ある日、ちょっと用事があって波止まえの小屋へ顔をだすと
「これはいいとこへ来たのう。鯛飯を炊いたとこじゃ」と、
居ならぶ顔がニンマリとした。
いつものストーブの上には、ドデカイ飯炊き釜。
釜をおして蓋をあけると、
白々した湯気のしたから、どでかい鯛と、彩り美しい人参、エキスのしみこんだご飯が。
……嬉しすぎる。
いつも昼時には家に帰って食事する皆が、この日はここでおひるごはん。
お言葉に甘えてわたしも日本酒を呼ばれつつ、
Sさん作の鯛飯を皿にドンと盛って頬張った。
自宅でエビのかき揚げをつくって持ってきて下さった方までいて、
ああ、こんなに幸せでいいのだろうか。
幸せはさらに続く。
漁師のNちゃんが生簀からメバルをたくさん持ってきて次々にしめはじめる。
それを見たもうひとりのSさんは、新しい薪をくべて火力を強め、ストーブの準備を整える。
大鍋にメバルを並べると醤油をまわして火にかけ、
煮あがったところで火からおろし、少々味を染みこませると、
このとおりの食べごろ。
これぞ、祝島の誇るべき男の浜料理。
田ノ浦の埋め立てに抗議しつづけた1年前の今ごろ、
ともに沖で上関原発建設工事のための作業台船と対峙しつづけた先輩たちの、
もうひとつの顔だ。
この冬一番の寒さじゃないかと思えるほど冷えた2月半ばのこの日、
先輩の浜料理と酒で心身ともにほっこり。
ありがとうございました&ご馳走さまでした。