直木賞を取った時の、新聞の顔写真が強烈だった。とても同時代を生きている人の顔に思えなかった。坊主頭だったからではない。読むだけでは済まない、逃げる事を許さない激しい眼差しだった。知れば、誤魔化しながら生きる事が許されない気がした。
著作の一つも読まないで、姓名と顔写真だけで、飲み込まれてしまった。気になって気になって、頭にこびり付いてしまった。刀を、抜く前に“参りました”と一礼して下がったのに、振り向いた途端、袈裟懸けに切られたようなものだ。
代表作の幾つかを読んで、決着をつけてしまわなければ、落ち着きが悪いと思ったけれど、「忌中」とか「心中」とか「業柱抱き」なんてのもある。怖い!
“車谷長吉”はクルマタニチョウキツと読む。この名も怖い。大八車が、がらがら音を立てて谷底に落ちていくみたいだ。
私よりかなり年長の人だけれど、TVで彼を観て、やはり何者だろうかと思ったそうだ。
四方八方から 車谷長吉が押し寄せてくる。きっと これが縁というものなのだ。「塩壷の匙」が届いたと、連絡があった。
日曜の新聞に「著者近影」があった、眼差しがやさしくなっている。遅く結婚した妻とのお遍路行の随筆が、楽しい。けれど、「塩壷の匙」は、何十年も昔の作品なのだ。
著作の一つも読まないで、姓名と顔写真だけで、飲み込まれてしまった。気になって気になって、頭にこびり付いてしまった。刀を、抜く前に“参りました”と一礼して下がったのに、振り向いた途端、袈裟懸けに切られたようなものだ。
代表作の幾つかを読んで、決着をつけてしまわなければ、落ち着きが悪いと思ったけれど、「忌中」とか「心中」とか「業柱抱き」なんてのもある。怖い!
“車谷長吉”はクルマタニチョウキツと読む。この名も怖い。大八車が、がらがら音を立てて谷底に落ちていくみたいだ。
私よりかなり年長の人だけれど、TVで彼を観て、やはり何者だろうかと思ったそうだ。
四方八方から 車谷長吉が押し寄せてくる。きっと これが縁というものなのだ。「塩壷の匙」が届いたと、連絡があった。
日曜の新聞に「著者近影」があった、眼差しがやさしくなっている。遅く結婚した妻とのお遍路行の随筆が、楽しい。けれど、「塩壷の匙」は、何十年も昔の作品なのだ。