毎年、年明けになるとスキー・スノボ好きは血が騒ぐようだ。
だいたい年明けになると、「今年も行こう」という話が出て
1月中旬から2月の初旬に、有志を募って出かけていく。
ところが今シーズン、この時期になってしまったというのは
あの記録的な大雪が原因であった。
それでもそろそろ大雪のニュースも収まったというので、
例年通りやってきたのは、群馬県は水上にある奥利根スキー場。
実を言うと、オレはスキーというもの、出来ることなら行きたくはない。
天気が良ければいいのだが、大抵は吹雪いて前も見えないような日がある。
寒さはイコール心細さである。
オレのスキーの腕前は、中の下といったところで、もちろん自信がない。
スキーを初めてやったのが、小学生の頃。
子供の頃というのは、飲み込みが早いのでそこそこは滑れるようになる。
それから10年近いブランクがあり、社会人になって
やはり会社の連中に誘われて行ったのが2回目。
自転車や車の運転と同じで、こういうものは体が憶えているもので
ちょっと滑っていれば、大体感覚は戻ってくる。
それでも仲間に強引に上の方まで連れて行かれ、
初心者にはつらいコースを、無理矢理滑らされる。
斜度30度というと、分度器で見れば僅かな角度に見えるものだが
スキー場で30度のコースを上から見ると
大袈裟でなく90度近い、まさに「絶壁」のような角度に見えるものである。
恐怖心に寒さと心細さが加わって、それこそ泣きたい気分になってくる。
ニョウボと一緒になってまだ間のない頃。
子供らもなんとかスキーが出来るようになった10年ほど前、
初めて家族でスキーに行ったときのこと。
子供らはまだ小さかったから、ソリに乗ったり下の方で雪遊びをしており
オレはニョウボと一緒に、結構上の方までリフトで上がった。
ニョウボはそこそこやる。中の上といったところで、もちろんオレなどより上手い。
申し上げた通り、オレは中の下の腕前なのだが
まだ、いわば新婚のような時期でもあり、見栄もあった。
「コッチのコースを降りようよ」と誘われるままに向かったのが中級者コースである。
それでも斜度は20度程度であろう。
ニョウボは先にスイスイと降りていってしまったのだが
まるで目のくらむような坂である。
え~い、ままよ!と覚悟を決め、降りようとしたものの
やはり恐怖心には勝てない。
コースのほぼ半分は尻と背中で、命からがら滑り降り…というより落ちてきたら
まだ保育園の子供らと、一緒にニョウボが笑ってやがる。
それ以来、スキーというとその無様な姿を話のネタにされる。
車の運転でもそうだが、初心者というのは恐怖心が買って慎重なものなので
転んだりしても、そうそう大怪我をするということは少ない。
一番危ないのは、そこそこ上手くなった時期なのだ。
今、ゲレンデでは半分以上はスノーボードである。
オレは今更スノボを憶えるのはイヤなので、いまだに未経験。
なにしろ両足を固定された状態で、転倒する恐怖は想像するだけで怖い。
スノボで転倒し、脊髄を損傷して車椅子生活を送っているなんて話を聞くと尚更である。
実際にそういう不幸な目にあった方も多いと聞く。
今回のツアーでも、サイレンを鳴らしてゲレンデを走るスノーモビルを何度も見た。
ちょっと前に終わったオリンピックの影響もあるのか、
やたらと無茶をするボーダーが増えていると、レンタルスキーのおじさんも言っていた。
ロッジの前で休んでいると、サイレンを鳴らすスノーモビルが降りてきた。
後ろには頭に包帯を巻き、まだ顔に血の跡がついている若者が乗っている。
その後ろからは、血で汚れた雪を運んでくる係員。
ゾッとするような光景である。
一緒に来た友人に聞くと、やはり中途半端に上手くなると
ジャンプや、いろんなことをしてみたくなるのだそうだ。
このゲレンデにはスラロームやモーグル、ジャンプ台のようなものが設置されているので
ついやってみたくなるのであろう。
オリンピックに出場する程の選手でも、ヘルメットやプロテクターといった
万全な装備をしているのに、昨日今日始めたようなシロートが無茶をして大怪我をする。
生兵法は大怪我の基とはまさにこのことである。
オレは無理なコースはほとほと懲りているので、
ゆるやかな迂回コースを子供らと一緒に降りてきた。
雪はもうだいぶ少なくなり、タクシーの運ちゃんなどの話では
もう今シーズンは今日あたりで最後でしょうとのこと。
天気も良く、休んでいるときなどは上着を着ていると汗ばむほどの陽気である。
しかしこれが災いし、雪はベタ雪。
迂回コースの曲がり角で足を取られ、結構な勢いで前のめりに転倒してしまった。
しこたま胸と腹を打ち、一瞬息が出来ないくらいの苦しさ。
なんとか下に降りてきても、息をする度に脇腹に痛みが走る。
骨折とまではいかないようであったが、夜は随分ツライ思いをした。
↑これは身の丈以上のコースに挑み、結局体全体で滑り落ちてくる娘の図。上で見ているのがニョウボ
やはり「生兵法は大怪我の基」。
やり慣れたスキーで充分である。
スノボなんか一生やらない!