仙台POSSEの被災者就労支援の取り組みで見えてきてたことは、仕事はあるのに「仕事」はないということです。
たしかに仙台公共職業安定所管内のフルタイム職の求人倍率は1.31倍となっており、統計上、仕事はあります。実際に人が集まらずに苦労している求人企業も多数あるようです。
このような状況を指して、心の無い方は「被災者は甘えている。求人を選り好みしている。」と言います。仕事があるのに、仕事につかないという現象だけを見ると、求職者側の問題だと捉えがちです。
しかし、就労支援で被災求職者の方と接している私たちが感じていることは、求職者の怠惰や選り好みではなく、「仕事」が無いということなのです。ここでいう「仕事」とは、就職することで、一定期間の生活の見通しが立つ仕事のことです。数ヶ月の仕事に就いたところで、数ヶ月後には元の木阿弥になってしまいます。最低賃金では一人分の生活費も稼げません。あまりに過酷な仕事では、体調を崩してしまって、今まで以上に働くことが難しくなってしまいます。
一定期間の雇用が見込めて、少なくとも大人一人がしっかり暮らしていける賃金で、体を壊さない働き方ができる「仕事」が、今の被災地にどれくらいあるのでしょうか。被災者の生活再建に資する仕事はどのくらいあるのでしょうか。
このような問題意識から河北新報で被災地の雇用問題を取り上げていましたので、一部引用して紹介します。
このように仙台でも気仙沼でも、今被災地に必要なものは、雇用の量ではなくて、雇用の質なのです。生活再建につながる「仕事」が無いことが被災者の生活再建を妨げています。
また、雇用の質が伴わない雇用の量の増大は、失業者へのバッシングを強めてしまうだけだということも強調しておきます。雇用の質が劣化している分、雇用の量が多いために、本当は仕事が無いという事実が隠蔽されてしまい、仕事があるのに仕事に就かない被災者というように現象しているのです。
最後に、このような雇用情勢を踏まえての、私たちの就労支援の基本的なスタンスを紹介します。
これまで見てきたように、雇用の質を無視すれば、仕事はいくらでもあります。こういった仕事に就くことは簡単ですが、私たちの就労支援では質の伴わない雇用に飛びつくことをできる限り避けるように支援しています。労働市場の底辺への送り出し装置になるのではなく、むしろ社会福祉や雇用保険、職業訓練を利用して、できる限り底辺労働市場に向かわずに済むよう支援しています。
就労支援で就職数を増やすことは簡単ですが、そうではなく、質の伴う「仕事」への就職にこだわって支援していくことこそが、被災者の生活再建につながると考えて、支援しています。
今後も少しでも被災された方のお役に立てるよう、支援に携わっていこうと思います。
【仙台POSSE・就労支援事業部】
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仙台POSSEでは、この度の東日本大震災における被災者支援・復興支援ボランティアを募集しています。ボランティアに参加したいという方は、下記までお問い合わせください。
NPO法人POSSE仙台支部
法人代表:今野晴貴
所在地:宮城県仙台市青葉区本町1-14-20 キクタビル6階
TEL:022-266-7630
Email:sendai@npoposse.jp
HP:http://www.npoposse.jp/
BLOG:http://blog.goo.ne.jp/sendai-posse
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たしかに仙台公共職業安定所管内のフルタイム職の求人倍率は1.31倍となっており、統計上、仕事はあります。実際に人が集まらずに苦労している求人企業も多数あるようです。
このような状況を指して、心の無い方は「被災者は甘えている。求人を選り好みしている。」と言います。仕事があるのに、仕事につかないという現象だけを見ると、求職者側の問題だと捉えがちです。
しかし、就労支援で被災求職者の方と接している私たちが感じていることは、求職者の怠惰や選り好みではなく、「仕事」が無いということなのです。ここでいう「仕事」とは、就職することで、一定期間の生活の見通しが立つ仕事のことです。数ヶ月の仕事に就いたところで、数ヶ月後には元の木阿弥になってしまいます。最低賃金では一人分の生活費も稼げません。あまりに過酷な仕事では、体調を崩してしまって、今まで以上に働くことが難しくなってしまいます。
一定期間の雇用が見込めて、少なくとも大人一人がしっかり暮らしていける賃金で、体を壊さない働き方ができる「仕事」が、今の被災地にどれくらいあるのでしょうか。被災者の生活再建に資する仕事はどのくらいあるのでしょうか。
このような問題意識から河北新報で被災地の雇用問題を取り上げていましたので、一部引用して紹介します。
気仙沼市の橋本英雄さん(35)は週6日、解体現場に立ち、作業車の誘導係として働く。「子どものころから野球で鍛えている。これぐらいの寒さは平気だ」。吐く息が白い。
震災前は市内の水産加工会社に勤めていた。工場は津波で被災。「操業再開まで相当かかる」と退職した。がれき運搬のアルバイトを経て、1月から警備会社の契約社員だ。収入は震災前より3割ほど減った。
妻(37)と、年金に頼る両親との4人暮らし。結婚して2年になる妻とは、子どものことが話題に上る。「子どもは欲しいけれど、今の家計の状態では難しい」
水産加工業で正社員として働きたいが、目にする求人の月給は十数万円。宮城県の最低賃金で働いた場合(11万7800円)と大差がない求人も多い。今の仕事の方が稼ぎはいい。「この仕事を当面続けるしかない」
気仙沼公共職業安定所管内の10月の有効求人倍率は1.20倍。数字だけを見れば、被災地では持ち直しつつある。
しかし、けん引役は復興関連の建設分野で、限られた期間の仕事が多い。基幹産業の水産加工業は土地のかさ上げ待ちで復旧が進まない。再開した企業の大半も生産水準は震災前を下回る。
元記事:「政どこへ-被災地は問う(2)雇用/非正規、不安を増幅」(河北新報 12月7日)
震災前は市内の水産加工会社に勤めていた。工場は津波で被災。「操業再開まで相当かかる」と退職した。がれき運搬のアルバイトを経て、1月から警備会社の契約社員だ。収入は震災前より3割ほど減った。
妻(37)と、年金に頼る両親との4人暮らし。結婚して2年になる妻とは、子どものことが話題に上る。「子どもは欲しいけれど、今の家計の状態では難しい」
水産加工業で正社員として働きたいが、目にする求人の月給は十数万円。宮城県の最低賃金で働いた場合(11万7800円)と大差がない求人も多い。今の仕事の方が稼ぎはいい。「この仕事を当面続けるしかない」
気仙沼公共職業安定所管内の10月の有効求人倍率は1.20倍。数字だけを見れば、被災地では持ち直しつつある。
しかし、けん引役は復興関連の建設分野で、限られた期間の仕事が多い。基幹産業の水産加工業は土地のかさ上げ待ちで復旧が進まない。再開した企業の大半も生産水準は震災前を下回る。
元記事:「政どこへ-被災地は問う(2)雇用/非正規、不安を増幅」(河北新報 12月7日)
このように仙台でも気仙沼でも、今被災地に必要なものは、雇用の量ではなくて、雇用の質なのです。生活再建につながる「仕事」が無いことが被災者の生活再建を妨げています。
また、雇用の質が伴わない雇用の量の増大は、失業者へのバッシングを強めてしまうだけだということも強調しておきます。雇用の質が劣化している分、雇用の量が多いために、本当は仕事が無いという事実が隠蔽されてしまい、仕事があるのに仕事に就かない被災者というように現象しているのです。
最後に、このような雇用情勢を踏まえての、私たちの就労支援の基本的なスタンスを紹介します。
これまで見てきたように、雇用の質を無視すれば、仕事はいくらでもあります。こういった仕事に就くことは簡単ですが、私たちの就労支援では質の伴わない雇用に飛びつくことをできる限り避けるように支援しています。労働市場の底辺への送り出し装置になるのではなく、むしろ社会福祉や雇用保険、職業訓練を利用して、できる限り底辺労働市場に向かわずに済むよう支援しています。
就労支援で就職数を増やすことは簡単ですが、そうではなく、質の伴う「仕事」への就職にこだわって支援していくことこそが、被災者の生活再建につながると考えて、支援しています。
今後も少しでも被災された方のお役に立てるよう、支援に携わっていこうと思います。
【仙台POSSE・就労支援事業部】
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仙台POSSEでは、この度の東日本大震災における被災者支援・復興支援ボランティアを募集しています。ボランティアに参加したいという方は、下記までお問い合わせください。
NPO法人POSSE仙台支部
法人代表:今野晴貴
所在地:宮城県仙台市青葉区本町1-14-20 キクタビル6階
TEL:022-266-7630
Email:sendai@npoposse.jp
HP:http://www.npoposse.jp/
BLOG:http://blog.goo.ne.jp/sendai-posse
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