
F log
承前
第 3 幕
宮殿の舞踏会ということで、第 1 幕よりも更に壮麗なセット。
6 人の姫が登場し、3 人ずつ踊る。
その後ナポリ、マズルカまで進んで、例のお二人様がスペインを引き連れて登場という運び。
その音楽が好きだからか、マズルカの踊りは大好きなのだ。
女性は少しヒールのある靴で踊るのでたいへんなのでは。
女性陣の中にふたり、目立って素敵な方がいた。
ジュニア・ソリストの中島さんと、ファースト・アーチストの山田さんだ。チェックチェックと

清水さんは第 3 幕の方が生き生きして見えた。
ジークフリートのヴァリは素晴らしかったし、所作のひとつひとつが丁寧で心がこもっている。
第 2 幕でオデットが落としていった一枚の羽根は、ロットバルトがオディールからむしり取った(笑)
羽根とを比較することで、同一人物であるという根拠に使われる。
この K-Ballet の演出は非常に説得力のあるものだ。
王子が後生大事に羽根を胸にしまっているのも同様である。
王子が羽根を見つめてため息をつきつつ、迷っているうちにファンファーレが鳴り響き、
フォン・ロットバルト男爵ご一行様登場。
赤/黒のスペイン軍団を連れているからか、よりいっそう華やかである。
ロットバルトのマントを効果的に使った演出はとてもいいと思う。
遅沢さんもクッキリとした照明下で、ダイナミックな踊り。マント捌きもいい。
紫織ちゃんの初オディールは溌剌とした悪女。
メイクは何故か第 2 幕のオデットよりナチュラルに感じる。
ロットバルトからコソコソッと耳打ちされ、ニヤリと微笑む顔がカワイイ

心配していた体力配分も目処が立ったからか、安心して見ていられる。
スペインの踊りでは、マスク越しなれど宮尾君の長い腕が抜きん出ていた。
彼独特の大きな手(ウヴァーロフも驚くほど手が大きい)が、ダイナミックな動きに寄与する。
ハッキリ言って宮尾君を見直した。
イヤでも実力を引き上げざるを得ない状況に追い込まれ、いよいよ才能が開花しつつあるのかも。
またいつか王子役で観てみたい。
女性ではソリストの仙頭さん(だと思う。マスクしてるので)が素敵だった。

F 的にこの夜のオディール・デビュー最大の見せ場、黒鳥のグラン・パ・ド・ドゥの時間がやって来た。
ロットバルトのマントが一閃し、いち物ある表情のオディールが登場して王子と踊る。
冒頭、大好きなアチチュード 3 連発で発見!
上げた右手がアロンジェだったのだ。
それも素敵だったのだが、やはり普通のアチチュードの方が好き。
K はそういう振りだっけ? 他はどうだったっけ? またまた記憶が曖昧。
オデットの登場シーンとあわせて、機会があったら聞いてみたいものだ。
F 嫁とも意見の一致を見たのだが、第 3 幕の紫織ちゃんは第 2 幕の余裕の無さがウソのよう。
よほど初オディールに向けて準備をしてきたのだろう。
舞台の後半にかけてどんどん良くなっていった。
そのハッキリとした境界が、パ・ド・ドゥ後半の長~い見事なアラベスクバランスであった。
観客席からものすごい拍手が沸き起こったその場から、目に見えて力を増していった。
なにかがふっ切れたのかなぁ。
清水さんもその流れを後押しする素晴らしいヴァリエーション。
こちらにもブラボーの声があちこちからかかる。
王子が愛の誓いをしてしまうと音楽が劇的に変化し、紗幕にオデットの羽ばたきが浮かび上がる。
高笑いの紫織ちゃんはスペインの男性にリフトされ、中央奥からスモークが焚かれる。
そのスモークに紛れていつのまにか姿を隠していた。
そこの段取りは非常に上手くいっていて、最後にロットバルトが飛び去るまで見事だった。
王子は絶望して走り去ってしまい、王妃はショックで崩れ落ちる。
うんうん、この第 3 幕はよい。
紫織ちゃんの初オディールもとてもよい。
この勢いを最終幕まで持続してほしいと思った。
第 4 幕
非常に興味深かったものの、とっ散らかった印象があった今までの K-Ballet の終幕。
オデット/オディールをひとりで踊るようになり整理された。
白鳥たちが待つ湖に悲しみのオデットが帰ってきた。
王子が別の女性に愛を誓ってしまったことを切々と訴える。
ここの涙を流すマイムも前編で F 嫁が指摘したようにインテンポなのだ。
そうすると素人目には単に振りをこなしている・・ように見えてしまう。
コジョカル ちゃんじゃないけど「音をつかまえては離す、離してはつかまえる」ことができれば
もっともっと説得力が増すのではないか。
といっても同じ白のクラチュチュながら、第 2 幕とは違い堂々と踊っている。
もう少しだ頑張れ~と双眼鏡を覗きながら応援する。
K-Ballet の結末は F 好みの悲劇。
もう魔法が解けないことに絶望したオデットは湖に身を投じる。
下手奥への傾斜路を駆け上がりダイブ。
死へのダイブといえば、スウェーデン・ロイヤルバレエのナタリー・ヌードヴィスト。
ピーターライト版だが上手へのダイブがすごい。ほとんど身体を水平に投げ出す。
どれだけ厚いマットを置いてあるのだろう(笑)映像で観ていてもオオ~と思う。
紫織ちゃんのダイブもなかなかだった。続いて清水さんも後を追って飛び込む。
清水さんは走りながら絶叫する声が聞こえてくるような熱演。
結局ふたりの愛の力でロットバルトが滅んでも、魔法は解けず白鳥たちはそのまま。
オデットと王子は紗幕の向こうで、要するにあの世で結ばれることになる。
髪を下ろし普通のドレスを着た紫織ちゃんが、清水さんと抱き合いゆっくりと階段を昇る。
白鳥たちが羽ばたき続ける中、階段の上でもう一度抱き合って幕となる。
うん、良かった。
あれだけ言いたい放題書いていて良かったもないものだが、後半しり上がりに調子が上がったし、
初役オディールは充分に楽しめた。
分離バージョンでオディールだけ先に踊らせてもらっていたら、もっと自信を持って臨めたのでは。
オディールがプレッシャーとなり、経験あるはずのオデットが影響を受けたように思えた。
清水さんはあいかわらず磐石である。
紫織ちゃんも白鳥を通しで踊ること、それも観客の前で踊ることがよく分かったと思う。
とすれば、6月のオーチャードの同じメンバー再演は劇的に良くなる可能性を秘めている。
いや、良くなるに違いない

予定には無かったが、F 嫁ともう一度紫織ちゃんのオデット/オディールを観ようと相談中である。
出待ち編
恒例行事、東京文化会館楽屋口での出待ちである。
F 嫁の体調もあり今回は見送ろうかとも思ったが、舞台後半のあの盛り上がりを考えると・・・
F 嫁も大丈夫と言ってくれたので、やはり足は楽屋口へと向かってしまった。
並んでいるのは女性ばかり 20 名ほど。
次々とオケやコール・ドの皆さんが出てくる。
ここのところ寒いとはいえやはり 5 月。真冬の出待ちと比べたら天国である。
結局、主役のひとり清水さんが出てこられたのは 10 時少し前。
F 嫁にツーショットをお願いしようか?と聞くと、病み上がりと仕事でボロボロなので写真は NG と。

プログラムの当該ページにサインだけいただいた。
清水さんは待っていたタクシーでご帰還。主役のふたりだけタクシーが用意されているよう。
お疲れさまでした!! 今後とも紫織ちゃんをよろしくお願いします。
その後、10 時を過ぎていよいよ紫織ちゃんの登場である。
遠くから見ただけで髪を短く切ったことと、以前よりすごく細くなったことが分かる。
並んでいる人々に順番にサインし写真に納まってゆく。
清水さんが乗車した位置に別のタクシーがアイドリングで止まっており、係員がすぐにも乗れるよう
フォローするため待機している。
直前でサインは打ち切りになるのではないかとヒヤヒヤしたが、なんとか F 嫁の前に。



最初にサインをいただいたときは、そろそろちゃんとしたサインも練習しましょうなどと
よけいなお世話で書いたが、こうなったらとことん漢字で通してほしい。
うん、これは素晴らしい個性だと思う。
少しだけお話できたが、昨年のオーチャードでの出待ちを憶えていてくれてオヂさん感激

まぁ夫婦で毎回観に来るのは珍しいのだろうな。
「 海賊 」 もぜひ行きたいと伝えると 「 ありがとうございます、頑張ります 」 と。
F 嫁がカメラマンになり、またまたツーショツトをお願いする。

オーチャードでのツーショット であまりの顔・・というか頭の大きさの違いに愕然としたので、
今回は半歩下がって(爆)遠近法の助けを求める。
ところが遠近の罠にはまり GX100 のフォーカスが、どデカい F の顔面に合焦

紫織ちゃんからやや外れてしまった。まあ真ん中抜けるよりはマシか

紫織ちゃん、ファイト!! 来月の再演 もがんばって

お礼を言って楽屋口から離れようとしたとき、後ろから上品な御婦人に声をかけられた。
「 あの、違っていたらごめんなさい。もしかしてブログをやってらっしゃる F さんですか? 」
一気に心臓が収縮した。なんかやらかしちまったのか?
「 ・・・はい、そうですが・・・ 」と答えたあと、その御夫人の言葉に腰を抜かす。
「 あの・・・紫織の母でございます 」















血の気が引いた F が口をパクパクしているとお母さまは続けて、
「 ブログでいつも紫織のことを書いていただいてありがとうございます 」
どうも検索でヒットされたようで、以降時々ご覧いただいているようなのだ。
思わず赤面す。
だって素敵~やキレイ~はよしとしても、カワユ~イ

ブログでは常に「ちゃん」呼ばわりだし・・・
慌てた F はいまさら 「 ・・・以前から浅川さんのファンでして・・・ 」 もう遅いっちゅうねん。
お母さまは優しくお話くださり、今後ともよろしくお願いします、と。
そうだ、初めて通して踊る白鳥の湖を観にいらしたんだな。
これからも夫婦で応援します。とお約束してお母さまと別れた。
別れ際にこの出会いのことを記事に書いてもよろしいですかと尋ね快諾をいただく。
お母さま、いろいろひどいことも書いたりしますが、これもファンとしての愛あってのこと。
なにとぞお許しいただき、今後とも拙ブログともどもよろしくお願いいたします。
様々な記事でブログというのは不思議な縁があるものだと書いたが、その最たる経験をした。
芸術家でも芸能人でもスポーツ選手でも、実名を書くということはそれだけ覚悟のいること
というのを再認識した。
これからも自覚を持って、優しく厳しく書いていきたいと思う。
お・ま・け
紫織ちゃんを見送ってさて帰ろうかと思ったら、楽屋口からひょっこりピョートルが出てきた。
慌ててプログラムを出し、恥ずかしがる彼にサインをもらった。

そそくさと上野駅向かって歩くピョートルの背中にそっとつぶやいた。
あんたの音楽は最高だよ !!

時々、山田麻利子先生に教えていただいてます
今朝はありがとうございます。
うんうん、昨日観て来たばかりなのでFさん&F嫁さんの感想に情景が浮かび
それにしても浅川紫織嬢のお母様に正体を見破られたとは(笑)嬉しいハプニング
もしも私の娘、家族、知り合いをこんな沢山の愛
ということは紫織嬢もFさんのブログをお読みになっていらっしゃるのかしら
Fさんブログの場をお借りしてyolからも「頑張ってください!」です。
浅川さんの公演も観たかったのですが、K公演は一公演たりとも見逃さないポリシーのこの私が熊氏の公演ですら行けないという嘆かわしい状況なので、今はFさんのレポで状況を知るのみ。
しかーし。
そう言いながらも1%の可能性を求めて今日も私はペン先と指先を舐めてスケジュール帳をめくるのです
私の方はレポは今晩~明朝あげる予定ですが、ちょっとした感動に久し振りに小鼻
ボクも一度お目にかかりたいですわ。
Fさんのレポは最高!めっちゃ楽しめました!
コメントありがとうございます。
そうか、現役の団員さんも教えに来てくれるんですね。
オヂさんも麻利子先生に習いた~い(爆)
じつは紫織ちゃんにサインをもらう少し前、麻利子先生にもいただいたんですよ。
お花のマークがついたかわいいサインでした
ご多忙中にもかかわらず、F 嫁が興奮してメールしまくりまして申し訳ありません
もうホントに心臓止まるかと思いましたよ
まぁこうしてお母さま公認?????のブログとなったのもご本人に憶えていただいたのも、ひとえに F 嫁のおかげと思っとります。
だって私ひとりじゃ危ないオヂさんですからねぇ。
あ、お母さまによればご本人には伝えていないそうです。
ネットで自分の評価を探し始めたらキリがないし、変なこと書かれても落ち込みますからね。
これからもひっそりと(笑)応援してまいります。
ウチは当日券でも 6/18(水)は行きたいと思っています。
5/15(木)とは比べ物にならないほど良くなると確信していますから。
yolさんもご一緒できたらいいなぁ。可能性はゼロじゃないですよね。
御大、そうとう飛ばしたらしいじゃないですか!!
熱いレポを期待しています
いちばん美味しいところに反応くださりありがとうございます。
( F 嫁はそれを予見してました!! )
トミーさんも演奏会の終演後など、雑踏の中にヨハンを見かけるかもしれませんよ!!
ピョートルは 「 最近、暑かったり寒かったりでかなわん!! 」 とこぼしてました
オケにはやや不満あり・・・だそうです(爆)
出待ちですごいハプニングですね。
びっくり&嬉しい&あせるetc.して
きっと私ならお話もカミカミになりそうです
お母様もブログ楽しみになさってると思います。
熱いファンの気持ちがあふれていますもの。
紫織さんもご存知かもしれませんね
夏のコジョカルちゃんでお会いできたらいいですね。
ちなみに7月11日に行く予定です
お久しぶりです。お元気でしたか?
私は元気ですが、バレエはサボってます(笑)
もう驚いたなんてものじゃありませんでしたよ。
とうぜんお母さまとの会話はカミまくりでした
紫織ちゃんは知らないとのことでしたから、それを信じます。
もし見られていたならもう書けなくなっちゃいますよ~~~
ロイヤルは残念です
ウチは眠りについては13日、14日なんですよ。
一足先に楽しんでくださいね。
私は鑑賞歴1年のバレエファンで知らないことが多いのですが、このK-Ballet の結末はハッピーエンドだと勘違いしていました。
丁寧な解説、とっても参考になります。ありがとうございました。
コメントいただき、ありがとうございます。
naomi さんにはお世話になっています
せっかくの初コメントなのにトップ記事はアレでトホホです
私もバレエはここ数年の上、レポとはいえミーハーな視点ばかりでお恥ずかしいです。
naomi さんのような理知的な文章が目標なんですが・・・
鑑賞歴1年くらいの頃ってすっごく楽しいですよね。
どんどん知識は増えるし、観たい舞台も多くなるし。
変なブログですが、今後ともよろしくお願いします。