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梗概小説/兄妹の秘密-夢幻-:Vol.026 銀河の生存

2013-07-05 10:19:43 | 梗概/兄妹の秘密
いよいよ、アルトーヴィルへ向かう時が来た。
アルトーヴィルへは、ル・カトリエからは近い場所にあり、ブロトンタの森とセーヌ川が左右にあり、空気も澄んだ場所であった。
アルトーヴィルの屋敷は、それほど大きくもなく、シンメトリックの石作りでもなく、ただの山小屋のような三棟の建物があった。
三棟あるうちの中央に銀河は暮らし、左右にある屋敷は執事とメイドの住まいになっていた。
銀河が暮らす建物に聖子は入ろうとすると、海都は一緒に入ろうとはしなかった。

「トントン、トントン」

聖子は木の扉を叩くと、扉は開くと銀河ではなく執事と最初に会い銀河の元へ案内をされた。
銀河は車椅子に座り、両手の手首には包帯を巻き、ただ窓の外を眺めているだけであった。
執事は聖子が銀河に逢うと何も言わず部屋の扉を閉じ別室へ離れていく。
聖子はゆっくり銀河の目の前に歩き、銀河の顔を見つめるが、銀河の瞳は外の一点を見つめるだけであった。

「銀河兄さん、聖子です、解りますか?」

聖子は銀河に声を掛けるが、銀河からの返事はなく、銀河の両方の手に聖子は優しく手を触れる。
銀河は出血が多すぎて脳や体への障害が残り、いつも車椅子に座る人形のように建物からは出る事のない暮らしが続いていた。
涙ぐむ聖子を見ても銀河は何も感じる事もなく動く事もなく、ただ外を見つめているだけの銀河であった。
しばらくすると海都は扉を開け銀河の部屋へ入って来る。

「海都さん、私はこれからは兄の元で暮らし、私は出来る事をしてみます」

海都は何が出来るのか?と思いながらも、聖子には好きにすればいいと声を掛け部屋を出て行った。
聖子の頭の中にあるのは大学に通っていた時、ボランティアで介護に携わった事でリハビリを始めようと考えていた。
アルトーヴィルの屋敷の周辺は自然に囲まれた場所で、リハビリには最適な環境であった。
銀河は充分生きたと言われても、聖子の気持ちは変わる事はなかった。
海都は、その日のうちに、ル・アーブルのアトリエに戻った。
聖子は、時間を決めて毎日毎日、晴れた日には銀河が乗る車椅子を押して自然の中を散歩するようになった。
半年を過ぎても、状況は変わらない生活ぶり。
執事やメイドは、聖子と銀河の姿を見ながら、哀れみを感じ同情の気持ちを持ち始める。
聖子が銀河を連れて散歩を始めて一年が過ぎた頃、銀河にある変化が見られた。
セーヌ川が見える場所で休憩していた時、銀河は両手を動かし両手を前に上げたのだ。
聖子は銀河の正面に立ち両手に触れ、顔を近づけてみると、銀河は聖子の顔を見ながら聖子の頬に両手で触れる事が出来た。

「兄さんは私を見てる、私の頬に触れている」

聖子は心の中で思うと、もしかしたら銀河はもう一度何かをするために生きていたのではないのかと思うようになる。

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