泉心堂治療院

せんしんどうちりょういん

漢方薬と無用の用:道の医学

2021年11月24日 | Weblog

漢方薬は動植物・鉱物由来の生薬の組み合わせによって処方されます。

例えば、初期のカゼに良く用いられる「葛根湯」は

「葛根、大棗、麻黄、甘草、桂皮、芍薬、生姜」

という7種類の生薬で構成されています。

それぞれの生薬には役割(薬効)があり、

それらが組み合わさることで

それぞれの作用を高め合ったり副作用や効きすぎを抑えたりして

効果が高く害の少なくなるようにバランスをとっています。

 

この漢方薬についても「無用の用」で説明することができます。

漢方薬の処方を構成する生薬は「器」のパーツようなものです。

一つ一つの生薬がパーツとなって「器」を構成し、

その器の中から生み出されたもの、つまり「無用の用」こそが、

例えば葛根湯ならば初期のカゼを治す「効き目」となります。

 

また、実際に漢方薬を処方する時には

患者の体質や病状に合わせて生薬の量や種類を調整する場合があります。

いわゆる「さじ加減」によって薬を一人一人の患者にあった「器」に仕上げます。

 

このように、漢方薬においても「無用の用」が根づいているのです。

 

 


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動中の静と無用の用

2021年08月18日 | Weblog

「独楽」を静止状態で立たせようとするのは至難の業です。

しかし、高速で回転させてやると、独楽は起立状態を保つことできます。

つまり動きによって安定が生じるのです。

そして独楽の形は回転時の安定を保つための重要な要素です。

いびつな形の独楽では不安定な回転でバランスを保つことができず、すぐに倒れてしまいます。

 

独楽が起立する際の軸は、回転という動きの中での安定よって生み出されたものです。

それはすなわち「動中の静」であるといえます。

そして「動中の静」は回転する独楽における「無用の用」であるといえます。

回転している時のみに出現する「無用の用」です。

 

人間の身体は、エネルギーが常に循環することによって、バランス・恒常性が保たれています。

つまり、エネルギー循環という「動」により、

バランス・恒常性という「静=無用の用」が生み出され、保たれます。

そしてエネルギー循環などの「動」に乱れが生じたとき、

「静」すなわちバランス・恒常性にはひずみや乱れが発生すると考えます。

 

「動」であるエネルギー循環の乱れを察知し、調えることで、

「無用の用」である「静」のバランス・恒常性の乱れを復元させることが、

道の医学の原則でもあるのです。

 

このように、道の医学において

「無用の用」を生み出す「器」は「形=物体」だけではなく、

エネルギー循環などの「動」としても存在するのです。


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大局と小局:循環と道の医学(3)

2021年04月28日 | Weblog

全体のありさまを「大局」とすると、

限られた範囲のありさまは「小局」といえると思います。

身体の場合では「全身=全体」に対して「局所=部分」という言葉が一般に使われます。

また、「大局」とは全体であったり、長いスパンの時間でのことであるのに対し、

「小局」は部分的、短期間でのことであるといえます。

 

一般に、物事の「小局」にとらわれると「大局」を見失うと言われますが、

中国医学では、身体の健康や病気に対して大局的観点をもってとらえることが重視されています。

病気を身体全体や、長いスパンから見つめて解決に導き、

身体全体の健康が安定して維持し続けられるようにします。

中国医学は「病気ではなく病人を診る」と言われるゆえんです。

 

一方で「大局」を把握するためには、その時その時における「小局」をしっかり把握することが大切です。

また、「大局」を動かすためには、まず「小局」から取り掛かる必要があります。

身体についても、「全身」を把握するために「局所」に注意を払う必要や、

「全身」を改善させるために「局所」からの改善が必要な場合があります。

「大局と小局」、「全身と局所」が自在に把握できるのが理想でしょう。

 

循環も同様です。

小循環である局所ばかりで循環させていると

大循環である全体に行き渡らなくなる可能性があります。

同時に、局所(小循環)の隅々まで行き渡っている状態が、

全体(大循環)に行き渡っているという状態であるといえます。

そのためには、全体から局所、局所から全体へのバトンタッチがスムーズに行われる必要があります。

また、短いスパンでの好転の積み重ねが、長いスパンでの好転・安定につながります。

それらを把握し、導くことが「道の医学」の役割となります。


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案ずるよりも循環:循環と道の医学(2)

2021年04月14日 | Weblog

*ブログ記事【循環と道の医学】に続きます・・・

 

「案ずるより産むがやすし」という言葉があります。

直接には「お産の前はあれこれ不安になるものだが、産んでしまえば何とかなってしまうものである」という意味ですが、

転じて「物事はあれこれ心配するよりも思い切って実行してみれば意外とたやすいものである 」という意味で用いられています。

 

昔も今もお産は大なり小なりのリスクを伴うものであることに違いはありません。

しかしながら、私たちの祖先はお産にのぞむことで代々の命をつないできたのも事実です。

古くはお産婆さんや今なら医師・助産師などの介添えがあるとはいえ、

出産(経腟分娩)は女性が本来持ち合わせている分娩能力が発揮されることで成し遂げられます。

「産むがやすし」とは、その出産能力はあれこれ考えなくても自然に備わり、発揮されることを示しているのでしょう。

 

「案ずる」の不安になる、心配になるというのは心の問題です。

思考活動は脳によって行なわれているのは周知の事実ですが、

「案ずる」とはつまり頭の中で不安や心配がぐるぐる回っているような状態であるといえます。

ですが、どれだけ不安や心配でいようとも、

胎児が無事成長し、時期が来れば出産にのぞまなければならず、

その時には本来持ち合わせている出産能力が発揮されることになります。

 

「道の医学」において、

心配や不安が頭の中でぐるぐると回っていることは、

心配や不安という一種のエネルギーが頭の中で循環し続けているといえます。

それに対して、女性が本来持っている出産の能力というのは、

妊娠出産というサイクルに応じて自然に発揮されるものです。

それは我々の意識の及ばない思考を超越した能力といえます。

 

頭は身体の一部分であり、頭の中での循環は身体全体の循環に対して「小循環」であるといえます。

そして、頭の中の思考回路と、意識や思考を超えてサイクルに応じて発揮される身体の能力は、

それぞれ「小循環」と「大循環」の概念に置き換えることができます。

 

そこで、改めて「案ずるよりも産むがやすし」ですが、

頭の中という「小循環」で「案ずる=心配や不安」というエネルギーをめぐらせるよりも、

そのエネルギーを身体という「大循環」を信じて委ねるべきである。

そのような解釈ができると思います。

 

不安や心配がいつまでも頭の中でぐるぐる回っていてはあまり良くないだろうというのは分かりやすいと思います。

そのため「小循環」から「大循環」へと導くのが「道の医学」の役割であります。

心配せずとも「道」はつながっているのです。

 


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法と道の医学

2021年02月24日 | Weblog

憲法はその国の基本理念を定めたものです。

そして法律は憲法の原則に則って定められています。

 

この「憲法」と「法律」の関係は

中国伝統医学における「道」と「術」の関係に似ていると思います。

国は「憲法」の理念に則って「法律」が定められ統治されるように、

中国医学は「道」の理念に則って「術」が行われます。

 

「黄帝内経」という、現代に内容が伝わるものでは最古の中国医学の書籍があります。

原本は逸失しておりますが、およそ2千数百年前に成立した書籍であると考えられています。

この「黄帝内経」は中国医学の学術体系において、いわば「憲法」のような役割を果たしています。

 

なぜなら「黄帝内経」は現代に至るまで約2千年の間、

中国医学の様々な「流派」や「学派」において、

理論的な裏付けの根拠や、内容の引用が行われているからです。

中国医学の系統を継ぐ日本の伝統医学でも同様です。

 

その意味では、中国医学にとって「黄帝内経」は「憲法」であり、

「道」を説く書物であると言えるのかもしれません。

その「道」に基づいて「法律」ともいうべき流派・学派の「術と理論」が

2千年以上前から現代まで発展し、活かされ続けています。

それだけ真理である「道」は不変であるということなのだと思います。


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