前回:3-2
度会さんが引退……。
すげーショック。
・コメントにレス
>ガンさん
け、慶応式だと……。しかも、小学校の頃からやっていたとは
しかも、ブログで拝見する限りでは審判まで……。
もっともっと、プレイヤーとして頑張っている姿が見たいです。
それ以外なんて、できなくなってからだってできるんだから……。
巨人の優勝争いについて。
開幕時の1番高橋由、2番二岡という訳のわからないものから
1番鈴木、2番木村拓という他球団のファンでも納得できるような
オーダーになったのが原因だと思いますね。
優勝争いとかいいな~。
では、第四話です。
ここから~~
ペナントレース開幕を数日前に控えた、その日の練習。
オープン戦も全日程が終わり、チームの緊張感がいい感じに高まってきている。
それは練習に対する態度やプレーにも表れてきている。
私は気合いの入った練習の掛け声を聞きながら、ミーティング用のレジュメ作りに励んでいる。
今いる場所は幻想郷スタジアムの管理室。
グラウンドから窓一枚隔てただけその場所は、少女たちの声を遮るには薄すぎて、私もアリスさんからもらったユニフォームを着て、練習のお手伝いをしたい気にさせてくれる。
しかし、全体練習の後、オープン戦の最中から渡しているデータシートについて1からチームのみんなに説明することになっている。ま、ある種の講演会だ。
この講演次第でデータ軽視の風潮がチーム内に浸透してしまう。私のデータが意味不明で、使えないものだと思われてはいけない。だから、取っ付きやすく、さらには理解しやすい講演にしなければならない。私の仕事をチームにとって必要なものだと理解してもらうためにも、課せられた責任は非常に重いのだ。
というわけで、手を抜けらないからお手伝いを休んで、この講義のために専念しているというわけだ。
(コンコン)
ノックの音がする。
「……んっ、あ、どうぞ」
入室を許可すると、ドアから『うち』の監督が現れた。
「どう、できそう?」
「まあ、なんとく」
「何よそれ。まさか、サボっていたとか?」
「いえいえ、ちゃんとできましたよ。欠席者用も含めて」
そう言って、書き終わった紙を見せる。
「ふーん。じゃ、すぐに移動して始めるからお願いね」
「はい」
忘れ物がないかを確認してから私は部屋を出た。
小さな足音が廊下に響き渡る。
アリスさんが先を歩き、私はその後ろを従者のようにつき従って歩いている。ひたすら、沈黙が支配している。
今回の教室となるのはロッカー・ルーム。そこへと歩を進める。さっきまでいた部屋からさほど遠くはないのだが、非常に遠くが感じる。足が重いのだ。
……あああああ、緊張する。「なんとなく」なんて言ったのは、緊張していて考えがネガティブだからである。
そこに「お二人さ~ん」と、急に後ろの方から声をかけられる。
「紫さん」
私たちは振り向いてから、その声の主を呼んだ。
「どうしたの?もう始まるから早くロッカールームに……」
「困ったことにね、結界の修理があるのよ。だから欠席ね」
「な、なんだと……言い出しっぺのくせに」
この講義をやることになったのは紫さんのせいなのだが、まさか本人が欠席とは……。
そもそも、こうした経緯は昨日に遡る。
オープン戦の最終試合、あの「スコアラー・涙目で敗走事件」の後、アリスさんが帰り、気を取り直して、その日の試合の分析が始めたのだ。
まあ、いつも通り数時間かけて終わるわけだが、特に面白くないのでここは省略。
「終わった後のコーヒー、うまーー」
こうして一通り終わり、一服していた時のことである。
勝手に――ま、元々アポを取るような人ではないが――紫さんが入室してきた。
「……ちょっと、お邪魔するわね」
「邪魔するなら帰って~」
「はいはい」
再びにゅっという音を立てて、後ろにあった気配が消えた。
「……」
「……」
再び部屋は沈黙するかに思えたが
「って何、追い払おうとしているのよっ!!!」
紫さんが怒り口調で、再び出現した。
ちっ、気付かれたか……。
「でも、ここまでやるのが約束事ですし」
私としては譲れないのだが、この発言は紫さんの怒りを買ったようで
「うふふ。次は誰にホームランを打ってもらおうかしら♪」
なんてことをおっしゃいますか、この御方は。
しかし、あんなことは二度とごめんである。
「追い出そうとしてスイマセンでした。ご用件は何でしょう」
ビシッと右手を前に出し、執事が主にするお辞儀のポーズを取る。ビシッとね。
失礼な態度をとったことは申し訳ないと思うが、全くいやのことを思い出させてくれるよ……。
今日みたいに飛び起きる程の出来事を増やさないでください。
「スコアラーさん、私のデータはあるかしら」
紫さんは私の内心とは無関係に話を進めた。熱心にも自分から今日の配球表がないかと聞いてきたのだ。いい傾向である。
「今日の分ですね?……もう、できていますよ」
私はそう返事をすると、お目当ての物を探し始めた。
目の前にある机の……どこかにあるはずだ。さっきまでやっていたし……。
少々不安だが……コーヒータイムを中断し、紙の山を崩し始めると
「おっ、ありましたよありました。これです」
見つかった。
この渡すデータシートには左半分に例の9×9の配球用のマスが、右半分には上から見た守備位置が書かれ、飛んだ方向が記されている。対戦する打者ごとに1枚ずつあるので、計数枚にもなる。
紫さんはじーーっと、そのシートとにらめっこを始めたが……。
「ふーん。やっぱり、よくわからないわ」
「へ?」
「だから、前から渡されているけれどわかりにくいのよ。これを見てもどう次に生かせばわからないし。私たちはちょっと前まで野球の素人だったのよ」
「た、確かに……」
なんという衝撃の一言。
よかれと思っていたことが、役に立っていなかったとは……。
これはまずい。チーム内にデータ軽視のムードが出来上がってしまう。
それだけは何としても阻止しなくては。
「アリスさんに言って、ちゃんと時間をとって説明する時間を……」
「その必要はないわ」
しかし、急に止められた。
「え?どうして……」
私は疑問を口にする。なんだなんだ、そう言ったことを教えるためにココへ来たんじゃないのか?
「私が既に明日のミーティングで講義することを決めておいたから」
「な~んだ、そんなことか……って、エエエエーー」
混乱している間に、紫さんは説明をし出した。
うん、少し上の空だが、どうやらここに来る前にアリスさんと話をつけていたらしい。それだけはわかった。
「……というわけで許可は出ているし、せっかくだからデータに関する想いとか――私たちが優勝するのに足りないもの、そういったものを言ってほしいわね。もちろん、それは貴方がそう思っているもので構わないから……。どう、やってくれる?」
「うーん」
私は考えをめぐらせた。
タートルズが優勝するのに足りないもの……か……。
影ながらチームを支えているが、チームに関しては色々と思うことがある。
まずは意識付け。
戦う集団としての意識を持ち、目の前の試合に集中することだ。
どうもベンチではただ休んでいて、相手の配球を見ようとはしていない。
確かに、事前にデータが揃っていることはあるのだが、それはあくまで参考資料だ。前の試合と違う配球をしているかもしれないし、前と同じ調子、同じ傾向であるとは限らない。
自分たちだって、毎試合中心となる球種が違うのだから、目の前で展開される相手の球種を分析し、傾向を調べればいいのに……。
でも、これは発展的だから……まずはデータを、勝つためには必要な道具だと思ってもらうことが大事かな?
現状では事前のデータでさえ、参考資料とは思っていないわけだから。
となると、私はこういう事から選手たちに教えないといけないのか。
「……そろそろ答えてほしいわね。どうなの?」
思考が中断される。よく考えれば、もう既に自分の中では承諾していてどういうことを教えようかとか、そういうことを考えていた。ちょっと先走り過ぎだな。
「ええ、もちろんやりますよ」
快諾する私。
「そう。じゃ、ミーティングは全体練習の後だからよろしくね」
(にゅ)
「はあ~。全体練習の後か……」
え、明日の……全体練習の……あ、と……。
「時間が、ねーーーーー」
紫さんが去った後、管理室にはそんな叫びが響いていた。
はい、回想終了~。
最近思うのだが、紫さんって私の上司?
そうなると、上司の指示でアリスさんに仕えているわけだから……。
とりわけ、私は取引先の会社に出向している別会社の社員か、派遣しゃ……いや、やめておこう。頭が痛くなってきた……。
「明日は大丈夫なの?」
私を遮って、アリスさんが紫さんに質問する。
「さあ、どうかしら」
しらばっくれる紫さん。
私はそれを聞き、思い出したかのように手元にある紙の中から一部抜き出し、それを紫さんに手渡す。
「とりあえず今日の分は明日までに提出ですから」
「何のことかしら?」
「欠席者用にレジュメを作っておきました。中には理解度テストがありますから、ちゃんと提出しておいて下さいね」
事を荒立てないよう笑顔を見せ、お願いする。
チーム内には兼業で参加してもらっている人もおり、全体練習にもろくに参加できず、今日の練習にも欠席している。他にも練習に不熱心な人がいることも承知しているので、欠席者用も作っておいたのだ。読んだだけでミーティングの内容が分かるように。
「……善処しておくわ」
若干不満げな表情も見えたが、ちゃんと受取り、紫さんはスキマの中へと消えていった。
……ちゃんと、やってくるのかね。
紫さんと別れてから、わずか数秒。私たちはロッカールームの前まで来ていた。
「じゃ、開けるわよ」
黙ってうなづく私。
アリスさんがドアを開けると、部屋の中から黒板が見えた。
そこまで、わずか数歩。
スコアラーが専門なのに、時にはデータの見方を教え、考え方の一例をあげ、野球論についても講義することになるとは……。
つくづくこき使われているよな、私。
心の中で溜息をつきながらも歩をすすめ、黒板の前に立つ。
「ミーティングを始めるわ」
アリスさんが前に立って、そう宣言する。
「今日は忠実くんが前から私たちに渡していたデータについて説明してくれるというので、よーく聞いておいてね」
と、ここでアリスさんは私の進行を任せた。
ふ~。
私は深呼吸をして正面を向く。
(う……)
こんなに多くの女の子に視線を送られたことは、初めてかもしれないな。
「で、では、講義を始めます。テーマはデータの必要性について。まず、『なぜ』という疑問が持たなかった人は最悪これをそのまま覚えていてほしいことがあります。それは『データは楽に勝つための道具』であるということです……」
こうして人生初、私の講義が始まった。
ちなみに、こうした話をするため、一応、彼女たち選手の手元にはそれぞれノートが置かれてはいる。
しかし、講義の方は、というと……
「(ガチャ)遅れました~」
「遅刻なのかー」
「…………(すやすや)」
「(もぐもぐ)」
「(……様、せっかくお話しされている時にお食事は……)」
サボる者、遅刻して来る者、忘れて来る者、寝ている者、さらには何かを食べている者など真面目に聞いてくれる者は限られている。
最近の小学校よりひどいぞ。
まあ、いいや。
ヤクルト黄金時代を築いた監督は、相手と戦う前にまず、選手との戦いに勝たねばならないと言っている。だから、ミーティングをその戦いの場ととらえて、自分の野球観や人生観を説いていたらしい。
やはり、最初は選手たちも怪訝そうに見ていたらしいが、回数を重ねるうちに理解を得るようになったとか。
私も同じ立場だ。人生論を語れる程生きてはいないが、こうやって自分の考えをちゃんと理解してもらえば、必ず試合に役立つと思っている。
ほぼ「その監督さん」と同じことを言っているようなものだが――まあ、私自体が在学中に「その監督さん」の著書を読み、そういうことしか言えないだけではあるが――こうした考えの元野球に取り組めば、絶対にチームは強くなるはずだ。実績はあるし、こうして「その監督さん」の考えの元まとまったチームは何度もリーグ優勝を遂げた。
今回はそうやって優勝させてもらった考えを伝える番なのかもしれない。
まあ、受講態度に関しては、そのうち改善するだろう。彼女たちを優勝させるためだ、私だって耳にタコができるまで何度だって言ってやる覚悟はあるさ……。
~~ここまで
・ちょっと一言のコーナー
他の話を作っている最中のことです。
今後どういう展開をとるにしても、シーズン前にこういうことをしておかないと
シーズン中にスコアラーが活躍するための基盤ができないじゃなかろうか……。
そう思ってその話の作成を中断し、これを作りました。
おい、ちゃんと構成を練っておけよ……。(←自分に向かって)
orz
野球好きじゃないと、こういう話っておもしろくないヨネ……。
第四話は、もう少し続きます。
きっと今の経験がプレーをする側になる時に役に立つはずだと思い日々物事をこなしとります。
・・・それが来ないかもしれませんが・・・
審判は小学生くらいの試合なら主審をこなしきれると言う根拠の無い自信なら御座いますw
文句言いませんし変化球は無いですしw
塁審は相手が誰であれ完璧にこなせる位場数を踏みましたw
主審は塁審より場数を踏まないとダメみたいです・・・
つばるとさんもお体にお気をつけて。
ではチャットで会いましょ~ノシ