大相撲時津風部屋の序ノ口力士、斉藤俊(たかし)さん(当時17歳)=時太山(ときたいざん)=を暴行し、死亡させたとして、愛知県警捜査1課と犬山署は7日、前時津風親方の山本順一容疑者(57)と兄弟子3人を傷害致死容疑で逮捕した。他に兄弟子4人が暴行に加わったとみているが、関与が薄いとして、同容疑で書類送検する方針。
他に逮捕したのは▽伊塚雄一郎(25)=序二段力士・怒濤(どとう)▽藤居正憲(22)=同・時王丸(ときおうまる)▽木村正和(24)=幕下力士・明義豊(あきゆたか)--の3容疑者。山本容疑者は6月25日にビール瓶で殴った以外は否認、伊塚と藤居両容疑者はほぼ容疑を認め、木村容疑者は「しつけと教育のつもりだった」と否認しているという。
調べによると、山本容疑者らは共謀し、07年6月25日午後0時40分ごろから26日午前11時半ごろまでの間、愛知県犬山市の宿舎や宿舎東側のけいこ場などで、ビール瓶や金属バットなどででん部や足などを多数回殴打し、顔面をけるなどしたほか、ぶつかりげいこと称して斉藤さんの体を何度も倒すなどの暴行を加え、死亡させた疑い。山本容疑者は25日夜、ビール瓶で斉藤さんを殴った後、兄弟子に「お前らもやってやれ」と指示したことが分かっており、県警は共犯に問えると判断した。
新潟大学で行った解剖で、死因は多発外傷による外傷性ショック死と判明した。しかし、致命傷の特定に至らなかったことから、県警は昨年11月、名古屋大学に組織の再鑑定を依頼。2度の鑑定の結果、断続的な暴行が外傷性ショック死の原因と裏付けられた。【米川直己、式守克史】
▽日本相撲協会・北の湖理事長 協会としては真相究明に向けて最大限の努力をしてきたが、長い大相撲の歴史で力士の逮捕者を出したことは誠に遺憾で残念でならない。
▽伊勢ノ海・再発防止検討委員長 委員会の聞き取りは4月までかかる。回り終わった後に外部から意見も聞いて(再発防止策を)進めていきたい。
【時津風部屋力士暴行死事件】 07年6月26日、愛知県犬山市で序ノ口力士、斉藤俊さんがけいこ中に倒れて死亡した。犬山署は当初、病死と判断したが、遺族の申し出で行われた解剖の結果、多発外傷による外傷性ショック死と判明。その後の捜査で、前親方と兄弟子が暴行した疑いが強まり、日本相撲協会は10月、前親方を解雇した。
力士暴行死:ついに立件…初の事態に協会は対応に追われる

昨年6月に大相撲の時津風部屋で序ノ口力士の斉藤俊さん(当時17歳)=しこ名・時太山(ときたいざん)=が急死した問題は7日、前時津風親方の山本順一容疑者(57)=元小結・双津竜=と、兄弟子3人が逮捕された。1925年の日本相撲協会発足以来初となる力士のけいこ指導を巡っての刑事事件に、協会幹部らは対応に追われた。
この日午前、両国国技館内で力士の健康診断が行われた。時津風部屋の関取衆も受診したが、兄弟子3人は姿を見せず。同部屋の他の力士を取材しようと十数人の報道陣が陣取った。昼過ぎには、再発防止検討委員会の親方らがけいこ場回りに出発した。
午後に入ると、広報部長に就任したばかりの九重親方(元横綱・千代の富士)が「(愛知県警の)捜査に動きがあり次第、(北の湖理事長が)会見せざるを得ないでしょう」と報道陣に説明。午後4時40分ごろ、北の湖理事長が出先から協会に戻り、幹部と対応を協議した。
午後6時過ぎには国技館前に約100人の報道陣が詰めかけて騒然とした雰囲気に包まれた。協会側は「逮捕され次第、理事長が会見する」と発表。愛知県警が前時津風親方らの逮捕発表を受け、午後8時半過ぎから、北の湖理事長が会見した。
斉藤さんの急死問題では当初、協会側は事態の推移を見守る姿勢を示していたが、文部科学省の指導を受けて重い腰を上げ、関係者から事情を聴取。昨年10月の理事会で、協会の名誉を失墜させたとして当時の時津風親方を解雇した。これまで力士のけいこ指導を巡って逮捕者が出たケースはなく、協会にとっては異例の事態となった。【飯山太郎】
毎日新聞 2008年2月7日 20時49分 (最終更新時間 2月7日 21時32分)
力士暴行死:逮捕された兄弟子3人は2場所を全休…略歴

初場所番付で時津風部屋に所属する力士は14人。前時津風親方とともに逮捕された3人の兄弟子は、昨年11月の九州場所と今年1月の初場所を全休したほか、しこ名も初場所から改名していた。
明義豊(あきゆたか)こと木村正和容疑者(24)は、福島県猪苗代町出身。会津農林高から大学相撲の強豪・東京農大に進んだ。初土俵は06年春場所で、同年秋場所で序二段優勝し、最高位は幕下12枚目の有望株。07年秋場所は幕下東29枚目で5勝2敗と勝ち越した。08年初場所は幕下西58枚目で、旧しこ名は時大竜(ときたいりゅう)。
怒涛(どとう)こと伊塚雄一郎容疑者(25)は、福岡市城南区出身。初土俵は98年春場所。07年秋場所は三段目西65枚目で5勝2敗と勝ち越していた。08年初場所は序二段東筆頭で、旧しこ名は双竜山(そうりゅうざん)。
時王丸(ときおうまる)こと藤井正憲容疑者(22)は、滋賀県愛荘町出身。04年春場所初土俵。07年秋場所は三段目東96枚目で3勝4敗と負け越し。08年初場所は序二段西86枚目で、旧しこ名は双剣山(そうけんざん)。
毎日新聞 2008年2月7日 20時56分 (最終更新時間 2月7日 21時31分)
力士暴行死:逮捕された前時津風親方の山本容疑者とは

時津風部屋は現役時代に69連勝(歴代1位)した大横綱・双葉山が、戦前に興した「双葉山相撲道場」を源流とする名門。先々代(元大関・豊山)は協会理事長も務めた。逮捕された前時津風親方の山本順一容疑者(57)=元小結・双津竜=は02年、先々代の定年に伴い部屋を任された。
山本容疑者は北海道室蘭市出身。12歳で上京し、時津風部屋に入門した。双津竜のしこ名で1963年秋場所初土俵。69年九州場所で十両昇進し、72年春場所新入幕。身長185センチ、体重172キロの巨体を生かした寄りが持ち味だった。79年名古屋場所で1場所だけ小結を務めた。幕内在位は29場所で、82年九州場所で引退。年寄「錦島」を襲名し、時津風部屋の部屋付き親方として後進の指導に当たった。
02年に部屋を継承し、関取で最も背が低い169センチの豊ノ島や、東農大相撲部出身の霜鳳(しもおおとり)、時津海(現時津風親方)、モンゴル人力士の時天空らを輩出した。
昨年4月、時津風部屋の幕内・豊ノ島が横綱・朝青龍とのけいこでけがをした際、山本容疑者は「行き過ぎだ」と朝青龍を手厳しく批判。「いかがなものかと思いますよ。横綱は受けて立つのがけいこの常道のはずなのに」と苦言を呈した。豊ノ島に付き添って病院に行くなど弟子思いの一面を見せていた。温厚な人柄で知られていたが、相撲関係者の中には「酒が入ると人柄が変わる」と指摘する声があった。【飯山太郎】
毎日新聞 2008年2月7日 21時00分 (最終更新時間 2月7日 21時56分)
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