the Saber Panther (サーベル・パンサー)

トラディショナル&オリジナルの絵画芸術、化石哺乳類復元画、英語等について気ままに書いている、手書き絵師&リサーチブログ

プレヒストリック・サファリ⑦ (鮮新世 南ヨーロッパ) 長鼻類(ゾウの仲間)の新旧交代

2021年06月30日 | プレヒストリック・サファリ

これはずっと前の作品で、今から見ると未熟で結構恥ずかしい代物なのですが💦… 当時よりも高画質で再アップいたしました。

英国ブリストル大学のH. Zhang、J. Cantalapiedra両博士(生物進化学、古脊椎動物学)の長鼻類マクロ進化を分析するプロジェクトに関わる大学のプレス・リリースで、当復元画を使用していただくことになったのが、その理由です。

気鋭の学者さん、Zhang博士については、レッキゾウを論じた記事中

OGPイメージ

エレファスかパレオロクソドンか? 巨大レッキゾウの復元画と、パレオロクソドン分類についての考察

©theSaberPanther(Allrightsreserved)アフリカ東部、ケニヤのクービ・フォーラ地層で見つかったレッキ...

 

 

で、既にご紹介したことがありました。


以下の記事内容は発表当時のままですが、Zhang博士によれば、新生代後半には世界各地の様々な生態系において、複数の異なる長鼻類の共生は一般的な現象だったようです(pers. comm., 2021)。

訂正箇所
形態測定学分析の精度の向上、更新世以降のタクソンについては遺伝情報の解明から得られた知見なども加わり、この当時(2013年)と比べ、直近の長鼻類の系統分類は大きく様相を変えています。

アナンクス属は、他のテトラロフォドン系のタクソンとともに、ゴンフォテリウム科とは別の分類群として、アナンクス科(Anancidae)に組み入れられるに至っています(Mothé et al., 2016)。
他に、シャベルタスク系のタクソン(アメベロドン属など)が、やはり独立にアメベロドン科として纏められていますから、
ごみ箱分類群(wastebasket taxa)の甚だしい例と見なされていたゴンフォテリウム科も、現状、大分すっきりと整理が進んだ印象がある。これらの動きを受けて、古長鼻類マクロ進化の研究分野も、新たなフェーズに入ったといえるようなのです。


南方マンモス(Mammuthus meridionalis)については、あらためて復元画を描き直す予定があります。



後方から:
オーヴァーニュマストドン(Anancus arvernensis)、南方マンモス(スコッピート産)(Mammuthus
meridionalis
)
ステップサイ(Stephanorhinus hemitoechus)ステノンゼブラ(Equus stenonis)ジャイアン
ト・ヨーロッパカバ
(Hippopotamus major)


Prehistoric Safari
-200数十万年前・鮮新世後期の南ヨーロッパ(現在のイタリア中部、トスカーナ地方)・・・-


およそ260万年前、地質年代学の区分で鮮新世の末葉にあたるこの時代に、いわゆる氷河期サイクル-氷期と間氷期が数万年周期で
交互に訪れる、現代まで続く現象-が始まったとされている。
260万年前の氷期は、地球規模で起こった最初の本格的な寒冷化であるともされ、特に「Praetiglian glacial phase」と呼ばれる。更新
世における場合ほど著しい気温の低下は見られなかったものの、北半球を中心に草原の占める割合が急増し、氷床も拡大した結果、各
大陸が一時的に陸橋で繋がる現象が生じた。

この間に促された生物大陸間移動において、真正のゾウ科種がアフリカから、真正のウマ属種が北米から、それぞれ初めてユーラシア大
陸に分布域を広げたことが、最もモニュメンタルな出来事('Mammuthus-Equus Event')として認知されている。
今回のプレヒストリック・サファリでご覧いただいているのは、南方マンモスという、上述の「マンモス-エクウス・イヴェント」の最大の主役とも言うべき巨象を中心に、鮮新世末葉~更新世前期の代表的大型草食獣を含む、間氷期の景観である。

南方マンモスはユーラシアに出現した最初のゾウ科種の一つに数えられ、最初のマンモスでもあるが、発達した形態-頭部形状のいわ
ゆる「マンモスらしさ」は、スコッピート産の個体において特に著しい-は後のマンモス群と比べても遜色がなく、既に体格的にも最大級に達していたことが特徴と言える(近年に訂正された推定平均体重は、12t(Asier Larramendi, 2012))。

現生のカバ(Hippopotamus amphibius)より三倍以上も大きいジャイアント・ヨーロッパカバと、南方マンモスが水辺で一緒にいる
光景など、けだし圧倒的な迫力であったことだろう。なお、「ヨーロッパカバ」の俗称で知られる絶滅種には他に、Hippopotamus
antiquus
がある。推定体重が4トンに達する巨大なカバであるが、H.majorH.antiquusの例外的な大型個体と見なすのか、それと
も別種と見なすべきかということについては、主張が分かれるところである)。

南方マンモスの歯冠をみると、グレイザーとしての適応はまだ充分であったとは言えないが、ステノンゼブラの出現と三指蹄の古代馬、ヒッパリオン属の絶滅時期とが重なっていたように、ゴンフォテリウム科のゾウ(アナンクス属種)を急速に時代遅れの立場へと追いや
ってしまった。以降、現生のゾウにまで受け継がれるゾウ科の隆盛はここで準備されたのであり、「長鼻類の新旧交代劇」は、まさしくモニュメンタルな出来事であったと言える。

上記訂正を参照されたし

イラスト&テキスト Images and text by ©the Saber Panther (All rights reserved)

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