マダム・ダルジュレは尊大な身振りで彼を遮った。
「そうがっかりするものでもありません。あなたは恐ろしいほどの大金持ちになるのです……。ド・シャルースの財産がどれほどか鑑定しようとした人たちは皆実際の価値よりも低く見積もっていました。私がまだ若い娘だった頃、父は自分の年利収入は八十万リーブルを越えている、とよく言っていたものです。兄がそのすべてを相続したのだけれど、彼はその年収の半分も遣わなかったと断言できます……」
ウィルキー氏の全神経がこれほどのショックを経験したことは今までになかった。彼は目が眩み、よろめいた……。この巨大な富が金貨の山となって積み上げられている様が目に浮かんだのだ。千六百万フラン以上。そしてその金貨の山にじかに手を突っ込んでいる自分……。
「おお!」 彼はこれだけしか言えなかった。「おおっ!」
「ただ」 とマダム・ダルジュレは続けた。「あなたを落胆させるようなことがあるだろう、と警告しておきます。これは大いにありそうなことです……。私の兄は、法で定められた相続分すら私には渡すまい、と固く決めていたようなので、ありとあらゆる方法を用いて彼の財産をいろんな形に変えていることでしょう。だからあなたがその全てを手にするには多くの時間と手間が必要になると思います……。でも、ド・シャルース伯爵の信頼を得て仕事をしていたらしい男を私は知っています。彼が助けになってくれるでしょう……」
「で、その男は何という名前ですか?」
「イジドール・フォルチュナ……彼の名刺を取っておきました、あなたのために。さぁこれです」
母親が差し出した名刺をウィルキー氏は注意深くしまい込んだ。それから、やれやれ解放された、という口調で言った。
「ということなら、喜んでサインしますよ。……けど、これからは質素にしろ、などという小言は御無用に願いますよ。二百万が五パーセントで回ればちょっとした贅沢が味わえるでしょうからね」
マダム・ダルジュレはこの微妙な皮肉に取り合おうとしなかった。
「このお金の使い道なら前もってあなたに言ってあげられますよ」と彼女は言った。
「へえ、そうですか!」
「二百万のうち百万は、ある若い娘さんに持参金として持たせます。兄があんなにも突然の死に倒れることがなければ、ただ一人の相続人になっていた筈の」4.8
「そうがっかりするものでもありません。あなたは恐ろしいほどの大金持ちになるのです……。ド・シャルースの財産がどれほどか鑑定しようとした人たちは皆実際の価値よりも低く見積もっていました。私がまだ若い娘だった頃、父は自分の年利収入は八十万リーブルを越えている、とよく言っていたものです。兄がそのすべてを相続したのだけれど、彼はその年収の半分も遣わなかったと断言できます……」
ウィルキー氏の全神経がこれほどのショックを経験したことは今までになかった。彼は目が眩み、よろめいた……。この巨大な富が金貨の山となって積み上げられている様が目に浮かんだのだ。千六百万フラン以上。そしてその金貨の山にじかに手を突っ込んでいる自分……。
「おお!」 彼はこれだけしか言えなかった。「おおっ!」
「ただ」 とマダム・ダルジュレは続けた。「あなたを落胆させるようなことがあるだろう、と警告しておきます。これは大いにありそうなことです……。私の兄は、法で定められた相続分すら私には渡すまい、と固く決めていたようなので、ありとあらゆる方法を用いて彼の財産をいろんな形に変えていることでしょう。だからあなたがその全てを手にするには多くの時間と手間が必要になると思います……。でも、ド・シャルース伯爵の信頼を得て仕事をしていたらしい男を私は知っています。彼が助けになってくれるでしょう……」
「で、その男は何という名前ですか?」
「イジドール・フォルチュナ……彼の名刺を取っておきました、あなたのために。さぁこれです」
母親が差し出した名刺をウィルキー氏は注意深くしまい込んだ。それから、やれやれ解放された、という口調で言った。
「ということなら、喜んでサインしますよ。……けど、これからは質素にしろ、などという小言は御無用に願いますよ。二百万が五パーセントで回ればちょっとした贅沢が味わえるでしょうからね」
マダム・ダルジュレはこの微妙な皮肉に取り合おうとしなかった。
「このお金の使い道なら前もってあなたに言ってあげられますよ」と彼女は言った。
「へえ、そうですか!」
「二百万のうち百万は、ある若い娘さんに持参金として持たせます。兄があんなにも突然の死に倒れることがなければ、ただ一人の相続人になっていた筈の」4.8