21世紀のデカメロン Decamerone del duemila

映画と世界史のあれこれ


植村 GIulio 光雄

61.モーターサイクルダイアリーズ

2008-12-21 | 映画

 アルゼンチン出身のエルネスト=チェ=ゲバラは,1959年親米バティスタ政権をカストロらとともに倒し,キューバ革命に成功しました。しかし,その後ボリビアの革命に身を投じ,命を落とします。ゲバラを描いた映画には,1969年すなわちゲバラがボリビアで死んでわずか2年後に製作された「革命戦士ゲバラ」があります。ゲバラ役のオマー=シャリフはそっくりで,カストロ役のジャック=パランスはちょっとカッコ良すぎました。この映画は,題名通り革命家としてのゲバラを描いた映画でした。一方,若き日のゲバラが友人と2人で,おんぼろオートバイに乗り,南米を縦断した旅を描いたのが,「モーターサイクルダイアリーズ」です。時代は1952年。朝鮮半島とインドシナ半島では戦争が行われており,アメリカ合衆国では,反共のマッカーシズムが吹き荒れていました。アルゼンチンでは,ペロン大統領が独裁を続けていましたが,この年,国民に人気のあった妻のエビータが亡くなります。マドンナが映画「エビータ」で彼女を演じましたね。
 ゲバラは,この旅でラテンアメリカの現実を知ります。ただ,映画では重要なシーンとなるチュキカマタの銅山で共産主義者の夫婦と出会うエピソードなど,原作のゲバラ自身の日記とだいぶ違います。それはともかく,この旅は現代の日本の若者が,「地球の歩き方」をもって出かけていく貧乏旅行と大差ありません。ゲバラの旅が単なる貧乏旅行に終わらないのは,彼がその後革命に身を投じたからに他なりません。しかし,この映画には革命家としてのゲバラはまったく登場しません。
 それにしても,資本主義は本当にしたたかで,資本主義と戦った彼の肖像すらTシャツにプリントして商品にしてしまいます。この映画を上映した映画館でも,ゲバラグッズが売られていました。もし,ゲバラが生きていたら激怒したでしょうね。私も,こっそりポスターを買ってしまいましたが。
 それにしても,この映画で描かれている時代のゲバラは,実際にも本当にただの青年です。それがわずか数年で,あのゲバラになるのです。革命運動を経験したからだけでは説明がつかないと,私は思います。

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 山川出版社のHPのコラムに2004年に書いたものに,少し手を入れました。1月にゲバラの映画が2作公開されます。私は,神戸のスピーゴラでオーダーしたブーツを履いて見に行きます。ブーツの裏側には,ゲバラの肖像を入れてもらいました。
049046

コメント (7)
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