Four Season Colors

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読書のよもやま(2024.09.09)

2024-09-09 | 雑文
「彼は早稲田で死んだ 大学構内リンチ殺人
事件の永遠」樋田毅(文春文庫)

日本では、大学生が大学生を物理的な、言葉
の意味そのまま「暴力」で支配することがま
かり通っていた時代があったらしい。

その結果、早稲田大学では、構内で一方的な
リンチにより一人の大学生が亡くなっている。

本書は、その時代にその場所で、反暴力側の
中心的な立場として抗った著者が、半世紀の
後に振り返り、関係者に取材をしている。

あったらしい、と書いたのは、本書の内容が、
現実であったにもかかわらず、あまりにも自
分の大学時代と異なるからである。

今も社会で接する、今も生きる人たちの通う
大学であったこととは、なかなか想像ができ
ない。

本書を読む限りでは、闘争理由はただ薄っぺ
らい表向きの、闘争のためのガワだけのよう
に読める。

これを「若さ」というもので片づけることが
できるかできないか。

その数年が、人生を縛る、あまりにも重い鎖
となった著者は、暴力側にとっての「それ」
が「なにか」を知ろうとしている。

半世紀の後、ということもあり、関係者から
直接話を聞くことも容易ではない中、暴力側
の、当時も接点のあった人と対談をする。

そこでの認識の違いは、本当に典型的ないじ
める側といじめられた側のようにすれ違い、
交わることがない。

自分にとっては、貴方にとってほどの意味も、
重さもあったことではなく、究極、個人に帰
することではない。

確かに大学闘争は時代特有の出来事であるし、
熱狂した多くの学生には、他の時代の他の出
来事のように、流行だったのかもしれない。

ただそれが過剰な暴力とそれによる熱狂とす
れば、受ける側の清算は本当に容易ではない。

大学闘争の当事者によるリアルを知るととも
に、ありがちではあるが、加害と被害につい
ても考えさせらえる。