが類人猿のダムダムの祭りの夜、それは起きた。
チュブラットの怒りをかったターザンは樹上に逃げる。
ボスと同等に優位に立つ雄のチュブラット。
ターザンに逃げられたチュブラットは八つ当たりで気が狂ったように暴れ周りの仲間を次々になぶりものにする。
雄の類人猿の凶行に散り散りに逃げる群れの仲間たち。

逃げ遅れたカラはその餌食となろうとしていた。
木を伝ってカラの元へ走るターザン。

チュブラットとカラの間に彼は樹上から飛び降りた。
手には亡父の形見のナイフ。

飛んで火にいる夏の虫。
チュブラットはその牙を少年の褐色の肌にのばした。
が、それは届かず少年のナイフに長年の宿敵は絶命。

ターザンは倒した宿敵の首に足をかけ、凛々しい顔をそらし月を見上げ勝利の雄叫びをあげた。
こうして彼は群れの中で優位な地位についた。

浜辺の亡父の小屋での学習。
類人猿の仲間との生活。
野獣の世界と文明の世界を行き来する彼だった。

持って備わった知性、そして野獣の心。
倒した獲物の血の滴るなま肉にかぶりつき、手についた血をふとももでぬぐう貴公子ターザン。
同じ頃、本来なら彼が継承するはずの爵位を名乗ったもう一人の卿がロンドンの超一流のレストランでステーキに火が通っていないと調理長に文句を言い、指先を真っ白のナフキンで拭いていた。

やがて彼には最愛の母カラとの永遠の別れが待っていた。



3.ターザン~叡智の光~

2009年06月01日 | *クロニクル(ターザンの絵物語)
仲間の類人猿と自分が違うことに気づき始めたターザン。
だが自分と同じ姿をしたものをまだ見た事がなかった。
ライオンも鹿もみな雄雌違いはあっても同じ姿をしている…
仲間がいる…
自分はなんなんだろう?

彼はときどき群れを離れ、彼の亡くなった両親の小屋で過ごす。
両親と一緒に残されたたくさんの荷物の中で気に入ったのは絵本だった。

彼はその中でやっと自分と同じ姿のものを見た。
その下にある虫のようなもの「A BOY」

彼は10才を過ぎた頃初めて文明にふれ新しい世界を知った少年ターザン。
絵本が一番好きだった。
絵本の中にあるライオンや豹もジャングルでは顔なじみだった。

なんと、おもしろい…

絵と虫のようなもの(文字)。
最初はわからなかった。
だが、何度も繰り返しみているうちにその共通性に気づき、彼は知らず文字というものを憶えていったのだった。

人間が何千年もかかった進化を彼は独自で数年でやろうとしていた。
それは彼の中に脈々と続く遺伝の能力のさせるわざだったのかも知れない。

彼の中に叡智の光がさしこみはじめたのだった。

みつけた鉛筆でその虫(文字)をまねすることも憶えた。
数年たつと彼はおおよその読み書きはできるようになるのだった。

亡父の残した日記はどうしても読めなかった。
父グレイストーク卿は長年の習慣として日記をフランス語で書いていた。

亡父が作ったテーブルにどっかとあぐらをかき絵本に見入るターザン。
母国語を読み書きできてもそれを発音するすべを知らない彼。
黒い髪と灰色の瞳をもつジャングルに生きる貴公子。

棚の奥にあった箱の中でみつけた光るもの。
それは両親が残したロケットペンダント。
彼はそれをあけられることは知らず、ただ光る美しいものとして胸にかけたのだった。
ダイヤがちりばめられ精巧な職人によって作られたであろうそのロケット。
中には彼に似た男性と美しい女性の肖像画があるとは彼は知らない。
そしてそれが両親だとも。

「優しい顔をした人」の色あせた写真もみつけた。
亡父とも知らずそれに惹かれる彼。
彼はそれをていねいにつつみ矢筒の底に入れるのだった。


2.ターザン~白い肌~

2009年05月29日 | *クロニクル(ターザンの絵物語)
彼の名前はターザン。
彼の部族の類人猿の言葉でいう「白い肌」という意味。

カラに拾い上げられた彼はカーチャクをボスとする類人猿の群れで育つ。
カラの愛情だけが彼の命を守る。
成長が遅く弱々しい人間の子どもは淘汰される。
群れの中でのやっかいもの。

やがて彼は非情なジャングルの掟の中たくましく育つ。
だが彼は少しずつ気づいていた。
自分が他の仲間達と違うことを。

すべすべの白い肌。
泥を塗ってごまかした。
だけどある日、水辺で気づいた。
自分の顔の醜さに。

水面に並んで映ったのは英国貴族の血をひいた高貴な顔立ちの少年と類人猿の毛むくじゃらな顔。
仲間がうらやましかった。

群れの異端児。
カラの夫のチュブラットはことあるごとにこのカラの養子の命を狙う。
ボスのカーチャクもこころよく思ってはいない。

群れの移動の時に、ときどき通るあの浜辺の小屋。
類人猿たちの記憶は曖昧になり、すでにターザンとこの小屋を結びつけることはなかった。
カラを本当の母と慕うターザン。

ずっと気にはなっている浜辺の小屋。
だが、入る所がない。
彼は小屋の一カ所だけが他と違うことに気づき、彼はそのドアをあける。
中には横たわる2体の白骨。
そしてゆりかごの中の小さな骨。

彼にとっては死は日常茶飯事。骨など興味もない。
それが父と母の骨だとしても驚きはしない。
亡父の残した物とは知らず少年グレイストーク卿は小屋の中の物を探索するのだった。

その中にあったナイフ。それで指先を切った彼はそれの威力と使い方を知る。
小屋を出た彼は群れに戻る途中、ゴリラのボルガニと遭遇。
逃げる間はない。
だが少年ターザンの手には亡父の残したナイフが握られていた。

死闘の末、ナイフはボルガニの心臓を止めていた。
だが彼もひん死の重傷。肋骨が折れ、肉は牙で裂かれ、首筋は頸動脈が見えるまで噛まれていた。

ゴリラとターザンの死闘は群れにも聞こえていた。
彼の元へ走ったのはカラだけ。
カラはひん死の彼をかかえて戻る。
水を口移しであたえ、傷口をなめ、ずっと付き添った。
野獣にはそれしかできなかった。

母親の愛情が無ければグレイストーク卿の遺児はこのままジャングルで朽ち数奇な運命もここで終わったことであろう。
群れから少し離れ彼は野獣の克己心でじっと耐えた。
自分を犠牲にし彼を看病しつづけたカラは見る影もなくやつれた。

カラの愛情は浜辺の小屋で死んだターザンの母、アリス・ラザフォード貴婦人と変わらなかった。
やがて彼はその傷も癒え、亡父の小屋へとまた通うのだった。

*このターザンの物語はただの冒険譚ではない。
今、これを読むと別の立場で心にくるものがある。

彼の孤独や自身のアイデンティティーの葛藤、彼自身の気づかぬ高貴な遺伝への戸惑い。
それが想像できてなぜか胸が疼く。

1.ターザン~グレイストーク卿ジョン・クレイトン~

2009年05月28日 | *クロニクル(ターザンの絵物語)
彼の名は誰もが知っている。
「密林の王者ターザン」

獲物を倒しそれに足をかけ凱歌の雄叫びをあげる。

本名、グレイストーク卿ジョン・クレイトン。
イギリス上院議員であり公爵家の嫡子。

アフリカがまだ暗黒大陸と呼ばれていた頃。
植民地の調査のため赴任していく若きグレイストーク卿夫妻。
だが、彼らが乗った船は船員の叛乱にあい、夫妻はアフリカの西海岸のとある浜辺へ残される。

絶望的な状況でも卿は浜辺に小屋をたて、妻と産まれてくる子どものため生延びる。
だが、周辺をうろつく類人猿たちの群れは恐怖の対象だった。

類人猿に襲われたある日、妻は夫を守るため銃を手にした。
その夜、妻は息子を産み、そして正気にもどらなかった。
それから1年。
妻は泣き叫ぶ息子を残し、静かに他界。

グレイストーク卿は泣く乳飲み子に妻の死に気づきとほうにくれる。
「アリス、わたしはどうしたらいいのだ」
彼の日記の最後の一文。

類人猿の群れは卿の小屋を襲撃。
卿はあえなく絶命。

群れのメス猿のカラは子どもを失ったばかりだった。
胸に子どもの遺骸を抱いていた。

泣き叫ぶグレイストーク卿の息子。
カラは遺骸をゆりかごに捨て、本能的にその子を抱き上げる。

こうしてカラの息子としてグレイストーク卿の遺児は育つのだった。

*原点に戻ってみた。
わたしが絵を描きたいと思ったのはターザンからだった。
触発をうけたのはハヤカワから出ていたターザンシリーズの華麗なる表紙絵。
「武部本一郎」の描くターザンの世界。

魅了されたわたしはへたながらターザンを描いていた。
中学生だったか高校生だったか…

ひさしぶりに彼を描いてみた。