経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

大ピンチに陥った 中国経済 (上)

2023-01-19 08:06:57 | 中国
◇ 成長率が3%を下回った = 中国政府は17日、きわめて重要な経済指標をまとめて発表した。それを見ると、いま中国経済が短期的にも中長期的にも、非常に大きな困難に直面したことが判る。GDP成長率が急減速したにもかかわらず、物価は上昇。また総人口が減り始めたにもかかわらず、失業者は増えている。高齢化が進み、政府の社会保障支出も急増して行く。習近平政権は、この苦境を乗り越えられるのだろうか。

統計局の発表によると、昨年10-12月期のGDP成長率は、前年比の実質で2.9%だった。7-9月期の3.9%から、さらに減速している。ゼロ・コロナ政策の実施で消費需要が抑制され、生産活動も規制された。加えて欧米諸国の金融引き締めで、輸出が大きく落ち込んでいる。10-12月期の輸出は前年比7%の減少。アメリカ向けは19%、EU向けは12%の減少となっている。

この結果、22年のGDP成長率は3.0%に落ち込んだ。ひところは8-10%の高度成長を誇っていたが、いまや低成長国の仲間入り寸前。習政権が目標とした5.5%にも、全く届かなかった。同時に発表された鉱工業生産は前年比3.6%の増加だったが、1-9月期の3.9%増からやや鈍化。小売り売上高は0.2%の減少で、1-9月期の0.7%増から大幅に低下。固定資産投資額も5.1%伸びたが、1-9月期の5.9%増からは縮小という具合。いいところがない。

高度成長のおかげで、GDPがアメリカの7割にまで拡大した中国経済。習近平主席は「アメリカに追い付き、追い越す」ことを夢見ていたに違いない。だが、それは夢のまた夢になりそうな気配。いま習政権は景気の立て直しに必死だ。ゼロ・コロナ政策を停止、不動産に対する融資規制を撤廃、アリババなど巨大IT企業に対する規制も解除した。さらに人民銀行は、大量の資金を市中に放出している。

だが、やりすぎると不動産バブルが再燃したり、インフレが加速しかねない。さじ加減はきわめて難しい。ゼロ・コロナ政策を放棄し、国内の往来を自由にしたから、成長率はいったん5%程度にまでは戻るだろう。しかし、5%以上の経済成長を長期にわたって続けることは至難の業に違いない。人口も減り始めたからである。

                     (続きは明日)

        ≪18日の日経平均 = 上げ +652.44円≫

        ≪19日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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もう負けてる! 日本のEV (下)

2023-01-18 08:00:47 | 自動車
◇ 政府・与党には危機感なし = 日本のEVが立ち遅れてしまった原因は、いくつもある。まず給電設備の不足。いま日本国内にある給電設備は約4万基で、中国の135万基、アメリカの10万基に比べるとかなり少ない。政府は30年までに15万基に増やす計画だ。給電器には出力6㌔㍗の普通型と90㌔㍗の高速型があり、給電に要する時間は20倍も違う。海外では高速型が主流になりつつあるが、日本は30年になっても大半が普通型になる見込み。

次はHV(ハイブリッド車=ガソリンと電気の併用)の問題。日本のメーカーはHVの生産で、高い技術力を獲得した。このためHVからEVへの切り替えが遅れがち。またガソリン車の部品は3万点だが、EVの部品は半分程度。ガソリン・エンジンが無くなると、69万人もの労働者が職を失う。この系列企業の職種転換をどう進めるか。組み立てメーカーがEV専業化に踏み切れない大きな原因となっている。

EVの生産はガソリン車に比べると、技術的には非常に簡単だ。このため異業種からの参入も多く、新興国でも製造が始まった。その結果は競争が激化、世界では早くも価格の引き下げ競争が始まっている。たとえばインドのタタ自動車は135万円、中国の上海汽車集団は200万円のEVを売り出した。ことしに入っては、あのテスラも6-20%の値下げを断行している。

中国はもちろんだがアメリカもヨーロッパも、政府が補助金や減税によってEVの生産・販売を積極的に支援している。だが日本政府の対応は鈍い。ことしの税制改正では、EVに対する補助金の一部を削ったほど。給電設備の普及や車載電池の性能向上、さらには自動車関連企業の職種転換などなど、支援すべき事項はたくさんある。ここで政府・与党が目を覚まさないと、パソコン、スマホ、太陽光発電パネルに続いて、EVも世界の潮流からはじき出されてしまうだろう。

        ≪17日の日経平均 = 上げ +316.36円≫

        ≪18日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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もう負けてる! 日本のEV (上)

2023-01-17 07:12:59 | 自動車
◇ 完全に立ち遅れた‟EV元年” = 自動車販売団体の集計によると、22年に日本国内で販売されたEV(電気自動車)は5万8813台。前年比では2.7倍に伸びた。このうち普通乗用車は3万1592台で、前年比1.5倍の増加。軽自動車は2万7221台で、なんと前年比49倍の増加だった。また輸入車は1万4348台、前年比1.7倍となっている。車種別にみると、首位は日産の軽自動車「サクラ」で、2万1887台を売って断トツだった。

これだけの数字をみると、日本のEVも健闘したように思われる。しかし、たとえばEV専業メーカーとして知られるアメリカのテスラ。22年の販売台数は前年比40%増の131万3851台だった。とにかく比較のしようもない。また昨年1-11月の統計でみると、新車販売全体に占めるEVの割合は、中国が21.1%、ヨーロッパが10.3%、アメリカが5.8%。これに対して、日本はわずかに1%台だ。

さらに、こんなデータもある。世界全体のEV販売台数に占める割合は、中国が約4割でトップ。次いでアメリカが約3割、ヨーロッパが約2割となっているが、日本はまだ5%にも達しない。中国はBYD(比亜迪)、アメリカはテスラ、ヨーロッパは独フォルクスワーゲンや仏ルノーがトップ・メーカーだ。

22年は‟EV元年”と言われ、世界のメーカーがこぞって生産・販売に力を傾注した。だが、このスタート段階で、日本のメーカーは早くも大きく出遅れてしまった。残念ながら、ことしも巻き返せるような勢いは見られない。その原因はいろいろ解明されているが、改善への動きは鈍い。このままではEVに関しても、日本は‟周回遅れ”になって行く危険性が大きい。

                      (続きは明日)

        ≪16日の日経平均 = 下げ -297.20円≫

        ≪17日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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今週のポイント

2023-01-16 07:48:04 | 株価
◇ 本格化する決算発表に最大の関心 = ダウ平均は先週672ドルの値上がり。ことしになってからの2週間で、1150ドルを超える上昇となった。終り値は3万4300ドルに戻している。消費者物価の上昇率が鈍化したことを好感。雇用統計で時給の増加率が縮小したことも好感。ISMの景況感指数が低下しても、FRBの引き締めテンポ緩和につながるとプラス材料に捉えている。市場では「はしゃぎ過ぎ」の声も少なくない。

日経平均は先週146円の値上がり。終り値は2万6000円台を維持した。ニューヨークの活況に支えられたが、こちらは長期国債の利回り上昇が気がかり。13日には日銀が上限としている0.5%を超え、一時は0.545%にまで上昇した。日銀が再び変動幅を拡大するとみた海外勢が空売り攻勢に出ているためである。この影響で円の対ドル相場が急上昇したことも、輸出関連株の売りにつながった。

ウオール街では、企業の10-12月期決算発表が本格的に始まった。調査会社ファクトセットの推計によると、主要500社の純利益は4%の減益になるという。市場はこれまで景気の下降を示唆する経済指標が発表されても、引き締めテンポの緩和につながると、むしろ好感してきた。しかし企業業績の悪化については、そうも言っていられない。SPグローバル社が機関投資家を対象にしたアンケート調査では、株式などリスク投資には「後ろ向き」の回答が「前向き」を上回った。

今週は16日に、12月の企業物価。17日に、11月の第3次産業活動指数。18日に、11月の機械受注、12月の訪日外国人客数。19日に、12月の貿易統計。20日に、12月の消費者物価。アメリカでは18日に、12月の生産者物価、小売り売上高、工業生産。19日に、12月の住宅着工戸数。20日に、12月の中古住宅販売。また中国が17日に、10-12月期のGDP速報、12月の鉱工業生産、小売り売上高、固定資産投資額を発表する。なお18日には、黒田日銀総裁が会見。

        ≪16日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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死者が語る コロナ肺炎の危険度 (146)

2023-01-14 07:48:51 | なし
◇ 日本の死亡者増加数が過去最多に = 世界の感染者は累計6億6710万人、この1週間で293万人増加した。この増加数は前週より31万人多い。死亡者は672万2735人、週間1万6927人の増加だった。この増加数は前週より6112人多い。感染者、死亡者ともに増加しているが、たとえば中国のように発表を止めてしまった国もあるので、実際の状況はもっと悪化しているはずだ。多くの国が規制を緩和したところへ、感染力の強いXBB.1.5変異株が発生したためだと思われる。

国別の死亡者数をみると、アメリカは累計109万8512人。この1週間で3277人増加した。次いでブラジルが69万人台、インドが53万人台、ロシアが38万人台、メキシコが33万人台。さらにイギリスが21万人台、イタリアが18万人台、フランス・ドイツ・インドネシアが16万人台となっている。ロシアとヨーロッパ諸国で、増加数が拡大した。

日本の感染者は累計3106万5927人、この1週間で123万0010人増加した。この増加数は前週より38万7125人多い。週間の増加数としては、第7波のピークだった8月末の156万人以来の大きさ。死亡者は累計6万1851人で、週間2809人の増加だった。この増加数は前週より826人多く、過去最多。昨年12月1日から1万人増えている。

WHO(世界保健機構)が「感染力が強い」と警告したXBB.1.5変異種も上陸しており、特に70歳以上の高齢者が死亡者の9割を占めている。高齢者施設や病院でのクラスター(集団感染)が多発しており、医療体制も逼迫し始めた。経済活動の正常化を目指して規制を緩和するのはいいが、政府はこうしたクラスターの発生を防ぐための特別な対策を至急に講じるべきだろう。そうしないと「高齢者の犠牲を土台とした景気回復」になりかねない。

        ≪13日の日経平均 = 下げ -330.30円≫

        【今週の日経平均予想 = 4勝0敗】     
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