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天網恢々プロジェクト・レビュー

クラシック音楽、ミステリ、時代小説、ノンフィクション・・・・好みのコンテンツ・レビュー

007 スカイフォール

2013年01月13日 16時32分39秒 | シアターに行く

MI6本部がハッキングを受け世界各地の工作員の名前がダダ漏れに。犯人はMに恨みを持つ人物のようだ。しばらく出社拒否になっていたボンドはこの危機を救うために帰還・・・。

今回の悪役は元MI6エージェントで、Mの部下だったが見捨てられた過去を持つ男。この中丸忠雄似の人、顔がデカイ! Mに対しては母に対する愛情のようなものを感じながらも激しい憎しみを抱く、とても異常で歪んだ人物。このキャラですが、ある人によると「ボンドのダークサイド=裏ボンド」ではないかとのこと。なるほど確かに・・・・。

今回はこの裏ボンドがMと心中する格好になり、新しい男性のMへ交代。Qも大幅に若返り、あげくのはてにマネー・ペニーまで新人が登場。まるでシリーズがリセットされたようで、次回作がますます楽しみです。

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裏切りのサーカス

2012年05月06日 16時42分32秒 | シアターに行く

ジョン・ル・カレの「ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ」の映画化。
昔懐かしい東西冷戦下のイギリス。ジェームズ・ボンドも所属していた(?)MI6=イギリス情報局秘密情報部の幹部の中にソ連のスパイ「もぐら」がいるとの疑惑が持ち上がり、一度は引退した(クビにされた)ジョージ・スマイリーが、政府から調査を依頼される。
4人の「もぐら」候補の過去、KGBの大物スパイであるカーラ(顔見せず)とスマイリーの関係。情報を集め、着実に真実に近付くスマイリーの前に現れる意外な「もぐら」の正体とは。


原作はほとんどドンパチのない、地味~で複雑な心理戦の連続で、どんな映画になるのかと思ったら、これが意外と分かり易く、70年代の渋い雰囲気も良くて、確かに「仕立てのいいスーツのような出来上がり」だった。無駄な描写がないので、かなり集中力を求められるが、その分あっという間に時間が過ぎてしまった。
スマイリー役のゲイリー・オールドマンがカッコ良すぎる! 地味な服装の初老の男だが、スリムで長身、スタイリッシュで禁欲的。カメラワークの巧さもあるが、一挙手一投足に男の色香が漂う。
本作はスマイリーとカーラが対決する長編三部作の第一作。続編もぜひ映画化してほしい。

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ドラゴン・タトゥーの女

2012年02月19日 19時00分35秒 | シアターに行く

2009年にスウェーデン版の映画が製作されましたが、これはそのハリウッド版で、第84回アカデミー賞5部門にノミネートされています。特に主演女優賞候補のルーニー・マーラは、スウェーデン版のノオミ・ラパス(杉本彩似)よりも若くボーイッシュで、ボディラインも含めてなかなか魅力的。またやっぱり007のダニエル・クレイグが、真摯さとタフネスぶりがとてもよく伝わってきて、いいね!

監督がデビッド・フィンチャーなのでカットが多く、その一つ一つが重要な意味を持っているため、集中していないとわからなくなってしまいそう。幸い私は原作も読んだしスウェーデン版も観たのでなんとかついていけました。

原作との違いは一ヶ所のみ(「オーストラリア」が出てこない)。レッド・ツェッペリンの昔の曲をバックにしたタイトルバックが007みたいでカッコよかった。あとはほぼスウェーデン版どおりですが、よりミステリー面に重点を置いているので、スウェーデンの風俗や文化の描写は前作に比べてやや希薄(ボルボが出てくるくらい)でした。全編英語だし・・・。

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聯合艦隊司令長官 山本五十六

2012年01月08日 20時56分19秒 | シアターに行く

役所広司のめっちゃ魅力的な人間像で最後まで引っ張る映画。ストーリーは、海軍次官時代から、三国同盟、真珠湾、ミッドウェー、ガダルカナル、い号作戦、ブーゲンビル島上空での戦死まで、よく知られた歴史の過程を、リアルなCGと俳優さんたちの熱演によって、ナレーションや字幕が最小限でも理解しやすく描いています。

原作がジャーナリスト出身の半藤一利さんなので、大正時代から続く海軍部内の派閥抗争(条約派→米内・堀・山本・井上、艦隊派→永野、嶋田、南雲)が作戦遂行に大きな影響を与えたり、マスコミ(架空の新聞社、東京日報)が世論に迎合したりするシーンが随所に出てくるところが、これまでの戦記映画とやや異なる点です。

また「坂の上の雲」の影響かどうか、善玉と悪玉がわりとハッキリ線引きされているので、面白いことは面白いのですが、歴史としては鵜呑みにしないよう注意しないとね。

それにしても出演者の顔ぶれを見ると、阿部寛、香川照之、柄本明、柳葉敏郎、伊武雅刀、中原丈雄、椎名吉平、益岡徹、原田美枝子と、年末年始のドラマや映画で何度も見かけた人ばっかりやん!

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英国王のスピーチ

2011年12月24日 13時26分31秒 | シアターに行く

市民会館で行われた某新聞の無料映写会に行ってきました。言わずと知れた2010年アカデミー作品賞、監督賞、主演男優賞、脚本賞を獲得した作品です。

「吃音に悩む英国王ジョージ6世が自らを克服し、国民に愛される本当の王になるまでを描いた感動の実話」

見たのは日本語吹替版だったので、英国王と言語療法士との緊張感あふれる丁々発止のやりとりが直に伝わってきて、「奇跡の人」(ヘレン・ケラー)を思い出してしまいました。また劇中にシェイクスピアの「リチャード3世」のセリフが何度も出てくるので、この残忍な野心家と比較連想させることで、それと正反対のジョージ6世の人間的で忍耐強い性格を際立たせているように思います。

ラスト、第二次世界大戦前夜の、国民に向けたラジオの生放送における圧巻のスピーチは、BGM(なんと、ベートーヴェンの交響曲第7番第2楽章!)に相当助けられているとはいえ、英国人ならずともとても感動的でした。

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ベニスに死す

2011年11月14日 20時11分24秒 | シアターに行く
巨匠ルキノ・ヴィスコンティ監督の1971年作品「ベニスに死す」のニュー・プリント版が公開されていたので見てきました。公開当時多くの映画雑誌の表紙にとりあげられたビョルン・アンドレセン(タッジオ役)の美貌ばかりが注目され、同世代の美少年(?)だったワタクシはあまり興味もなく、同性愛者のストーカー映画との偏見にとらわれていたため、これまで未見でした。
主人公(映画ではマーラーがモデル)アッシェンバッハ(ダーク・ボガート)の年齢に近くなってしまった現在、この映画を見てみると、初めに抱いていた印象とはかなり違うことに気がつきました。
タッジオの若い(というより幼い)溌剌とした動作や無邪気さに比べて、外見的な服装はきちんとしているものの、視線は落ち着かず、優柔不断でエキセントリックで、トボトボ歩きの主人公のなんとカッコ悪いこと。
避暑地としてのベニスのリド島の景観と舞台となったホテルもたいへん美しいが、実はその地にはコレラの流行が迫っていた。にもかかわらず都市全体(観光客以外)がそのことを隠蔽している。しかし噂が徐々に広まり、あれほど賑わっていた海岸が閑散としたなかで主人公はタッジオを見守ったまま、最後までかの地にとどまり、遂に病に感染して命を落とす。
美しいものも一皮むけば実は醜く、美と醜、生と死とは紙一重であることを思い知らされる。しかし人はそれを受け入れなければならず、どころか特に感性の鋭い芸術家ほどその対比にあこがれる自虐的な心理がはたらくということだ。
全編に流れるマーラーの交響曲第五番第4楽章アダージェットの、静かで美しくけだるい徘徊的な音楽がピッタリ。
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ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士

2010年11月09日 07時11分05秒 | シアターに行く

全三部作の第3部。前作のラストで、「ザラ」と対決して重傷を負った杉本彩似の女主人公リスベット(「眠れる女」)を、今度は国家の陰謀組織「班」が付け狙う。この連中は冷戦時代からの伝統ある(?)組織で、幹部が高齢化してみんな病気であるにもかかわらず、根性は昔のままカルト的に頑張るところが不気味で面白い。
サブタイトルの「狂卓の騎士」とは、入院→拘束→裁判と国家権力に翻弄されるリスベットを支援する人々(「ミレニアム」誌発行人ミカエル、その妹の弁護士、ハッカー仲間、医師、刑事たちなど)のこと。彼らの誠実な行動に、さしもの変人リスベットも、不器用ながら感謝の気持ちを表明するところはほのぼの~。
このように善玉と悪玉がわりとはっきりしていて、悪玉たちが最後にはワナにかかって一網打尽にされるところはカタルシスを喚起する。
以上でミレニアム・サーガはめでたく完結だが、AXNミステリー海外ドラマチャンネルでは、第1部の「ドラゴン・タトゥーの女」のテレビ編集版(完全版・全4話)を現在放送中。
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ミレニアム2 火と戯れる女

2010年09月28日 07時06分10秒 | シアターに行く
全三部作の第2部。今回は主役のひとり天才ハッカーのリスベット(杉本彩似)自身の出生の秘密が大きなサプライズとなる。
リスベットは半ば偶然ながら、少女買春の調査をしていたジャーナリストたちと自らの後見人(第1部にも登場した変態弁護士)と、合計3人の殺害容疑をかけられ、警察に追われるハメに。図らずもこのことが昔懐かしい冷戦時代の国家機密を表沙汰にしてしまう可能性を秘めていたため、麻薬や売春を扱う犯罪組織にも追われる。
もちろん「女を虐待する男を徹底的に憎む女」リスベットのことですから、ただ逃げるだけじゃなくて、過激な逆襲に転じる場面が多い。これが痛快でもありコワくもある。とてもアブないことを平気でやるという意味で「火と戯れる女」か? 
(実際に火をつける場面もあるのだけれど)
さてもうひとりの主役「ミレニアム」誌発行人のミカエル(ジョン・レスリー似)は、今回はリスベットと一緒の行動をとることはほとんどなく、後追いで、観客と警察のために調査や推理を行ってくれる。
しかし悪の組織の黒幕「ザラ」と「金髪の巨人」はただ者ではなく、とっても異常で強力。彼らがどんな終焉を迎えるのかは第3部「眠れる女と狂卓の騎士」で語られるようだ。
スウェーデン特有ものかどうかは不明だが、親子兄弟のドロドロ関係が最後に明らかになるところは第1部と同じです。
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ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女

2010年02月14日 10時44分47秒 | シアターに行く
原作読んでから映画を見た。本は上下2巻で長いのだが中身が濃くて完成度が高いので、一気に読んでしまった。作者はスウェーデンの、反ファシズム・人道主義的な姿勢を貫いたジャーナリストだったが、この「ミレニアム」三部作を遺して既に亡くなっているとのこと。
主人公は作者とイメージが重なる雑誌編集者。彼が財界の大物からの依頼で、三十六年前に失踪した少女を探すのだが、ここにもう一人の主人公である凄腕ハッカーの探偵社調査員の女性(杉本彩似?性格キツイがカワイイところもあり)が協力し、背後にある人種差別的犯罪を明らかにしていく。
映画は2時間33分もあるのだが、それでも原作の要素を100%盛り込むことは無理なので、かなり刈り込んでいる。例えば、主人公のジャーナリストとしての矜持の描写が希薄、スウェーデンらしく誰彼ともなく寝る部分も省略、大規模な経済犯罪の告発部分もアッサリ、などなど。そのぶんテンポが早くなったけど。
しかし謎解きの重要なポイントとなる古写真の扱いや、ハッキンッグに大活躍するMacBookの画面(CPU速い!)、北欧らしい全体的に陰影を濃くして色調を抑えた重厚っぽい映像などは映画ならではで、本のイメージを大きく膨らますことに貢献している。
さて映画館ではご丁寧に、クレジット終了後次回作の予告編を上映。それによると今度は女主人公を理不尽に苛んだせいで手痛いしっぺ返し(恥ずかしい・・・)を受けた変態弁護士が彼女に復讐するらしい。原題は「火遊びをする女」。
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007 慰めの報酬

2009年01月28日 17時27分58秒 | シアターに行く
007シリーズ第22作。今回はスペクター以来の強力な悪の組織「クァンタム」がついにその存在を明らかにする。この組織はボンドの実家であるMI6内部だけでなく英国政府にもメンバーかシンパがいるみたいで凄そう。そのミッションは世界中の金持ちから資金を集めてトンデモ事業(陰謀)に投資することで、スペクター同様やっぱり金儲けが大好きみたい。
今回のトンデモ事業は南米ボリビアにおける水資源の独占というものだ。確かについこないだまで石油や小麦など日常的な原材料に投資マネーが流れ込んでいたので、水にまでこれが及ぶというのはありそうな話だ。しかし昨年秋からの金融危機で世界中の投資家が引きこもり状態になってしまった今、次回作品の陰謀のリアリティが心配になってしまう。がんばれクァンタム!
ダニエル・クレイグ版としては早くも2作目。スマートとかユーモアとはやはり無縁。前作同様、孤独で寡黙でマッチョ。前作より更に激しいアクションシーンは、CGによるアップが多いうえにカット割りがやたら短くて、はっきり言って見づらい! 衰えた眼ではついていけない!
これ実は前作「カジノ・ロワイヤル」を劇場で見た時も感じたことだが、後日これのブルーレイディスクを買って家でフルHDプラズマ大画面で見たら、映画館で見えなかったところがクッキリ見えて、新しい発見があったりして、大いに楽しむことができた。これからは映画はブルーレイだね。ム・・・? これって映画館ではわざと見えにくくして観客にブルーレイを買わせようという陰謀?
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インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国

2008年07月21日 18時03分41秒 | シアターに行く

19年ぶりのファン待望のシリーズ第4弾。舞台はやはり前作から19年後の1957年。相変わらずのノンストップ・ジェット・コースター・アクション・アドベンチャーだ。
超古代文明、UFO、超能力、異星人(?)が全編を貫く謎のテーマとなっている。オカルト系ではとても有名な事物、例えばナスカの地上絵、エル・ドラド、ロズウェル事件などがたくさん出てくる。
ハリソン・フォードはさすがに外見的には年をとったが、スタントマンの活躍で精神と肉体は全く衰えていない(ように見える)。敵の設定もナチスからKGBに移って相手にとって不足はない。ケイト・ブランシェットのKGB大佐ぶり(怪演!)も存在感抜群。
ただ時代が下がったぶん、赤狩りや原爆実験の話が出てくるために観るほうはどうしてもリアルな気持ちになりがちで、30年代が舞台の前3作に比べて単純なファンタジーとして割り切れないところがあった。例えばネヴァダの原爆実験に巻き込まれたインディが鉛製の冷蔵庫に入って難を逃れる所。あとでシャワー室で体をゴシゴシやって放射能を落とすシーンは完全に50年代の間違った常識で、本当ならばインディは必ず白血病かガンで亡くなることだろう。
画面は「シンドラーのリスト」以来のスピルバーグ映画と同様、ややくすんだトーンの画面で実写とCGの区別がつきにくい。そんなこともあって観た後はこれまでのシリーズとは違ってなんとなくノスタルジック。インディに隠し子があって、ついにはカレン・アレン(レイダース/失われた聖櫃<アーク>)と結婚してしまう結末に至ってはなおさらだ。観客も19歳年をとったことを計算したうえでの作りだとしたらさすがだね。

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相棒-劇場版-

2008年05月18日 18時02分02秒 | シアターに行く

すでにテレビでシーズン6まで放送されている人気ドラマの待望の劇場版だ。このシリーズの特徴は「島流し」の警視庁特命係の二人(ややニヒルな頭脳派杉下右京とややお人好しの行動派亀山薫)が勝手にいろんな事件に首を突っ込み、モタつく捜査一課を尻目に次々に事件を解決していくところだ。
この解決の仕方がなかなか論理的で、意外性もたっぷり。どんでん返しも多くて、エンドタイトルが出てからも目が離せない。テーマも幅広くて、軽いものではグルメや趣味のウンチク話から、重いものだと政治、外交、司法まで及ぶ。シナリオライターたちの工夫が窺える作品ばかりだ。
さて今回の劇場版のテーマは外交(外務省改革)だな。映画らしくお金をかけたアクションやサスペンスがハデで亀山刑事が大活躍!テレビ版よりテンポがものすごく早くて長年のファンからするとヨソイキ感が横溢していてちょっと寂しい?
それに「ヒマか?」の角田課長やシンパの米沢鑑識課員とのカラミがやや少なくて味わいに乏しいなあ。捜査一課トリオのツッコミ場面も少ないし。
チェスを使った謎解きはややご都合主義的なところもあるし、真犯人は途中で推察できてしまうのだが、そのぶんラストはいつになく感動的で思わずジワッときてしまった。このシリーズ全般を貫くヒューマニズムとコンプライアンスの考え方はしっかりキープされている。
しかしこの映画の近日のテレビスポットCMはいかがなものか。犯人を指し示してしまっている。犯人が誰なのかはあまり重要じゃないってこと?

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怪談

2007年08月28日 07時01分10秒 | シアターに行く

原作は落語の怪談噺「真景累ヶ淵」。こっちは十重二十重にからみあう因縁がテーマで、話をどんどん継ぎ足していったせいかいろんなエピソードが登場してハッキリ言って冗長。この映画では発端部分を舞台劇ふうに短く紹介し、後半部分をバッサリ省略することで筋を絞り込んでいる。おかげで「偶然=因縁に神秘性を感じる」という要素は希薄になり、代わって浮上したテーマは「女の嫉妬」である。なにせ「この後女房を持てば必ずやとり殺すからそう思え」というのだからコワい。
ということで話の前半は30歳の尾上菊之助(新吉)と46歳の黒木瞳(豊志賀)との愛とその破局だけが描かれるのだが、二人の美しい可憐な容貌と画面の様式美に見とれてしまい、とても「リング」(1998年)の監督作品とは思えなかった。それほどセットや細かい小道具や着物の質感や着こなしなどが素晴らしく、江戸深川の情緒や雰囲気がこれほどビシッと決まっている時代劇も珍しい。加えて黒木瞳の繊細な演技が年下の男を失いたくないという自分でもコントロールできない情念をリアルに表現しており、格調の高ささえ感じる。
さて豊志賀が死んでしまった後半からはいよいよホラー映画らしく何人もの男女が命を落とすのだが、場面が下総・羽生という田舎に移るので画面は一転湿っぽく泥臭くなる。怨霊と思って撃退すると生身の人間だったという幻覚殺人もよくある定番だ。要はここでフツーの怪談映画と同レベルになっちゃうのだが、その中でも光るのが菊之助の美貌と清潔な色気だ。そのうえ歌舞伎俳優らしく派手な立ち回りも含めて、動作がまわりの俳優たちと明らかに違う。まるでそこだけ光がさしこむ別世界のようであり、ホントは悪人なのに嫌悪感をほとんど感じない。最後に幽霊である豊志賀と新吉がCGで一体となるとき、観るほうは「ああ、やっぱり収まるべきところへ収まったんだな」と妙に納得するのである。
欲を言えばどんでん返しがひとつあればよかった。原作を踏襲したからといえばそれまでだが、せっかく豊志賀の妹お園の扱いをオリジナルにした(原作では17年前に落命している)のだから、もっと大胆な役割を与えてもよかったのでは・・・。なお観客は女性が圧倒的に多かったです。

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プレステージ

2007年06月29日 23時06分51秒 | シアターに行く
双生児」(2002年)の作者クリストファー・プリーストが1995年に発表した「奇術師」(ハヤカワ文庫)が原作。これも読んでいません。昔の日記や手記で構成されているところ、その記述が矛盾しているところ、読者が語り手を信用できないところなど「双生児」との共通点がかなりあるらしい。
さて映画のほうはこうした複雑な構造をかなり整理はしているものの、三つの時間軸がランダムに登場するため過去と現在が逆転する場面が多く、かなり集中して観ないとついていけない。そのせいか全編に緊張感が漂っている。
19世紀末の英国。二人の奇術師アンジャーとボーデンは、互いに激しく反目しあっていた。アンジャーの妻を死をきっかけにお互いに相手を傷つけあい、貶めあい、騙しあう。報復合戦の連続だ。二人とも単なる復讐心だけではなく、イリュージョニストとして相手よりも優れた演目を行い、観客から喝采を浴びたいという気持ちが強烈だ。
さてそのストーリーのカギとなる演目は「瞬間移動」である。ボーデンの見事な瞬間移動のタネが分からず悩むアンジャーは、米国の天才発明家ニコラ・テスラ(実在の人物らしい!)の発明品にすがり、ボーデンを超える更に素晴らしい瞬間移動の実現に成功する。そのアンジャーの仕掛けを探ろうとしたボーデンはアンジャーの失敗=死の場面に遭遇し、無実の罪で死刑判決を受けてしまう。これは誰かの罠か? 最後の勝利者はいったいどっちだ?
ボーデンの瞬間移動のトリックは全編を貫くトリックでもある。しかし残念ながら映画の途中で気づいてしまったゾ~。そのヒントはこの記事の中のある言葉にあります。いっぽうアンジャーの瞬間移動マシンはかなりSF的だが、ちょっと陰惨だな。
主演のヒュー・ジャックマンとクリスチャン・ベールはどっちもしたたかで演技としても甲乙つけがたい。アシスタント役のスカーレット・ヨハンソン(「ブラック・ダリア」など)がなかなかカワイイ。この人まだ22歳なのね~。テスラ役のデビッド・ボウイを見たのは「戦場のメリー・クリスマス」(1983年)以来だ。もう60歳だがなかなかシブく、美しい年のとりかたをしていると思う。
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ザ・シューター 極大射程

2007年06月10日 17時23分33秒 | シアターに行く

アクション・ミステリー小説としてたいへん評判のよかったスティーヴン・ハンター「極大射程」(新潮文庫)の映画化。原作はあえて未読です。なぜなら「映画は原作を超えられない」と信ずるから。
エチオピア・エリトリア国境付近で任務についていた海兵隊の狙撃手(主人公)は、敵の突然の襲撃を見事阻止したもののCIAに見捨てられ、相棒の観測兵を死なせてしまう。3年後、退役して隠棲していた彼のもとにCIA高官から大統領暗殺計画阻止の協力依頼が。この先はケネディ狙撃犯とされたオズワルドのような運命が彼を待ち受けていた。違いは2点。何者かの狙撃で命を失ったのは大統領の隣にいたエチオピア大司教だったこと。主人公は負傷しながらもかろうじて暗殺現場を脱出したこと。ここから超弩級スナイパーによる逃亡+反転攻勢が始まる。
海兵隊で学んだサバイバル術で危機を脱出する場面や、ホームセンターにある商品でいろんな武器(ナパーム弾まで!)を作る場面は、アクションシーン以上に丁寧に描かれていて興味深い。敵の裏をかく戦略・戦術もまことにクレバーで見所いっぱい。
陰謀の黒幕はお決まりの軍産複合体の手先だが、その利権の源はエリトリアの地下資源という意外なものだ。アメリカってなんて悪い国なんだ~。でもラストは「必殺仕事人」みたいでカタルシス~。しかし主人公が無実を証明する査問会(?)のシーンはサラリと流されている。おそらく原作のかなりの部分を省略したのだろう。それでも映画オリジナル脚本にありがちな無理なドンデン返しがないぶん、アクション映画としてはバランスのよい佳作といえよう。
主役のマーク・ウォールバーグはマット・デイモンと今井雅之を足して二で割ったようなタフなキャラクターでなかなか好感が持てる。「リーサル・ウェポン」シリーズでむちゃくちゃ暴れていたダニー・グローバーが、モーガン・フリーマンばりの貫禄十分の演技をしていたのも印象的だった。

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