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読書のよもやま(2025.03.31)

2025-03-31 | 雑文
「死の虫 ツツガムシ病との闘い」小林照幸
(中公文庫)

医療系というか、未知の病の解明と対策、そ
して薬の開発を追う系の作品を多く手掛ける
著者。

ただ、自分は「死の貝 日本住血吸虫症との
闘い」に続いて(まだ)2作目の読み終わり。

死の貝と同じく、日本のとある地方に古くか
らある、農業を営む人々たちに恐れられてい
た、とある虫を媒体とした死に至る病。

死の貝と同じく、祈祷などに頼るしかない時
代から、医学の進歩による原因の究明、治療
薬の開発までを今回も丁寧にたどる。

丁寧にたどるゆえに、(控え目な表現で)半
分くらいまでは、命名権をはじめとした死の
虫の周辺、関連にまつわる話が続く。

死の貝もそれなりにあったが、本作はなかな
か本筋というか、取り上げる病そのものの話
が進まず、「んん?」とはなる。

が、後半の「昭和の時代<戦後>」に至り、
それらも無駄な話はなく、必要なことだとい
うことがわかる。

文庫本あとがきで、著者は「風土病の克服に
壮大な人間ドラマ、ヒューマニズムを感じる
私を~」と記す。

その人間ドラマ、ヒューマニズムを表現する
ためには、やはり徹底した下調べによる時代、
社会、人物描写が必要なのだろう。

読んでいる時には、やや退屈なその周辺描写
は、後半にリアリティと十分な厚みを与えて
くれる。

著者と同じというのはおこがましいことだが、
自分も本書にはノンフィクションを、人間ド
ラマを期待して読んでいるから。

それを小説ではなく、ノンフィクションに求
めるのもアレではあるが、世の中にはそうい
う難儀な人がいる。

そして、著者は憶測や感情を(極力)排して、
事実を、上質なノンフィクションとして、こ
うして一般向けに提供してくれる。

医療(風土病)系に興味のある方にも、ジャ
ンルは問わずノンフィクションが好きな方に
も、おススメ。


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