goo blog サービス終了のお知らせ 

エミール・ガボリオ ライブラリ

名探偵ルコックを生んだ19世紀フランスの作家ガボリオの(主に)未邦訳作品をフランス語から翻訳。

2-VIII-18

2023-08-14 12:33:15 | 地獄の生活
あまり、どころではなく、全然問題にならなくなった、のかもしれなかった。
『将軍』はその後すぐ、友人の一人を伴って帰宅した。彼を晩餐に招待したのである。その晩餐の席でマルグリット嬢はフォンデージ氏が夫人に負けず劣らずその日を有効に過ごしたことを知った。彼もまたくたびれた様子だったが、確かにその理由はふんだんにあったようだ。
まずフォンデージ氏は投資で大損をしたという紳士から馬を数頭買い取ったのだが、それらの見事な姿を見れば、代金が五千フランとは破格の安値であった……。その後一時間も経たないうちに、ある有名な馬の目利きであるブリュール・ファヴァレイ氏から、殆ど二倍の値で買いたいという申し出があったのを断ったのだった……。このことで彼はすっかり気を良くし、立派な鞍付きの馬の周囲をうろついた挙句、それが百ルイで手に入ると聞くと、誘惑に勝てなくなってしまった……。これはしかし愚かな散財などでは断じてない、というのはその気になればいつでも少なくとも千フラン高く転売することができるからだ……。
「というわけですからね」と友人は言った。「毎日馬を一頭ずつ買っていれば、一年に三十六万五千フランの収入があるというわけですよ……」
これは単なる冷やかしなのだろうか? 自分が賢い買い物をしたと自慢する癖のある人間に対してよくやるような。それとも、この言葉にはもっと深い、感情を害するような意味が込められているのか? マルグリット嬢には判別の付きかねることであった。
はっきりしているのは、『将軍』がこの感想を機嫌よく聞いていたことであり、更に同じぐらい陽気な調子でこの日何をしたかを話し続けたということである。
馬を手に入れたので、次は馬をつなぐ車体が必要であったが、彼は全く新品同様のものを見つけた。それはロシアの貴族が注文しただけで引き取らなかったため、車体製造業者が損を承知で彼に売ってくれたというのである……。この業者に報いるため、彼は更に二人乗り用箱馬車も購入したのであった。ついでに、目と鼻の先のピガール通りに厩舎と車置き場を借りることにし、翌日には御者と馬丁が到着するのを待つばかりだという。
「そういったこと一切合切ひっくるめても」とフォンデージ夫人が重々しい口調で言った。「私たちが利用していたあの馬鹿馬鹿しい年契約の貸し馬車よりも安くつくんですわね!……あら、本当のことですのよ。わたくしちゃんと計算をしましたから……毎月、やれ酒代だの、割増だのって言って千フラン近くも払ってきたんです。馬が三頭に御者一人ならそれほどにはなりませんわ。それに何という違いでしょう! これでやっと家柄にふさわしく振る舞えますわ。下賤な輩に馬鹿にされることもなくなるし。もう貸し馬車屋が寄こしてくる草臥れ果てた駄馬を恥ずかしく思うことも、あの横柄な態度の御者たちに我慢することもなくなるかと思うと……。最初のお買い物のことをお聞きしたときにはちょっと引きましたけれど……してしまったことは仕方がありません……私は満足しております。他のことで埋め合わせれば良いことですものね」8.14

コメント    この記事についてブログを書く
« 2-VIII-17 | トップ | 2-VIII-19 »

コメントを投稿

地獄の生活」カテゴリの最新記事