IX
しばらく前から玄関ホールからなにか異様な物音が聞こえていた。行ったり来たりする足音、その場で地団駄を踏む音、ひそひそ声で相談している声など。この騒音の原因を察した治安判事が立ち上がり、急いでドアを開けに行った。
彼の思った通りだった。書記官が昼食から戻ってきていた。彼は判事の邪魔をしたくはなかったのだが、面談があまりにも長いと思っていたのだ。
「ああ、やっぱりお前か」と判事は言った。「よし、主な物品の目録作成を始めなさい。私もすぐに行くから」
ドアを閉めると彼は元の椅子に座った。マルグリット嬢は彼の動きに気づいていたのかいないのか、彼が椅子に戻る前に話の続きを始めていた。
「私のそれまでの人生でド・シャルース伯爵ほど威厳に満ちた男の方を見たことがありませんでした……態度、背の高さ、服の着こなし、顔、視線、そういったものすべてが貧しい私のような小娘が畏れと尊敬の念に打たれたのは当然でした。私は恭しくお辞儀をしたものの、心はすっかり動転してどぎまぎしていました。彼は私の顔を冷淡な様子でじろじろと眺め、唇の端で冷たくこう言いました。
「ああ、これがあなたの言っておられた娘さんですか!」
伯爵の口調は明らかに不満を表していたので、修道院長はハッとし、私に目を移して見るからにみすぼらしい私の身なりに当惑したようでした。
「まぁ恥ずかしいこと!」と彼女は叫びました。「女の子にこんな格好をさせて外に出すなんて!」
そしてすぐにまるで剥ぎ取るように私のエプロンの結び目を解き、自分の両手で私の髪の毛を整え少しでも見栄え良くしようとしました。
「まぁ本当に、今日日の雇い主ときたら!」と彼女は繰り返しました。「これじゃどんな良い子でも台無しですわ。雇い主が駄目にするんです!あの人たちの約束は当てになりません……。かと言っていつもいつも監視の目を光らせているわけにも行きませんものね……」
しかし修道院長の努力は無に帰する運命でした。ド・シャルース伯爵は興味がなさそうに後ろを向き、そこにいた他の男の人たちと相談を始めました。そのときになって初めて気がついたのですが、『事務所』には人が一杯いたのです。黒絹のキャロット帽の男の人の他に五、六人が立っていました。孤児院を何度も視察にきていた男の人たちでした。一体何の相談を? 私についてであることは明らかでした。でも私に向けられた彼らの視線はみな親切そうなものでした。修道院長は彼らの方に行って話し合いに加わり、それまで私が見たこともないほど熱心に何かを弁じたてていました。4.5