続・切腹ごっこ

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衆道者(もの)奇談 稚児の腹切り

2005-12-07 | ◆小説・kiku様
色稚児

山間の風は秋の気配さえ感じさせていた。雲が流れて満ちた月が顔を出した。
すでに麓までも敵は押し寄せ、もうこの砦に残る者も少なかった。砦とは名ばかり、攻められればすぐにも落ちるほどのもの、周囲の繁みには敵の物見が潜んでいるかもしれなかった。
戦の続く戦国の世、源吾は金で雇われる渡り武士だった。勝ち方で手柄を立てれば褒美が望めても、負け方に雇われれば命の保証もなかった。
負けと決まれば命まで賭ける義理もない、俺一人が消えたとてもう気に止める者もあるまい。周囲を見渡しながら、彼はどう落ちるかと考えながら見張りに立っていた。
砦内から忍んで近付く影がある。小柄な身体は暗闇では女とも見える。名前は知らぬが色稚児のような。落ちる機会を逃したのか。

「これからいかがなりましょう。」
若者が小声で話しかけた。
「信長は根切りにせよと厳命しているそうな。捕らえられた者は老幼男女構わず殺されるとか。闘える者は討ち死に、なぶり殺しが嫌なら後は自害しかあるまい。すでに山裾は囲まれ、逃れる術は無いと聞く。」
源吾は顔も見ないで答えてやる。
「ここにいる者は皆死ぬのでございますな。」
「死ぬのは怖いか。」
「あなた様は死ぬのが怖くないのですか。」
「我等は戦(いくさ)が仕事、金で雇われてここにおる。死ぬのが怖いから相手を殺す。死なぬように立ち回る。怖くなければもう生きてはおるまい。怖い時には女を抱く。」
源吾の言い様は、つきはなすように冷たかった。
「ここに女はおりませぬ。私でよくばお放ちなさいますか。」
明日にも死ぬると聞きながら、肝の据わった物言いが若者を不敵に頼もしく感じさせた。
「そなたらの手を借りると法楽浄土を見るという、願ってもないことじゃが。」
品定めするように若者を見る。彼は色稚児の華やかさを感じさせた。若者が媚を含んだ笑(えみ)を送る。明日をも知れぬ昂ぶりに手を借りるのは覚えもあること、源吾はしばらく女を抱いていなかった。
「頼もうか。」
嬉しそうに頷いて、彼は身体を寄せてきた。

敵に背を向け、矢防ぎの盾に寄りかかって源吾は立った。半身は敵の目にさらされているが、味方からは見張りに立っているように見える。小柄な身体が膝元にうずくまり、源吾の袴の紐を解きふんどしを外した。股間が心地よい夜気に晒される。
「汚れていよう、すまぬ。稚児殿の手は初めてじゃ。」
陣中の事ゆえ幾日も湯を使ってはいなかった。垢と汚れで自分でも異臭を放っているのがわかる。
「お気遣いなさいますな。すべてお任せなされて。」
うずくまる体は植え込みに隠れているが、近くに来れば何をしているかは明らかになる。今襲われればひとたまりもあるまいが、しごかれながら逝くのもよかろうと、敵に背を向け股間を預けて空を見上げた。雲間を月が流れていく。数日後(あと)にはもう俺も生きていぬかもしれぬ。柄にもなく、死ぬる予感が頭をかすめた。
柔らかい手で探られ包まれて、男根(おとこね)はすぐに膨らみ始めた。さすがに上手いものだ。指先の動きを感じながらまだ余裕があった。指が内腿を這い尻を這い蟻渡りを探る。やがて立っているのが辛いほどに両脚が震えだす。よほどに慣れた指使いだった。熱いものがこみ上げて、一気に体温が上昇したように思った。
「いかにも極楽じゃな。このような・・・。」
「遠くからお慕い申しておりました。」
若者がつぶやくように言うと雁首に口を付けた。
「そのような・・。汚れておる、それほどにしてもろうては・・・。」
雁首を舌がなぞる。根元まで吸われてもう我慢が出来なかった。耳の奥で早鐘が鳴り、体中の血が逆巻いた。口中に果てては申し訳ない。離そうとしたが腰を抱えられ吸われて離れぬ。頭を抱き締め、全身を震わせて源吾は果てた。情を交わした女の数も少なく無いが、生涯でこれほどの快感は初めてだった。丁寧にふんどしを付け直し、袴を穿かせ結んでから彼は立ち上がった。口元は濡れていたが吐いた気配は無かった。
「ご無礼申しました。私もあなた様のお精を頂き嬉しゅうございました。」
「お飲み下されたのか、ありがとうござった。いかにも極楽。これほどの思いは初めてであった。」
愛しさを覚えて抱き寄せてやると、彼は女のようにしなだれかかった。


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