Cocoさんが、棚の上のジャーキーを狙っていると
後ろのドアが静かに開いて、
不気味な声が聞こえてきました。
「私はあくまです。
あくまなので
ドアがあくまで待っています」
あくまはCocoさんのそばまでやってきて
「あなたはあのジャーキーが食べたいのですね。
願いをかなえてあげますから
その代わりに、『たましい』をくださいね」
と言いました。
ジャーキーに目がくらんだCocoさんは
「いいですよ。『たましい』でもなんでも
さしあげましょう」と答え、
ジャーキーを
食べてしまったのでした。
その後、Cocoさんはふと
考えました。
はて、「たましい」をあげる約束をしてしまったけれど
「たましい」って、なんだろう?
玉のような石のことでしょうか。
いいえ。それは、たまいし。
球で作った「C」の文字「たましー」でしょうか。
しかし、こんな大切なおもちゃを
あくまに渡すわけにはいきません。
Cocoさんは困ってしまいましたが
あくまはようしゃなく、やってきました。
「わたしはあくまですから
あくまで、『たましい』をいただきますよ」
「さしあげたいのはやまやまですが、
『たましい』って、なんですか。
と、Cocoさんは聞きました。
よくさがしてみたけれど
それらしいものがみつかりません」
ところが、そのとたん、あくまはどぎまぎし始めました。
「実はわたしにも、『たましい』というものが、
どういうものなのか、わからないのです。
Cocoさんならきっと知っているだろうと思って
それで『たましいをください』と言ってみたのです」
なあんだ、そうだったのか。
「たましい」って、なんだろうね。
わからないね。
そう言って顔を見合わせ、
Cocoさんはふと、頭に浮かんだことを
口に出してしまいました。
「あ・・・くま?」
今まであくまだとばかり思っていましたが
顔をよく見たら、「くま」なのじゃないかと、気がついたのです。
それを聞いて、くまはしょんぼりうなだれました。
「そうです。わたしはくまなのです。
なのに、ちょっと珍しい耳や手足をしているものだから
なかなかわかってもらえません。
みんな不思議そうに『あ?くま?』というのです。
だからすっかりいやになって
もう『あくま』になって、『たましい』を集めることにしたのです」
くまは、続けて言いました。
「わたしは、普通の姿のくまさんたちのことが
とても、ねたましいです」
Cocoさんのそんなくまのことを
いたましい気持ちで見つめました。
「あっ、くまさん。『ねたましい』と『いたましい』
2つも『たましい』が入っていますよ」
「ほんとうだ。『たましい』って
意外と身近なところに
いくらでもころがっているものなのですね。
それがわかったので
私はもう『あくま』はやめます」
と、くまも大喜び。
これからは仲良く暮らしましょう、と
2人は
けたたましい笑い声を
あげました、とさ。
おしまい♪
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