「あの、このアドレスにメールを
差し上げったら、お返事、下さい
ますか?」
その問いかけの真意は「また、会
えますか?」だったと思う。
いいえ「また会いたい。あなたと、
つながっていたい」。
「もちろん」
彼は言った。声に力を込めて。
「キーボードも苦手だし、文章も
書くのも下手だけど・・・
せっかく、こうしてあなたと知り
合えたんだから、これからはマメ
なメール男になれるよう、がんば
ってみるかな」
「ぜひ!」
「それじゃあ、また」
「はい。お元気で」
彼もわたしも「さよなら」とは、
言わなかった。
握手をし合って、別れた。
五番街と三十二丁目の角だった。
お互いに背を向けて歩き始めて
から、ほとんど同時にふり返っ
て、相手を見た。
嬉しかった。嬉しくて、せつな
かった。
別れる前から、ずっと思っていた
ことを、わたしはまた思った、
名残惜しい、と。
駆け戻っていって「バス停まで
お見送りさせて下さい」と、言
いたい気持でいっぱいだった。
けれど、押し止めた。
「また会えますよね。きっと」。
手をあげて、彼も応えてくれた。
その時、彼も、わたしとまったく
同じことを思ってくれていた、と
いうことを知るのは、それから一
ヶ月ほどのあとのことになる。
メールを送って二日後、火曜日の
夕方、大学から戻ると、彼から返
事が届いていた。
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