※この記事は最初アップしたものに修正を施したものです。
好きだ
「好きだ」この文には「何が」の部分が必要だ。少なくとも、それがあることを受け手は期待する。
ということで、次の二つを見てみよう。
・彼は好きだ。
・彼が好きだ。
これではどこか落ち着きがない。「何が」の部分が確定しないからだ。だから、これらをそれぞれ
・彼は彼女が好きだ。
・彼女は彼が好きだ。
に直せばすっきりする。ここで、「彼女が彼は好きだ」とか「彼が彼女が好きだ」及び「彼が彼女は好きだ」という別パターンは、どうもしっくりこないことに気付く。
つまり、
・「彼は好きだ」という場合は「彼」を主語とした「何が」の省略とみる。
・「彼が好きだ」という場合は「何が」に当たる部分を「彼が」とみる。
だから、この時「彼が」の「彼」は何らかの状況の中にあることが想定されてしまう。
この議論は「好きだ」の部分が動詞の場合、あてはまらない。が、少なからず遺伝している部分はある。
・僕は走った。
・僕が走った。
後者はどちらかと言えば「報告」的に聞こえるだろう。そして、やはりそこに「僕」が置かれている状況が想定される。例えば「その中で走ったのは誰ですか?」と問われるような状況。でもこれは、それ程判然としたものではない。形容動詞にいえたことは動詞にはいえないようだ。では形容詞はどうだろう。
・僕は高い。
・僕が高い。
↓
・僕は背が高い。
・背は僕が高い。
うん、なんとか言えそうだ。
形容詞
形容詞とは「あり方」に関する語なのだ。理由は省略するが、形容詞を「副詞+ある」の縮約としてみればそうなる。縮約とは例えば、wanna は want to の縮約。「早かった」は「早くあった」の縮約。
通常副詞の直後には動詞がくる。こう考えると、副詞「早く」の後に動詞「ある」がくる「早い=早くある」はすっきりする。
また、「早い」の否定は「早くない」。これは丁度「ある」の部分だけを「ない」にひっくり返したと考えることが出来る。
「ない」はちょっと不思議で、「動詞「ある」の反対語語なのに、異なるカテゴリー形容詞(あるいは助動詞)に入る。とりあえず、形容詞ということで統一してみれば、「ない」すらも「なくある」という風にとれる。
つまり、「ない」さえも「ある」の一つの形、つまり「あり方」の一つということになる。
ついでに言えば、「ない」は「ある」の反対であり、その否定でもある。文法的な話はもとよりどうでもいいが、この「ある」というものの、いや「ある」ということの特殊性は注目に値するだろう。
形容動詞
この品詞を認めるかどうかで意見が分かれているらしい。要するに単に「名詞+である(だ)」に過ぎないのではないかということだ(形容詞に関しても上記のように似た議論がある)。今ここでやることは文法の議論ではないから、その是非は兎も角、「名詞+で+ある」という風にしてみると、やはり形容動詞も「あり方」に関するものだということが分かる。
とりあえず、ここでは最初の実験が上手くいった(形容詞と形容動詞)と上手くいかなかった(動詞)の差はここにあるということにしておこう。つまり、「あり方」に関するものかそうでないか、ということ。なぜか? についてはこの記事では考えない。
前提
「彼が好きだ」といった場合、これを主語が省略された文章と見てそれで通じるということは、逆に言えば省略がゆるされる前提があるということだ。前提というのは、例えば視点でいうならばカメラが固定されているというようなことだ。この省略されている部分は、文章の一つのまとまりの中では一貫されていることが多い。「多い」ということは、何もなければ人々(読者)はそうであると思って読むということだ。
文脈
文脈について考えよう。
・例文
彼は口が小さい。そのくせ、巨漢だ。鼻が短い。そして、低い。更に、彼は(男のくせに)化粧が好きだ
私はこの文章を歪な文章だと考える(とは言え意味は通じるからOKといえばOKだが)。文脈について考えよう。例文は「ある」という観点を取り入れれば次のように、見直すことができる。
彼は口が小さく《ある1》。そのくせ、巨漢で《ある2》。鼻が短く《ある3》。そして、低く《ある4》。更に、彼は化粧が好きで《ある5》。
《ある1》と《ある2》から、《ある2》までの文章は「彼」の「あり方」に関する記述であることがわかる。「巨漢だ」という述語は「口」ではなく「彼」を主語とするからだ。よって、この二つの文から《ある》は「彼は」にかかるものだということが確定する。だから次の文「鼻が短い」も、《ある》が「彼は」を含意しているという文脈(彼のあり方についてのものであるという前提)から、「彼は鼻が短い」という風に主語の省略であることが導き出される。しかし、次の文の《ある》、つまり《ある4》は明らかに「鼻が」にかかっている。「彼は低い」ではおかしいだろう。にも関わらずその次の《ある5》はまた「彼は」にかかる。
つまり、「そして、低い」だけが、「彼」の「あり方」に関する記述という前後の文脈からはみ出してしまっている。「鼻が短くて低い。」とでも直すべき。「鼻が短くあり、そして低い。」ではまた変だろう。
*(彼は)「口が小さく、そのくせ巨漢で、鼻が小さく、そして低く、更に化粧が好きで」《である》。*というように括ってみると実感がわくかもしれない。
《ある4》は、だからこそ「彼は鼻が」の省略の示唆と見てやるべきだ、と言えるかもしれないが、となると、既に述べたように、「あり方」に着目されている対象が、その部分だけ「彼」から「(彼の)鼻」にぶれる。ずれるというかぶれる。「彼は」から「彼は鼻が」というように微妙にニュアンスが変わる、捩れる、伸びる。前提が一貫していない。よくある、視点のぶれという奴の些細なバージョン、焦点のぶれた文章。(勿論わざとやって、それなりの効果が得られているならば問題ないが)
実は、これだけに注意するだけで驚くほど文章はすっきりする……と、私が言っても説得力ないかもー(^^;;) 特に一文一文が長い作品を書く場合は注意してみてはいかがでしょうか?
ということで今日は以上でーす☆ 続きはまたいつか。
好きだ
「好きだ」この文には「何が」の部分が必要だ。少なくとも、それがあることを受け手は期待する。
ということで、次の二つを見てみよう。
・彼は好きだ。
・彼が好きだ。
これではどこか落ち着きがない。「何が」の部分が確定しないからだ。だから、これらをそれぞれ
・彼は彼女が好きだ。
・彼女は彼が好きだ。
に直せばすっきりする。ここで、「彼女が彼は好きだ」とか「彼が彼女が好きだ」及び「彼が彼女は好きだ」という別パターンは、どうもしっくりこないことに気付く。
つまり、
・「彼は好きだ」という場合は「彼」を主語とした「何が」の省略とみる。
・「彼が好きだ」という場合は「何が」に当たる部分を「彼が」とみる。
だから、この時「彼が」の「彼」は何らかの状況の中にあることが想定されてしまう。
この議論は「好きだ」の部分が動詞の場合、あてはまらない。が、少なからず遺伝している部分はある。
・僕は走った。
・僕が走った。
後者はどちらかと言えば「報告」的に聞こえるだろう。そして、やはりそこに「僕」が置かれている状況が想定される。例えば「その中で走ったのは誰ですか?」と問われるような状況。でもこれは、それ程判然としたものではない。形容動詞にいえたことは動詞にはいえないようだ。では形容詞はどうだろう。
・僕は高い。
・僕が高い。
↓
・僕は背が高い。
・背は僕が高い。
うん、なんとか言えそうだ。
形容詞
形容詞とは「あり方」に関する語なのだ。理由は省略するが、形容詞を「副詞+ある」の縮約としてみればそうなる。縮約とは例えば、wanna は want to の縮約。「早かった」は「早くあった」の縮約。
通常副詞の直後には動詞がくる。こう考えると、副詞「早く」の後に動詞「ある」がくる「早い=早くある」はすっきりする。
また、「早い」の否定は「早くない」。これは丁度「ある」の部分だけを「ない」にひっくり返したと考えることが出来る。
「ない」はちょっと不思議で、「動詞「ある」の反対語語なのに、異なるカテゴリー形容詞(あるいは助動詞)に入る。とりあえず、形容詞ということで統一してみれば、「ない」すらも「なくある」という風にとれる。
つまり、「ない」さえも「ある」の一つの形、つまり「あり方」の一つということになる。
ついでに言えば、「ない」は「ある」の反対であり、その否定でもある。文法的な話はもとよりどうでもいいが、この「ある」というものの、いや「ある」ということの特殊性は注目に値するだろう。
形容動詞
この品詞を認めるかどうかで意見が分かれているらしい。要するに単に「名詞+である(だ)」に過ぎないのではないかということだ(形容詞に関しても上記のように似た議論がある)。今ここでやることは文法の議論ではないから、その是非は兎も角、「名詞+で+ある」という風にしてみると、やはり形容動詞も「あり方」に関するものだということが分かる。
とりあえず、ここでは最初の実験が上手くいった(形容詞と形容動詞)と上手くいかなかった(動詞)の差はここにあるということにしておこう。つまり、「あり方」に関するものかそうでないか、ということ。なぜか? についてはこの記事では考えない。
前提
「彼が好きだ」といった場合、これを主語が省略された文章と見てそれで通じるということは、逆に言えば省略がゆるされる前提があるということだ。前提というのは、例えば視点でいうならばカメラが固定されているというようなことだ。この省略されている部分は、文章の一つのまとまりの中では一貫されていることが多い。「多い」ということは、何もなければ人々(読者)はそうであると思って読むということだ。
文脈
文脈について考えよう。
・例文
彼は口が小さい。そのくせ、巨漢だ。鼻が短い。そして、低い。更に、彼は(男のくせに)化粧が好きだ
私はこの文章を歪な文章だと考える(とは言え意味は通じるからOKといえばOKだが)。文脈について考えよう。例文は「ある」という観点を取り入れれば次のように、見直すことができる。
彼は口が小さく《ある1》。そのくせ、巨漢で《ある2》。鼻が短く《ある3》。そして、低く《ある4》。更に、彼は化粧が好きで《ある5》。
《ある1》と《ある2》から、《ある2》までの文章は「彼」の「あり方」に関する記述であることがわかる。「巨漢だ」という述語は「口」ではなく「彼」を主語とするからだ。よって、この二つの文から《ある》は「彼は」にかかるものだということが確定する。だから次の文「鼻が短い」も、《ある》が「彼は」を含意しているという文脈(彼のあり方についてのものであるという前提)から、「彼は鼻が短い」という風に主語の省略であることが導き出される。しかし、次の文の《ある》、つまり《ある4》は明らかに「鼻が」にかかっている。「彼は低い」ではおかしいだろう。にも関わらずその次の《ある5》はまた「彼は」にかかる。
つまり、「そして、低い」だけが、「彼」の「あり方」に関する記述という前後の文脈からはみ出してしまっている。「鼻が短くて低い。」とでも直すべき。「鼻が短くあり、そして低い。」ではまた変だろう。
*(彼は)「口が小さく、そのくせ巨漢で、鼻が小さく、そして低く、更に化粧が好きで」《である》。*というように括ってみると実感がわくかもしれない。
《ある4》は、だからこそ「彼は鼻が」の省略の示唆と見てやるべきだ、と言えるかもしれないが、となると、既に述べたように、「あり方」に着目されている対象が、その部分だけ「彼」から「(彼の)鼻」にぶれる。ずれるというかぶれる。「彼は」から「彼は鼻が」というように微妙にニュアンスが変わる、捩れる、伸びる。前提が一貫していない。よくある、視点のぶれという奴の些細なバージョン、焦点のぶれた文章。(勿論わざとやって、それなりの効果が得られているならば問題ないが)
実は、これだけに注意するだけで驚くほど文章はすっきりする……と、私が言っても説得力ないかもー(^^;;) 特に一文一文が長い作品を書く場合は注意してみてはいかがでしょうか?
ということで今日は以上でーす☆ 続きはまたいつか。
ちょっと難しかったので混乱がちですが、今書いている小説で早速確認してみます。
続きを楽しみにしております♪
文章を分解してみるとそこに理解のプロセスが見えてくるものなのですね。
特に格助詞はその前後の単語を意味の一つのまとまりとして繋げる役割をしているだけに、「が」と「は」の違いに注意するだけでも日本語の理解の仕方が、そこに透けて見えてくれるような気さえしました。
勉強になりました。
ところでこの間、「作家でごはん」の鍛錬場のやりとりで都合上、さっくんさんの掲示板をお借りして私の拙いブログのアドレスを公開するということになりました。(勝手にそういうことを決めてしまって本当にごめんなさい)
当初、書くことの持久力を身につけようという意図で始めたものです。作品としては推敲不足のアラが目立ち完成にはほど遠いカタチのものばかりです。なので、さっくんさんの批評に耐えられないものと思いますが、それでも宜しければお越し下さい。
ありがとうございました。
ごめんなさい。ブログのアドレスを張るのを忘れてしまいました。。
http://blog.livedoor.jp/happy_kirari/?blog_id=433248
です。
失礼しました。
見てきました!
そしてこれからも伺います。
ありがとうございました。
>さっくんさん
っと、言う事で、場所かりました^^;
ありがとうございました。
よく分からんですが、面白ければいいのです
ということで、リンク張っちゃいます←これはリンゴ(爆)