元高校教師のブログ[since2007/06/27]

地元仲間とのウォーキング、ハイキング、サイクリング、旅行の写真入報告。エッセイや意見も。

奥の寄り道(その6)平泉→鳴子温泉

2007-10-15 22:52:46 | 旅行

 ※画面を大きくしすぎました。最下部のバーを右にスライドすれば、隠れている右端部分も見えます。

 平泉から一関で乗り換え、小牛田に着いたのは12:33分。駅前の店で昼食。
  2軒あったが、「こっちのがいいよ」という地元の人の薦めで、左の店に入った。「時間、大丈夫ですか?」と女主人に訊かれて、「十分ある」と答えたのがいけなかった。次の電車まで1時間以上ある。ところが、最初のがなかなか出てこない。最後の味噌ラーメン3人分が出来上がったときは発車まで20分とない。あわてて、熱い唐辛子入りのラーメンを汗かきながら、かっ込み店を出た。
 背中がすーすーするので、何だかおかしい。あわてて出てきたものだから、ザックを忘れてしまったのだ。急いで駆け戻り、なんとか電車に間に合った。 反省---10名で一つの店に入ってはいけない。分散しないと、1時間以上待たされる。 

 こちらの電車はほとんどワンマンカー。ボタンを押さないとドアは開かない。駅も無人が多い。それで、バスと同じように、乗車時には券をとり、降車時は先頭車両に進み、運転手の脇の箱にお金を入れる。バスのように料金表が運転手の右頭上に出る。
 新庄行きの電車が鳴子温泉駅を出て少し、トンネルを抜けると列車が急にスローダウン。突然右手に、色づき出した鳴子渓谷。これの観賞のために列車が徐行したのだ。サービス満点。都会の電車ではとても考えられない(---私が子供の頃の両国花火大会では、電車が隅田川にさしかかると徐行したものだが---)。


 
 電車が中山平駅に近づいた。あれっー、という声に見ると、左手に「旅館三之丞」の看板、というか旅館そのもの。ホームで停車したので、見るとあまり感心できない作り。どうやら裏側らしい。---例えるならば、京成電車が江戸川を渡り、小岩を過ぎて葛飾区に入ると、線路沿いの家が皆背を向けている。つまり、台所などの雑然とした光景を見せつけられる。----あれを思い出させる。
 あっと言う間に電車は次の駅へ。到着した駅は何処だ?---ここは境だ!いや、堺田です。運転手に礼を言う。「もっとゆっくり走れば良かったですかね?」と車掌。---「いやいや、お陰様で素晴らしい景色でしたよ。」
 (*今日あたりが見頃でしょう)と我々。
 その無人駅を上へ出ると、「分水嶺と封人の家」の看板。

封人の家は知っていたが、分水嶺の駅とは知らなんだ。説明板に図入りで出ている。

 その真後ろでまた驚いた。北側の畑?の中から流れてきた小さな水路の同じ水が、丁字路のようにぶつかり西の日本海側と東の太平洋側へと左右に分かれているではないか。 そこから草の生い茂る細道を行く。

  向こうに見えるのは封人の家かと思ったが、実際には管理事務所だと分った。封人の家はその前にあった。

 

 

参考資料  奥の細道 尿前の関 5月17日)
__________  南部道遙にみやりて、岩手の里に泊る。小黒崎・みづの小島を過て、なるごの湯より尿前の関にかゝりて、出羽の国に越んとす。此路旅人稀なる所なれば、関守にあやしめられて、漸として関をこす。大山をのぼつて日既暮ければ、封人の家を見かけて舎を求む。三日風雨あれて、よしなき山中に逗留す。蚤虱馬の尿する枕もと(蚤しらみ 馬のしとする 枕もと)*尿をバリと読ませる説もある。 _____________

芭蕉隠密説 その他、芭蕉隠れキリシタン説さえある。芭蕉は伊賀上野の人。
 ---「奥の細道」にはどうも解せないことが多い。この時代、人間の移動は自由ではない。初めての土地なのに、歓待してくれる人も多く、関所などもすいすいと通ってしまう。幕府隠密なのか?曾良など、水戸光圀の手先という人もいる。
 「奥の細道」冒頭の文で、「松島の月先ず心にかかりて--」と言ってるくせに、その松島では1句も読んでいない。隠密説では、芭蕉の旅には幕府の後ろ盾が付いた「闇のネットワーク」がサポートした、或いはネットワーク拡張とツナギの役目というのだ。   
 ところが、尿前の関では、国境警備の役人に怪しまれて、通過に難儀する。当時は伊達藩管轄だったせいか、どうも連絡がいってなかったみたい。水戸黄門漫遊記ではないが、曾良が手形ならぬ印籠でも見せたのであろうか、やっと通してもらえたというわけ。印籠?を見せられて役人の態度が一変する。彼は一行を国境警備の庄屋(=封人)の家に案内する。人馬一体のその家では、蚤やしらみがいて、馬の小便の音など、熟睡どころではなかったと、ぼやいて読んだのがこの有名な一句。
----そういう訳でここ「封人の家」は、ぜひ訪れたかった場所。

    

 あるじの云、是より出羽の国に、大山を隔て、道さだかならざれば、道しるべの人を頼て越べきよしを申。さらばと云て、人を頼侍れば、究竟の若者、反脇指をよこたえ、樫の杖を携て、我々が先に立て行。けふこそ必あやうきめにもあふべき日なれと、辛き思ひをなして後について行。あるじの云にたがはず、高山森々として一鳥声きかず、木の下闇茂りあひて、夜る行がごとし。雲端につちふる心地して、篠の中踏分踏分、水をわたり岩に蹶て、肌につめたき汗を流して、最上の庄に出づ。かの案内せしおのこの云やう、「此みち必不用の事有。恙なうをくりまいらせて仕合したり」と、よろこびてわかれぬ。跡に聞てさへ胸とヾろくのみ也。  

 これは封人の家から山刀(なた)伐峠越えのことである。主の計らいでボディーガードをつけることになる。曾良の威光も及ばない、それほど危険な山道は、ここが初めてである。私は非常に興味をもった。この山刀伐峠越えをぜひ実現したいと思ったのだが、マイカーでも利用しないと無理だと分り、泣く泣く断念した次第。勿論、当時の芭蕉には心のゆとりなど、ある筈は無く句を残していない。  

 茅葺の封人の中に入っていると、メンバーの一人が「バスが来たよ」。外に出てみると、なんと迎えのマイクロバス。「中山平温泉・三之丞湯」の文字がある。運転手はまだ若い。

鳴子温泉郷 2006年10/24(火)の読売新聞朝刊に「奥の細道湯けむりライン・紅葉紀行」というのがある。その広告ページを一部拝借。
---鳴子温泉郷は川渡温泉、鳴子温泉、東鳴子温泉、中山平温泉、鬼首温泉の5つの温泉で、形成しています。---鳴子温泉郷は湯量が豊富な上、泉質も多彩です。温泉法上の泉質11種類のうち9種を擁するのは、日本ばかりか、世界でも稀だといわれています。---鳴子峡は日本を代表するV字峡の一つで、鳴子温泉と中山平温泉の中間にあり、どちらからも歩けます。---渓谷に沿って約2.5キロメートルにわたって整備され、誰もが歩ける紅葉の名所として人気があります。---鳴子峡をはさんで、鳴子温泉と反対側にあるのが、中山平温泉です。「中山平しんとろ節」にあるように、お湯は「しんとろしんとろりん」と、とろりとした湯の肌触りが人気の温泉です。

 ※ 旅館三之丞湯---大当たり。ここにして良かった。皆も大喜び。 
      TEL:0229-87-2120 E-mail: sannojyo@guitar.ocn.ne.jp
 
 予約の際、以下のことを考えた。 1. 翌朝のことを考えて最寄の駅に近いこと。 2. 「封人の家」に迎えに来てもらえること。 3. かけ流しの温泉であること。 4. 安いこと。
 
 ※バスは三之丞湯玄関に到着。なんと正面から見たこの宿のおもて顔はなかなかグーではないか。受付をするときに分ったのだが、運転手はこの宿の主人。なかなか感じがいい。奥さんと二人+お手伝い、というスタッフらしい。明日は朝が早いので7時の食事では電車に間に合わない。弁当も無理だと言う。今夜じゅうにおにぎりの用意なら可ということで、OKした。
 ※は申し分ない。「しんとろ節」にあるとおり、浴槽で腕の付け根から手先へさすると、つるつるの触覚。しんとろ、しんとろする。かけ流しなのでいつでも入浴可。ナトリュウム・炭酸水素塩泉だから肌にいいのだろう。*主人に訊いたのだが「しんとろ節」は新民謡ではなく、(真室川音頭や新庄節と同じく)昔からの唄だそうだ。
 乁 名どこ湯どころ 中山平  かすむお山に 紅山つつじ  咲いて色ます なさけどこ  お湯はしんとろ しんとろりん

 ※ 食事も申し分ない。記憶は怪しいが、先ずは手製の果実酒、カレイの骨抜き唐揚げ、刺身、肉の鍋物、鮎田楽、酢の物、佃煮、味噌汁、ご飯、----
 私はカレイの唐揚げが一番気に入った。ご飯がとてもうまい、という皆の評。 この宿のおかげで我々は本日の強行スケジュールの疲れを十分とることができた。翌朝、目覚めると、もうおにぎりの用意が出来ていた。中をのぞくとお茶まである。ラップで包まれているのは鮎の甘露煮、さらにあぶり沢庵、おしぼり。

 

 玄関前で記念写真を撮り、主人夫婦に見送られて、無人のホームに上る。7:35分、新庄行きの電車がやってきた。三之丞はホームの目の前。見ると夫婦が窓から手を振っている。ありがとー、我々も去っていく電車の中から手を振った。本当にこの宿にして良かった。
 電車の中でジャンボおにぎり(梅干とおかか)をほおばりながら、「ご飯がおいしいね」と皆大満足。これで7,000円だよ、信じられない。----三之丞さーん、お世話になりました(一同)。

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