Web2.0、Google、ロングテール、そしてこのブログなどなど、技術革新とチープ革命によって情報爆発が起きている。この状況を前向きに進化ととらえる本や講演は多いが、これは逆に徹底的にこき下ろした本である。
論旨はこうだ。①ITメディアの普及でジャンク情報が激増する。②個人が何が重要なのか判断がつかなくなる。③やむなく自分がわかりそうな情報=低レベルの情報だけを拠り所にする。④低レベル情報だけを軸に同類とだけ交信する結果、全体でより低レベルになる。
その結果Webは進化どころか退化し、社会そのものも劣化させていくというという悲観的な結論を導き出すのである。実例が豊富なのでそうかなあという気にもなるが、まさかそんなことにはならないだろうと信じたい。
②はいわゆる「玉石混交問題」だが、そりゃGoogleが何か手を打っているんじゃないのと思ったが、本書によればGoogleは「本当の悪い大人を見抜く術を持っていない、澄んだ眼をした天才少年」なんだそうである。
不特定多数の人々が、ネット上で情報の受け手から自由な表現者となるWeb2.0についても、いろんなメディアで大いにもてはやされているところだが、中身はせいぜい「分散型の膨大なデータをみんなが利用できて参加もできる」程度のもので、大したもんじゃないと言い切っている。
またWeb2.0がもたらすロングテール(2割の商品が8割稼ぐのではなく、残りの8割の商品でも十分儲かる)についても、これが成功するのはAmazonのような膨大な在庫コストを負担できる大企業だけに限られる、と一刀両断だ。なるほど~。
ブログについても同様で、総表現社会においてゆるやかな連帯を形成できるという進化論に対して「クズ情報の集まり」と切り捨てる。
いずれも過激な議論だが、著者は著者なりに90年代のマルチメディア(!)時代からの流れを踏まえ、ITにまつわるさまざまなトラブル(デイトレ、論文コピペ、2ちゃんねる、ライブドア、ケータイ、著作権、韓国ITバブル等々)を「低度化」の実例として紹介しているので説得力はある。
そんなふうに語る著者も、結びでは「Webのようにせっかくの素晴らしい道具もイマジネーションのない低度な人間の手によると進化の可能性は閉ざされるが、アイデア豊かな高度化くんになれば世界は変わるかもしれない」とITの未来を完全に否定しているわけではない。要は「あなたしだい」というわけだ。というわけでこのブログも十分その辺によく注意しながら続けていきたい。難しいけど。