ダイキャスト情報室

鋳造品の品質を決めるのは、方案と排気かな。。。。

ニッポンものづくり研究-「金型」入門(書名)

2020-08-16 | ダイキャスト・ダイカスト

 友人から面白い本を読んだと電話があった。私が金型関連の仕事をしていることを覚えていてくれて連絡を入れてくれた。著者は堀幸平さんというこの業界では油の乗った中堅で(書いている私はこの業界の上限70歳にあと2年しかない)私の愚痴の多いブログに対し金型業界のことをプラス思考でとらえていて問題点の指摘も的確だった。

その指摘のなかでいくつかを挙げると-----

(1)型メーカーは営業が苦手----確かに駆け引きが苦手で、材料費や工具代が上がっていても、金型代金は前回と同じと言う場合(前回より下がる場合もある)が多い。

(2)金型メーカーは、型のトラブルが心配で過剰品質になる----これも確かにある。出荷した金型はあまり帰ってきて欲しくないんだよね。

(3)金型を使う側は、金型の技術に対するリスペクトが低い----これも確かにある。ひどい会社は初回の金型だけ日本の腕の有る金型メーカーで作り金型の保守のために図面を要求し、その図面を持ち出して2番型以降を海外で作ってしまうとか、日本国内でもっと安い金型メーカーに依頼するとかは、昔はよくあった。今も有るあるかもしれない。 私も同じことをやられたことがあった。以前ブログにもあげたが、私が設計手配した金型は初回試作でまったく問題なく試作品を出したが、その図面を参考にその依頼会社が他社で手配して作った金型数点は使い物にならなかったらしい。私の図面はいつも付き合いのある金型職人が作ることがわかっていたのでなるべく図面に情報を入れないで作成したのだが、その辺の考え方が金型製作側に伝わらなかったのだろう。ちなみにその倫理感の希薄な会社と付き合っていた金型メーカーのうちの3社(H、T、埼玉H)は廃業している。1番型を作った金型メーカに2番型以降は任せることという法律を作らなきゃだめだな。この問題の方が余程日本の安全保障に関わることだと思う。イージスミサイルよりも金型メーカーを守る方が防衛費の使い道としては正しいだろうな。

あまり本の中身について書いてしまうと営業妨害になるので、関心のある方は、こちらで

https://www.amazon.co.jp/gp/product/4344926188/ref=ppx_yo_dt_b_asin_title_o00_s00?ie=UTF8&psc=1

幻冬舎(この会社にあまり好意もっていないです)の新書です。

'20.09.07 語句訂正

 

 


亜鉛ダイカスト

2020-08-09 | DieCast

鋳造機の耐用年数

昔(30年ほど前です)日本と米国のダイキャスターを比較した資料を見ていたら、新規購入したダイキャストマシンの更新時期が日本の13年程度に対し米国では20年ぐらいになっているという記事が目についた。その時に、これは生産性に差が出るなと感じたものだ。その後運良く米国のダイキャスターを見学する機会があり工場を覘く(のぞく)と、確かに日本の工場に比べ生産設備は古くあまり設備投資をしていないことが覗われた。歴史あるDoehler-Jarvis社もその後不調が伝えられ、日系ダイキャスターの北米進出も活発になっていった。

ここからが本論です。'20年7月にある企業向けに金型とかランナーの話をしたのですが、その時に射出速度の設定値を確認をしたら、スピードは(例えば 4m/secとかの答えを私は期待していた)数値ではなくのバルブの開度で回答がありました。ここで困りました、その答えを聞いてから、その先の展開を予定していたのですが崩れさりました。射出速度からゲート速度、充填時間、凝固時間という流れにならないのです。ここでその先の展開を諦めました。

350トン以上のコールドチャンバーではマシン側に鋳造圧力、射出速度、射出チップ位置が常時確認できるようになっていて(1995年頃からと記憶します)マシンの不調もここから確認可能となっていたのですが、小型ホットチャンバーの場合、マシンの耐久性も高く鋳造機の更新期間がかなり長くなっているようで今も射出速度の確認ができない機械が使われているようです。(現場未確認のため想像です)もちろん現在新規販売されているホットチャンバー機には速度と圧力の確認装置が付いているようです。

鋳造機のバルブ開度を設定値にしたから設定通りの仕事をしているはずだと言う考え方は間違っていて、気温+湯温(金属とオイル)+機械のご機嫌+鋳造担当者がしっかり朝食を食べたか等のばらつき要因があり、いつも設定通り動いている保証はほとんどない。その確認を鋳造品でするか測定データから確認するかということになります。良く音を聞いていれば判るとか言う方もいますが、これも気温+気圧+体調+老化+耳にゴミが詰まっている等、信頼できるものではありません。社内技術の伝承もできません。というか若者には意味が?解りません。

それではどうしろというのか。現状の古い鋳造機を使うなら最新のセンサーで速度と圧力さらにピストンの位置を確認できるようにしましょう。鋳造機の特性を確認して規定の射出性能を出していない機械はスクラップにしましょう。多分、設備は償却はすでに終了していると思います。「あの金型は、あの機械でなければ品物が出ない」ということをやめましょう。どの機械でも鋳造できるようにしましょう。

上記の他にもいくつか指摘事項があるが、このブログはオープンなのでここまでにしましょう。残りは改善しようという方向になったら順に対応しましょう。

下は台湾のSimhopeのホットチャンバーマシンの操作画面。