ダイキャスト型の冷却に関する調査 「Untersuchung zur Kühlwirkung in Druckgussformen」 と言うオーストリア発の修士論文(Wolfgang Gösslさんの力作)、2011年10月の作ですがインターネットで公開されているので興味のある方はどうぞ。pdfで100頁近いですがね。
要点だけを掻い摘んで要約しておきます。論文要旨と筒井の意見が区別しにくかったため修正しました。'21.07.09
論文の目的は、熱伝導率の異なる鋼材が冷却性に与える影響を調べるというものです。
1)巣の原因は、ガス・離型剤の残渣の巻き込みと収縮によるものがあるが充分な圧力供給が有れば良いが、通常はゲート部の凝固が先行するため肉厚部の強度・伸びは低下する。----ゲートの厚さを厚くするか、あるレベルで妥協するか。
2)論文ですから、しばらくフーリエさん・シュテファンボルツマンさん・ニュートンさんの方程式の説明が有ります。
3)鋳造サイクルにおける熱の40~60%は環境と鋳造品自身を介して、また同じく40~60%は温度制御システムを通して排出される。----つまり半分は冷却系へということ。
4)クーラントの流量は重要なパラメーターで、冷却性能に大いに影響がある。----私の知っているある企業も水圧管理が悪く(水圧が低く)冷却が効かない安定しないと言っているが原因は必要な流量が流れていないためです。ここは理解してほしい。
5)水と油の熱伝達率が異なる為、留意が必要である。油:1000~1800w/mx2・K 水:2300~3500w/mx2・K 空気:50~300w/mx2・K。 ----だからMgには油が向いていて、流路径(接触面積)を大きくすれば安定した温度制御が可能となる。
6)金型の温度制御は、メディア(流体)の流量と金型の熱伝導率にほぼ依存する。-----熱伝導性の良い材料は応答性もよく使えるということらしい。
7)シリコンの多いアルミ材は、さらに多くの冷却を要求する。---だから高シリコンの鋳造は嫌がられるよね。
8)冷却媒体としての水の優位性-------熱容量が大きい。熱伝達率が大きい。低粘度で流動性が一定。廃棄が容易。温度上昇しても安定である。温度制御システムが安価に容易に入手できる。油は高温でクラッキングが起こり、酸化・引火点の低下がおこる。
9)冷却媒体としての水の欠点---蒸発により成分の割合が変化する。流路で石灰化が起きる。過熱部にてスケールが発生する。成分によりの腐食が起きる。キャビテーションにより故障が起きる。------だから水の管理が重要だよね。
10)ジェット冷却と高圧炭酸ガスによる冷却を比較----訳者が関心を持たなかった部分。
11)入れ子材の熱伝導率-----この論文のポイントであるが、材料はビューラーウデホルム(オーストリアの企業、日本では英語読みしてボーラーウデホルム、材料はアッサブ)のプレミアム材である。熱伝導率が普及品より10~13%ほど向上しており、今回の実験からは優位性が確認できたとしている。日本国内でも伝導性の良い鋼材が国内メーカ-から発売されている(はず)。
12)溶湯の接触部と熱電対の距離が8㎜以上離れていると、鋼材の熱伝導率の差が冷却性に対してはっきりしなくなる。-----ここが今回の材料押しの弱い部分。
13)熱媒体が水と油では、型の冷却速度に差がある。 -----特定な条件で型温に50℃以上の差がある。油は温度変化がゆっくりしている。
14)冷却部品(スポットとかカスケードタイプと呼ばれる噴流を使うもの)の使い方でもわずかに差が発生する。-----流速を確保して乱流が起きることが重要。
15)圧縮炭酸ガスによる冷却は、能力は低いが回路は単純である。-----水冷できない場所には有効である。
16)プレミアム鋼と油の組み合わせなら、スタンダード鋼と水の組み合わせの方が冷却能力は高い。
17)冷却部品(噴流)を使った水冷穴が深い場合は、入り口と奥で冷却性に差がある。冷却構造を再検討する必要がある。
以上、大まかですが。
翻訳はWORDの翻訳機能を使った。
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