「
双生児」(2002年)の作者クリストファー・プリーストが1995年に発表した「奇術師」(ハヤカワ文庫)が原作。これも読んでいません。昔の日記や手記で構成されているところ、その記述が矛盾しているところ、読者が語り手を信用できないところなど「双生児」との共通点がかなりあるらしい。
さて映画のほうはこうした複雑な構造をかなり整理はしているものの、三つの時間軸がランダムに登場するため過去と現在が逆転する場面が多く、かなり集中して観ないとついていけない。そのせいか全編に緊張感が漂っている。
19世紀末の英国。二人の奇術師アンジャーとボーデンは、互いに激しく反目しあっていた。アンジャーの妻を死をきっかけにお互いに相手を傷つけあい、貶めあい、騙しあう。報復合戦の連続だ。二人とも単なる復讐心だけではなく、イリュージョニストとして相手よりも優れた演目を行い、観客から喝采を浴びたいという気持ちが強烈だ。
さてそのストーリーのカギとなる演目は「瞬間移動」である。ボーデンの見事な瞬間移動のタネが分からず悩むアンジャーは、米国の天才発明家ニコラ・テスラ(実在の人物らしい!)の発明品にすがり、ボーデンを超える更に素晴らしい瞬間移動の実現に成功する。そのアンジャーの仕掛けを探ろうとしたボーデンはアンジャーの失敗=死の場面に遭遇し、無実の罪で死刑判決を受けてしまう。これは誰かの罠か? 最後の勝利者はいったいどっちだ?
ボーデンの瞬間移動のトリックは全編を貫くトリックでもある。しかし残念ながら映画の途中で気づいてしまったゾ~。そのヒントはこの記事の中のある言葉にあります。いっぽうアンジャーの瞬間移動マシンはかなりSF的だが、ちょっと陰惨だな。
主演のヒュー・ジャックマンとクリスチャン・ベールはどっちもしたたかで演技としても甲乙つけがたい。アシスタント役のスカーレット・ヨハンソン(「
ブラック・ダリア」など)がなかなかカワイイ。この人まだ22歳なのね~。テスラ役のデビッド・ボウイを見たのは「戦場のメリー・クリスマス」(1983年)以来だ。もう60歳だがなかなかシブく、美しい年のとりかたをしていると思う。