「現に事実がここにあるじゃないか! 私だって、今朝はまだ疑いを持っていた。しかし、あの虚栄心の塊のウィルキーという馬鹿のおかげで、確信が持てたよ。いいかい、どう計算しようと、間違いようもなく、我々は成功するよ。これから起こるのはこういうことだ。モーメジャンという弁護士、これは私の知っている中で一番強欲な悪党で、私に忠誠を誓っているのだが、この男が告訴状を作成すれば、明日にでもマルグリット嬢は牢に入れられる。召使たちも証人として召喚されるさ。カジミールの言ったことを聞けば、他の召使たちも皆どんな風に答えるか、分かろうってもんだ……。というわけで、彼女は盗みの罪で有罪になったも同然だ。毒を盛ったことに関してはドクター・ジョドンの言葉を聞いたろう。あの男を信用できるかどうか? その答えはもちろんウィだ。もし私が彼の要求額を値切らずに支払えばね。で、もちろん、私は支払うさ……」
こう聞かされてもド・コラルト氏は納得しない様子であった。
「毒殺の嫌疑は失敗するだろう」と彼は言った。「ド・シャルース伯爵が二匙飲んだという液体の入った小瓶が発見されれば」
「お言葉だがね、その小瓶は見つからんよ」
「何故?」
「何故かって言うとね、君、私はその小瓶がどこにあるか知っているからだよ……。それは伯爵の書き物机の中にあるのさ。明後日になれば、その小瓶は消える」
「誰がそれを持ち出すんだ?」
「マダム・レオンが私に見つけておいてくれた手先の器用な男だよ。ヴァントラッソンという……。あらゆる可能性は考えてある。すべて周到に計画してあるのさ。明日の夜か、遅くとも明後日の夜、マダム・レオンが仲間のその男をシャルース邸に連れて行き、庭の木戸から中に入れる。木戸の鍵を彼女は隠し持っていたのだ。仲間の男はヴァントラッソンで、邸の間取りを知っている。で、彼は伯爵の書き物机を鉤を使って開け、例の小瓶を持ち去る。封印が施してあるだろう、と君は言うだろう。そのとおりなのだが、その男が言うには、封印をそっと剥がして、何の痕跡も残さず元通りにしておくことなど、朝飯前なのだそうだ。錠前については、伯爵の亡くなった日に誰かがこじ開けようとした痕跡が既にあるため、二度目にこじ開けても誰の眼にも止まらないだろう、とのことだ……」
ド・コラルト子爵は皮肉な表情を浮かべながらも同意した。
「なるほどね。だが、検死が行われれば告訴が無駄だったことが明らかになるだろう」
「そりゃそうだね。だが、検死というものは時間が掛かる。それこそ、私には願ったりだ。マルグリット嬢は自分の身が危ういことを知り、もう駄目かもしれないと思うだろう。十日も身柄を拘束され、厳しい尋問に晒され続ければ、彼女の精神力も限界に近づく。そんなとき、一人の男が彼女にこう言ったとしたら、彼女はどう答えると思う? 『私はあなたを愛している者です。貴女のため、私は不可能に挑むつもりです。私が貴女の無実を見事に証明してみせたら、私の妻になると言って頂けますか』」6.4
こう聞かされてもド・コラルト氏は納得しない様子であった。
「毒殺の嫌疑は失敗するだろう」と彼は言った。「ド・シャルース伯爵が二匙飲んだという液体の入った小瓶が発見されれば」
「お言葉だがね、その小瓶は見つからんよ」
「何故?」
「何故かって言うとね、君、私はその小瓶がどこにあるか知っているからだよ……。それは伯爵の書き物机の中にあるのさ。明後日になれば、その小瓶は消える」
「誰がそれを持ち出すんだ?」
「マダム・レオンが私に見つけておいてくれた手先の器用な男だよ。ヴァントラッソンという……。あらゆる可能性は考えてある。すべて周到に計画してあるのさ。明日の夜か、遅くとも明後日の夜、マダム・レオンが仲間のその男をシャルース邸に連れて行き、庭の木戸から中に入れる。木戸の鍵を彼女は隠し持っていたのだ。仲間の男はヴァントラッソンで、邸の間取りを知っている。で、彼は伯爵の書き物机を鉤を使って開け、例の小瓶を持ち去る。封印が施してあるだろう、と君は言うだろう。そのとおりなのだが、その男が言うには、封印をそっと剥がして、何の痕跡も残さず元通りにしておくことなど、朝飯前なのだそうだ。錠前については、伯爵の亡くなった日に誰かがこじ開けようとした痕跡が既にあるため、二度目にこじ開けても誰の眼にも止まらないだろう、とのことだ……」
ド・コラルト子爵は皮肉な表情を浮かべながらも同意した。
「なるほどね。だが、検死が行われれば告訴が無駄だったことが明らかになるだろう」
「そりゃそうだね。だが、検死というものは時間が掛かる。それこそ、私には願ったりだ。マルグリット嬢は自分の身が危ういことを知り、もう駄目かもしれないと思うだろう。十日も身柄を拘束され、厳しい尋問に晒され続ければ、彼女の精神力も限界に近づく。そんなとき、一人の男が彼女にこう言ったとしたら、彼女はどう答えると思う? 『私はあなたを愛している者です。貴女のため、私は不可能に挑むつもりです。私が貴女の無実を見事に証明してみせたら、私の妻になると言って頂けますか』」6.4
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