エミール・ガボリオ ライブラリ

名探偵ルコックを生んだ19世紀フランスの作家ガボリオの(主に)未邦訳作品をフランス語から翻訳。

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2020-09-16 11:12:04 | 地獄の生活

「それで、進捗具合はどんなものだ?」

「お誂え向きに事は運んでおります」

侯爵は暖炉の前に再び座り直し、この上なく貴族的な無造作を装って火をかき立てるつもりだったが、うまく行かなかった。

「話を聞こう」とだけ、彼は言った。

「それでは侯爵」フォルチュナ氏は答えた。「詳しいことは省略して簡単に申しましょう。私の考えた方策により、あなた様の不動産に掛けられたすべての抵当権が二十四時間以内に解除されることになります。適切な手続きを取ることにより、その日さっそく、保管人に不動産登記原簿の写しを要求することもできます。それは、もちろん、あなた様の不動産から抵当が外されたことを証明するものです。あなた様がそれをシャルース伯爵にお見せになれば、伯爵のお疑いは、もしあればの話でございますが、一挙に晴れるわけでございます……その方策というのは、それが実に簡単なことでございまして、問題と言えば資金を調達することだったのですが、私の懇意にしている取引所外株式仲買人のところで調達できることになりました。あなた様の債権者たちは二人を除いて全員、このちょっとした操作に同意してくれ、私は彼らの承諾を取りつけました。とは言え、ちょっとお高くつきます。手数料と諸費用で約二万六千フラン掛かります」

ヴァロルセイ侯爵は身体で大きく喜びを表したあまり、思わず両手でぱちぱちと拍手してしまった。

「それでは、もうこっちのもんだな!」と彼は叫んだ。「一か月も経たないうちに、マルグリット嬢はド・ヴァロルセイ侯爵夫人となり、私は新たに一万リーブルの年利収入を得ることになるのか……」

そのとき、フォルチュナ氏が沈んだ表情で首を振るのが彼の目に入った。

「なんだ!疑っているのか」彼は言葉を続けた。「いいか、今度は私の話を聞け。昨日私はド・シャルース伯爵と二時間じっくり話をした。それですべて合意がなされ、決定されたのだ。我々は約束を交わしたのだよ、二十パーセント親方。伯爵は中途半端なことはなさらない方だ。マルグリット嬢に二百万の持参金をお付けになる」

「二百万!」と相手は木霊のように繰り返した。

「おお、そうだとも、親愛なるアラブの君、ただ、ある個人的な理由で、それが何かあの方も仰らなかったのだが、婚姻契約書には二十万フランとしか書かないように、と念を押された。残りの百八十万フランはだね、君、役場の前で手渡しで頂くことになっている。受領証はなしでだ。正直に言うと、その取り決めは素晴らしいと思うね。君も、そう思わんか?」

フォルチュナ氏は答えなかった。ヴァロルセイ侯爵の手放しの喜びようは、嘲る気にはなれず、哀れを誘った。

「可哀想に」と彼は思っていた。「この瞬間にもシャルース伯爵が息を引き取っているかもしれぬと知ったら、こうは能天気にぺちゃくちゃ囀りはしないだろうに。マルグリット嬢に残されるものと言えば美しい目だけ、失われた何百万を嘆き悲しんでいるだろう……」9.16

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