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セイネンキレジェンド18話

2024-09-12 07:01:38 | 小説セイネンキレジェンド


いよいよ直也の3回戦目が始まろうとしていた。直也は軽く体を動かしリング上の勝者を見つめている。まだ勝者が決まっていないというのに直也は勝者を決めていた。アイツが勝つ前回優勝者あいつだ、この3回戦で絶対勝つ!と直也は言葉にはせず胸の内で叫んでいた。3回戦目の前回優勝者は3ラウンドまで行われ判定によって勝者になった。いよいよ直也の番だ。この試合を勝ち抜けば後は前回優勝者との戦いになる。直也は前回優勝者との戦いばかりを考えるようになっていた。優勝は目の前だが直也には再び緊張感がうまれていた。
「さてと、どうするか?アイツには隙がなさすぎる、どうする俺」
緊張感の中で直也には戦うに当たり最善の策という作戦というものは無くなった。その姿をコーチ達は気づいていたのか?わからない。
「直也やれるだけやればいいからな」「きっとお前なら勝てるよ、この3回戦」
このコーチ達の言葉で、ふと直也から緊張感が消える。重要なのは一試合ずつ勝って行く事だった。直也は、その事を忘れ自分自身が緊張感を掛けていた事に気づかされた。直也は天井を見てスパーリング中のアッパーで気を失った事を思い出した。リング上では前回優勝者の手が挙げられた時に3回戦目の相手の姿を見つめていると相手も直也を見つめていた。まるで闘争心というオーラというものを直也も相手も感じているかのようだ。直也が見つめる先にいる選手は直也にはない何かを持っているかのような選手だった。3回戦目の相手選手は身長差はほとんどなくパンチ力のある選手だ。リング下に試合を終えた選手と交代で直也はリングに上がっていく。
「直也ー!直也ー!直也ー!」
リング下では直也の声援が多くなっている。優子の声援も聞こえないくらいに。リングコーナーではプロテスト前の康志もコーチも直也に声を掛ける事はない。ただ直也の顔を見つめているだけだった。おそらく観客達の声援がある事で直也は声援があるだけで緊張感は無くなると思っていたのかもしれない。
「カーン!」3回戦目のゴングが鳴った。
相手選手のフットワークの速さは直也とほぼ同じ今までの選手の眼つきとは違った。直也はとにかく勝つ事を考えながら自分を信じて相手の動きにあわせる。
「なんだコイツ、コイツ強いぞ」
「どうする、どうする、俺、大島直也」直也は距離を計りながら心の中で少し焦りを感じながら思った。直也は自分をコントロールし焦る事はないと思い込みを作り冷静さと集中力を保ちながら身体を揺さぶっていく。直也は相手の隙を伺いながら相手よりも先にジャブの連打を続ける。
「入った!これならいける」
直也は身体で感じるものがあった。見た目ばかりを見ていた直也は軽いジャブが入る事に相手の懐へ入るとジャブ!そしてすぐに後ろに下がる。この繰り返しが1ラウンド続けられ相手は嫌な顔を見せていた。「チャンスが来た!」と直也は思った時だったが金の音が聞こえる。
「カーン!」3回戦目の1ラウンドの終了のゴングが鳴った。
「くそっ!」と小さな声で直也は言っていた。手ごたえを感じた直也はコーナーの椅子に座ると相手を見ながら笑っていた直也の心理戦が始まった時でもあった。会長やコーチが教えていない事をトーナメントの試合で直也は自分自身で学んでいた。同じジムに通う学生達は首を振りながら信じられないと思っていたのだろう。これが直也の持つ強さでもあり弱さでもあったのだ。見た目は強く感じるが落胆した時には直也のもろい刃の様な心は立ち直る事に時間がかかる。人間はある程度に強さと弱さを持っているが直也の場合は完璧さを求める為ある程度では済ます事が出来ないのだ。やり遂げるためには、どんな事を考え、どういう行動を起こせばいいのか。直也は自然と身についている産まれつきの素質の一つだったが会長とコーチだけは、その素質は強いものでもあり直也自身を自分を壊してしまう事もある素質でもある事に気づいていた。プライドを持つ事は良いが直也のプライドの使い方によっては他人を傷つけ自分をも傷つけてしまう事もあるのだ。直也が持つプライドを直也は本当にコントロール出来るのだろうか?直也優先に動いているが、この3回戦は厳しい戦いになると会長やコーチは思っていた。直也に声を掛けようか迷う会長とコーチだったが迷ったままだったがプロテスト前の康志はリングサイドで直也に耳打ちしていた。何を伝えているのかは直也と康志にしかわからないが何を伝えたのか?それは2ラウンドの結果に出てくるのだ。
「直也!思い通りにやって来い!」「はい、先輩」
ボクシングジムでは敬遠の中でもあったがプロテスト前の康志は直也の何かに気づいたようで直也と共に顔を合わせ笑っていた。


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