レポートバンク

主に企業の財務や経営について分析するブログ。

レポートバンクの運営

2022-03-27 08:25:00 | その他
だいぶ長い期間ご無沙汰していました、
レポートバンク管理人です。

私の趣味であるリサーチも、この期間は本を読んだり企業IRを見たり、インプットするばかりになりレポート作成がおろそかになりました。またどこかで書こうと思いつつ、中々筆が進みません。ベンチャー投資の資金サイクルが作り出す新たなエコシステムによって、様々な業界で急速な成長を遂げる事業が出てきています。新たに学ぶことが多く、調べて整理したいことは多いです。

レポートバンクのKindle売上は、当ブログ開始以来、おかげさまで累計一万7千円くらいに届きました。
作成の為のMicrosoft Officeの利用料に年間一万円ほど費しているので、利益は数千円です。

ここで最初のブログにある寄付宣言に応じて、人道支援に150 USD(約1万8千円)の寄付を行いました。これまで購読していただいた方々、ありがとうございました。
そして一旦、「レポートバンク寄付制度」を終了します。
レポートバンクの新作はまた時間のある時に作成しようとも考えています。これからもよろしくお願いします。




軍需品の市場

2021-08-12 15:07:00 | その他
先日、麻生財務大臣が防衛費増額に理解を示したという報道がなされた。
世界の不安定化は軍事費用の増大をもたらす。防衛省の公表資料によれば、2015年から2019年にかけて米中2大国、日本や韓国といった中国周辺国で軍事費が増大を続けている。(ドイツなど増えている理由が謎な国もある)
中国の台頭は、日常でニュースを見ていれば感じているだろうが世界の不安定化をもたらしており、全体として世界の軍事費は増大に向かうだろう。

そして金額をみると、防衛省にはぜひ単位を統一してもらいたいところだが、米国は圧倒的である。朝日新聞のまとめ記事によれば2020年支出で多い順に、
・米国 約7500億ドル(75兆円ほど)
・中国 約2500億ドル(25兆円ほど)
・インド 約700億ドル(7兆円ほど)
となっていて、米国の軍事大国ぶりが明瞭にわかる。

日本は5兆円ほどで、世界では第9位だ。
世界合計では約210兆円になるという。
これは紛れもなく巨大市場である。
調査会社の試算によればスマホ端末市場が世界で約70兆円であることや、
トヨタの全世界での売上合計が約30兆円であることも併せて考えると大きさが伝わるかもしれない。

それでは、この内訳は何だろうか。一般社団法人日本航空宇宙工業会が米国の2020年10月〜2021年9月にかけての軍事予算約70兆円を丁寧に説明してくれているところによると、
・200万人ほどの軍人人件費約15兆円
・作戦実施の費用約25兆円
・装備品約15兆円(但し軍事以外の予算でも軍の用いる装備品を買うらしく、米国予算では軍需品に約25兆円用意する)

といったところが主な項目である。
割合はどこの国でもそれほど変わらないと考えてここからは米国の比率で検討する。

軍需品には、70兆円から15兆円と約2割を使い、さらに他からも10兆円を持ってきている。約25兆円の内訳をみると、
・作戦支援に約7兆円
 (↑壊れる装備や消耗品?)
・戦闘機関連に約6兆円
・戦艦関連に約3.5兆円
と、今や予算のうえからも主力は戦艦ではなく戦闘機(空の戦い)である。
関連と付けているのは、そこに戦闘機運用に用いるレーダーや無人航空機も入っているからだ。

この米国予算から推定されることは、
・70兆円の軍事予算といっていて25兆円の軍需品購入なので、世界全体約210兆円からしたら、約75兆円が軍需品市場となるであろうこと。
70兆円のうち6兆円ほどが戦闘機関連に使われているので、世界では約20兆円ほどの戦闘機関連市場があること。
であろう。

また、内容には無人航空機が入ってきた。コリン・パウエル(かつて米軍制服組トップを務めた)の回顧録では、米軍の被害を最小限に抑えながら作戦を成功に導く努力が何度か出てくる。この思想からすれば、この新登場の武器はこれから市場を拡大していくだろう。

以上から、
・軍需品市場は巨大で、世界の政治情勢によって変動しつつも直近については拡大しそうである
戦闘機関連に軍事費全体の1割程度が用いられており、軍需品市場の中で最大である
・戦闘機関連の中では無人航空機が最近あらわれたが、ダメージを抑えようとする米軍(軍需品市場の最大顧客)の思想からして今後拡大が見込まれる
というのが僕の推測である。

レポートバンクのレポート一覧
様々な企業や市場について長めにまとめたレポートの一覧


レポートバンク

2021-08-01 12:03:00 | その他
これから、レポートバンクの記事を
でも配信していこうと思います。(リンクはレポートバンクのホーム画面)
理由はGoogleなどを画面切り替えで参照しながら長めの記事を書いていると途中で記事が消えるという現象がgooブログで起きやすいから、という書き手目線のご案内で恐縮ですが…よければご覧ください。。

美術品販売の日本市場

2021-07-30 20:29:41 | その他
百貨店の中には、美術品を鎮座させて数十万円や数百万円などで売っているコーナーがあったりする。少し気軽に近寄りがたい空気もあるが、こうした美術品販売はどれくらいの市場なのだろうか?

文化庁が2021年2月に公表したレポートによると、

・2019年の日本の美術品販売市場(アート市場と呼ばれる)は約2,600億円、美術館入場料等関連市場は約1,000億円。
・美術品販売のうち約800億円は画廊・ギャラリーでの販売(増加傾向)
・美術品販売のうち約600億円は百貨店を通じた販売(減少傾向)
・その他約1,200億円がオークション等様々なルートでの販売

となっている。なお美術品の定義は資料中に無いが、おそらく絵葉書や絵のプリントされたコップ、ブランドの洋服など大量生産品は含まず、数十万円以上の一点物だろう。
ここでは、この美術品販売ビジネスの将来を考えたい。

(検討アプローチ)
日本の美術品販売ビジネスの市場は、ほかの市場と同じく販売数×単価で表されるので、このどちらかが高まるかどうかを考える。
なお、文化庁のレポート趣旨は「世界のアート市場は7兆円を超えているから、富裕層数の割に小さい日本ではポテンシャルがある」という。
しかしこれは買いやすい仕組みの問題だけでなく文化の違い(アート作品を持つのがステータスなのか、という人々の感覚等)も多分にあると思われ、世界だと〜、という比較は行わない。

【販売数の推測】
販売数を決めるのは、ニーズとそれを喚起して取引につなぐ販路である。

ニーズは、作品を所有し観ることでの自己完結の満足感と、家族や訪問客・コレクター同士の間ですごいと思われる他者評価の満足感の2つある。

これまでの日本市場の大きさは、高価なアートへの自己完結型のニーズの小ささを物語っていると思う。高価なアートを欲しいと思ってグーグル検索する人は、今までもそこで見つけて買うだろう。
グーグルで世界中の美術品を相当なリアル感でみることのできる(Google Arts&Culture)時代でもあるし、美術品を鑑賞するニーズは無料で既に満たされ、所有までは考えないのではないかと思ってしまう。
高価なアートへの他者評価起因のニーズは日本では今は少ないが、政策でコミュニティをいくつか立ち上げるとなれば増えるかもしれない。SNSでコミュニティを築けるのは高齢者層に少なく且つ富裕層は高齢者層に多いと考えれば(これは日常感覚だが)、彼らのコミュニティを組織して他者評価起因のニーズを高めていく施策は当たるだろう。

販路はこれまで、画廊や百貨店がメインということから、ほとんど対面だったことが考えられる。お金持ちが銀座のギャラリーや百貨店に入り、丁重な接客を受けながら気に入ったものを買って帰るようなイメージだ。
インターネットでの購入も、Amazonで城が売られていた話などもあるようにあり得るのだがふるわないのは、富裕層に高齢者層が多く、高齢者層がインターネットでの買い物をそこまで行わないという日常観察からの推測が当たっているのではないかと思う。

とすると、政府機関・民間企業などの努力で何らかの集まりから富裕層のアートコミュニティを作り出したり、そのコミュニティと連携する販売業者が出れば、新たな販路が富裕層の(主に他者評価起因の)ニーズをくみ取り、市場拡大につながるだろう。
また、時が経てば「これから高齢者かつ富裕層になる人々」はインターネットを駆使する世代なので何もしなくとも販路の制約は減り、市場は増えるだろう。

以上から、美術品販売の日本市場はこれから「富裕層コミュニティ作り」の施策や民間業者取組み、そしてインターネット世代の高齢化・富裕化により、増加ひていくと考える。

様々な市場や企業をより深く分析したレポートの一覧


いじめ問題へのガバナンス観点からの提言

2021-07-09 13:28:00 | その他
学校及び教育行政にとって、「心身ともに健康な国民の育成」(教育基本法)という目的達成を阻むいじめ問題は明確に対策すべき課題である。
いじめ件数把握の曖昧さから問題のレベル感を数字で示すのは困難だが、正確なデータが無いにしても日々のニュースをみていれば問題だということは分かる。しかも何年も問題とされてきた一方で事件報道は絶えず、この問題による社会へのダメージが減っている実感がわかない深刻な問題だ。

教育が不安定であると経済にも当然悪影響を及ぼすということから、今回はいじめ問題をレポートバンクのスコープと捉え、いつも企業分析の際に用いるガバナンスの視点を用いて解決案を考えたい。

・解決の責任と権限
まず直接にいじめを防ぐことに責任を負うのは学校経営陣である。義務教育なら市民から、私立なら保護者から資金を集めて学校を営む経営陣は、その目標達成についての責任と、目標達成のための権限をもっている。
彼らの権限は学校内の人事権だ。教師の配置や昇進だけでなく、クラス内で生徒を何かの委員に据えて活動させる権利もある。

いじめた生徒を叱責する権利もある。生徒は未熟で指導すべき存在(なので選挙権もない)だから、直接に責任を問うのは無理というものだ。
また、保護者の関与は間接的だ。いじめる側・いじめられる側双方を理解する、いわば「現場」にいるのは学校側なので、その経営陣に直接の責任および解決への施策を打つ権限があるとみるのが妥当だ。

・解決に用いる権限
学校経営陣は、まず問題解決に向けて適切な教師を選び、担当クラスにおける学校運営の権限を委任するという解決策を持っている。しかし長年問題が絶えないことは、個人の能力に依存しても解決不可、この策は問題解決には不足であることを示唆している。

次に、委任された教師は、クラスを管理する為の権限を持っている。すなわち
①生徒を様々な係に任命したり、
②叱責したり、
③評価(担任だと、内申点や道徳だろうか)する
という権限を持つ。①に追加説明すると、係のうちで、いじめ問題の解決に関わるのは学級委員ないしクラス委員と呼ばれるものだろう。この係は、クラス会のファシリテーションや号令をする係になってしまうことが多いが、役割をきちんと定義するなら「クラスに規律をもたらす」係であるはずだ。

もし様々な報道にあるように教師が多忙で一人一人きちんと管理するには時間が足らず、権限のうち②叱責だけで解決できないということだ。
その場合、①か③で解決策を探る他ない。

まず①の線で考えると、クラス委員の働きを「いじめ問題解決」レベルまで強化することが解決策となる。
これは具体的には、いじめを始めたり収めたりする生徒を皆任命してしまうというものだ。大体40-50人のクラスで3-5人になるのではないだろうか。そして教師はこの委員たちにクラスの規律維持の権限を委任するのだ。(責任は委任できない。会社の上司と部下、取締役と従業員のような関係性である)

権限は、いじめを叱責してやめさせたり、関係者の話し合いを設定したり、保護者に直接連絡してやめるよう依頼することが考えられるが、一部は教師の承認を必要とするプロセスに設計することも考えられる。

委任している以上、いじめの防止はクラス委員の役目であり、防止できず起きた際にはクラス委員が一義的には解決する。教師は適宜介入しつつも、基本的にはクラス委員だけを見ておけばよい。
この委員のモチベーションは、③の評価を組み合わせることによって保てる。学校生活をうまくサポートしてくれたら内申は満点、問題が起きてしまえば連帯責任で減点だ。学期ごとに平和を保った委員たちをクラスで教師が表彰するなど、点数以外の評価も効くはずだ。(企業に勤めている人は社内広報でそんな場面を見るだろう。大人も子どもも同じだ。)

委員の働きを評価するインプットは、教師の教室観察は人手不足といっている以上望めないので、
・生徒への匿名アンケート
・企業がよく導入しているような相談窓口(メール等で24時間365日受付)の設置
を実施することが必要だ。
相談窓口について、企業だと通常の体制と独立して外部弁護士で相談を吟味したりする。可能ならば学校も地域の弁護士等に委託するのが良いだろう。特に授業料の高い私立については早々に必須施策になるではないかと思う。

③の線で考えるのは困難だ。まず、評価は事後的な施策なので、本件の場合いじめが起きてから対策すると言ってしまっているようなものだからだ。
刑罰があっても犯罪が減らないのと同じ構造で、評価だけでの解決は不足である。(それに、おそらく今までも、悪い生徒を悪く評価することはある程度為されていると思う)

・結論
学校による教師の選定では解決できず、教師の時間も不足している現在、いじめ問題解決の有効な施策は教師から生徒への規律維持権限の委任であって、具体的にはクラス委員の拡充・評価制度の創設が望ましい

(おわりに)
この実現は、学校により、教師への保護者の理解や学校経営陣の理解が必要かと思われる。それについて言うと、私の周りの教師をやっている人は中々忙しそうである。また、もし施策が実現する場合、クラス委員となる生徒たちにとっても人のことを観察したり考えたりする貴重な経験になると思う。