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オフィスビルのビジネス

2021-02-27 10:25:00 | 企業分析
東京都心部のオフィスビルの空室率は、昨年末でだいたい4.5%ほどらしい。(日経記事
オフィスは賃貸しているけれど在宅勤務で空席だらけのオフィスも沢山あると思う。これらについては、リモートで上手く運営できると分かれば経費削減の解約も出てくるかもしれない。
或いはその交渉は始まっており、オフィスビルのビジネスは「売り手、貸し手が販売価格や賃料引き下げなど弱い立場になっている」のではないか…

と思ったら、丸の内など一流オフィス街ではそうでもないらしい。
三菱地所の2020年12月分四半期決算をみると、商業施設で減収は見られるが、オフィスビルのビジネスではむしろ増収しているのだ。(公式サイト

まず前提として、三菱地所のオフィスビルはほとんどが東京都で、特に千代田区が多いことが有価証券報告書から分かる。
いわゆる「丸の内の大家」という世間のイメージ通りの事業構造である。
(経団連ビルなどを含め、丸の内〜大手町エリアに30棟を超えるビルを持っている)

そしてそれらのオフィスビルでは、空室率は確かに昨年増えたが2%未満と東京都心5区の平均の半分以下に抑えられているのである。しかも賃料は増額改定をやりきったという。空室が出て困っているどころではない好景気だ。
つまりオフィスビルのビジネスは、
「全体は厳しくなっているが高級オフィスについてはダメージが無い」のだ。

この事実から考えられることは、オフィスビルに求められる価値の選別である。
オフィスビルの価値として
【機能】事務作業や会議に便利な場
【感情】ステータスや心理的な快適さを感じさせる場(結果、会社へのロイヤリティや成果がレベルアップする)

という2つに分けた時、機能面の価値だけのオフィスビルはMicrosoft Teamsなどでウェブ会議が自在に出来る環境において価値を失っており、感情面の価値も提供できるオフィスビルが残っているのではないかと思う。

この通りであれば、今後自粛期間が過ぎてもオフィスビルの快適さがますます向上するか、経営状態の厳しい局面なら在宅勤務が増えるだろう。
オフィスビルの契約動向をより詳しく見たらますます確信が深まるのではないかと思うが、オフィスビルのビジネスに携わっている場合、感情面の価値開発により一層注力し、他社との差別化を図るのが良い経営判断ではないかと感じる。

不動産会社の努力による今後のオフィスビルの開発は楽しみである。素晴らしいビルが増える未来に期待したいと思う。

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