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色んなことを投稿するブログ。現在は「東方野球の世界で幻想入り」を投稿したり、きまぐれに日々のことについて綴ったり。

第十三話のあとがき

2017-04-27 03:56:42 | 東方野球幻想入り物語
こんにちは。久々にお話を追加しました。


この話の構想自体は7年くらい前にはあったのですが、ワードで軽く冒頭とオチを書いた後……


埃をかぶっていましたw


今年3月くらいにそんな下書き(完成度:5割)が発掘され、本気を出して完成させましたw


個人的には少し突貫工事だったかなとw


特にルナチャイルドと尾張忠実のやり取りはもっと丁寧に書けたな。


しかし、一方で丁寧過ぎるとメインヒロインになってしまう(爆)


という配慮により、こんな形になりました。


彼のアドバイス内容は構想段階からあったのですが、発掘された時点では忘れていました。


読み直す私、その口からは「あ~なるほど~」と声が漏れました。いかんでしょw


個人的に趣味で書き続けているシリーズですが、エクストラでもルナチャイルドを出したくて


13話を先に公開しました。


次の尾張忠実はセンバツ甲子園の優勝ネタか、エクストラで登場すると思います。


今後ともこのシリーズをごひいきに!


                                  つばると


第十三話(13-5)「同志の活躍」

2017-04-25 04:30:46 | 東方野球幻想入り物語

前回(13-4)

~~~~

 尾張がそんなアドバイスを送ってから数日後。
 ルナチャイルドに再び登板のチャンスが与えられた。
 イニングからの登板でその先頭打者に対し、カウントはワンストライク、ワンボール。
 2球目を投げた後に捕手からボールを受け取った際
「そう言えば……」
 ふと思い出す言葉があった。
 ――ゴロゾーン。
 彼の声で再生される、と同時に彼の見惚れてしまうような表情まで……。
 顔が少し赤くなるのを感じた。しかし、球場の雰囲気が我に返る。
 試合に集中していない証拠だと思い、ロージンに触り、少し落ち着く。
 そして、捕手のサインを覗くと、落ちるボールを要求してきた。しかもコースもゾーンギリギリではない。まさに、彼が言っていたゴロゾーンと呼ばれる場所だった。
 ――後は自信を持って君が投げるだけだよ
 彼の一言を思い出す。これは試してみるチャンスなのかもしれない。
 ルナチャイルドは頷くと、そこめがけ、思いっきり腕を振った。

「……嘘」
 ちょっと信じられないといった様子で打球を見ていた。結果はセカンドゴロ。
 相手打者は見事に引っかけて、悔しそうにベンチに戻っていった。
(でもでも打ち損じただけかも)
 色々考えたい気持ちもあったが、今は試合中。
 気持ちを切り替えて、次の打者に相対した。
 2球投げて、カウントは再びワンストライク、ワンボール。
 次のサインはアウトコースに落ちる球だった。
 何かの因果か、捕手はさっきと同じコースを要求してきた。
 ――いいから、いいから。打たれて怒られるようなことがあったら、『スコアラーがここに投げろって言いました』って、言えばいいよ
 彼の台詞がまた蘇ってきた。
(絶対に責任取ってもらうからね!!!)
 心の中で大きく叫ぶと、もう一度同じところに投げた。

 相手の押せ押せムードの中で登板したルナチャイルドが、無失点に抑え、ベンチに戻ってくる。
 すると、尾張は彼女に近づき、声をかけた。
「ナイスピッチ。勝敗はつかなかったが、今日の働きは好印象だぞ」
「あ、ありがとう。あなたの言った通りだった……」
「ん?」
「前教えてくれた『ゴロゾーン』に投げたら、バッターがね、皆が凡退してくれたわ」
「お~。よく信じて投げてくれた」
「あ、あそこなら、私も投げられたしね」
 ルナチャイルドは少し恥ずかしそうに言う。
「よくやった、よくやったぞ~」
 尾張はベンチの奥の方を見つめた。誰がいるのだろうかと、ルナチャイルドも覗きこもうとしたが、結局誰がいるのかはわからなかった。
「で、さ」
 本当に誰がいるのかも気になるのだが、それよりもルナチャイルドには気になったことがあった。
「ん?」
「いつまで私の頭をなでているわけ?」
「はっ!」
 尾張はほぼ無意識だったのだろう、「よくやった、よく抑えたぞ」のあたりから彼女の頭を撫でていて、彼女の指摘でようやく自分が撫でていたことに気付いたのだった。
「……そ、その……すごく不快」
 そう言っているわりに、彼女は少し顔を赤らめていた。
「本当にごめん。お詫びに何でもするから」
「…………ん、ならこーひー。コーヒーがいい」
「おう、それならいくらでもいいぞ。数少ないコーヒー党として、よろしく頼む」
「うん♪」
 彼女の表情に笑顔が戻った瞬間であった。
 この後、ルナチャイルドは三人の妖精の中で唯一日本シリーズに出場するなど活躍。
 左の中継ぎ投手の問題はシーズン途中でしっかり解決することができたのであった。


 三月精の隠れ家にて。
 昼過ぎ、そろそろ異変解決のため、あの球場へと出かけないといけない時刻。
「最近、その本をよく読んでいるわね。誰の本?」
 スターサファイアがルナチャイルドに対して尋ねる。
 ルナチャイルドは最近、どこから手に入れた本にご執心であった。
 事あるたびにその本を開くし、目は文字を追いながらも利き腕の左腕を動かしながら読んでいた。
 傍から見ると、異様な光景である。
サニーミルクにも聞いてみると、そんな姿を最近よく見るようになったと言っていた。
そこで、気になっていた疑問をとうとう口にしたわけである。
(さて、どんな反応するかしら……)
 しかし、スターサファイアの方も見当はついている。
あの本は最近仲良くなった「スコアラー」が書いた本だ。
そして、彼から直接もらったことも知っていた。
(誤魔化すかしら? だとしたら、あなたの大好きな彼の本だと言って、核心をついてやろうかしら?)
 しかし、恥ずかしがることなく、ルナチャイルドは明るく答えた。
「スコアラーさんの。私のね……頼りになる同志なの♪」
その表情は満開の笑顔で、彼への信用が誰の目にも明らかっただった。
スターサファイアはからかいを断念せざるを得なかった。

~~~~~

終わりです。

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第十三話(13-4)「同志の活躍」

2017-04-25 02:20:40 | 東方野球幻想入り物語
前回(13-3)


~~~~


 翌日の試合。
 敗色濃厚という試合でルナチャイルドさんが登板していた。
「うーん、相手の攻撃時間が長いなー」
 ベンチにいる私。注意はしているのに、ボヤキが止まらない。
 大勢は決している。しかし、相手は攻撃の手を緩めずに、ルナチャイルドさんに襲い掛かる。
 真ん中に入ったボールを綺麗にセンターへと運ばれる。
 三塁コーチは腕を振って、本塁への突入を指示する。
 外野からホームへとボールは返って来なかった。
 走者はスライディングすることもなく、ホームベースを踏み、タートルズはさらに失点。
 ベンチの上からファンの盛大な溜息が聞こえてくるようだった。
 結局、タートルズはこの試合大敗を喫した。

 試合後にアリスさんとの会話でも出てきたが、チーム編成にちょっとした問題点があった。
 タートルズには左のリリーフが少ない。
 ルナサさん、リリカさんのプリズムリバー姉妹の2人がいるだけである。
 長いペナントを見据えると、もう一枚左の中継ぎがいれば助かる。さすがに、この2人だけで凌ぐのは難しいところまでは共通見解である。
 そこで、誰かいないかという話になった。
「左打者に弱い左投手もいますし、逆に左打者に強い右投手もいます。最悪、そこまで左投手に拘る必要もないと思います」
「それもそうね」
「とは言え、今いるメンバーから左投手を探すとなれば……ルナチャイルドさんになるでしょうか」
 リリーホワイトさんは春を過ぎ、調子を落としているため、筆頭になるのはこの投手であった。
「伸びしろに期待して登板機会を与えてもいいですが、今回のことみたいなが続くとなると……」
「そうねー」
「もう少し忠実くんの方でも声をかけてみてくれないかしら」
「私が、ですか?」
「仲良いと聞いているわよ」
 この時、私はポカンとした表情になったと思う。
 確かに、ルナチャイルドさんとはコーヒー豆の盗難事件以降、話をするようになった。しかし、それが仲良いということになるのであろうか? 外から見ればそう見えなくもないが、このケースで実際に該当するかと言われれば微妙である。
(さて、どういうしよう……)
 頭の中では軽く混乱中ではあったが、何とか「わかりました」と絞り出した。
 せっかくの機会だし、色々と話を聞いてみることにしよう。
 もちろん、好きなコーヒーをごちそうするという名目で。

 私はこれ以降、お茶屋で新しいコーヒー豆を買ったから試飲会をしようと言って、ルナチャイルドさんを何度も誘うようになった。
 最初の頃は警戒されないように、他のメンバーにも声をかけ、何人かでお茶会みたいな形だったが、何回か開催していると向こうから声をかけてくるようになった。
 ただで色んなコーヒーを飲める機会は貴重なのだろう。
 この日もルナチャイルドさんの希望で、ノドカさんの新作コーヒーをごちそうしていた。
 職業病なのかもしれないが、自分なりの分析力で彼女の人となりを探った結果、妖精っぽくない妖精という印象を得た。
 妖精の性格はよく気まぐれと言われるが、彼女は論理的な思考もできるタイプだ。どちらかと言えば、妖怪に近いかもしれない。
 と同時に、私の話も色々した。外の世界の話。野球の話……。
 笑いも交えつつ、少しでも私への警戒心を解くためである。
 ということで、そろそろ本題に入ろうと思っていたところ、お湯が沸いた。
 私は急いで火を止めると、ノドカさんオススメの方法でコーヒーを淹れ、二人の目の前にコーヒーを置かれた。
『ちょっと――』
 二人はお互いの顔を見合った。
 二人が同時に声をかけたのだ。二人ともまさか相手から話しかけてくると思っていなかったようで、驚いた表情をしていた。
『どうぞどうぞ』
『いえいえ、そちらが』
『では……』
 としばらくコントのように同時に同じことを話す状況が続き、諦めたルナチャイルドさんが話を始めた。
「私の投球についてどう考えている?」
「…………」
 話題まで一緒だったようだ。彼女も彼女なりに悩んでいたのだろう。
「よくない」
「どうよくないの?」
「打たれるからね。自分自身としてはどうして打たれるのだと思っている?」
 私はあえて相手の疑問をそのまま相手に投げ返した。
 考えを把握しておきたかった、というのもあった。一方で、彼女は論理的な考えもできるからある程度正解までたどり着き、それを自覚しているか確認しておきたかった。
 ルナチャイルドさんはたっぷり悩んだ後、「速いボールなんて投げられないし、変化球がものすごくいいわけじゃないから」と返答してきた。
 今度は私がそれに対して悩む番だった。
(確かにそれで正解なんだよな~。今の能力的には限界だし。こう考えてしまうのも無理ないか……)
 視線を移すと、コーヒー豆を入れている袋が目についた。
 店の名前が書いており、いつもお世話になっているヨウコさんと、熱心にルナチャイルドさんへの愛を語ってくれたノドカさんの姿が浮かんだ。
 ただでさえ選手数が少ないのに……。
 応援してくれる人がいるのに……。
 そうしたことに目を向けると、何とかしたいという想いができた。すると、その瞬間、私はあるワードを思い出した。
「…………ゴロゾーン」
「へ?」
「ワンストライク、ワンボール。このカウントになったら、真ん中とアウトローの間に落ちるボールを投げてごらん」
 未だに頭に「?」が出ている様子だったので、私はいつもの「野村シート」を取り出して、ここらへんとゴロゾーンを指差した。
「そんなところに投げたら、私のボールだと打たれちゃうよ」
「いいから、いいから。打たれて怒られるようなことがあったら、『スコアラーがここに投げろって言いました』って、言えばいいよ」
「本当に?」
「後は自信を持って君が投げるだけだよ」
 私はなるべく明るい表情を心がけて、彼女にその笑顔を向けた。
「!!」
「ん?」
 頷くなり、首を振るなりの反応があるものと思ったが、実際にあった反応は何だかびっくりしたような表情をされたことだけだった。
 この後は、時間も時間だったので、すぐ解散という流れになった。
 再び独りになった部屋。
「さてっと」
 私は敢えて声を出すと、その日の作業を始めたのであった。
 ちなみに、翌日、私は捕手陣にこの話をし、ルナチャイルドさんが登板したときは積極的にゴロゾーンを要求するようお願いしておいた。


~~~~

次はこちら

第十三話(13-3)「同志の活躍」

2017-04-24 04:13:45 | 東方野球幻想入り物語

前回(13-2)

~~~~

 その日の作業はいつも以上に煮詰まっていた。
 だから、私には珍しくラジオを引っ張り出し、それを机から離れた流しに置き、かけっ放しにして作業をしていた。
 机に置くと、スペースを取る上に目につきやすく、それを避けたかったからである。
 まだまだ幻想郷に長くいるわけでもないから、幻想郷のラジオ事情は明るくない。DJが誰だかなんて当然知らないし、どんな内容をしゃべっているのかさえわからない。
 別に真剣に聞いているわけではないのだ。
 音が無い、そのことが逆に気になってしまうから、わざと音を出しているだけなのだ。
 いつものようにぶつぶつと疑問点を口にする。
 ふと流しの方へと注意を向けると、近くにあるラジオの内容が耳に入ってきた。
 本当に取りとめもないガールズトークだった。
 ――やっぱり、男性が女性をみるポイントと女性が男性をみるポイントって違うと思うんですよ。
 ――あ~、なら、ゆかりんが男性をみるポイントって何なのよ~
 ――それは決まっているわ。……爪よ!
「何じゃい、それは……」
 思わず、口から漏れる。
 何か情報を提供してくれるわけでもないし、ただただ、はがきの内容をきっかけにきゃいきゃいとオチなくしゃべっているだけ。
 ラジオに対しイライラが増してくるのが自分でもわかった。
 私は一旦ラジオから注意を外し、近くにあったコーヒー豆の袋に視線を移した。
「いったい、いつなくなっているだろうね~」
 思わず口に出てしまった。無論コーヒー豆の盗難についてだ。
 試合中、ここに通じる道は通行禁止になっており、誰かが侵入できるわけではない。
 となると、通行禁止が解除され、私も通れるような時間帯で、かつ私にも気付かれない時間帯ということになる。
 寝ている時間か、それとも出かけている時間か……。
 私は少し横になった。
 背後にあるラジオからは相変わらず、だらだらとしたガールズトークが聞こえてきた。
 いっそ消してしまおうかと思った瞬間――。
「え?」
 本当にラジオから音が止まった。
 おかしい。電源ボタンを押さない限り、ラジオを消すことなんてできないはず。
 故障でもしたかとラジオの方を振り向く。
「――――」
 すると、声にならない叫び声を出し、物凄い勢いで部屋から逃げていく小さな物体と目があった。
 あ、あれはル――。
 私の思考が追いつかない中、事態は急展開を見せていく。
 小さな物体が袋を抱えて部屋から出ていく…………が、焦ったのか、部屋のドアに顔をぶつけてしまう。直後、私の頭上を何かが通り過ぎた。
「捕まえたわよ」
「ひぃー」
 女の子の悲鳴が聞こえた。
 自分の頭を何が通ったのかと疑問が浮かぶ中、私は視線をそちらに向けると、いつの間にか背後にいた人――紫さんが小さな物体――ルナチャイルドさんを捕捉していることがわかった。
「……あなたは女の子同士がいちゃいちゃしているシーンが好きなのかしら?」
 しばらく呆然と立ち尽くしていると、紫さんが少し怒ったような口調でこちらに声をかけた。
 ようやく我に返ると私は急いで犯人の手を掴み、逃げられないように処置を施した。
「というか、君だったか……」
「し、知らないわよ。わ、私も盗まれたコーヒー豆が気になって、別のところに移動してあげようと」
 ルナチャイルドさんは綺麗に自爆した。
「何も言ってないけれど、何故私のコーヒー豆が減っていることについて知っているんだい? 私は誰にも教えていないはずだよ」
 優しく諭してあげる。
ルナチャイルドさんも自分の自爆に気付いたようで短く「あ……」という声が漏れた。
「これもタダではないんだからね」
 部屋が沈黙に包まれた。
 しばらくすると、紫さんは私に目配せをして、話を進めるように促した。私はルナチャイルドさんの近くまで歩を進め、彼女と同じ目線になるまで顔を下げた。
「は~、ちゃんと言ってくれれば分けてあげたのに。何故言ってくれなかったの?」
 あくまでも優しく。責める言葉を投げつつも怒らず、冷静に。
 ルナチャイルドさんは左を見たり、右を見たりしながら、ようやく口を開いた。
「だって、怖いし」
「……え、怖い?」
 予想しない言葉が出てくる。
「よくそういう話は聞くよ。だって、試合中はしゃべらないし、かと思えば、小声でぶつぶつ独り言を言っているって聞くし……」
 私は無言で頭を抱えた。
 紫さんは後ろでクスクスと笑っていたのが、私の気分を非常に害した。
 とりあえず、作業が終わっていないので、今日のところは彼女を解放し、後日詳しく話を聞くということになった。

 後日。同じ部屋にて。
「とりあえず、座ってくれ」
 試合前で色々雑用があったが、今日ばかりはそれをお休みして、事情聴取である。
 ルナチャイルドさんに座るように促す。
「コーヒー好きなんだよね?」
「はい」
「コーヒーを盗ったという事実は間違いないんだね」
「はい」
「…………」
 刑事ドラマの取調べかよというツッコミが適当だろうか。
 しかも、何故か相手は「はい」としか言わないし。一応、今回のことは言質を取ったので、話題を変えることにした。
「調べたら、他に余罪が出てきたんだけれど……」
「ごめんなさい。でも、お店に払うお金なんてありません」
(えぇ……)
 鎌をかけたら、本当に余罪まで出てきた。
 詳しく尋ねるとどうやらお茶屋さんのコーヒー豆の盗難はルナチャイルドさんの仕業らしい。
 しかし、私がコーヒー豆を買うようになってからは、わざわざお店まで言って盗む必要がなくなったので、私の部屋から調達するようになったらしい。
 だから、お店の盗難被害がなくなったのだ。
 私は頭を抱える。
(さて、どうすべきか……)
 私は記録員としての作業だけではなく、コーヒー豆盗難事件のことまで仕事を抱えることになった。

 後日。お茶屋さんにて。
「そ、そんな。まさか……」
 ノドカさんは前回とは打って変わって、声が途切れ途切れになっている。
 今の状況に思考がついていけないこと、ファンだと公言した選手が目の前にいることの緊張、色んな感情が混ざって、こんなノドカを構成しているのだろう。
 もう少し堂々としているかなと思っていた私は見事に期待を裏切られた。
「ルナチャイルドさん、例のモノをノドカさんに」
「はい」
 私がルナチャイルドさんに促した。
 例のモノとして渡したのは、「ノドカさんへ」と書かれたサインボールであった。
「え?」
 ノドカさんも突然のことで言葉に詰まっていた。
 私が考えた罰、それは謝罪行脚でもあり、熱狂的なファンとの交流でもあった。
「え、えっと……そ、その……い、いつも応援してくれて――」
「ありがとうございます」
 私はルナチャイルドさんの耳元で次に言うセリフを先出しする。もちろん小声で。
「ありがとうございます。そ、その……」
「これからも――」
「これからも!」
「応援して――」
「応援してください!」
「…………」
「…………」
「…………」
 お互いに沈黙。私やヨウコさんなどもいるから5人くらいが同時に沈黙していたことになる。
「きゃわいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい」
 そう言って、しばらく愛でる時間が続いた。やっていることはヨウコさんに対するものを大して変わったものではないので、説明は省略させてもらいたい。
「ね~」
 5分くらい二人だけの世界を堪能したであろうか、急に猫なで声で私に話かけてきた。ちなみに、なでられているルナチャイルドさんの方は既に白目になっている。
(め、面倒事だ……)
 私は恐る恐る「何ですか?」と聞くと、驚くべき言葉を口にした。
「うちの子にして、四六時中愛でていたいんだけど……ダメ?」
「ダメ」
 私も即答である。
「ケチ! ケチ~」
「ケチとか、そういう問題ではなく……」
 私もどう返していいのか判断に悩む有様であった。

「あ、あの……これでよかったのですか? ご主人の方は?」
 私はヨウコさんにそう言って、奥にいる店の主人の方へ視線をした。すると、ヨウコさんは私に小声で家庭内事情を話してくれた。
「家で一番権力があるのはお姉ちゃんなんです」
「でもノドカさん、さすがにお店のことはノータッチだと思いますが……」
「とんでもない。お姉ちゃんが仕入れとか特製ブレンドを作っているんですよ」
「な、なんだってー!」
 衝撃の事実。
 内緒話のはずが、私はつい大きな声を出してしまう。
 ヨウコさんも驚いて、私の口元を抑えに行きそうになる。
 私は謝りつつ、話の続きを促した。
「姉妹二人で接客すると以前のような『あの』態度でやってしまうから、私独りだけで接客するようになったんです」
「あー、そうだったんだ……」
 私の口から自然と納得した声が出た。
 そして、私たちはなんとなく視線をそちらの方へと向けると、
「やったー。今日は人生で最高の日よーーー」
 とか言いながらサインボールを大事そうに抱きしめているノドカさん。
 こういった言動だけ見ると色々と思うところが多いのだが、この後淹れてくれたブレンドは確かにおいしかった。
 見た目だけで判断してはいけない。
 その原因となった女性を脇目に見ながら私はそう思うのでした。

~~~~

次はここから


第十三話(13-2)「同志の活躍」

2017-04-23 04:10:47 | 東方野球幻想入り物語
前回(13-1)


~~~

 人里。しかも中心から外れ、店屋が並ぶ通りから離れた場所に位置する「お茶屋」さん。
 私がこの世界で贔屓にしているコーヒー屋であり、いつも自室で使っているコーヒー豆はこの店から購入していた。
「あ、いらっしゃいませ~」
 私が「すいません」と言って店内に入ると、優しい声が返ってきた。
ちょうどお客の入りが少ない時間帯だったらしく、奥で新聞を読んでいるこの店の主人と女性店員しかいなかった。
「尾張さん、こんにちは~」
 女性店員は私の姿を認めると、にこやかに挨拶をしてくれた。
 時々見える仕草から私より年下だろう。格好は洋風エプロンに頭にはバンダナ。
 コーヒーも売っている店であるし、変に和装であるよりはこの店の雰囲気に合っているような気がした。
 私は店員と適当に世間話をした後
「いつもの。一袋ね」
 と注文した。
 常連客のような注文の仕方をしても彼女はそれでわかってくれる。
 事実、常連客だしね……。
「いつもありがとうございます。チーム調子いいですね」
 品物を私に渡すと、ふとこんな話題が出た。
 その時の彼女は自分のことのようにタートルズの快進撃を喜んでくれていた。
 実は、彼女は私の正体を知る数少ない外部の関係者でもあるのだ。
「ええ。おかげさまで。そちらの反響はどうですか?」
「こっちも尾張さんのおかげで店の売上げがよくなっていますし、順調ですよ」
「でも、今は誰もいないけれど」
 私はわざと辺りを見回すような仕草を加えながら、その言葉を口にした。
「あ~、ひどいですね。今は誰もいないだけで、さっきまで大型の注文があって大変だったんですよ~」
 私のからかいにぷくぅと頬を膨らませながら、反論してくる。
「夜は冷込むことも多いからね。球場でもコーヒー販売は評判がいいらしいですよ」
 私は周りから聞いた評判をそのまま伝えると、彼女も少し機嫌を直して、いつも笑顔を私に見せてくれた。
ちょうど私の正体を知る話に関係のある会話が出てきたので、それに少しずつ解説を加えることにする。
 球宴異変で行われる試合に来てくれるお客さん。そうした客に相手に飲み物を提供する人たちがいる。ジュースに、ビールを始めとする酒類を提供してくれる商人たちである。その中で、まだ温かいものが充実してないことに目を付けた私は、偶然見つけたこのお店にコーヒーの提供を依頼したのだった。
 最初はあまり乗り気ではない店側であったが、私はある秘策を出し、その協力を得ることに成功したのだった。それがコーヒーを出す際に注ぐコップに店の名前を印刷したことによる宣伝である。
 これでコップ代を店側が負担する代わりに、それがそのまま店の宣伝をなる。購入してくれた客の目に留まれば、店舗の方にも訪れる客が増え、売上げが上がるかもしれないという魂胆であった。
 それが見事に嵌り、このお店は他の人からも認知される程の人気を得ることになったわけだ。
「球場で知った方がこちらに来られるようになりましたし、思わぬ宣伝効果もあったみたいです。前は畳んでしまおうかってくらいひどかったですから」
 以前のことを思い出したのか、遠い目になる。
 しかし、私がこの話を出してくるまでの売上げはあまりよくなかったらしい。
「こんなにおいしいのに?」
「ええ。お客様も限られていましたし――」
 私が驚いたのもつかの間、彼女の思わぬ発言に私の耳が反応した。
「それによく盗難にも遭っていたんですよ」
「盗難?」
「ええ。それも尾張さんがいらっしゃった頃からなくなりました。そういう意味でも尾張さんはこのお店の救世主かもしれませんね」
「そう……ですか」
 私は適当な反応を返すと同時に店のドアが大きな音を立てて急に開いた。
「ヨーーーーーーーちゃん」
 という叫び声と共に私の横を何かの物体が物凄い速さで通り抜けていった。
「えっ??!」
 という私の声を無視するかのように今度は
「きゃーーー」
 店員の悲鳴が聞こえた。
 私の頭に「ん、何だ?」という疑問が浮かぶ中、視線をそちらに向けると、誰かが女性店員に抱きついていた。
 どうやら物凄い速さで私の横を通り抜けたものは女性――しかも私と同じくらいで店員と比べると年上に感じる雰囲気――であり、その女性は店に入ると 同時に店員に抱きついているようだった。
 ちなみに、こうやって私が状況を理解しようとしている間も店員にずっと抱きついており、「よいではないか、よいではないか」と言って、店員を愛でていた。
 どこぞの悪代官であろうか?
「あ、あの、姉さん、お客さんが」
 私が声かけようか迷っている間に、店員が抱きついている女性に声をあげていた。
「お客? そんなのどこに――」
 女性は愛でるのに必死であまり話を聞こうとはしていない。
「…………ええっと、ここに」
 仕方なく私が挙手して居場所を知らせると、名残惜しそうに女性店員を解放した、私への舌打ちとともに。
 あの、あからさまな舌打ちはやめてくれませんかね~。
「あんた、誰よ。まさか私のヨーちゃんを狙っている下種な野郎ね」
 ヨーちゃんとは女性店員の愛称だろう。この事件の前後に名前を聞いて、本名はヨウコであったと記憶している。
「もー、姉さん、お客様になんてことを」
「だって、こういう冴えない野郎の方が何し出すかわからないって――」
「姉さん!」
「はい。お客様、申し訳ありませんでした」
「いいですか。この方はこの店を救ってくれた救世主様です。失礼ですよ」
「え、こいつが?」
「…………」
 とても驚いた表情で私を指さした。すいません、指ささないでください。
「ごめんさない。こちら、私の姉でノドカって言います。こうして今でも気にかけてはくれるんですが……」
「お気になさらず。確かに姉としては心配ですものね」
 そう言って、ノドカと紹介された女性の表情を窺うが、「ふん」とか言って、まともに顔を合わせてくれない。まだ警戒は解かれていないようだ。
「あ、そうだ。姉さんはタートルズの大ファンなんですよ~」
 ヨウコさんは思い出したかのように話題を切り出した。
「へぇ~」
「ちょっとヨーちゃん。何でそんなことを急に?!」
 私が驚いた声を出すと恥ずかしいのか、ノドカさんは怒って話を打ち切ろうとした。
「だって、忠実さんって、タートルズのチームスタッフなんですよ」
「はっ、こいつが?」
 ノドカさんは見下していた男が意外な身分であったことに驚いたようであったが、私に対するにらみつけるような視線は変わらない。
 しばらく、私がいかにこのお店に貢献したかの説明がなされる。黙って聞くノドカさん。
「ふ~~~~ん」
 全てを聞き終えても感想はこの一言だけ。
 ここで私から色々言っても評価は良くならないだろう。
 せっかく異変解決のために頑張っている選手たちの顔に泥を塗らないようにしたい。特に、ただの裏方の態度が悪かっただけで評判が下がるのは避けたい。
 そこで、私は不慣れな営業スマイルと一緒にお礼を述べた。
「タートルズの応援ありがとうございます。これからも応援よろしくお願いします」
「ええ、ええ」
 再び視線を逸らすノドカさん。そんなに私の営業スマイルって直視に耐えないものなのか……。
「それで、どの選手のファンなんですか?」
 私は話題を変えるべく、こんな質問をノドカさんに投げかけた。
「……いる……よ」
 先程までの勢いとは比べ物にならないくらい声が小さい。
「よく聞こえなかったのですが」
「ルナチャイルドって言ったのよ」
「ほ~」
 意外な名前に私の口からは感嘆の声が出た。
「な、なによ、文句でもあるの?」
「すいません。無いです」
「そうやって、あんたも馬鹿にするんでしょ」
「いえいえ。いい投手ですもんね、ルナチャイルドさん。差し支えがなければ、どういったきっかけでファンになったのかも聞きたいくらいです」
「そ、そんなの……」
 言い淀むノドカさん。
 私は黙って次の言葉を待ち、
「かわいいからに決まっているでしょー」
 その理由を聞いて再び黙ってしまった。
 一応もう少し詳しく理由を聞くと、以前この店へと戻る途中、こそこそ隠れていたルナチャイルドさんを見つけて、声をかけたノドカさんだっだが……。
「そのときのびくって反応して、小動物みたく怯えている姿。もーかわいくてかわいくて。結局、逃げてしまったんだけれどね~。あんな子がマウンドで自分よりも大きい打者相手に投げているんでしょ。これはもうファンになるしかないでしょ」
 うむ。自分で話を振っておいて申し訳ないが、自分の理解の範囲を超えていた。
 なんて返事しようかと考えていたところ、店にあった時計が目に付いた。
「はっ。あ、もうこんな時間。すいません。私はこれで」
 急いで戻らないと練習時間に間に合わないくらいの時間になっていた。
 私は急いで店を出た。意識しなくても足は前へ前へとどんどん動いていく。
 人里を出ても、私はペースを落とすことなく、球場の方向へと足を動かし続けた。
 その際、ふとさっきまでのやり取りを思い出した。確か……いつもお世話になっている店員の方がヨウコさんで、そのお姉さんでルナチャイルドさんのファンであるノドカさん。
(ファンのためにも、やるぞー!)
 久々にできたチーム関係者以外との会話に、私は練習への活力がこみ上げてくるのを感じたのであった。

~~~~

次はこちら


第十三話(13-1)「同志の活躍」

2017-04-08 01:00:25 | 東方野球幻想入り物語

時系列としては、リーグ優勝が決まる前の話。シーズン中のものです。

幻想入りシリーズのリンクリストにジャンプできます

ここから~~~

 思い返せば、シーズン中幻想郷スタジアムにあった私の部屋にはよく人が訪れていた。
 しかし、ノックしてくる者は半分以下である。原因の多くは幻想郷における「保護者」であるのだが、それ以外にもノックをせずに来る者がいた。
 今回はそういう者たちの話である。
 今日も試合が終わると自室に戻り、帽子を適当に放り投げ、椅子を深く腰掛けた。
「あ~~~~~~~~~~」
 疲れた。超疲れた。だいたいは、最終回に登板したあの人のせいなのだが、それを口にするのも疲れた。
(ガチャ)
 私がこうして部屋でだらけきっていると、ノックもせずドアが開いた。
「あ、いた。…………映像記録持ってきました」
 紅魔館の妖精メイドだった。試合中はバックネットでずっと映像機器をまわしてくれていたのだ。そのおかげで、情報収集は大分楽になっている。そう言う意味では、本当にチームを影で支えてくれているのは彼女たちだ。ただ、私がいてもいなくても映像記録は机に置いておくようと言ったためか、この部屋のドアを無遠慮に開けるようになったのだが、こうもお世話になっていると今更改めてほしいなどとは言い出しにくかった。
「ありがとう。お疲れ様です」
 深く座っていた姿勢を正し、私は礼を言って受け取った。
(バタン)
 再び静寂が訪れる。
 ちなみに、以前は試合の記録全てを紅魔館に持ち帰られたが、館の主も守備時は別にいらないからという理由で分割して撮影するようになった。
おかげで、守備時の映像は私が直接受け取ることができるようになった。たった今受け取ったのも守備のときだけの記録である。
 私も守備時の方が欲しかったので、分括撮影は異論もなく賛成し、今に至っている。
 攻撃時の映像は向こうにあった方が役に立ててくれるし、私は三連戦通した相手打者対策に集中できる。図らずも双方の利害が一致した形だった。
 では、早速、映像を見ることにしましょうかね。
「…………あ~。でも最終回は、な~」
 ふと言葉として漏れた。
「――最終回は何なの、かしら?」
「うわぁああああああああああああ」
 先程述べた保護者の登場に思わず叫んでしまう。どうしても慣れない。
「紫さん……。いえ、何でもないです」
 私の背後に現れたのは八雲紫さん、その人であった。
「今日の試合、最終回に登板したのは私よ。記録員として何か言いたいことがあるんでしょ」
 言いたいことがあるなら言ってみなさいと言わんばかりの態度と口調で言われた。
 ただ、そう言われて文句を言える程私は命知らずではない。
「……お、抑えていただいたので、大丈夫です。今日もクローザーのお仕事お疲れ様でございました。あっ、そうだ。コーヒー飲みませんか?」
 ほとんど震え声である。
 弱い、弱過ぎるぞ私。
「じゃ、いただこうかしら、でもその前に――」
 うふふと声を出しながら、私に近づく。いわゆるおしおきをするためだ。
「う、うわぁあああああああああああああああああああああああ」
 私の声が一帯に響き渡った。

 おしおきが終わり、疲れた体に更なる肉体的ダメージを負った後、私は紫さんにコーヒーを出していた。コーヒーはちゃんといただくつもりらしい。
 ただ、この時私はあることに気付き、声を出してしまう。
「どうかしたの?」
 おしおきに満足し、いつもの状態に戻っている紫さんが尋ねる。
「コーヒー豆、こんなに少なかったっけ?」
「知らないうちに減っていくものよ」
「そうですかね~」
「特にあなたは夜遅くまで頑張っているのよ。無意識のうちに、たくさんのコーヒーを飲んでいるんじゃない? いい? あなたはもう少し自分の体を――」
「…………」
 紫さんの説教は続くが、私は話を聞き流して、いつそんなに飲んだのかを思い出していた。
 説教が終わるまで考えていたが、結局その日は答えが見つからないまま、今回の疑問は先送りにすることにしたのだった。

 だが、後日。
「やはり、少なくなっている」
 私が買ってきた袋の中身をみて確信した。
 減り方がおかしいのだ。いつも大きめの袋で買っていて、袋から取り出す時に残りの量を覚えているのだが、もう底が見えるくらいまで減っていた。
 それまでは1か月近くかかって消費していたのに、封を切って3日前後で既に大半を消費してしまっている。
 明らかにおかしい。
 私は大きく息を吐き出した。
 現状として被害は確認できたものの、盗んだ犯人はわからない。そして、盗まれたコーヒー豆は帰ってこないというのも変わらぬ事実である。
 仕方ないとつぶやき、私は独り出掛ける準備を始めるのであった。
 
~~ここまで

次へ

設定集3(東方野球 in BIG野球 における尾張忠実とプレイヤーつばると)

2016-07-04 00:00:55 | 東方野球幻想入り物語

東方野球 in BIG野球に興味を持っていただいた方のために、他のページにあったものを加筆修正。

ハンドルネームは「つばると」なのに、監督をしているのは尾張忠実という名前が使われている。

この疑問に答えられる準備をしておく必要があるなとw

今後はこのページを貼れば 大丈夫だーw #手抜き

元のページはここ

 面倒なら、上記疑問への答えを一言で。

 BIG野球をやるにあたって、昔考えたオリジナルキャラクターを監督にさせたよ!

 す、ステマだよ(小声)

 では、詳細な設定や自己紹介をどうぞw 
 
プレイヤー名:つばると

 応援すると負け(特に現地観戦の成績は悪化の一途)、テレビをつけた瞬間、試合展開が動く程度の能力。

 某艦隊ゲームでは艦娘を着任させるたびに、ひいき球団の選手を怪我させる。

 以上の能力から、他球団の知り合いよりもひいき球団の知り合いから恐れられている。


監督:尾張忠実(オリジナルキャラクター)

 拙著『東方野球の世界で幻想入り』の主人公。

 球場にはスコアブックを持参し、観戦した試合のスコアをつけるのが趣味。

 元ネタは日本で最初のスコアラーとなった尾張久次さん。彼から名字をいただいた。

 幻想郷出身ではなく、外来人と呼ばれる。東京ヤクルトスワローズのファンで、分析・助言が得意。

 色々あって、幻想郷タートルズのスコアラーとなり、球宴異変や幻想郷リーグで活躍した(という設定)。

 なお、本編では出て来ない模様。
 
 私つばるとが使うチームは彼が指揮している形でお送りしますw

以下、関連してくる方々

選手兼任打撃コーチ:度会博文( ^ー^)ワタライサーン 

 元スワローズの選手。主に代打やチームの盛り上げ役として活躍した。現在では引退。

 PMカード「つばると1」に度会選手の能力を投影し、尾張のチームで活躍している。

 「珍プレー好プレーで」の活躍や観戦した試合での代打成績が良いためファンとなった。

 なお、現在開催中のBリーグではコーチ選任になっていただいている(という設定)

選手兼任ブルペンコーチ:河端龍

 元スワローズの選手。主に中継ぎ投手として2001年の日本一に貢献した。現在では引退。

 PMカード「つばると2」に河端投手の能力を投影し、尾張のチームで活躍している。

 観戦した試合での火消しがかっこよく、投げる前のポーズが好きでファンとなった。

 なお、現在開催中のBリーグではコーチ選任になっていただいている(という設定)

発起人兼投手コーチ:八雲紫

 尾張忠実の保護者。

 彼と野球をやりたい一心で色々画策し、コーチとしてスワローズを支えている。

 スワローズが勝利すると、尾張監督と抱擁を交わす姿が見えるとか、見えないとか。

 なお、現在開催中のBリーグでは尾張と離れ離れになってしまった模様

バッテリーコーチ:根来広光

 国鉄スワローズ時代、大投手金田正一とバッテリーを組んだ選手。故人。

 幻想郷にいたところ、当チームのコーチ就任を要請。捕手の育成に携わっていただいている。


応援団長:岡田正泰「神様!! 勝たせてください」「まだある優勝」

 国鉄スワローズ時代からチームを応援し続けた。伝説の人。通称「ヤクルトおじさん」。故人。

 低迷期からスワローズを応援という形で支え、幻想郷でも自主的に尾張のチームを応援し始めた。

 現在、当チームも低迷しているが、岡田本人はあまり気にしていない模様。

最後に、BIG野球で私が使う謎スキルについて

使用TS(公開中)「激励プラス(1試合3回まで使用可能)」

 タクティカルスキルと呼ばれ、試合中に尾張監督が使う必殺技(?)

 元ネタはBBH(コナミのアーケードゲーム)。使うと監督から直々に選手に言葉をかけるため、選手が奮起し、よい結果が出るというもの。

 東方BIG野球でも尾張監督が勝負どころで選手たちに声をかけ、チームを勝利に導く。

 ただし、使用回数には制限があるため、使いどころが大事。

Bリーグ監督日誌 第5節「3つの打球とその反応」

2016-03-21 02:09:41 | 東方野球幻想入り物語
(第5節 対妖怪寺@妖怪寺ホーム)

試合前、私は荒れていた。

本日の相手である妖怪寺エヴィルプレシデンツの予告先発は聖白蓮さん。

好投手で大量点は期待できない。

だから展開としては1点を巡るロースコアの試合になるだろう。

一方、昨日の試合で完封された自チームの打線……。

何とかテコ入れをしようと対白蓮さんのオーダーを考えてはいるが、妙案は浮かんでこない。

刻一刻と試合時間は迫る。

焦りが更なる焦りを呼び、打開策が出てくる気配はなかった。

一度無理やり左打者を上位に並べてみたが、しっくりする形ではなかった。

(あー、だめだ。ちょっと外の空気を吸って来よう)

それまでのオーダーを書いていた紙をまとめてゴミ箱に放り込む。

私は監督室から出て、うろつき始めた。

すると、談話室の方が騒がしい。

私は何となくそちらの方に足を進めていた。

てゐ「監督さんだ」

フラン「おーい」

パチュリー「……」

適当に挨拶を交わし、何をやっているのかと尋ねてみる。

てゐ「ゲームのパーティを考えていたところ」

ゲームの?

2人の手元にはゲーム機のコントローラーがあった。

フラン「そうだよ~」

フランさんの説明によると、色んな職業から4人のパーティを組んで冒険を進めていくゲームだった。

ふむふむ。

てゐ「ちょうどいいから監督も考えてよ」

え、私が?

フラン「私は勇者、戦士、戦士、武道家がいいと思うの」

それは偏り過ぎでしょ

フラン「えー これで一気に倒せるし」

搦め手使われると辛いよ。

フラン「そうかな~」

てゐ「というわけで、ちょっと参考にならないから監督さんの出番うさ」

はいはい

それなら、勇者、魔法使い、僧侶、商人かな。

いや、勇者、魔法使い、僧侶、遊び人かな。

フラン「うわ……」

てゐ「微妙過ぎ」

えっ、そう?

フラン「なんかドカーンしにくいメンバーだね」

私がよくわからないという反応を返すと、

パチュリー「無理に安定やバランスを取ろうとして、絶対的な火力不足に陥っているのよ。逆に苦労する構成よ」

後ろでゲームを見ていたパチュリーさんが解説してくれた。

そうか。無理に安定やバランスを取ろうとして……それだ!!!

三人『??』

ありがとう。考えがまとまった。監督室に戻るよ。

てゐ「いつもの病気うさ。私たちはもう少しゲームでもしてリラックスしていようか」

フラン「おー。一緒にやる?」

パチュリー「少しだけなら」

三人『わいわい』

レミリア@壁から様子を覗いている「…………」

咲夜@レミリアの後ろ「お嬢様、入りたいならそうおっしゃれば」

レミリア@咲夜に気付かなかった「ち、違うわよっっっ」

1.(遊)咲夜
2.(右)レミリア
3.(中)依姫
4.(左)フラン
5.(一)妹紅
6.(指)空
7.(三)鈴瑚
8.(捕)キスメ
9.(二)影狼
P 赤蛮奇

(同時刻、観客席の様子)

観客A「ま~た変なオーダーに戻したwwww」

観客B「でもあれで点も取れたし、昨日みたいな試合はなくなるんじゃない?」

(ベンチ)

攻撃力を下げてまで変に守備に気を使うのはやめた。

2番レミリアさんも復活。

フランさんも空さんも同時に起用する重量打線。

このチームが持つ圧倒的火力。これで白蓮さんを攻略する!

特例ちゃん@当初はスタメンで起用予定だった「解せぬ」



(1回表)

(よし、先頭の咲夜が出塁して盗塁も決まった。無死2塁の好機。レミリアさん、依姫さんの絶好調コンビで先制するぞ)

しかし、内野フライ、内野フライ、外野フライで攻撃終了。

1回表は点を奪うことはできなかった。

こうもきっちりと投げ分けられると点を奪うのは至難の道だった。

一方で、先発投手の赤蛮奇さんは毎回出塁を許す、お世辞にも良いとは言えない投球内容だった。

しかし、どんなにピンチでも先制点だけは与えない。

1回裏は本当に危なかった。3連打で無死満塁という状況にまで攻められていた。

(ここで試合を決められるのはきついぞ……)

打たれた様子を見るに、ストライクを取りに来やすいカウントから相手に自分のスイングをされていた。

(輝夜さんなら2人目あたりからベンチの様子を見てくるが、果たして……)

今日のスタメンマスクはキスメさんだ。

スタメンマスクを伝えた際、相手打線に対する注意を3点伝えただけで、それを踏まえてくれたらある程度任せると言っておいていた。

――その3点って何ですか?

①ボールを使ってもいい打者、②無理に勝負しなくてもいい状況、③盗塁

――ありがとうございます。続きをどうぞ。

…………。満塁ということでようやくベンチを見てきたので、内野の守備位置だけコーチに伝えた。

キスメさんもそれだけ確認すると投手にサインを送り始めていた。

(お、自分で配球で行くのか)

嬉しさと期待と不安が入り混じった心境で戦況を見つめる。

そして、ここでバッテリーは踏ん張った。

4番純狐さんを内野ゴロで本塁封殺にすると、5番幻月さんも内野ゴロの併殺打。

(すげーーーーー)

思わず拍手を送る私。

ウイングスは初回の大ピンチを何とか無失点で切り抜けた。

(3回表。ウイングスの攻撃)

下位打線からのスタートだったので、いい形で上位に戻したかったが、相手投手の方が上。

軽くひねられ、既に2死。

ランナーが1人もいない状態で1番咲夜さんを迎えた。

ここから点を取るにはクリーンナップのところまで連打が必要となるが、ウイングスは2番に強打者を置いている。

だから、咲夜さんがチャンスメイクしてくれれば、2死でも得点の可能性は依然として高いままだ。

すると、咲夜さんの放った打球は外野の間を抜けていき、打者走者は2塁まで到達。

いい形でレミリアさんに打席を回すことができた。

(どうしてもここで先制点が欲しい)

そう思うと、私は気が付くとレミリアさんの名前を呼んでいた。

「どうしたのよ。いつもの?」

いつもの、とは試合中に行う耳打ちである。

手元にあるデータと勝負勘から配球や狙い球をアドバイスし、打席に送る。

人々からは激励などと呼ばれ、試合のターニングポイントに捉えられている。

私は頷くと、一言二言レミリアさんと会話を交わし、ベンチへと戻っていった。

この行動、相手からも警戒されるので、たまにアドバイスする振りだけしてベンチに戻ったこともある。

しかし、今回は振りではなく、具体的なアドバイスだった。

初球変化球から入ったらインコースから真ん中あたりをフルスイング。

初球真っ直ぐから入って来たらアウトコースをコンパクトに打つように言っておいた。

すると、レミリアさんへの初球。

外へ逃げる変化球を選択してきた。

しかし、少しも反応せず見送る。カウントは1ボール。

2球目。もう一度同じボールで誘ってくるが、見送ってボール。カウントは2ボール。

続けて誘いに乗って来なかったので、歩かせるのかと思った3球目。

アウトローに真っ直ぐを投げてきた。

審判の手が上がる。カウントは2ボール1ストライク。

(次の球誘って振って来なかったら歩かせるかな?)

ストライクを取ったものの次の球がボールとなれば、打者有利の形で勝負しないといけなくなる。

そう思うと、投手心理としてストライクが欲しくなり、4球目はコースが少しゾーンに近い場所になった。

レミリアさんがそれを狙っているとも知らずに。

完璧に捉えていた。

レミリアさんは打球を見ながらゆっくり歩いており、観客たちも思わず立ち上がって打球の行方を追っていた。

その打球は放物線というよりはライナーに近い弾道であった。

しかし、失速せず外野手の頭を通過しておき、そのままスタンドまで飛び込んだ――いや、突き刺さったという表現が適当かもしれない。

直線のままスタンドへと消えていったので、観客の方を心配したくなるような打球だ。

フルスイングとアドバイスをしたが、本当にホームランを打つとは思わなかった。

私は若干ポカンとした表情で咲夜さんとレミリアさんがベンチに戻ってくる様子を見届けていた。

2死走者なしから打者2人で一気に2点。

欲しかった先制点がウイングスに入った。

しかし、相手チームも黙ったままではなかった。

4回裏に1点返されると、5回裏には藍さんのホームランで同点。

振り出しに戻ってしまっていた。

同点に追いつかれた直後の6回表。

ウイングスは円陣を組んだ。

これまでの傾向からして向こうはピンチになると外中心の配球になるから強引に行かないように、と注意した。

まず、咲夜さんが出塁した。

こうなると、2番からの強打者には外中心の配球になるが、わかっていてもそう簡単に打てる投手では無い。

うまく打っても打球は野手の正面。

せっかくの先頭打者出塁も一気に2死。

4番フランさんが打席に入る。

それは初球だった。

フランさんはアウトコースの球を逆らうこともせずに流した。

と書くだけだと大した打球に思われるが、弾道がおかしい。

高く高く、だが、ポップフライではない強い打球が外野席へと飛んで行った。

いや、外野席どころか球場の外まで出て行きそうだ。

おいおい。

思わず、そんな声が漏れた。

レフトも打った瞬間、追いかける気すら無く、ゆっくり下がって見上げるだけだった。

普通のホームランより滞空時間の長いホームランがようやくレフトスタンド上段に着弾すると、ものすごい歓声に変わった。

敵チームのファンも一部手を叩いている人もいたくらいだし。

――ベンチの様子が映りましたが、監督たちが呆れてましたね

なかなか見られる打球じゃなかったよ。

すごかった(小並感)

確かに、外中心だから強引に行くなとは言ったよ。

でも、あれは球に逆らわず打ってできる打球ではないよ。

ともあれ、これで再び2点差。

しかし、このホームランの衝撃は点差以上の価値があった。

味方を大いに励まし、相手の心を折る一撃だった。

その証拠に直後の6回裏の赤蛮奇さんはこの試合始めて相手打線を三者凡退に抑えてみせた。

完全に流れはこちらのものだった。

7回表。

この回も先頭打者が出塁した。

しかし、下位打線なのでバントを使って得点圏に走者を進め、上位打線を迎えた。

2死2塁、打者は1番咲夜さん。

これまで全打席出塁していた。

ベンチから見ていると、バッテリーが悩んでいる様子が見られた。

勝負するか、しないか……。

次の打者はホームランを打っているレミリアさん。

しかし、ここで咲夜さんと無理に勝負して失点するようであれば、3点差になり、敗色は濃くなる。

悩みどころであった。

こうなると、打者は最初から有利の立場に打席に立てる。

そして、投球数を重ねるごとに打者有利の状況が加速していき、カウントまで打者に味方し出した。

結局、手ひどくやられた2番レミリアさんとは勝負したくなかったのか、打ってくださいと言わんばかりのボールが投げられ、咲夜さんは強振した。

打ち上がった打球を見た瞬間、行ったと思う打球だった。

観客は固唾を呑んで、打球の行方を追い、ライトが打球を見送ると大きな歓声に変わった。

吸血鬼たちの規格外ホームランと違い、ガッツポーズする余裕が私にもあった。

――他の2本と違って、口角が上がっていのがわかりましたよ

やはり、そうでしたか。

これでスコアは2-6。試合を決定付けるホームランとなった。

試合終了【妖2-6薬】

結局、3本のツーランホームランで圧倒したウイングスが勝利。

前日の完封負けを引きずらない見事な勝ち方であった。

(試合後の会見)

「自慢の強力打線のおかげで好投手を攻略することができました」

「赤蛮奇さんも相手にリードを許さない投球で、流れを渡さなかった。いい投球でした」




Bリーグ監督日記(抜粋) 第2節と第3節

2016-03-18 00:08:37 | 東方野球幻想入り物語
(第2節の対妖怪寺@薬局ホーム)

開幕に敗れた八意薬局ウイングス。

次の試合はホーム開幕戦。

しかし、この試合は1対1の延長戦に突入した。

こいしさん以外に投げる投手がいないということで

続投を続けるこいしさん。

疲労もしているが、構わず続投。

――ブルペンは誰も準備していなかったんですか?

昨日の惨状がありまして……

――あっ……(察し)

何が何でも可及的速やかにサヨナラ勝ちをしないといけないブルペン事情でした

――切実過ぎるぅー

11回裏。

向こうはこの回から一輪さんを投入

燐も投球練習で少し荒れていた球を見て、待球作戦を指示すると四球で出塁。

すると、今度はすかさず盗塁を指示。

初球から走ると、なんなくセーフ。

無死2塁という絶好の機会を作り上げた。

ベンチで少し壁寄りかかりながら試合を見つめていた私は、

(後は4番5番にお任せかな)

と考えていた。

指揮官としてここまでお膳立てをした。

ここから先は選手たちがやる時間だ。

ただ、11回裏で勝たないと本格的にブルペン事情がまずい。

冷静に見守る気持ちの中に、焦る気持ちが少しずつ浸食してきていた。

ただ確実に決着の時は迫っている。しかし、私は気付くこともない。

そして、その瞬間はあっけない形で訪れた。

4番妹紅の叩きつけた打球はボテボテでサード方向へ。

相手のサード星が猛ダッシュ。捕球。体勢が悪い。そのまま1塁へ送球。

「あ」

その時私からこんな声が漏れた。

妹紅も懸命に走っていたせいで星も送球を焦ったのか

体勢が悪いまま送られた球は打者走者側に逸れたのだ。

そのまま捕りに行くと交錯するために一塁手が捕れない。

一塁手の横を通過してしまったボールはそのまま神宮のブルペンの方へ。

「あ~」

敵指揮官として、もっと喜ぶべきだと思うが、私はこの結末を一人の観客のように見ていた。

引っ張りを警戒していたライト、セカンドがボールを追う。2塁走者は3塁ベースを蹴っていた。

ようやくボールを追いついたセカンドがホームに投げようとした時には既に歓喜の輪ができていた。

「なんという結末……」

辛うじて漏れた私の言葉も周りの歓声によって綺麗にかき消されていた。

 ◇

(勝利監督インタビューにて)

インタビュアー「それではホーム開幕戦を勝利で飾った尾張監督です。勝利おめでとうございます」

忠実「ありがとうございます」

インタビュアー「この勝利はどうですか?」

忠実「前の試合の敗戦を考えれば、私らしい初勝利ですかね?」

はにかむ指揮官。

このリーグ開幕以降、初めて見る彼の笑顔であった。

しかし、ここで終われば、普通の試合振り返りになるが、そうはならない。

それが彼が、彼たる所以かもしれない。

事件は勝利監督インタビューが終わり、慧音と監督室へと引き上げる時に起こった。

きっかけとなった一言は突然で、そして、2人の歩みを止めるには充分過ぎた。

スタジアムDJ「さー無事ホーム開幕戦を制したウイングスによる勝利のダンスパーフォマンスです。どうぞ」

(球場内にかかるダンス曲)

忠実「…………」

慧音「…………」

忠実「さてと――」

歩き出す尾張忠実。

慧音「やっぱりダンスさせているじゃないか(憤怒)」

詰め寄る慧音。

忠実「ベンチ外で何かやることがないと言われたので(目逸らし)」

慧音「(ダンスしている様子をモニターで確認しながら)途中交代した選手たちもいるじゃないか!!!」

忠実「あれは自主的に、かな? ベンチ外の選手から誘われたとか?」

慧音(途中出場でよかった……)

忠実「あ、そうだ(唐突)。慧音さんの分もあるようですよー」

慧音「なん……だと……」

忠実「着まs――」

慧音「やらない!」

忠実「はい」

この後、華扇も呼ばれ、2人からめちゃくちゃ説教された。





(第3節 対博麗@薬局ホーム)

状況:7回裏終了時点。スコア【薬1-0博】

忠実(これ、このまま逃げ切るパターンだ。きついな~)

1点リード。しかし、ランナーが1人でも出た時点で逆転されることも想定しないといけない場面だった。

【7回裏攻撃中におけるブルペンとの電話のやり取り】

投手コーチ「無失点ではあるが、阿求は準備できているか」

阿求「どうするかわからなかったし、アップだけして待機しているわ」

投手コーチ「8回途中から行けるように準備しておいてくれ。ピンチになったら交代させるぞ」

阿求「急には無理よ」

投手コーチ「そうなったら時間をうまく稼ぐから準備を急いでくれ」

8回表1死から出塁を許し、投手コーチはマウンドへ。

すると、ブルペンの電話が鳴り、小鈴が電話に出た。

阿求「(準備中)思ったより早いわね」

小鈴「この打者から投げてくれ、だって」

阿求「この打者って……」

小鈴「岡崎夢美だね」

阿求「いきなりきついところね」

小鈴「そして、とりあえず低め低めに投げてくれ、とも言っていたわ」

 ◇

懸念していたランナーが出た。

しかも打席には一発がある夢美さん。

与えられた状況としては最悪の形。

負けるなら、ここで逆転ホームランを打たれるパターンだ。

私は決断した。

①データ的に夢美さんは左打席の方が打率が悪く、右投手の方が好ましい

②ここで一番欲しいのは併殺打。ゴロを打たせられる投手の方が好ましい

以上から、この場面を豊姫に任せるべきではないと考えた。

そして、代えるなら阿求だと。

私は立ち上がり、主審に向かってゆっくり歩き出した……。



結果、夢美さんは併殺打。

この試合、最大のターニングポイントをうまく凌いだ

――これはほぼ夢美が悪いというより、相手の思惑通りだっただけ

この指摘の通りだと思う。私たちが意図した通りの結果となり、怖いくらいだ。

しっかり言い当たられたのも怖いけれど……。

もっとも併殺になったボールをベンチから見た瞬間、もう少しギリギリでよかった、という感想だった。

しかし、打球は上がらない。

セカンド正面のゴロになった。

4-6と渡り、打者走者よりも先にボールが一塁手へと転送された。

3! ダブルプレー。

「ふ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」

私は一山越え、大きく息を吐いたのであった。



Bリーグ開幕戦「1試合以上の価値がある試合と1試合以上の内容がある試合」導入編

2016-02-22 01:57:16 | 東方野球幻想入り物語
Bリーグ開幕戦

斑鳩ミラクルスターズ 対 八意薬局ウイングス

球場:東京ドーム

文「さー やってきました。開幕戦。2試合予定されており、同時進行で行われます」

文「私も忙しいので、サクサク行きますよ~」

文「まず、こちらのカード。堂々優勝宣言を紫安監督率いる斑鳩ミラクルスターズと開幕前にユニフォーム事件で有名になった八意薬局ウイングスの試合です」

(先にミラクルスターズの取材を終える)

文「それではウイングスの取材もしま――ファッ??!!!!!!」

(文の視線の先)

華扇「いいですか。そういうユニフォームで世の殿方の惑わせるような格好はですね」

忠実(死んだ魚のような目で正座中)

文「指揮官が別チームの選手から説教受けている!?」

妹紅「かれこれ1時間はあんな感じだ」

文「どうも。調子はどうですか?」

妹紅「悪くは無い。いいから向こうを止めてくれよ。だいたいお前のせいなんだから」

文「わかりましたよ。あ、写真撮ってからにしますね。アンチ尾張忠実の人々に売れますよ~」

妹紅「畜生過ぎる」

(数分後)

忠実「あー ようやく解放された……」

文「大変でしたね」

忠実「お 前 の せ い だ け ど な !」

文「だから説得したじゃないですかー。誤解だったときの表情、カメラに収めさせてもらいました。これは華扇ファンに高値で売れますよ~」

忠実「畜生過ぎる」

文「さて、時間が無いので、3つくらいの質問を」

忠実「はいはい」

文「今日のポイントはどこでしょう?」

忠実「魔理沙さんを攻略できるかどうか」

文「それに向けて秘策はありますか? 具体的にお願いします」

忠実「一応考えてはあります。ちょっとオーダーに工夫を。それ以上は、うん」

文「わかりました。開幕戦への意気込みをどうぞ」

忠実「勝てるように全力を尽くします」

文「テンプレも多くてつまらないですね(はい、ありがとうございました)」

忠実「逆になっていて、本音だだ漏れだね……。文さんらしくていいけれどw」

文「そうだ(唐突)女装しないんですか?」

忠実「今日はセレモニーがあるからね……」

文「今日じゃなかったらやっていたみたいな発言ですね」

忠実「変なジンクスにすがりたいくらい大事な試合だからね」

文「いつか絶対やってくださいね」

忠実(勝ち続けて女装だけは回避しなきゃ)

文「よし、いい記事が書けそうです。それでは」

(文、立ち去る)

忠実「……」

慧音「どうしたんだ?」

忠実「文さんや華扇さんはもう行った?」

慧音「ああ」

忠実「……よし、あああああああああああああああああああああああああ足しびれたぁああああああああああああああ」

慧音「えぇ……(困惑)」

忠実「今日座って采配していい? しばらく動けそうにないし、立てない」

慧音「わかった。手を貸せ(と言って、手を差し出す)」

忠実「(その手を取り)ありがと――」

妹紅「おーい練習時間が終わるみたいだぞ(後ろから声をかける)」

慧音「もこー(すぐ振り返り、妹紅の手を握る)」

??「ぐへー」

妹紅「何か変な声が聞こえなかったか?」

慧音「変な声? どんな感じだった?」

妹紅「そうだな。足がしびれていたので、手を貸してもらおうと思ったらその手を離されて、絶望の底へと落とされたみたいな声だったな」

慧音「えらく具体的な例えって、はっ!!!!」

忠実(ちーーん)

慧音「うわぁああああああああああああああああああああああ」

<ウイングスの開幕スタメン>
1.(遊)咲夜
2.(右)レミリア
3.(左)フラン
4.(一)妹紅
5.(指)お空
6.(中)依姫
7.(三)鈴瑚
8.(二)鈴仙
9.(捕)輝夜
P 永琳
 
<控え投手>6人
 こいし パチェ 小悪魔 阿求 朱鷺子 リリー
<控え野手>9人
 キスメ てゐ レイセン 慧音 影狼 
 お燐 美鈴 わかさぎ姫 清蘭
<ベンチ外>
 さとり 豊姫 サグメ 小鈴 赤蛮奇

観客A「2番おぜう!?」

観客B「2番おぜうとはこれまた(^^;」

(同時刻)

忠実「前倒し打線!」

咲夜「ほ~ 遺言はそれだけですか(殺気剥きだしの目)」

忠実「ええっと、2番打者ってつなぐ打順みたいなイメージがあるじゃないですか」

咲夜「そうね」

忠実「でも、意外と試合の終盤は他の打順よりもチャンスでまわってくる。仮に3番、4番に置いておくとそこまでまわらずに終わってしまうことも多い」

忠実「だから2番に一番の強打者を置く。しかも今日は魔理沙さんだ。バントは普通にアウトを1つあげてしまう行為になりかねない」

咲夜「一番の強打者……」

忠実「そうさ。レミリアさんには自由にやらせる。見た目の打順やそれに伴う偏見なんて捨ててほしい。2番でも細かいことは求めない。失敗したら私の責任でいい」

忠実「だから、いつものように2番咲夜さん、3番レミリアさんのつもりでやってくれ」

咲夜「……」

忠実「今日は強行策を多用する以上、併殺は仕方ない。それよりも自慢の強力打線で振り回して、魔理沙さんを打ち砕く!」

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(試合後)

試合終了【ミラクルスターズ13-11ウイングス】

(記者席)

忠実(ちーーん)

文「すごいですね。幻想郷リーグMVPの魔理沙投手相手に2桁得点ですよ。2番レミリアは2本のホームランですし、采配ばっちりだったじゃないですか」

慧音「やめろ!!!! 煽っているようにしか聞こえないからっ!!!」

文「一方で投手陣が崩壊。先発がわずか3回でノックアウト。その後も失点を続け、2桁失点。で、結果13対11で敗北ですね」

慧音「カオスな試合内容だから、一部の観客は振り返ることを拒否したらしい」

文「私は別の試合に出場していたので、この試合1回から振り返ってもらっていいですか?」

慧音「いいぞ」

文「そうしているうちに、彼も復活するでしょう」

忠実(抜けがら)

慧音「そうだな(優しい目)」

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導入編終了