ヨシムラ・サイエンス・ラボ

身近な物を材料視点で解説「サイエンスライター」
銅の良さを伝え広める「伝銅師」、金属のお悩みへの相談「メタルソムリエ」

天然繊維の中で唯一の連続した繊維 絹糸

2011年04月17日 | 加賀繍
伝統工芸を材料科学でサイエンスするヨシムラ・サイエンス・ラボです。
加賀繍の眞田さんにいろいろとご指導いただきながら進めてきた加賀繍を材料科学でサイエンス いよいよ第5回目(最終回)です。

最終回の今日は、加賀繍に使用される絹糸(きぬいと)についてです。
絹は蚕の繭からとった動物繊維で、蚕が体内で作り出すたんぱく質が主成分です。
養蚕の起源は、約5,000 年前の中国と言われており、日本や西欧へは、3世紀頃伝えられたようです。
絹糸は1個の繭からなんと約800~1,200mとれるため、天然繊維の中では唯一の連続した繊維だそうです。
絹糸の強さは約38kg/mm2で、強度の強いアルミニウム合金と同等の強度があります。
かなり強いですね!

刺繍の分野では、この絹糸を「釜糸」(下記写真)という独特の名前で呼びます。

これは製錬後の絹糸に撚りをかけずに合糸した練り平糸のことを指します。
この釜糸を紙製の管に巻き、そのまま、あるいは撚るなどして使います。

この撚糸には、「松撚り」や「桂撚り」など何種類もの種類があるようです。
いろいろな種類があるからこそ、加賀繍の美しさが表現できるのですね。
昔の人の知恵を感じますね。
(参考文献:「美しいキモノ 2004秋号」(アイジェット婦人画報社))

縫い針はピアノと密接な関係!?

2011年04月10日 | 加賀繍
伝統工芸を材料科学でサイエンスするヨシムラ・サイエンス・ラボです。
加賀繍を材料科学でサイエンス 第4回目です。

今日は、加賀繍にも使用される針の材質(はりのざいしつ)についてです。

縫い針は大きく分けて、和針と洋針の2種類に区別できます。
和裁は木綿針、絹針、ガス針などがあり、洋針の代表的なのはメリケン針です。

針は、少量の炭素を含む鉄でできており、ピアノ線と同様の材質です。
コイル状に巻かれたピアノ線を一定長さで切断し、縫い針に加工されています。
今は配信停止になっていますが、以前は(独)科学技術振興機構が提供するサイエンスチャンネル
(http://sc-smn.jst.go.jp/4/series.asp?i_series_name=THE+MAKING)で、縫い針の作り方を見ることができました。

ちなみに、このサイトではさまざまなモノの作り方を映像でみることができます。
サイト内の検索で「伝統工芸」と入力すると、24件ヒットし、その中には金沢金箔や九谷焼があります。

機会があれば、見てみると面白いかもしれません。

針の秘密

2011年04月07日 | 加賀繍
伝統工芸を材料科学でサイエンスするヨシムラ・サイエンス・ラボです。
加賀繍を材料科学でサイエンス 第3回目です。

今日は、加賀繍に使用される針(はり)についてです。
刺繍針は、太さの違いによって二十種類くらいあるそうで、用いる糸の太さで使い分けられている様です。
形状は、長さが通常の縫い針より短めになっており、針の頭は平たく、持った時に安定感が保たれるようになっています。(写真は眞田さんよりご提供)


ちなみに、針先をじっくりと眺めてみたことってありますか?
「針の先は、尖っているだけじゃない!」って思われますよね?
実は、その尖り方に違いがあるんですよ。
身近な縫い針ですが、針の先端を良く観察してみると和針と洋針で形状が異なることをご存知ですか?
和針は洋針と比べて先端が尖っており、洋針は丸い形状になっています。
すなわち、和針の方が洋針より布通りが良いことになります。
これは、縫う布の厚さの違いや縫い方によるためだそうです。

気づかないところで工夫されているんですね。

細部にこだわりを見せる加賀繍

2011年04月04日 | 加賀繍
伝統工芸を材料科学でサイエンスするヨシムラ・サイエンス・ラボです。
なお、加賀繍に関するサイエンスついては、「加賀繍 華工房」の眞田さんにアドバイスを頂きながら進めています。
※眞田さんへ、眞田さんのブログにてヨシムラ・サイエンス・ラボを紹介して頂き、ありがとうございます。

今日は、加賀繍を材料科学でサイエンス 第2回目です。
具体的に加賀繍をサイエンスする前に、加賀繍の特徴(かがぬいのとくちょう)について触れておきます。

加賀繍は室町初期に京都から伝えられた刺繍の技術に起源があり、当初は僧侶の袈裟(けさ)や仏具の打敷(うちしき)に用いられており、宗教的なものだったそうです。それが、武家の台頭と共に次第に姿を変えていき、やがて将軍や藩主の陣羽織、奥方たちの着物にも使われ今にいたっています。

加賀繍と同じように有名なのが京繍。
京繍は金糸や銀糸を多用し、雅やかさを追求する傾向があるようですが、加賀繍は微妙に色目の違う糸をグラデーションの様に配色するなど、細部にこだわりを見せるのが特徴の様です。
加賀繍と京繍を並べて比較すると、その違いが良く分かるかもしれませんね。
(参考文献:「加賀、金沢の美の技」(龍文社))