日本キリスト教団 聖峰教会

苦しい心が少し楽になるために、聖書、詩、名言を紹介します。

「氷点」の林にて

2014年08月16日 | 今月の御言葉・いのり・メッセージ
氷点

いま陽子は思います。一途に精一杯生きて来た陽子の心にも、氷点があったのだということを。

私の心は凍えてしまいました。

陽子の氷点は「お前は罪人の子だ」というところにあったのです。

私はもう人の前に顔を上げることが出来ません。どんな小さな子どもの前にも。

この罪ある自分であるという事実に耐えて行く時にこそ、ほんとうの生き方がわかるのだという気も致します。

三浦綾子著「氷点」陽子の遺書より


わたしはとがのうちに生み落とされ、母が私を身ごもった時もわたしは罪のうちにあったのです。
あなたは秘儀ではなくまことを望み秘術を排して知恵を悟らせてくださいます。
ヒソプの枝でわたしの罪を払ってください。私が清くなるように。
わたしを洗ってください。雪よりも白くなるように。

旧約聖書 詩編51編7~9節


 この夏、旭川の三浦綾子文学記念館を訪ねました。常々、行きたいと願っていた場所です。
そして、文学記念館が建てられている場所が、「氷点」の舞台となった辻口医院のあった場所として設定されている場所です。記念館は林に囲まれてひっそりと建てられていますが、この林が氷点に描かれている見本林(正式には外国樹種見本林と言います)であり、見本林を抜けると美瑛川に出ます。
 警報が出るほどの雨の降りしきる日でしたが、大地に根を張った見本林の大地はその雨をしっかり吸い込んでじっと佇んでいました。今年は三浦綾子さんが「氷点」を執筆し朝日新聞社主催の懸賞小説に1位入選し、50年の記念の年です。
 今また新たに「氷点」の小説を心におもいおこしてみると、この小説に描かれている幼児誘拐、殺害、不倫、夫婦関係、子どもの育児問題などというのは、50年後の今も同様の問題があり、この小説は今も読み継がれて行く新しさがあると思います。
 そして、人が様々な困難な問題にぶつかり、問題を抱えながらどう向き合って生きるのかということが大切です。
 陽子のようにまっすぐに強く生きる人が今の世の中の救いとなり、希望となる人かもしれません。もちろん、だれでもそんなに強くないのだけれども、挫けないで生きる精神的な強さがあればとおもいます。そして、その人生を見守り愛する大きな存在が必要です。
 見本林のように大地に根を張り、冬の寒さにも、夏の嵐にもしっかりと佇むことができるように…

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