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巡り合い<2>偽りの同棲生活と野心

2020-01-24 10:46:54 | 恋愛小説:巡り合い


病院から警察へ連絡しますかと言われた春奈は、連絡しないように頼み込んだ。
春奈は、同棲していると嘘をつき、更に婚約者であると嘘をついた。
病院の医師からは、もう少し遅ければ命を落としていたかもしれないと言われるが、医師の話を最後まで聞く事はなかった。
しかし救急で搬送された病院は、聖志と葉月に睡眠薬を処方していた病院でもあった。

緊急処置が終わり病室へ運ばれる聖志、病室で目が覚めるのを待つ春奈だった。
大学の先輩であり噂を知り顔を見た事はないが同姓同名の駿河聖志を慕い、尊敬をしていた春奈は、聖志の部下でもあり、仕事のことや女性としての自分の思いを考えていた。
春奈の思いは、聖志と一緒に仕事をするようになってからの巡り合いの一目ぼれでもあった。
春奈は、病院から会社の上司へ次の日に連絡をした。
春奈は、上司に少し重い風邪と嘘をつき、自分もしばらく休みをとると伝えた。
上司は、聖志には婚約者がいるだろうと言ったが、噂ですよと春奈は上司に話した。
春奈は、確かに葉月という同棲相手がいた事を知っていたが、段ボールだだらけのアパートの様子をみて、聖志の状況を見ると同棲相手はいないと感じていた。
もし、自分が同棲相手だったらと考える春奈だった。
決して、会社や警察や誰にも聖志の状況は知られてはならないと思っていた。

聖志が目を覚ましたのは、入院後3日目だった。
聖志は、呆然として、病院の白い天井を見詰めていた。
春奈は、手のひらを振り、聖志の顔の前にだすと、ここはどこだと聖志は言った。
目を覚ました聖志は、春奈を見つめ、冷静な目つきで生きていたのかと聞く。

その時、春奈は聖志は、自殺をしようとしていた事を考えていたが、自殺しようとした事は絶対に知られないようになと聖志は春奈に笑いながら言った。この時の聖志は、春奈の考えている事が分かっていたのかもしれないし、何故か部下の春奈の能力や直感の事を理解していたのかもしれない。聖志は笑う姿を見たのは春奈にとって初めての事だった。自殺をしようとした人が笑いながら言えるのだろうか?と春奈は思い、自殺じゃないのと胸の内で考えたが思考のリセットが早く行動力や理解力も早かった。
聖志は春奈の仕事ぶりを見て、コーチングによって春奈の考え方を理解し指導しながら気づき知っていたようだ。
そして春奈の聖志自身への思いも気づいていたのかもしれない。

春奈の仕事ぶりを見ていると、同棲をしていた聖志は心中では迷いつつも葉月と重ねてしまい、どうしても葉月の事を考えると、都会での仕事が自分に合っているのか考えるようになっていた。
しかし、この時には仕事が中心で、部下の春奈をいかに育て成長させ営業成績でトップクラスの社員にするかを考え、葉月の事は二の次となっていた。
「出向していた先輩にあったのか?」と聖志は春奈に声をかける。
「えっあ、会いました」と春奈は聖志に答えた。
「そうか良かったな、先輩は元一課の課長で出向する事が多くなって、部長に推薦してくれたんだ、君にも推薦者はいるからな」
こんな会話をした後に聖志は目を瞑り眠りにつき、推薦者は誰なのか聴く事ができず、聖志の顔を見ながら、春奈は自分自身の思いを考えながら、色々と迷いながら正直な自分を見つめていた。

正直な自分を見つめると、春奈の目的は仕事のこともあるが、聖志に募らせていた恋(思い)を成就させる事だった。
春奈は聖志と話をした後、ナースコールをした。
病院の医師と看護師が、真っ白なベッドに横になる聖志が病室へ入ってきた。
一通りの処置を施し、次の日には退院できると、医師は春奈に伝え病室を後にして、看護師はベッド周りでバイタルサイン測定し追加された点滴を取り換え病室を後にした。
看護師は早い退院で良かったですねと一言を春奈に声をかけていたが、その言葉で自殺未遂じゃないの?と疑問を持った春奈だった。

明日には退院できる事を営業部統括部長の上司に伝える春奈である。
しかし、まだ仕事に復帰できないことを伝え、上司との話し合いで一週間後の出勤となった。
次の日、退院した聖志は、春奈と一緒にアパートへ戻った。
病院からは一通の封筒を渡されたが、この時は封筒の中にあるものを見る事はなかった。
そして聖志が動けるようになってから封筒を開けると診断書が入っていた。
春奈は聖志の診断書を見て驚きを隠せず診断書を持ったまま、驚き言葉にならず頭は真っ白になり動く事も出来なかった。
「過労による睡眠障害」との診断書を見て、何度もため息をしながら春奈自身の勘違いに気がついたが、自分を見つめ目を瞑り3回深呼吸をして冷静になると聖志への思いと聖志との今後を考えるようになった。
ただ聖志の部下であった春奈は聖志の仕事をする姿を見ていると疲れた感じではなく、葉月という同棲相手との間で精神的に病んでいるようにも見えていたのだ。
春奈は、精神的に病んでいる聖志への思いを今まで以上に募らせていた。
聖志は、なぜ春奈がいるのか聞くが、春奈からの返答はなかった。
ただ、一緒に暮らしてみませんかと言うだけだった。
聖志は24歳で春奈との年の差は2つ、春奈は22歳である。
天真爛漫なのか臨機応変なのか、どうでも良くなっていた聖志は、春奈との同棲生活に同意した。
休みをとっている間に、春奈のマンションに引越しする。
春奈は、業種の違うクライアント企業の社長の娘だった。
春奈が聖志への一目ぼれは、聖志だけが、他の男性と違うような気がしていただけだった。
春奈は、理想が高く、個性が強く、感性に富んでいた。
聖志の部下として、新人でありながら誰よりも仕事を速く覚え仕事ぶりは、聖志の社交性があり行動力と同じような感じていた。
春奈は聖志の気を引くため、そして自分の気持ちを伝えるためだったのかもしれない。

聖志は、春奈の仕事ぶりが気になっていた。
仕事での信頼関係も、うまれていた。
引越し後、聖志と春奈は上司に呼ばれた。
春奈は、聖志が同棲している相手が、自分であることを上司に話をした。
上司にとっては、驚くべきことだった。
各クライント企業同士の情報では、野村葉月との同棲であったからだ。
野村葉月は同棲後、聖志と婚約し、業界を辞め主婦になったという噂の情報が流れていた。
葉月は、聖志と同様、聖志とは違うことで評判が良く、良いときに業界から離れたとも言われていた。
春奈は、葉月とは違い、聖志と楽に付き合うことができた。
聖志は、自分を高めながら生きていることを、春奈は気づいていた。
春奈は、近づきすぎず、離れすぎず、一定の距離を保ったまま聖志と付き合うことができた。
聖志と春奈は、聖志よりも春奈が、ベッドへ誘うことが多かった。
葉月とは違い、ベッドの上では話し合うことはまったくなく、夜の情事を楽しむだけだった。
聖志にとっても、気が楽な同棲生活であり、偽りの同棲生活でもあった。

しかし、気が楽な同棲生活には、野心的な目的もあった。
春奈が大学卒業時のレポートと論文の内容を読んで、葉月と同じような内容の様が書かれているように感じていた。
聖志は春奈が葉月と同じように感じながら、ただ葉月とはある部分で違いがあった。
春奈の第一営業部での仕事ぶりを見ていると、聖志には春奈にコーチングやアドバイスをしながら、営業成績をトップクラスにしようと聖志は自分の役割ではないかと考えていた。
聖志は出向している先輩に連絡を取り、自分の考えを伝えていた。
「分かった、駿河の考えには賛同するよ、後は僕がサポートしていくから・・・」と先輩は聖志に返事をした。
同棲相手が春奈になっている事は、すぐに各企業であくまでも半信半疑の噂として広がっていた。
その噂は聖志を課長に推薦した先輩の耳にも入っていたが、先輩は事実を確認してから社内メールではなく、春奈の携帯電話に何度かメールを送っていた。
「駿河との上司と部下の関係について:出世という野心を持つこと:野村葉月と会ってみる事など様々な事だった」
仕事復帰した春奈と聖志の2人は、仕事も充実したものとなり、聖志は接待にも復帰した。
春奈は、接待をする午前様の聖志に何一つ文句も言わず、テーブルの上に夕食が置いてあることもない。
聖志は、ほとんど仕事を休むことのない、以前のように戻っていく。
土曜日、日曜日は、午後からの出勤をし、日曜日は、ゴルフの接待に上司たちや得意先の上司と付き合うようになっていく。
春奈は、自分の父親の姿を聖志に見ていたのだ。
春奈の父親は、日曜日となると、朝早くから接待を受けにゴルフへ行く。
聖志の行為は、父親の行為と良く似ていたに違いない。
春奈は、母親に聖志の存在の話をしていたが、母親は驚くこともなく、ただ気になり会わせるという条件を春奈に突きつけた。
春奈は、聖志を父親と母親に合わせる計画をたてるが、婚約、結婚という事ではなく、ただ会わせるだけの事だったが、仕事の忙しさで両親と合わせる事は忘れていく。
聖志の接待の場所は決まっていた。
高級クラブ「風美(かざみ)」、高級料亭「味深(みみ)」である。
高級クラブには、笠原結衣(かさはらゆい)二十才、高級料亭には、女将の大原桔梗(おおはらききょう)二十六才がいた。

聖志には接待場所は幾つかの場所があったが、高級クラブの笠原結衣(かさはらゆい)の言葉によって、1つの高級クラブと1つの高級料亭での接待場所に決める事になる。
高級クラブ風美の笠原結衣と高級料亭の女将の大原桔梗(おおはらききょう)の2人には誰にも理解できない深い絆で繋がっていたようだった。
しかし、聖志には結衣と桔梗の2人の絆は理解はできないが、アスファルトの街で生きていく為には「野心」という思いが、聖志と結衣と桔梗の3人を結びつけていたのかもしれない。
この2人との関係は、情報のやり取りだけではなく、男女の関係でもあった。
結衣は、九人家族の一番下、貧しい家庭で育ち、家族へ仕送りをしている。
高級クラブでの格付けは、トップしかないといっていた。
結衣は、聖志に常に自分を指名して欲しいと頼む。
聖志は、上層部から接待に関して、会社の金をいくらでも使う代わりに、会社の利益を上げられるようにと条件を突きつけられていた。
聖志は、クラブへ行くと必ず、結衣を指名する。
情報を取るだけでなく、結衣の病んだ心を慰めるように、男女の関係をする。
結衣の部屋で一夜を過ごすこともある。
結衣とのことは、春奈は知らないことだ。
桔梗は、雇われ女将だが、客の全てを知っている。
黒皮の手帳とはいかないが、頭の中に全ての情報が入っている。
聖志が来れば、聖志が求める対応をし、接待をしやすくしてくれる。
桔梗は、聖志が来ないときでも、聖志のために、来客の情報を何でも話す。
情報は条件付で、桔梗の家に行き、ベッドの上で話され、桔梗はベッドの上では、激しく燃え上がる男女の関係だった。
聖志は、あの時一度死んだのかもしれない、そして人脈も環境も何もかも変わるが、春奈は聖志を自由にさせている。
春奈は、結衣と桔梗のことを知ったところで、何かを言う女ではない。
結衣と桔梗との関係は、深く、深く長く続いていく。

聖志の名前が水面下で広がると、ある専門学校の講師を頼まれる事になるが、その専門学校は聖志が卒業した大学の新しい大学付属の第二経済学専門学校であったが、聖志と葉月が通っている以前から建物は立っていた。
第一経済学専門学校は内装や外観のリフォーム工事の為に第二経済学専門学校を校舎として使用していた。
第二経済学専門学校では雰囲気や内装が全く違い、壁には卒業生が入社した多くの会社の建物の写真が額に入り飾れ、額の下には4年制で卒業した生徒達の名前が載っていた。
社長からの指示により会社では、駿河聖志を大学付属の第二経済学専門学校の講師にすることを聖志に知らせずに引き受けてしまう。
断る事も出来ると思ったが、サラリーマンの聖志は忙しさの中でも、会社の方針には従うしかなかった。
聖志は心の中で人生の何かが変わるかもしれないと思い引き受けた。

経済学専門学校での聖志は、自分が経済学だけの専門学校へ通っていたときの事を思い出す。
初心というものに葉月と聖志が学生として通っていた時期の思いと心の中での囁きにより、離れ離れになった葉月への思いと再会する事になる。
聖志は、会社では第一営業部を任される課長となり、企画部広報室の室長を兼任し、営業部統括部長は企画部広報室も統括部長となっていた。
第二営業部と第三営業部の課長は営業をしてクライアントを増やしていく役割が中心で、クライアントとの企画書内容の話し合いやプレゼンテーションは室長でもある聖志と企画部広報室の社員の6人で対応していく。
忙しい時は第二営業部または第三営業部の課長が対応する事もあった。
聖志は課長と室長である自分が忘れかけていたもの、初心を思い出すことによって講義をはじめる。
生徒たちは、聖志が自分の体験談で講義をする聖志の姿を見つめ、興味津々のようだった。
五十分間、聖志は講義を続ける。
その後十五分間、質問を受けるが、なかなか質問をする生徒はいない。
全く質問がないのが初日の状態であり、その状況は続いていた。
大学付属の第二経済学専門学校での講義は、月3回の月、水、金の午前中だ。


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