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エミール・ガボリオ ライブラリ

名探偵ルコックを生んだ19世紀フランスの作家ガボリオの(主に)未邦訳作品をフランス語から翻訳。

1-VI-6

2021-01-21 10:15:53 | 地獄の生活

ド・シャルース伯爵の寝室のドアは半開きになっていたが、大きな燭台と暖炉の隅に置かれた大きなランプで明るく灯されていた。ジョドン氏は思わず立ち止まり、中を覗き込んだ。彼が最後に訪れたときから何も変化はないように見えた。伯爵は、高く積み上げられた枕の上で、ずっと動かぬまま横たわり、顔は腫れぼったく、目は閉じられたままだったが、息はしていることが胸の上で不規則に上下運動を繰り返しているシーツの動きで分かった。

マダム・レオンとマルグリット嬢の二人だけが付き添っていた。家政婦の方は少し陰の方で肘掛け椅子にぐったりと座り、腹の前で両手を組み合わせ、唇を結び、宙を見つめ、何か難しい数式でも目で追っているかのようであった。マルグリット嬢はより威厳に満ち、乱れ髪により更に美しく、蒼ざめ、今は平静に戻った様子だった。彼女はベッドの支柱に凭れかかり、ド・シャルース伯爵が意識を取り戻すのを待ってじっと顔を眺めていた。

ジョドン医師は思わずここまで上がって来てしまったことをやや恥ずかしく思い、七、八段後戻りし、再び今度は咳払いして存在を知らせながら上がってきた。これは聞きつけられ、マルグリット嬢が彼に先んじてドアのところまでやって来た。

「お具合は?」と彼は尋ねた。

「ああ、よくありません!」

彼はベッドに近づいた。が、瀕死の病人を彼が診察する前に、マルグリット嬢は書類を一枚差し出した。

「ド・シャルース伯爵の掛かりつけのお医者様が、あなた様のお留守の間にいらっしゃいました」と彼女は言った。「これが、そのお医者様の処方箋です……。処方された水薬が数滴、伯爵の唇の隙間から流し込まれました」

この打撃は予期していたジョドン医師は、冷やかなお辞儀をした。

「これは申し上げておかねばなりませんが」とマルグリット嬢は重ねて言い添えた。「そのお医者様は、なされた処置は適切なものだったと仰っておいででした。それで、引き続きあなた様のご尽力をお願いするように、ということでしたので、私からもお願いいたします……」

不幸にもしかし、医学の力を結集しても、ここではどうすることも出来なかったろう。新たに診察をした結果、ジョドン医師は、後は天にまかせるしかないであろう、と言うにとどめた。但し、病人にほんの少しでも変化があれば、すぐに知らせてくれるように、と言った。

「私の方でも下男に、何時でも構わず私を起こすよう、言っておきます」

彼は暇乞いをしたが、マダム・レオンが彼の行く手に立ちはだかった。

「あの、お医者様、伯爵に付き添うのは一人で十分ではないでしょうか?」と彼女は尋ねた。

「確かにそうですな」

家政婦はマルグリット嬢の方を振り返った。1.21

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