寓話の部屋

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第068話 Lost in Trance

2021-09-28 09:05:36 | 召喚大統領が異世界を逝く!

第六十八話 Lost in Trance

この世界初の飛行機による外遊という名誉はコーライに取られてしまったが、スプートニックショック後の宇宙開発もかくやという勢いで、純ツイステ製の大統領専用機がツイステの科学技術を駆使して開発された。その機体によるナジア歴訪が始まった。
ワイハ・ガムを経由した大洋横断の後にモトヒノ、コーライ、パブア・フィリピーナを歴訪する日程である。
その他の国ではまだ空港の整備が間に合わず、見送られることになった。

フラリー・クリトリン大統領は、機上の人となる。
専用機完成後も、長時間の完熟飛行のチェック中には乗せて貰えず、何気に自分で搭乗するのは初めてで、普段なら初の飛行機にワクワクを抑えられなかっただろうが、今は、とてもそんな気分にはなれなかった。
大統領専用機とはいえ、まだこの時代の飛行機ではラグジュアリーな居住性とまではいかず異世界のビジネスクラス程度のシートに収まって同乗するオコメ国務長官と会話をする。

「まずは、モトヒノのマリア・アベの小娘との会談ね。これはまあいいわ。頭が痛いのが、コーライよ。なんなの、あの大コーライ連邦って。どこに”大”の要素があるのよ!国土なんかあの狭いモトヒノより小さいじゃない!」

「彼らの地図は独特ですからね。この大地は球面であるのは現代知識の常識ですが、それを平面の地図に表現する時にうまく変換するメルカトリ図法というのがあります。彼らが用いる現実を無視したコーライ半島を大きく描く独特の図法はウリカトリ図法と呼ばれているらしいですよ。」
さすが、外交の専門家である。そんなどうでもよさそうな小ネタをよく知っている。
「それに小人こそ、大きさに拘るものですよ。なんでも性医学会の研究で、コーライ人男性の持ち物が最低ランクだと報告されて、猛烈な抗議をしたらしいです。北コーライのロケット兵器への執着は男根主義の表れだという分析を読んだこともあります。」
いくら外交の専門家でも、どうでも良さ過ぎないかそれ?

ワイハ州・オワタ島はめったにない大統領の来訪に沸き、一泊しての選挙民サービスを余儀なくされた。
ここで点検整備と給油をし、ガム島での念のための給油を経由してモトヒノの首都オーエド近郊のアツアゲ基地の空港に向かう。

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アツアゲ基地の空港でモトヒノ軍陸軍儀仗兵の栄誉礼を受けたのち、星情旗(ツイステの国旗)の小旗を振る群衆でいっぱいの街道を、装甲リムジン魔動車に乗ってオーエドに向かう。
初のツイステ大統領の訪問とあって、国賓待遇となり、皇帝への謁見、宮中晩餐会も設定されていたが、あいにくと、まともな人間同士では予想外のハプニングなど起きようもなく、無難に日程は消化されていくのだった。

「ビックリするくらい順調よね。エンペラーとの謁見やパーティもどうということはなかったわ。」
「まあ、それが普通ですよ。この後は、形ばかりの首脳会談の後、もうできあがってるコミュニケを発表して終わりです。」

モトヒノの首相官邸にて、マリア・アベ首相との会談に臨むフラリー。
マリア・アベ首相の就任後初の外遊が訪ツイステであったので、初対面ではない。
当時は党の都合で担ぎ上げられた未熟な小娘という評価であり、実際そうだったので、フラリーはこの相手を与し易しと大いに侮っていた。

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開口一番、マリア・アベ首相(26)は言った。
「フラリーさん、こわいよ!何か来るよ、モトヒノを大勢殺しに来るよ!」

「(こう来たか…。前は、こんな不思議ちゃんキャラじゃなかったのに…)」
選挙民の人気こそあり支持率は高いが、党の老害共に足を引っ張られているストレスから幼児退行したのかしらと思いながら、フラリーは溜息をついた。
「政治家たるものそんな弱音を吐いてどうします。貴国には我がツイステが付いているのですよ。そのための軍事同盟です。他ならぬ、あなたの御祖父が、ダイシン帝國の手先に先導された愚民どもの大反対を押し切って結んだのですわよ。」

「し、失礼しました。しかし、私の家系は元は大きな神社の氏子の家系で、時々先祖返りの巫女のような力が戻ることがあるのです。そのようなものが出ると通常は神域から出さないで巫女の務めを果たすのですが、何の因果か首相職に就いてから、いや、かの国の大統領に出会ってから、この力に急に目覚めまして…。」
と持ち直すマリア。

「(知らないわよ、そんな事情…)もはや神権政治の時代ではありませんのよ。我々政治家は現実の問題に対処しなくてはいけません。ダイシン帝國の脅威とコーライの諸問題について、検討しましょう。」

「ひぃ、コーライ!そうです!コーライから、なにか恐ろしい禍々しい力を感じます。」
持ち直したのが一瞬で崩れるのだったw。

「コーライが恐ろしい頭痛の種なのは確かですが、なにもそこまで…。」
フラリーが鼻白む。

「あの男は危険です!排除しなくてはなりません!」
目を見開いて、血走った眼球結膜を真っ赤にして力説する。

「何をしでかすかわからないという意味ではそうかもしれませんが、北コーライ、キムボール・ジョンソンの問題をまとめて一つの問題にしてくれた点は彼の功績ですよ。」
心情的には大いに同意していたが、同盟国間のバランスも考えねばならない立場なのが辛い。

結局、実のあるまともな話し合いにはならず、事務方があらかじめ手配していたとおりの「これからもズッ友だよ!」的なコミュニケを発表してお茶を濁すのだった。

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アツアゲ基地の空港からウルソの南にあるオッサン空港に向かって離陸する大統領専用機。

「ナジアの問題は、コーライ半島の男共だけの話じゃなかったようね…。」
夫のラブアフェアにより男性不信に陥っていたフラリーであったが、上級職の人間不信にクラスチェンジしそうだった。

「問題があるとわかったのが成果ですよ!」
IQ136の優秀な頭脳を無駄遣いしてフォローを入れるオコメ国務長官。

「はあ…。さてコーライではどんな問題が待っているのかしら…。」



1 コメント

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Unknown (新宿会計士)
2021-09-28 12:23:11
「ウリカトリ図法」www

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